墓所の変容(Graveyard Shift)はカードセット「ニューカペナの街角」収録のソーサリー・カードである。
「墓所の変容」と訳されているが、それはどういう意味なのか?そもそもこのカードは何を表しているのか?今回の記事ではその辺を探った。
墓所の変容の解説
“Up and at ‘em, buddy. We’ve got more work to do.”
「さあさあ、とっとと起きて仕事にかかれよ。やることはたんまりあるんだからな。」
引用:墓所の変容(Graveyard Shift)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
墓所の変容(Graveyard Shift)は、カードのメカニズム的には墓地のクリーチャー・カードを戦場に戻す、いわゆる「リアニメイト」の機能を持っている。
その上、「ニューカペナの街角」の青黒を特徴づける「あなたの墓地にマナ総量の異なるカードが5種類以上」の条件を満たすと、機能が向上して「瞬速」で唱えることができる。
黒のリアニメイト・カードは、死体をゾンビのようなアンデッドに変えて蘇らせる屍術として表現されていることが多い。このカードの場合はどんな設定が持たされているのだろうか?
墓所の変容のイラスト
ではカードのイラストからまず確認してみよう。
2人の人物が描かれている。地面に横たわったオーガ男性はどうやら遺体のようだ。もう1人はハンチング帽をかぶった短髪の人間で、オーガの頭を手で抱えて上から覗き込んでいる。こちらは女性のように見える。
人間の方は口から赤黒い渦巻くものを出しており、その渦はオーガの耳へと注ぎ込まれている。幻想的かつ不気味で、これが死体をアンデッドに変える魔法の視覚化であろう。
また2人の服装だが、オーガの着衣はオーバーオールに見えるし、ハンチング帽の人間は動きやすそうな格好をしている。「ニューカペナの街角」の各種カードや、公式サイトのストーリー作品と照らし合わせてみると、こういった姿の人々はカルダイヤ1の労働者に多く見られるものだ。
墓所の変容のカード名(日本語・中国語)
次はカード名の意味を確認しよう。
和訳製品名は「墓所の変容」だ。曖昧な言葉ではあるが、墓場で何らかの変化が起こる、との意味合いなので、死体がアンデッドとなって蘇る現象を指していると察することはできる。
他の言語を見ると、中国語版では「墳墓變幻」「坟墓变幻」と訳されていて、日本語版と同じ解釈をしている。
つまり、日本語と中国語は「墓所で起こったアンデッド化という変容」との解釈を採用しているのだが、これはカードデザインの意図に合致しているだろうか?いや、おそらく合致してはいない。
では、そう考える理由を説明していこう。
墓所の変容のカード名(英語)
カード名は英語では「Graveyard Shift」であるが、これは熟語で「深夜勤務」という意味になる。
「Graveyard」は「墓地」で「Shift」は「変化」の意味合いがある。ただし、この場合の「Shift」は「交代制勤務」「(仕事の)シフト」を指す。
「墓地」と「深夜」は静かで寒く不気味なイメージが共通していることから、真夜中のシフトが「Graveyard Shift」つまり「墓場シフト」と呼ばれるようになった。これが語源なのだそうだ。
ちなみに他の言語版を調べたところ、日本語と中国語を除く全てで「深夜勤務」か「墓場勤務」の意味合いに訳されていることも読み取れた。2
墓所の変容のフレイバー・テキスト
カード名が「深夜勤務」を指すことが確認できた。ではその視点からフレイバー・テキストを読んでみよう。
“Up and at ‘em, buddy. We’ve got more work to do.”
「さあさあ、とっとと起きて仕事にかかれよ。やることはたんまりあるんだからな。」
「Up and at ‘em」は「立ち上がってさっさと働け」くらいの慣用表現だ。「buddy」は「相棒・兄弟・お前・おい」みたいな意味。
だからこの原文は、荒っぽく声を掛けて仕事をさせる上司や親方のようなイメージを抱かせるものだ。和訳製品版の砕けた口調の翻訳文はその雰囲気がよく出ている。
このフレイバー・テキストは「真夜中にシフト交代した労働者に向けた発破の声掛け」として読める普通の文章なのだ。
墓所の変容の結論
以上を考慮してまとめる。
このカード名は本来は「深夜勤務」という意味がある。フレイバー・テキストでは、親方が深夜勤務に就いた労働者に発破をかけて仕事に追いやるような、荒っぽい雰囲気がある。イラストの2人はカルダイヤの労働者らしい格好をしており、文章の雰囲気に沿うものだ。
一方、カードのメカニズムは死者をアンデッドに変えるリアニメイトであるし、イラストでも魔法的な不気味な赤黒い渦を死体へと注入している様子が描かれている。
したがって、このカードは深夜の交代シフトに就く労働者に発破をかける一場面のように見せかけつつも、その実態は墓場で死の眠りについた者をアンデッドとして蘇らせ、使役する屍術魔法であったのだ。
むしろ「深夜勤務」より「墓場勤務」と言うのが相応しいかもしれない。
さいごに
ということで、今回の記事ここではおしまいとなる。
この記事は、本当はダブルミーニングのジョークが込められてるんだろうなぁ……と思いながら書きまとめたものだ。「深夜勤務」かと思いきや文字通り「墓場勤務」じゃないかよ!?みたいなちょっとした笑いの要素。これが制作者3の意図にあったのだろう。
和訳名も辞書的に「深夜勤務」にした方が面白かったんじゃないだろうか。まあ過ぎたことは仕方ないな。
では今回はここまで。
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