テトラバス(Tetravus)はカードセット「アンティキティー」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
前回記事が「3」に拘るトリスケリオン(Triskelion)だったので、今回は相棒の「4」に拘るテトラバスを紹介することにした。テトラバスとその系譜に連なるカード群を取り上げる。
テトラバスの解説
テトラバス(Tetravus)は兄弟戦争期のアルガイヴ連合軍に所属する飛行機械クリーチャーの1種である。
本体とテトラバイト(Tetravite)と呼ばれる3機の小型飛行機械の合計4部位で構成されている。テトラバイトは本体から分離でき、再合体も可能だ。
開発者は不明であるが、部分的に生物的なフォルムが認められることから、ウルザよりはタウノスが設計した可能性が高い。
カード・メカニズムと数字の「4」
このカードは「テトラ(Tetra)」つまり「4」という数字に拘ったカード・デザインである。
+1/+1カウンター3個が置かれた状態で戦場に出るが、カード自身とカウンター3個で合わせて「4機」の、1/1サイズの合体分離飛行メカを表現している。
合体分離のタイミングは自分のアップキープ時に制限され、テトラバイト・トークンには「エンチャントされない」という限定的な制約が課せられている。
MTG黎明期の不格好な実装が目につくものの、合体分離メカという雰囲気はちゃんと出ていた。
カードセット「アンティキティー」の同期には、テトラバスと同じように数字に拘ったデザインのカードが収録されていた。「4」に拘ったスー=チー(Su-Chi)と、「3」に拘ったトリスケリオン(Triskelion)である。特にトリスケリオンの方は、+1/+1カウンターを利用するメカニズムと、ウルザ陣営が開発した機械という点で、テトラバスに近いカードと言えた。
テトラバスのイラスト
イラストを見ると、テトラバスは海亀のヒレのような4枚の翼を持ち、先細りの長い尾を持つ。本体前面には大きな開口部があり、機体は前部・中部・後部で3色に分けられている。
そして、人間の目に似た部位が複数確認できる。本物の目のようなセンサー機能を有するのか用途は不明だ。
テトラバスの「目」は見えている限りで4つある。それらの位置は次の通りだ。本体前面に2つあり、開口部と合わせて顔に見える。本体中部と後部の側面にも目がそれぞれ1つずつある(反対の側面も同様と推定)。
ちなみに、本体後部の下側にも丸い穴が1つ確認できるが、これが同じ目なのかは不明瞭だ。
テトラバイト
テトラバイト(Tetravite)はテトラバスと分離合体する小型飛行メカである。
PCゲームの「MicroProse版マジック・ザ・ギャザリング」と、オンラインゲームの「マジック・オンライン(MTGO)」ではトークン・カードとして2種類のイラストで描かれていた。
前者のイラストは、テトラバスと同じくマーク・テディーン(Mark Tedin)が担当したが、分離状態ではなく単にテトラバスを上から見た別角度で描き直しただけであった。
後者はトーマス・M・バクサ(Thomas M. Baxa)が担当し、テトラバスから機体前部パーツが分離したかのような姿で描かれていた。全体が黒光りしておりテディーン版とは少し違う雰囲気を帯びていた。
テトラバスの登場ストーリー
テトラバスが登場したストーリー作品は小説The Brothers’ Warである。私の調べたところでは、他の作品では言及する記述すら見つけられなかった。
小説The Brothers’ Warでは、ウルザが率いるアルガイヴ連合軍所属の、4部位で構成された飛行クリーチャーと短く解説されていた。作中ではAR41年頃からのヨーティア奪還の戦いから登場し、AR63年のアルゴス島の最終決戦まで20年以上、実戦で使用され続けた。
作中には分離合体のギミックの描写はなく、戦闘場面すらもない。そもそも戦場に存在する以上の言及はされなかった。
余談だが、テトラバスに数年遅れて配備された機械仕掛けの鳥(Clockwork Avian)の方が活躍場面も多く、描写も詳細であった。何よりも大きな違いは、テトラバスには開発した理由も運用目的も語られなかったけれど、機械仕掛けの鳥には飛行型のファラジ製ドラゴン・エンジンへの対策という明確な目的が設定されていたところだ。
飛行型ドラゴン・エンジンが敵に出ると鳥の出番であり、機械鳥の群れとドラゴンの空中戦が描写される。テトラバスにはお呼びがかからないのだ。
テトラバスの関連カード
トリスケリオン
トリスケリオン(Triskelion)はカードセット「アンティキティー」初出のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
テトラバスと同期であり、同じように数字に拘ったデザインである。テトラバスは「4」でトリスケリオンは「3」だ。よくこの2種類は1組で扱われていた。トリスケリオンはテトラバスとはまた別系統の派生カードを生み出している。
トリスケリオンに関しては別記事を参照のこと(リンク)。
飛行機械隊
飛行機械隊(Thopter Squadron)はカードセット「エクソダス」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
AR4205年のラース次元に属している、3機の飛行機械で編成された部隊である。操縦者はラースのゴブリンであるモグたちだ。
