カード紹介:始祖グリーヴィル

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始祖グリーヴィル(Root Greevil)カードセット「プレーンシフト」収録のクリーチャー・カードである。

追記(2022年6月17日):20年前の市場調査で最低のフレイバー・テキストの1つに選ばれていたデータを付記した。

始祖グリーヴィルの解説

The root of all greevils.
すべてのグリーヴィルの始祖。
引用:始祖グリーヴィル(Root Greevil)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

始祖グリーヴィル(Root Greevil)

データベースGathererより引用

始祖グリーヴィル(Root Greevil)は、AR4205年勃発のファイレクシア侵略戦争期にドミナリア次元で確認されたビーストの1種である。

カード名では「始祖グリーヴィル」と訳されているが、この「始祖」以外に「グリーヴィル」のクリーチャー・カードは存在していない。ストーリー作品を確認しても、小説Planeshiftはおろか他のどの作品にも、存在も言及も見当たらない。謎の生き物である。

実はこの始祖グリーヴィルは、カード名とフレイバー・テキストの下らないダジャレで引き合いに出されてきたカードなのだ。フレイバー・テキストを扱った公式記事でも何度か取り上げられたことがある。ただし、このダジャレは和訳文を読んでもさっぱり分からない。英文限定のネタなのだ。



始祖グリーヴィルのフレイバー・テキスト

The root of all greevils.
すべてのグリーヴィルの始祖。

フレイバー・テキストの英語原文は英語の慣用句の捩りになっている。

The root of all evil」と言えば「諸悪の根源」を意味する慣用句だ。つまり、始祖グリーヴィルのフレイバー・テキストは「evil」を「greevils」に差し替えたダジャレなのだ(「Greevil」という言葉の中には「evil」が隠れている)。

「The root of all greevils.」というフレイバー・テキストは、そのまま「グリーヴィルという種類のビースト全ての根源・始祖である。」とも読めるし、慣用句の「諸悪の根源」から「諸グリーヴィル(?)の根源」というよく分からない概念を連想もしてしまうのだ。

カード名の「Root Greevil」もこの慣用句ダジャレのための名前に過ぎないものだ。おそらく「グリーヴィル」なんて生き物を真面目に設定してやいないし、「始祖」と訳された「Root」だって「植物の根」か「根源・根本」か「始祖・先祖」かあるいは別の含みかどの意味なのかも決めちゃいないだろう。

始祖グリーヴィル(Root Greevil)

データベースGathererより引用

始祖グリーヴィルとはそういう存在のカードだ。これでくすりと笑えるか、下らない戯言と鼻で笑うか、人によるだろう。昔の記事やSNSでの反応などをざっと見た感じ、正直酷いダジャレだと思われているが、それで逆に印象に残っていてある種の愛着を覚えられている、私はそんな感触を受けた。

こういう訳なので当然、和訳製品版のフレイバー・テキスト「すべてのグリーヴィルの始祖。」を読んでも何がダジャレかさっぱり分からないのだ。説明するとちっとも笑えなくなるネタだし、当時の翻訳担当陣は直訳するしかどうしようもなかったんだろうと思う。

ちなみに2013年の公式和訳記事フレイバーテキスト二十選では、開発部のお気に入りの1つとして「始祖グリーヴィル」のフレイバー・テキストが選出されているが、日本の読者にはなぜ選ばれたのか分かるはずもなかったろう(和訳記事なのだからダジャレの註釈くらい入れてあげればいいのにね)。

追記:これまた余談だが、2002年当時の公式記事Add Text to Flavorはフレイバー・テキストにおけるダジャレの是非を論じた記事だが、始祖グリーヴィルは市場調査の結果、最低のフレイバー・テキストの1つに選出されたというデータが残っている。:追記ここまで

ということで、このカードが根本的にダジャレ・カードだと理解できたと思う。

だが、下らないダジャレだと重々承知した上で、本サイトはこのままスルーしてしまうわけにはいかないのだ。

始祖グリーヴィルがどんな生き物で、そしてどの次元出身なのかを調べてみたい。もし制作側が答えを用意してなかったとしても、何らかの解釈がきっとできるのではないか?

