ストリクスヘイヴン:講堂の監視者

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講堂の監視者(Hall Monitor)カードセット「ストリクスヘイヴン:魔法学院」に収録されたクリーチャー・カードである。

追記(2021年5月16日):メカニズム上の委員長らしさのミニ項目を追加した。

講堂の監視者の解説

“No unauthorized summoning. No writing in the library books. And absolutely no indoor dueling!”
「無許可の召喚禁止。蔵書への書き込み禁止。屋内の決闘は絶対禁止!」
引用:講堂の監視者(Hall Monitor)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

講堂の監視者(Hall Monitor)

データベースGathererより引用

講堂の監視者(Hall Monitor)はストリクスヘイヴンの風紀委員や監督生を表したカードである。

また、アルケヴィオス次元のトカゲ人をカード化した唯一のカードでもある。これまでに本サイトではアルケヴィオス次元のマイナー人型種族(亀人蛙人)を扱って来たが、このトカゲ人も同様に種族としての情報がほぼ公開されていない。取りあえず言えることはアルケヴィオスには多種多様な種族が住んでいて、その中にはトカゲ人が存在する。それだけだ。

別の視点から見ると、このカードには(本サイトとして)特筆すべきポイントがあと2つある。

1つ目が英名の「Hall Monitor」に込められた意味があること

2つ目がMTGのトカゲ人として希少なクリーチャー・タイプを持つことだ。

次節からはこの2つのポイントを順番に取り上げて説明する。



講堂の監視者のカード名

講堂の監視者の特筆ポイント1つ目がカード名「Hall Monitor」に込められた意味だ。

このカードの名前は製品版で「講堂の監視者」となっている。「Hall Monitor」の和訳としては無難な言葉選びだ。だが、このカードが「トカゲ人であること」そして「舞台が魔法学院であること」、これら2点を踏まえると「講堂の監視者」は物足りない訳語だと感じてしまう。

その理由は「Monitor」という単語にある。「Monitor」は動詞で「監視する」という意味があり、名詞としては状況によって色々なものを指し示す言葉だ。

爬虫類の場合の「Monitor」は、「モニター」と呼ばれるオオトカゲを指している(外敵や獲物を監視するような様子からの命名だそうだ)。

そして学校関係では、「Monitor」は「学級委員」「風紀係」「監督生」といった意味合いを持ってくる。実際に「Hall Monitor」という役職は海外の学校に存在するようで、国や地域によって性質が違う部分もあるが、規則を守るための権限を与えられた学生であったり、学生ではない職員であったりするようだ。

したがって、このカードの「Hall Monitor」という名前には、ストリクスヘイヴン大学の「トカゲ人」の「風紀委員」といった二重の意味合いが込められていたのである。制作陣の洒落た言葉遊びだ(和訳するとどうしても通じなくなるのが残念である)。

メモ:メカニズム上の風紀委員らしさ
講堂の監視者はカードのメカニズムでは速攻を持ち、タップ能力で対象のクリーチャーのブロック参加を禁止する能力がある。

このカードが風紀委員であることからメカニズムを読み解いてみる。誰かが講堂内で規則違反を侵せば、この風紀委員は目聡く見つけてすぐさま駆けつけてくる(速攻)。そして、違反に関して口うるさく咎めてくるのでしばらく身動きが取れなくなる(ブロック禁止)。こんな意味合いが持たされているかと想像する。

希少なクリーチャー・タイプのトカゲ人

講堂の監視者の特筆ポイント2つ目がトカゲ人として希少なクリーチャー・タイプ「トカゲ」を持つことだ。

トカゲ人なのにクリーチャー・タイプ「トカゲ」を持つことがなぜ特別なのか?