カードのメカニズムはテトラバス直系に当たり、これが最初の派生カードとなる。テトラバスから4年を経て実装された機能は、シンプルに洗練されて格段にプレイしやすくなった。
飛行機械隊はテトラバスの合体分離メカというイメージは継承せずに、1/1の飛行機械が集まった部隊を1つの塊として表現している。部隊として集合したり、分散したりという新たなイメージだ。
ペンタバス
ペンタバス(Pentavus)はカードセット「ミラディン」初出のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
「ペンタ(Penta)」つまり「5」に拘ったテトラバスの派生カードだ。
ペンタバスは、兄弟戦争から4200年以上未来のミラディン次元で存在が確認されている。5機の小型飛行メカ「ペンタバイト(Pentavite)」が合体した大型機械である。ただし、テトラバスとは大きく異なり、合体時の状態では飛行を持っていない。
分離飛行メカのペンタバイトは、ペンタバスの胴体を輪切りにした非生物的な物体である。
公式記事Domo Arigato, Mr. Robotoによれば、当初はカードセット「ミラディン」ではテトラバスをそのまま収録する想定であったけれど、ぎこちない要素が少々多すぎたためリデザインすることになったという(9年前のMTG黎明期のデザインなので仕方がないと私も思う)。+1/+1カウンターを5個に変更したので、ペンタバスと命名したのは論理的帰結だ。
トリスケラバス
トリスケラバス(Triskelavus)はカードセット「時のらせん」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
カードセット「アンティキティー」のテトラバスとトリスケリオン(Triskelion)のコンセプトを融合させたカードとなっている。このカードの機能に関しては別の記事(リンク)で解説しているのでそちらを参照のこと。
トリスケラバスは、テトラバスと同じように各部で色が分かれている。胴体部、両翼、尾部で別の色だ。胴体は細長い両顎を上下に開いた生き物のようだ。両翼はそれぞれ熱帯魚に似たフォルムで、テトラバスのように目がある。尾部は、エビ類の尻尾にも、胴体部に噛みつく銀の魚にも見える。
トリスケラバスは、本体に3機の小型飛行メカ「トリスケラバイト(Triskelavite)」が合体している。テトラバスとは違い一旦分離すると本体への再合体はできない。
トリスケラバイト・トークンのイラストでは、分離して飛行する片翼が描かれている。こうして、左右の翼、胴体部、尾部の4機に分離するのだろう。それらのうち3機がトリスケラバイトだ。トリスケラバスの本体は胴体部かそれとも尾部か不明である。
ヘキサバス
ヘキサバス(Hexavus)はカードセット「兄弟戦争」統率者デッキ収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
「ヘキサ(Hexa)」つまり「6」に拘ったテトラバスの派生カードだ。
本体のパワー/タフネスは0/0だが+1/+1カウンターが6個置かれた状態で登場する。
小型飛行メカの分離合体とはまた違ったイメージでデザインされているようで、ヘキサバスの上の+1/+1カウンター1個を取り除く代わりに、自軍の別クリーチャーに「飛行カウンター」1個を与えて空を飛ばせる。また逆に、自分の別クリーチャーの上の何らかのカウンター1個を取り除いて、ヘキサバスに+1/+1カウンター1個を補充できる。
イラストの担当者はテトラバスを描いたマーク・テディーン(Mark Tedin)であり、28年振りに最新バージョンのテトラバス・タイプを描いてくれた。ヘキサバスはイラストを見ると、エイのような姿の巨大機械で、非常に長くて細い1本の尻尾がある。「6」の要素は機体下部から生えた6本の触手状の脚だ。
メカニズムとイラストから想像するに、6歩の脚はそれぞれが切り離し可能な飛行機械ユニットなのではないだろうか?合体時の脚状態が「+1/+1カウンター」で、分離して飛行ユニットに変形すると「飛行カウンター」扱いとなる。飛行カウンターを+1/+1カウンターとしてヘキサバスに戻せば、それが飛行ユニットの再合体を表すもの。こんな解釈はありじゃなかろうか。
さいごに
前回記事がトリスケリオンだったので、本記事では同期の相棒テトラバスを取り上げてまとめてみた。
トリスケリオンは「3」に拘ったデザインで、その直系は「2」のギザギザ・バイスケリオン、「1」のモノスケリオンと、数を減らす方向で派生カードを増やした。
テトラバスは「4」に拘っており、こちらの直系は「5」のペンタバス、そして「6」のヘキサバスと数を増やす方向に派生している。
その上、「3」のトリスケリオンと「4」のテトラバスの中間ともいえるのが、両者のコンセプトを融合させたトリスケラバスである。いわば「3.5」相当か。
1994年の「アンティキティー」から2022年の「兄弟戦争」の足掛け28年。こうして「1」から「6」まで数字に拘った系列カードが勢揃いした。次は「0」の「ナルスケリオン(Nullskelion)」と「7」の「ヘプタバス(Heptavus)」が登場することになるのであろうか?
では、今回はここまで。
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