カード紹介:毒蛇製造器

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毒蛇製造器(Serpent Generator)カードセット「レジェンド」収録のアーティファクト・カード。

毒蛇製造器の解説

毒蛇製造器(Serpent Generator)

データベースGathererより引用

毒蛇製造器(Serpent Generator)はドミナリア次元で存在が確認できる装置である。

まるで調理用のソーセージ練り器(Sausage Grinder)のような形状と機能をしており、上から材料を入れると毒蛇がにゅるにゅると生み出される。

メカニズム的には、タップとマナの代償だけで毎ターン安定してトークンを生成可能である。同系カードの祖である蜂の巣(The Hive)に続くMTG史上2番目1である。さらにカードセット「レジェンド」の新システム「毒カウンター」が内蔵されており、当時の基準ではなかなか効率の良いカードであった。



毒蛇製造器のストーリー

毒蛇製造器はドミナリア次元を舞台にした4作品で登場している。小説2作品では脇役にすぎないが、残りの短編2作品は毒蛇製造器が主役級の連作となっている。

クレイトン・エマリィ小説Shattered Chainsスコット・マクゴフ小説Assassin’s Blade、そして、ブライアン・B・トムセン短編Because of a Twig…とその続編Unlikely Allies and Unjust Dessertsの4作である。

毒蛇製造器が登場する作品
作品名 種類 作者名 発行年
Shattered Chains 小説 クレイトン・エマリィ 1995
Because of a Twig… 短編2 ブライアン・B・トムセン 2001
Unlikely Allies and Unjust Desserts 短編3 2003
Assassin’s Blade 小説 スコット・マクゴフ 2002

これから順番に解説をしよう。

クレイトン・エマリィ!

クレイトン・エマリィ小説Shattered ChainsはMTG初の小説三部作、通称グリーンスリーヴズ三部作の2作目に当たる作品である。1995年発行のこの小説で、毒蛇製造器は初めて作品に登場した。

小説Shattered Chainsは、AR4074年4、ドミナリアのドメインズ地方ささやきの森(Whispering Woods)が舞台だ。

ささやきの森の主人公グリーンスリーヴズ(Greensleeves)には、仲間となった魔術の学徒たち5がいる。ティボルト(Tybalt)6クワン(Kwan)エルサ(Ertha)ダール(Daru)7である。学徒たちは、前作でグリーンスリーヴズが敵の魔術師タウザー(Towser)から入手した謎の道具や装置の機能を調査していた。

ティボルトは、そういった道具の中の1つ「大昔のソーセージ練り器8」の機能を解明した、と発表した。

ただのソーセージ練り器に見えるこの道具、もちろんソーセージも作れますが、そんなものじゃありません。塩漬け豚肉、鹿の脳、ゴボウの葉、土、杉の小枝、蝋燭、塩を一つまみ…こうして材料を入れますと…と実演するティボルト。

装置から排出されたドロッとしたもの9はグリーンスリーヴズの目の前で5フィート(1.5m)のガラガラヘビとなり、牙から毒を滴らせながら全身に力をぐっと溜めると彼女に飛び掛かった。慌てたクワンが間に割って入ると、ガラガラヘビはクワンの膝をがぶり!衝撃から立ち直ったティボルトは練り器本体を叩きつけガラガラヘビを始末する。

なんてことだ…これまで毒蛇なんて出来たことないのに。いつもは無害なガーターヘビ10だった。コショウの量が多すぎたのか…?と泣き言のティボルト。

…………。

ちなみにこのドタバタの後にクワンは治療テントに運ばれて解毒手当てを受けられている。



三人組と毒蛇製造器シリーズ

ブライアン・B・トムセンは、同じ登場人物と毒蛇製造器で2つの短編を執筆している。

2短編の主人公は共通している。通称、「醜悪三人組(The ugly triumvirate)」である。

醜悪三人組(The ugly triumvirate)
奇人ストローザー(Strother the Strange):いつも悪臭を放つ老ドワーフ男性。ガラクタの山から毒蛇製造器を見つけてくる。
ボーグ9世(Borg the Ninth):シヴの全オーク中でも高貴な血統を受け継ぐ者…と自称するオーク男性。
恐れのエラム(Elam the Awful):眠そうでやる気のないゴブリン男性。

Because of a Twig…

短編Because of a Twig…の舞台はドミナリア次元で最も赤マナが豊富な火山の土地シヴ(Shiv)である(時代設定は不明)。噴火、地震、溶岩、高熱の過酷な環境である。

シヴ(Shiv)

ドミナリア次元で最も赤マナが豊富な土地、シヴ(Shiv)
データベースGathererより引用

奇人ストローザー、ボーグ9世、恐れのエラム。彼ら醜悪三人組は、ずぼらでやる気もなく頭のめぐりも悪い負け犬集団である。三人組は数か月前、伝説のアーティファクト「ハニスの大釜(Hannis Cauldron)」をゴブリン王(Goblin King)の軍に売り払って徴兵を回避していた。しかし、もう金めのものはすっかり使い果たしてしまった。

