ドミナリア地理:南西ジャムーラの地図作成おまけ

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南西ジャムーラ地域の地図作成の第5回目。(→第1回目記事第2回目記事第3回目記事第4回目記事

前回まででジャムーラの南西地域のみならず、ジャムーラ全土の地名を地図上に書き入れ終えた。だから、今回はちょっと毛色の違う内容を話したいと思う。

AR34-35世紀頃のジャムーラ地図 最終版
小説Johan付属地図を改造

南西ジャムーラの気候

ジャムーラの南西部一帯の情報は、ほとんどがレジェンドサイクル1小説三部作(Johan、Jedit、Hazezonの3作品)の記述に基づいている。この一帯を舞台としたカードセットや作品がこの三部作を除いて存在していないのだ(カードセット「テーロス還魂記」現在)。したがって、南西ジャムーラ一帯の設定情報はレジェンドサイクル1三部作の記述を頼るしかないということになる。

さて大前提を再確認したところで、今回はこの辺の気候について取り上げたい。

スクールヴィア周辺地域の気候

レジェンドサイクル1三部作の主要舞台はスクールヴィア砂漠(Desert of Sukurvia)とその周辺地域である。砂漠の西を流れるトロロン川(River Toloron)の都市国家や南の海岸の諸都市国家、そして砂漠の東にあるスカーウッド(Scarwood)だ。

赤丸で囲った地域がレジェンドサイクル1三部作の主要舞台
水色で囲んだ海岸線にヤーコイがあると考えられる

砂漠が広がる土地であるため、やはり暑く乾燥したイメージで描かれており、スカーウッドは密林(ジャングル)である。トロロン川流域やエフラヴァ(Efrava)のオアシスを除けば、内陸部は乾燥した砂漠地帯だ。全体的に亜熱帯か熱帯の雰囲気を醸し出している。

小説Hazezonによると、ヤーコイ(Yerkoy)は暑いという噂が出てくる。雑談の中での一言だが、ブライス(Bryce)や他の南部の都市に比べて暑い土地のようである。私は第2回記事で「ヤーコイはシャイバラ湾の東海岸沿いでかつスカーウッドより南のどこかに存在していると考えられる」と大まかな位置を推測した。上の地図を確認すると、ヤーコイは他の都市国家よりも南にあると確認できるだろう。



アルボリア周辺地域の気候

小説Jeditでは物語の舞台がアルボリア周辺に移る

レジェンドサイクル1三部作の二作目Jeditでは、物語の舞台は北のアルボリア(Arboria)の森とその近辺の海岸に移動する。ノスリ湾(Buzzard’s Bay)山羊道(Goat’s Walk)だ。

アルボリアはスクールヴィア周辺地域と大山脈地帯を挟んで北の土地である。気候はスクールヴィアの暑い砂漠地帯からより穏やかになる。植生も変わって、スカーウッドのジャングルと対照的に、アルボリアは別名「松の国(Pinelands)」つまり針葉樹林帯である。

小説Jeditでは、山羊道沿岸の水温と気温について言及がある。「北の地方の早秋は凍える夜を意味した。1」と記され、海水を被った登場人物たちは寒さに震えていた。

まとめると、アルボリア周辺地域はスクールヴィア周辺地域に比べて気候は穏やか、いやむしろ、やや寒冷なイメージで描かれている。

南海の気候

レジェンドサイクル1三部作では2度、アルバトロス小路(Albatross Alley)を越えたはるか南の島々へと来訪する。南西ジャムーラの静寂海(Sea of Serenity)の南方である。

小説Johanのウナワンナの火山島があるスカラベ諸島(Isles of the Scarabs)の描写によると、豊かな緑が生えており、熱帯の島(tropical islands)とも記されている。

三作目の小説Hazezonのココバー諸島(Cocobar Islands)にはオリーブの木が確認できる。

したがって、アルバトロス小路の南方は暑いことが分かる。



南西ジャムーラの不可解な気候

以上をまとめるとこうなる。

  • スクールヴィア周辺は乾燥して暑い砂漠と、ジャングルがある。全体的に亜熱帯か熱帯の雰囲気。
  • アルボリア周辺は針葉樹林帯があり、気候はやや寒冷なイメージ。
  • 静寂海のアルバトロス小路のはるか南方は暑い。

