カード紹介:嵐雲のカラス

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嵐雲のカラス(Storm Crow)は海外でネタ人気の高いカードである。ネタ扱いされる理由は何だろう…という疑問を見かけたので取り上げてみた。

今回は、嵐雲のカラスがチャック・ノリスのジョーク絡みでネタ扱いされる理由嵐雲のカラスの冗談から生まれたジョークカードエイプリルフール企画、そして、ウルザの正体が嵐雲のカラスだと言われるネタ、について解説する。記事の一番最後には、真面目な設定解説もまとめてある。

追記:自動投稿した後で、流行の起源に関して書いた内容に確証がないな、と気付きました。本記事は私の経験と記憶をもとに書いています。
その上で、嵐雲のカラスについてですが、ことさらカードパワーの低さを褒め殺しにして弄ってネタにする…というのは、アライアンス当時から2000年くらいまでの私が観測して記憶している範囲内では覚えがない、というのが正直なところです。ただし海外のサイトでよく覗いてたのが公式以外ではdojoとかMTGNewsとかphyrexiaくらいでしたし、流行を見逃していた可能性は否定できません。あるいは発祥が別の場所だったり、少し後の時代であったのならお手上げです。
流行の起源については、褒め殺しネタよりチャック・ノリス絡みの方が先だった気がする…くらいの緩い検証になっています。ご容赦を。

嵐雲のカラスのネタ人気の始まり

Storm crow descending, winter unending. Storm crow departing, summer is starting.
嵐雲のカラスの舞い降りるとき、冬はまだ終わらない。嵐雲のカラスの立ち去るとき、夏が始まる。
嵐雲のカラス舞い降り、冬は続く。嵐雲のカラス飛び去り、夏が始まる。
引用:嵐雲のカラス(Storm Crow)のフレイバー・テキスト(カードセット「ポータル」以降の再録版)
上が英語原文。中が和訳製品版(ポータル、基本セット第6版)、下が和訳製品版(基本セット第7版、第8版、第9版)

嵐雲のカラス(Storm Crow)

基本セット第9版再録バージョンの嵐雲のカラス(Storm Crow)
データベースGathererより引用

嵐雲のカラス(Storm Crow)の初出はカードセット「アライアンス」だが、ネタ人気が出たのはカードセット「ポータル」で再録されたときのフレイバー・テキストのおかげだ。

Storm crow descending, winter unending. Storm crow departing, summer is starting.
嵐雲のカラス舞い降り、冬は続く。嵐雲のカラス飛び去り、夏が始まる。

このフレイバー・テキストの言い回しが、チャック・ノリスのジョーク参考)に似ていたのがMTGユーザーに受けたのだ。文中の嵐雲のカラスをチャック・ノリスに置き換えるといかにもらしい文章になる。公式への再録リクエストが寄せられる理由も、このフレイバー・テキストが愛されているがためである。(参考

嵐雲のカラスはポータル以降はカードセット「基本セット第6版」に再録され、第9版まで毎回再録される常連カードになっていた。もちろんフレイバー・テキストは人気のポータル版のままだったが、イラストは第7版で新規のものに差し替えられている。

ちなみに和訳版のフレイバー・テキストは、第7版で訳が変更になっている。変更前はゆったりした雰囲気で余韻があり、変更後は簡潔でキレは増している。個人的な感想だがどちらがより良い文章とも思えない。…ただ、どちらもチャック・ノリスっぽさがほしいかなと感じる。



カラスの嵐雲

カラスの嵐雲(Crow Storm)

カラスの嵐雲(Crow Storm)
データベースGathererより引用

嵐雲のカラスのネタ的な人気の高さにあやかって、ジョークカードセット「Unstable」で作られたカードがこのカラスの嵐雲(Crow Storm)だ。

嵐雲のカラス

嵐雲のカラストークン
公式記事The Tokens of Unstableより引用

カラスの嵐雲は「嵐雲のカラス」トークンを生み出す「ストーム」メカニズムを持たされている。嵐雲(ストーム)尽くしである。

ジョークセットだからこそ実現できた組み合わせのカードであった。

2020年エイプリルフール

嵐雲のカラス(Storm Crow)