再び徴発に訪れた部隊に捕まったボーグは、闇市場に伝手があるので軍に物資を流すから見逃してくれ、とその場しのぎの嘘でごまかした。一方、ストローザーはガラクタを漁り、今度は毒蛇製造器を掘り出した。昔の工匠、卑劣なるダーク(Dirk the Dastardly)11が設計したアーティファクトだ。ストローザーは毒蛇をシチューにして舌鼓を打つ。

そんな時、エラムは岩壁の裂け目の先に楽園コメティア(Cometia)を発見する。コメティアには豊かな緑に水と食料があった。火山と熱気の過酷な環境のシヴでは信じられない光景だったが、外界から隔絶したこの楽園はエルフや大喰らいのワーム12などの先住生物に守られていて手が出せない。

三人組は情報を持ち寄ると、楽園を奪い取ることにした。毒蛇製造器で作り出した毒蛇の大軍を解き放つのだ。装置の燃料であるマナさえ尽きなければいくらでも毒蛇は生み出せる。エルフたちを排除したら毒蛇製造器の本体を破壊してしまえば、生み出された毒蛇も消えるから問題はない。実は、本体が壊れたら生産物も壊れる、というのが卑劣なるダークの設計の特徴なのだ。

毒蛇製造器を死守すれば間違いない。三人組は勝利を確信した。

岩の裂け目から毒蛇が途切れることなく送り出されていく、コメティアの守備隊は殺しても尽きることのない蛇の波にのまれて壊滅していく。圧倒的な状況を眺めていた三人組は気が緩み、毒蛇のシチューを作って宴会を始める。

すると、そこに1匹の小さな小さな小枝ドラゴン(Twig Dragon)が飛んできて、毒蛇製造器の内部に突っ込んだ。

装置は黒煙を吹き出し大爆発。岩壁の裂け目は完全に埋まり、毒蛇も消えてしまった。

さらに軍の徴発隊がやってきた。約束の物資が払えないというならゾンビと戦う前線送りだ。三人組の前途は真っ暗だった。

※ コメティア側の解説はこちらの記事を参照のこと。

梢のドラゴン(Canopy Dragon)

小枝ドラゴン(Twig Dragon)というカードは存在しないが、
ジャムーラには梢のドラゴン(Canopy Dragon)はいる。
もしや親戚だろうか?
データベースGathererより引用

Unlikely Allies and Unjust Desserts

短編Unlikely Allies and Unjust Dessertsの舞台は作中で明言されていない。しかし、三人組の状況が前作と繋がっているため、おそらくシヴかシヴからそう遠くない場所であると考えられる。

ゾンビと戦う戦地に配属された奇人ストローザー、ボーグ9世、恐れのエラムら醜悪三人組。オークの司令官ロード・アグリネス(Lord Ugliness)13の傭兵旅団の下、上官の兵長が三人組の宿営地に報告を聞きにやってきては怒声を上げて帰っていくという日々であった。

そんな状況下でも三人組は相変わらずだ。ストローザーがまた別の毒蛇製造器を見つけてきた。今度は伝説の錬金術師ムッター・マクリー(Mutter Makree)14が設計した毒蛇製造器だ。

そして間の悪さも変わらない。毒蛇製造器に続いて、三人組は飢えた大悪魔、奈落の王(Lord of the Pit)と遭遇してしまう。この怪物の飢えを満たせなければ自分たちが食われてしまう…。

奈落の王(Lord of the Pit)とは…

奈落の王(Lord of the Pit)

奈落の王(Lord of the Pit)
データベースGathererより引用

奈落の王は毎ターン、クリーチャーの生け贄を要求して、生け贄がないとプレイヤーに反抗してくるデーモンである。常に飢えており召喚した魔術師に逆らう様はまさに悪魔だ。MTG黎明期から様々な作品で登場している人気のキャラクターである。残酷な大悪魔としても、今作のように食いしん坊として笑いも担当できるマルチプレイヤーだ。

取りあえず三人組は奈落の王に毒蛇を振舞った。うまいうまい、と平らげる奈落の王が言うには、子供の頃はこういう「ムッターのイルク(Mutter’s ilk)15」を食べて育ったのだ。この「イルク」というのは悪魔語で装置で生産された蛇のことだ。

昔を懐かしむ奈落の王に対して、三人組はこれ幸いと取引を持ち掛けた。敵軍のゾンビをやっつける奈落の王に毒蛇のご馳走を振舞うというものだ。それから毎日、奈落の王がゾンビを襲って三人組は見回りの上官に報告し、上官の帰った後にやってくる奈落の王に毒蛇を食べさせた。

そうして何日も経ち、ロード・アグリネスは直々に三人組をねぎらいにやってきた。ところが、いつもの見回りより時間が遅かった。そこで奈落の王と鉢合わせ。奈落の王はロード・アグリネスと下士官を諸共にぺろりと食べてしまった。清潔なオークも奈落の王の好物なのだ。さらに、食欲を抑えられないで、毒蛇製造器の本体もバクリと食べてしまった。本体は毒蛇以上に堪えられない美味さだ。子供の時もこうして食べてしまったのだという。

