イニストラード:農民の結集

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農民の結集(Rally the Peasants)はカードセット「イニストラード」収録のインスタント・カードである。

今年後半はイニストラード次元を舞台にしたカードセットが続いた。私はこの機会に過去の資料やカードを掘り起こして調べていたため、それなりにイニストラード次元のことを掴めてきた感触がある。

そうやって、過去の諸々を眺めていると「流石に和訳の言葉選びが変じゃあないか、これ!?」というものにも度々ぶつかることになった。今回取り上げる「農民の結集」もそんなカードの1枚だ。

農民の結集の解説

“If you must go out at night, bring a mob.”
–Master of the Elgaud Cathars
「夜中に出歩かねばならぬなら、烏合の衆を連れて行け。」
–エルゴードの聖戦士の師
引用:農民の結集(Rally the Peasants)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

農民の結集(Rally the Peasants)

農民の結集(Rally the Peasants)
データベースGathererより引用

農民の結集(Rally the Peasants)が収録されたカードセット「イニストラード」は、今年のカードセット「イニストラード:真夜中の狩り」や「イニストラード:真紅の契り」から見て、4年かそれ以上は過去に当たる時代設定だ。この当時は大天使アヴァシンと天使たち、教会が権勢を振るっていた時代だ。あるいは人類にとって一番平和だった頃かもしれない。

そんな時代背景であっても、イニストラード次元の夜は恐ろしい恐怖や怪物が徘徊する危険に満ちていた。だからこのカードでは、満月の夜に行動する農民たちはアヴァシン教の聖印を掲げ、農業用フォークを携えて、寄り集まっているのだ。こんな夜は特に人狼が活発なのだから。



農民の結集のフレイバー・テキスト

“If you must go out at night, bring a mob.”
–Master of the Elgaud Cathars
「夜中に出歩かねばならぬなら、烏合の衆を連れて行け。」
–エルゴードの聖戦士の師

このフレイバー・テキストには違和感がある。この文脈で「烏合の衆」という言葉をわざわざ選ぶのはおかしいのだ。

言葉の確認

殺到(Mob)

殺到(Mob)
データベースGathererより引用

まず言葉の意味から確かめる。

「烏合の衆」とは、規律も統制も無い寄り集まった群衆のことで、役立たずの意味合いを多分に含めて使われる言葉だ。

原文の「mob」の方は「群衆・暴徒・大衆・一群・野次馬」と言った意味合いだ。この中には「烏合の衆」の意も含まれるがそれが意味の全てではないし、「mob」があまり上品な言い方ではないのは確かだであるが、俗的に「仲間たち」を指して用いたりもできる。動詞としては「群れで襲う」「群がり殺到する」と言った意味合いになり、その方向でカード化した殺到(Mob)というインスタント呪文も存在する。

このように「mob」は広い意味を持つ言葉なのだから、どの意味が相応しいかは文脈で決まるはずだ。

発言者の立場

弱者の師(Mentor of the Meek)

公式記事A Planeswalker’s Guide to Innistrad: Nephalia and the Undeadでエルゴード訓練場の挿絵として挿入されている
弱者の師(Mentor of the Meek)
データベースGathererより引用

フレイバー・テキストの発言者は「エルゴードの聖戦士の師(Master of the Elgaud Cathars)」である。

イニストラード次元の「聖戦士」はアヴァシン教会の兵士を指す。そして「エルゴード」はネファリア州にある聖戦士の訓練場だ。そこの「Master」つまり「長・達人・師」などとなれば、訓練場の教師・導師あるいは高位の聖戦士に違いない。

教会に属する聖戦士で何らかの地位にある人物ということは、民衆を怪物や脅威から守る役目を負っており、それなりに立場を弁えた振る舞いができるはずだ。

ならば、味方として結集した農民たちを「烏合の衆」呼ばわりするだろうか?暴徒と化して制御できなくなった敵ではなく、味方として集まった者達だ。いや、「烏合の衆」呼びはまずあり得ない。1

したがって、このカードのフレイバー・テキストの「mob」は「(農民の)集団」あるいは「仲間たち」くらいに捉えるのが妥当だ。



言われているのは誰?

農民の結集(一部拡大図)

では最後に、エルゴードの聖戦士の師は誰に対してこのフレイバー・テキストの文言を言ってるのだろうか?

一番自然なのは、エルゴールド訓練場の聖戦士たちだ。「夜間に出向かざるをえない時には、民衆を連れて行くとよい。」との助言となる。多勢に無勢というわけだ。

そうではなかったとしたら、広く一般の人々に向けての注意喚起かも知れない。「やむなく夜間外出する際には、仲間たちと連れ立って行くこと。」こんな感じにも解釈は可能だ。

「夜間に出向かざるをえない時には、民衆を連れて行くとよい。」
–エルゴードの聖戦士の師

まあこっちの解釈が一番手堅いかな。






以上で、いつものように言葉をこねくり回した本記事はお終いだ。では今回はここまで。

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  1. 肉壁として集めた使い捨てかも知れない?いや、そこまでおかしいことやりそうなアヴァシン教会はエムラクールの時だけだって!