嵐雲のカラス(Storm Crow)
公式記事より引用

2020年のエイプリルフール企画では、嵐雲のカラス(Storm Crow)を含むネタ扱いされるカード4種類が収録された商品がSecret Lair Drop Seriesとして発売されると発表された。もちろんエイプリルフールの冗談なのだが、コロナ騒動が落ち着いたのちに実際に印刷される予定とのことである。

残念なことにこの新バージョンの嵐雲のカラスにはチャック・ノリス的フレイバー・テキストが付いていない。そのせいで落胆する声も見かけられた。

嵐雲のカラスの正体はウルザだ

最高工匠卿、ウルザ(Urza, Lord High Artificer)

最高工匠卿、ウルザ(Urza, Lord High Artificer)
データベースGathererより引用

嵐雲のカラスの正体がプレインズウォーカーのウルザ(Urza)だという説がある。これは小説The Brothers’ Warの記述が元になったネタである。

以下がその件だ。

“I’m a storm crow, Tawnos. A bird of ill omen. Disaster follows in my wake, and I don’t want to hurt her anymore. I don’t want to hurt anyone anymore. Only a fool would be at my side.”
「私は嵐雲のカラスなんだよ、タウノス。不吉な鳥だ。私の後には災いがつきまとう。もう彼女(訳注:ウルザの妻カイラ)を傷つけたくない。これ以上、誰も傷つけたくないんだ。愚か者しか私に寄り付かないだろうよ。」
引用:小説The Brothers’ Warより一部抜粋
上が英語原文。下が私家訳

ヨーティア国首都クルーグの崩壊(AR28年)から3年が経ち、タウノスはウルザの妻カイラを守りながらの艱難辛苦の逃亡生活を乗り越え、ようやくウルザに巡り会えた。別室にはタウノスが連れてきたウルザの妻のカイラと息子のハービンがウルザとの面会を待っているのだが…ウルザは私は不吉な嵐雲のカラスだと3人を拒絶しようとした。

この小説The Brothers’ Warは、カードセット「アンティキティー」を題材にした長編小説だが、執筆時期はアンティキティー発売から数年経っている。そのため、アンティキティーの出来事をそれ以降に発売されたカードセットと関連付けるだけの時間的余裕が生まれていて、様々なカードを取り込む工夫が凝らされている。嵐雲のカラスもその1つである。

この織り交ぜ方がかなり自然で、作家ジェフ・グラブ(Jeff Grubb)の巧みな手腕を十二分に楽しむことができる。小説The Brothers’ Warは個人的にお勧めしたいMTG作品だ。

嵐雲のカラスの正体はウルザだ:つづき

ウルザの弟子、タウノス(Tawnos, Urza's Apprentice)

ウルザの弟子、タウノス(Tawnos, Urza’s Apprentice)
データベースGathererより引用

ちなみに小説では以下のように話が続いていく。

ウルザの発言に対して、タウノスは私は愚か者でいいからあなたの徒弟に戻りたい、カイラもあなたの妻に戻りたいのだ、と告げる。だがウルザは、私は徒弟はいらないし、タウノス制作の粘土象(Clay Statue)を評価して、君は徒弟ではなくもうマスターの腕前だ、と返した。

それで諦めるタウノスではなかった。では、あなたに徒弟はいらなくとも、後ろから支え、時に応じて苦言を呈する人間が必要だ、私ならできる。

その言葉にとうとうウルザは折れた。私には親友が必要だ、君がそうだった、妻にとってもそうだ。

そして、タウノスに促され、ウルザはカイラと許し合い、息子ハービンと初対面を果たすのだった。

粘土象

以上のエピソードだが、古いMTGファンにはあるカードのフレイバー・テキストが思い浮かぶだろう。それが粘土象(Clay Statue)だ。

Tawnos won fame as Urza’s greatest assistant. After he created these warriors, Urza ended his apprenticeship, promoting him directly to the rank of master.
タウノスは、もっともすぐれたウルザの弟子と称されていた。彼がこの戦士を作り上げたあと、ウルザは彼の徒弟期間が終わったことを告げ、ただちにマスターの称号を与えた。
引用:粘土象(Clay Statue)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