おざっぱに言えば気候は「北国は寒く、南国は暑い」となる。

これは明らかにおかしい。普通ではない。

ジャムーラは南半球にある

「北国は寒く、南国は暑い」…これが当たり前と感じるのは北半球だからだ。

ではドミナリア次元のジャムーラはどこにあるか?南半球である。

現代ドミナリア全体地図
公式サイト記事より引用

ドミナリア地図を確認すると一目瞭然。ジャムーラ大陸は南半球側にある。赤道はザルファー(Zhalfir)スークアタ(Suq’Ata)を通っており、この地域は熱帯である。

この位置関係でアルボリアがスクールヴィアより寒冷なのはかなり奇妙な状態である。それよりも異常なのは、静寂海を南に行けば南極大陸「氷結領域(Frozen Reaches)」に行きついてしまう。この南海に熱帯の島がある?不可解すぎる。

レジェンドサイクル1三部作の作者クレイトン・エマリィが北半球を想定して執筆していたとしか思えない。どうしてこんなことになってしまったんだろう?

クレイトン・エマリィ!

クレイトン・エマリィはMTGで6作品を上梓した作家である。そのうち半分がレジェンドサイクル1三部作だ。

クレイトン・エマリィのサイト記事によると、クレイトンはウィザーズ社から渡されたジャムーラの空白地図を独力で埋めたと分かる。レジェンドサイクル1三部作の元となったコミックブックJeditの情報を下敷きに、ウィザーズ社からの指示と厳しい制約に従って、この地域は創作されていったようだ。しかし、クレイトンが埋めきった地図だったが、ウィザーズ社は諸々の位置を変更してしまったために、作中の主人公たちの道程と一致させることは不可能になってしまったという。

また、小説執筆において、小説中に登場できるカードの数は制限され、カードセット「レジェンド」の伝説のクリーチャー・カードはほとんど使用許可が下りなかった。私も現物を所持しているが原作のコミックはページ数が短く、クライマックスのジェディットとヨハンの最後の対決で最悪の乱丁がある。これを原作に小説三部作に引き延ばして仕上げろと指示されたのだから、クレイトンが不満を持つ気持ちは分からないでもない。

クレイトンの言い分を信じるなら、彼が元々想定した地図と公式の地図では食い違いがあっても当然ということになる。これで地理上の不可解な位置関係は説明がつけられる。だが、クレイトンは空白のジャムーラ地図を渡されたとの証言から、ここがドミナリア次元のジャムーラ大陸であると初めから了承していたはずだ。ドミナリア球の大陸の位置は、レジェンドサイクル1三部作より前に(非公開だったが)確定していた。つまり、ジャムーラの南半球設定は当時すでに決定済みの事項だったのだ。

クレイトンが南半球だと知っていれば小説の気候描写は違っていたはずだ。…もしかすると、ジャムーラは南半球の大陸だという情報がクレイトンに伝わっていなかったのだろうか?それならばつじつまが合うが真相は闇。ちなみにクレイトン・エマリィは待遇の悪さなどを理由としてレジェンドサイクル1三部作を最後にウィザーズ社の執筆業から撤退している。



設定の辻褄を合わせてみる

ジャムーラの気候に関しては、小説創作時の何らかの不手際があったことは間違いない。では、制作の裏事情から離れて、この不可解な気候に設定的な説明ができるか考えてみたい。

ドミナリアの気候分布は基本的に現実世界の地球と同様に極地が低温で赤道が高温な気候である。ただし、MTGには魔法があり、魔力の源であるマナの在り様で各次元世界の在り様も変わるものだ。ならば気候を偏向させる何らかの魔法的な要因があるのではないか?

砂の海(Sea of Sand)

ラバイア次元の大砂丘のカード化
砂の海(Sea of Sand)
データベースGathererより引用

私に考え付くのはラバイア次元との次元門だ。悠久の昔からアラビア風の世界ラバイアと東ジャムーラ亜大陸ティヴァン砂漠は、次元を結ぶ門で接続されていて、何億トンもの熱砂をドミナリアにもたらした。当然、砂だけでは終わらずにラバイアの熱い大気も常に吹き込んでいたはずだ。すなわち、これがジャムーラの南部全体の気候を熱帯化させた原因なのだ。

AR4500年に次元門が消失したことから、60年後の現在ではジャムーラ南部の気温は下降しているという推測もまたできるだろう。

一つの仮説としては悪くないと思う。

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