次の節ではまずイラストから確認したい。

始祖グリーヴィルの考察

始祖グリーヴィル(Root Greevil)一部拡大図

始祖グリーヴィルは、頭部はどことなく蛙に似た特徴を示し、2つの目と1つの口がある。全身は鱗状で黄色あるいは緑色である。4本の腕を持ち、その先端には4本指の手がある。胴はヒョロ長く、下半身はナーガのごとく長い蛇の尾となっているようだ。頭頂部や背面、腕の付け根には短めの毛や管のような触手の類が何本も生えている。

イラストでは、ドミナリアの人間男性とみられる人物の周りに大きくとぐろを巻くように立ちはだかっている。ファイレクシアンでもないのにドミナリア人を襲う。この様子から、ファイレクシア対ドミナリア連合の戦争とは関係を持たない野生動物に過ぎないのかもしれない。

クリーチャー・タイプは単なるビーストであり、ファイレクシアンではない。消去法で「ドミナリア次元の原住生物」であるか、「戦争中に次元移動して来たラース次元の生き物」であるか、いずれかと考えられる。

そこで私はラース次元にはいくぶん似た特徴のクリーチャーが存在していると思い出した。スカイシュラウドの切断獣(Skyshroud Cutter)である。

スカイシュラウドの切断獣

スカイシュラウドの切断獣(Skyshroud Cutter)

スカイシュラウドの切断獣(Skyshroud Cutter)
データベースGathererより引用

スカイシュラウドの切断獣(Skyshroud Cutter)はカードセット「ネメシス」収録のクリーチャー・カードである。

ラース次元の森林地帯スカイシュラウドに棲息するビーストだ。

スカイシュラウドの切断獣(Skyshroud Cutter)拡大図

イラガの幼虫に似た印象の顔つきで、顔の正面に2つの目と1つの口がある。頭部から左右に突起状の触覚(?)が2本、口の両脇から大あご(?)が2本突き出ている。体表は鱗に覆われ、2本の腕のある上半身が、蛇のように長い下半身へと繋がっている。シルエットは基本的にナーガに似ている。

体色は全体的に緑であるが、胸部は黄色で、触覚・大あご・腕・尻尾の先端は茶色をしている。

スカイシュラウドの切断獣は、小説Nemesisやその他のラースを舞台にしたストーリー作品を調査しても一切見つけることができなかった。これも謎の生物である。



始祖グリーヴィルとスカイシュラウドの切断獣

始祖グリーヴィルとスカイシュラウドの切断獣を見比べてみると、細部はかなり異なっているものの、実は大枠では共通する部分があると気付ける。

外見的特徴を見ると両者とも、上半身は頭と腕のある人型で下半身が蛇である、ナーガに似たタイプのシルエットを有している。体表は鱗状で、体色は緑系だ。

ゲーム的なデータでは、色が緑色のビースト・クリーチャーという点は合致する。呪文コストやパワー/タフネスはそれほど確たる指標にはなり得ないが、呪文のコストは(3)(緑)で同じ、パワー/タフネスは2/3と2/2で近い値を示す。その一方で、カードの機能はなんら共通点がない。

仮説:次元転移で分岐したグリーヴィル種

ここで仮説を立てる。始祖グリーヴィルがその名の通りに「全グリーヴィルの大元となる種」としたら、スカイシュラウドの切断獣はその系譜に連なる「亜種グリーヴィル」となる。つまり、ドミナリア原住のグリーヴィル種から分岐したラースの亜種が存在する。これは筋が通るだろうか?

スカイシュラウドの歴史を踏まえれば十分説得力が持たせられるはずだ。

ラース次元のスカイシュラウドの森は、元々はドミナリア次元にあったものを遥かな昔にファイレクシアの次元転移技術によって奪い取られた土地だ(詳細はこちらの記事を参照のこと)。

ラース:種族の起源
マジック・ザ・ギャザリング(MTG)のラース次元に生息する人型種族の出身次元について解説する。コー、ヴェク、ダル、サルタリー、サラカス、ダウスィー、スカイシュラウド・エルフ、ルートウォーター・マーフォーク、モグの起源はどこにあるのか?

スカイシュラウドの居住生物は森と共にラース次元に転移し、過酷な環境下に適応してより獰猛な性質と姿へと変貌していったのだ。場合によっては、ラースの支配者エヴィンカーによる干渉を受けて人為的に変化させられた例もあった。

ではグリーヴィル種には何が起こったのか?

スカイシュラウドにはグリーヴィルも棲息していたのである。そして森と共にラースに強制移住することとなり、大きく変貌して「スカイシュラウドの切断獣」という亜種グリーヴィルを産むに至ったのだ。その一方で、ドミナリアに残ったまま元の姿を保持した種が「始祖グリーヴィル」なのだ。腕の数も細部の違いも全部ひっくるめて、ラースへ次元移動して数世紀を隔てた種の変化で説明可能である。





意外に悪くない気がしてきた。まあでもこの仮説を裏付けられる証拠はこれ以上何処にもない。だから、これ以上話は進められないんだけれどね。

さいごに

といったところで、ダジャレ・カードの始祖グリーヴィルの記事はおしまいとなる。

では今回はここまで。

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