実はMTGではトカゲ系人型種族は「ヴィーアシーノ」という固有種のクリーチャー・タイプを持つのが普通なのだ。

重要:
MTGではトカゲ人種族のクリーチャー・タイプは「ヴィーアシーノ」である。「トカゲ」ではない。

講堂の監視者は「ヴィーアシーノ」でなく「トカゲ」である。したがって、トカゲ人のカードとして極めて異例な存在である(ヴィーアシーノでないトカゲ人はMTG史上2例目となる)。

では、MTG史上のトカゲ人の歴史から振り返って説明する。

ヴィーアシーノ

ヴィーアシーノの戦士(Viashino Warrior)

MTG史上初のヴィーアシーノのカード
ヴィーアシーノの戦士(Viashino Warrior)
データベースGathererより引用

ヴィーアシーノはドミナリア次元やラヴニカ次元、アラーラ次元などに生息するトカゲ系人型種族である。

ヴィーアシーノは元々、1995年の小説The Prodigal Sorcererに登場したトカゲ人種族であった。それが翌年1996年のカードセット「ミラージュ」でカードとなったものだ。ヴィーアシーノの戦士(Viashino Warrior)が最古のヴィーアシーノのカードである。

このカード登場後、トカゲ人種族はヴィーアシーノのクリーチャー・タイプでカード化されることになったのだ。

ただし、例外的な存在が1つだけいた。それが「トカゲ人間の戦士」というカードである。

ヴィーアシーノでないトカゲ人

トカゲ人間の戦士(Lizard Warrior)

トカゲ人間の戦士(Lizard Warrior)
データベースGathererより引用

トカゲ人間の戦士(Lizard Warrior)は1997年の初心者用カードセット「ポータル」に初収録された。ポータルは簡易ルールの入門用MTGだったので当時はクリーチャー・タイプが持たされていなかったが、後にエラッタが出てクリーチャー・タイプは「トカゲ・戦士」と設定された。

そういう経緯で、トカゲ人間の戦士はMTG史上初の「ヴィーアシーノ」でなく「トカゲ」のトカゲ人種族となった。これ以降、クリーチャー・タイプが「トカゲ」のトカゲ人は種族としては制作されることはなかったのである。

以上のように15年もの間、トカゲ人は「ヴィーアシーノ」で通してきたのだ。講堂の監視者が「トカゲ」であるのが異例だとよく分かるだろう。

メモ:シミックの改造トカゲ人

エリマキ神秘家(Frilled Mystic)

エリマキ神秘家(Frilled Mystic)
データベースGathererより引用

ラヴニカ次元には「トカゲ」の人型生物が複数居るには居るが、シミック連合の手による改造生物なので種族ではない。



やり直せるならヴィーアシーノはトカゲにしたい

マーク・ローズウォーカー(Mark Rosewater)は、MTGを最初からやり直せるなら今ならこうするだろう…という「もしも」を度々語っている。その中にはクリーチャー・タイプ変更の話が出てくる。もしやり直すならヴィーアシーノのクリーチャー・タイプは「トカゲ」にするだろうと語る。

というのも「獣人種族」のクリーチャー・タイプの扱いが初期とは変化している。初期のMTGでは「ヴィーアシーノ」のように個別のクリーチャー・タイプを新設していたが、現在のMTGでは「獣人種族」を表すクリーチャー・タイプはそのモチーフとなった動物のものを与えるのがスタンダードとなっている(ただし、ミノタウルスやケンタウルスのように有名なものは除く)。

メモ:固有のクリーチャー・タイプを持たない獣人種族
猫人レオニンならクリーチャー・タイプは「レオニン」でなく「猫」である。同様に、鳥人エイヴンは「鳥」、サイ人ロウクスは「サイ」、象人ロクソドンは「象」、ジャッカル人ケンラは「ジャッカル」、犬人アイノクは「犬」といった具合だ。

今回カードセット「ストリクスヘイヴン:魔法学院」では、トカゲ人のクリーチャー・タイプに「ヴィーアシーノ」でなく「トカゲ」が用いられている。近年でも度々クリーチャー・タイプの見直しは行われている(例:「猟犬」を廃止し「犬」に変更)。もしかするとヴィーアシーノに見直しの番が回ってきたのかもしれない。クリーチャー・タイプの「ヴィーアシーノ」が廃止され「トカゲ」に統合される前触れとなるか、要注目だ。

では今回はここまで。

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