明日のご馳走も楽しみにしているぞと奈落の王は立ち去った。何も食べさせるものがなくなった三人組は、ロード・アグリネスの名を騙って旅団には宴を開く指示を出した。奈落の王が戻ってきたらお前達が食べられるんだ。

後のことは知ったことじゃない、自分たちの悪評が届いていないであろう土地へと三人組は尻尾を巻いて逃げ出した。



スコット・マクゴフ

毒蛇製造器が登場する最後の1作品は今までとは毛色が違う。他3作品の扱いが冗談交じりであったのに対し、スコット・マクゴフ小説Assassin’s Bladeでは真面目な戦略兵器として描写されているのだ。

Ramses Overdark

ラムセス・オーヴァーダーク(Ramses Overdark)
データベースGathererより引用

この小説はレジェンドサイクル2三部作の第一作目である。舞台はドミナリア次元マダラ地方。時代設定はAR38世紀頃16である。当時は謎の皇帝17が君臨するマダラ帝国が支配していた。帝国には3人の最高幹部がおり、ラムセス・オーヴァーダーク(Ramses Overdark)はその1人、帝国暗殺官の地位にあった。そして、最高幹部の1人帝国勇者の地位に就くテツオ・ウメザワ(Tetsuo Umezawa)がラムセスの政敵であった。

Tetsuo Umezawa

テツオ・ウメザワ(Tetsuo Umezawa)
データベースGathererより引用

この作品の毒蛇製造器はラムセスが所有しており、西のエデミ諸島(Edemi Islands)がマダラ帝国の支配に対して蜂起した事件で使われている。皇帝から蜂起の鎮圧を命じられたラムセスは、この機会にテツオ・ウメザワの排除も画策して陰謀を張り巡らした。ラムセスは、反乱の扇動者レディ・カレリア(Lady Caleria)の統治するアージェンティ(Argenti)の島にテツオを誘導することにまんまと成功した。

Lady Caleria

レディ・カレリア(Lady Caleria)
データベースGathererより引用

計画の切り札が毒蛇製造器だ。ラムセス配下のジラ・エリアン(Xia Arien)が、隠密行動でカレリアの城に侵入し毒蛇製造器を設置した。ラムセスは深い瞑想の儀式によってマダラの各地方から多量のマナを集めると、遠隔地から毒蛇製造器を起動する。4フィート(1.2m)の金属の蛇がするりするりと這い出てはカレリア城に散っていく。

人々の知らぬうちにカレリア城は毒蛇の大群がのたうつ地獄となっていた。ここで反乱首謀者のレディ・カレリアも邪魔者のテツオも全員始末するのだ。

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カードセット「レジェンド」関連のリスト

カード紹介:レジェンド
マジック・ザ・ギャザリング(MTG)のカードセット「レジェンド」収録のカードの中からピックアップしてストーリーや設定を解説する。
  1. レジェンドには同時にBoris Devilboonも収録されているので史上2番目のカードは2種類となる
  2. 短編集The Dragons of Magic収録
  3. 短編集The Monsters of Magic収録
  4. 作中に年代は出てこないが、過去にウィザーズ社のクリエイティヴ・スタッフがファンサイトで公開したデータから計算できる
  5. 原文は「students of magic」
  6. プレインズウォーカーの「ティボルト(Tibalt)」とは1文字違いの別人
  7. 後にドミナリアのオタリア大陸に同名の平原「ダール(Daru)」が設定されるが無関係である
  8. 原文「the erstwhile sausage grinder」
  9. 原文は「ooze」
  10. 原文「garter snake」
  11. ハンナ・バーベラのアニメキャラクター「Dick Dastardly」の捩りか?日本ではチキチキマシン猛レースの「ブラック魔王」として知られる。
  12. この作品では「Craw Wurm」ではなく「Craw Wyrm」と表記
  13. 「Ugliness」は「醜い」という意味。高貴な人への敬称に「Your Grace」があるが、この人物は「Your Ugliness」の敬称で呼ばれている。「Grace(優位・優雅・気品)」を反対の「Ugliness(醜い)」に置き換えた冗談だろう。
  14. 20世紀初頭のアメリカの歌「Mother Machree」の捩りか?
  15. 「ilk」は「同類・家族・同種」という意味だが、文脈から言って「mutter’s milk(母乳)」を捩ったダジャレだろう。
  16. この年代はヴォーソス間でも諸説ある。AR4000年代とする説も根強い。私は、ウルグローサ次元と神河次元の時代記述、レジェンドサイクル2三部作、時のらせんブロック小説三部作、ドミナリア期の公式ポッドキャストを総合的に考えてAR38世紀を採用する
  17. 正体はプレインズウォーカーのニコル・ボーラス(Nicol Bolas)