粘土象(Clay Statue)

粘土象(Clay Statue)
データベースGathererより引用

この粘土象(Clay Statue)はタウノスが制作した有名なアーティファクト・クリーチャーである。元の形状に復元する特殊な粘土状物質「原初の土(Primal Clay)」でフレームを覆った機械人形だ。そして3000年、4000年が経過した時代が舞台の作品でも言及されることがある歴史的発明品でもある(小説Time Streams小説ささやきの森など)。

さて、元々のフレイバー・テキストを確認すると、ウルザが腕前を認めてタウノスの徒弟期間が終わった、というだけのエピソードだったことが分かる。それをジェフ・グラブはウルザが生涯の親友と家族を手に入れる感動のシーンに昇華させている。そこに嵐雲のカラスを差し込んだのはジェフ・グラブ流のちょっとしたお遊びかもしれなかったが。



嵐雲のカラスの真面目な解説

記事の最後になるが、嵐雲のカラス(Storm Crow)はそもそもどういう次元の生物なのかを一応解説しておこう。

このカードは初出のカードセット「アライアンス」では、イラストとフレイバー・テキストが異なる2種類のバージョンで収録されていた。以下の通りになる。

バージョン1

“It tells you that the worst is coming. Do you listen?”
–Lovisa Coldeyes, Balduvian Chieftain
「最悪の事態が起こると告げているぞ。聞こえているか?」
–バルデュヴィアの酋長、冷眼のロヴィサ
引用:嵐雲のカラス(Storm Crow)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳

嵐雲のカラス(Storm Crow)

アライアンス初出時のバージョン1
嵐雲のカラス(Storm Crow)
データベースGathererより引用

フレイバー・テキストの発言者は、当時のバルデュヴィアの全部族を束ねる冷眼のロヴィサ(Lovisa Coldeyes)である。イラストを見ると、カラスの後方には暗雲の嵐が迫っている。

バージョン2

“Watch for it! Right on its tailfeathers will be a storm from your nightmares.”
–Arna Kennerüd, Skycaptain
「あれをよく見て!尾羽のちょうど後ろ、悪夢から生まれた嵐がやってくる。」
–飛空隊長、アーナ・ケネルッド
引用:嵐雲のカラス(Storm Crow)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳

嵐雲のカラス(Storm Crow)

アライアンス初出時のバージョン2
嵐雲のカラス(Storm Crow)
データベースGathererより引用

こちらのフレイバー・テキストは、巨大な猛禽類エイスサーに騎乗するキイェルドー国の飛空騎士隊長、アーナ・ケネルッドの言葉である。こちらのイラストでも暗雲の嵐が描かれている。まるで嵐雲のカラスの尾羽から嵐が生み出されているようにも見える。

テリシア地方の嵐雲のカラス

嵐雲のカラス(Storm Crow)はドミナリア次元のテリシア地方に確認できる漆黒の鳥類である。

氷河期終焉直後の時代(AR2934-2954年)には、嵐や最悪の事態の前触れと考えられている。イラストやフレイバー・テキストから察するに、カラスの尾羽から嵐が生み出されているようにも思わせるが、単純に嵐から逃げる姿がそう勘違いさせるだけかもしれない。

さらに昔、少なくともアンティキティー戦争時代AR0-63年)でも、嵐雲のカラスは不吉な前触れとみなされており、その後から災いが降りかかると言われていた。

小説The Eternal Iceでは、氷河期最後(AR2934年)の最終決戦前の時点で、「嵐雲のカラスのように外縁にぶら下がって、最終戦争が起こるのを待っている」という旨の表現が使われている。

さて、真面目な設定を確認できたところで、今回はここまで。

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