エルドレインの王権:ヘンゼルとグレーテル

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カードセット「エルドレインの王権」「ヘンゼルとグレーテル」モチーフのカードをまとめた。

小説「Throne of Eldraine: The Wildered Quest」



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ヘンゼルとグレーテルの解説

カードセット「エルドレインの王権」は騎士とおとぎ話をイメージした世界だ。その中には、おとぎ話をモチーフとしたカードが収録されている。前回は「ジャックと豆の木」を紹介したので、今回は「ヘンゼルとグレーテル」について調べてまとめてみた。

グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」では、飢餓にあえぐ貧しい木こりの夫婦が小さな子供のヘンゼルとグレーテル1を深い森の中に捨ててしまう。2人の子供は森の奥で魔女の住むお菓子の家に辿り着けたが、魔女はヘンゼルを肥え太らされて食べるつもりだった。グレーテルは機転を利かせ魔女をかまどに放り込んで殺し、2人は魔女の宝を持って家に帰り幸せに暮らした。

ヘンゼルとグレーテルの概要は大体このようなものだ(内容は版による違いがある。そのうえ、アレンジが加えられた様々なバージョンもある)。

小説のヘンゼルとグレーテル(ネタバレ注意)
小説「Throne of Eldraine: The Wildered Quest」には、ヘンゼルとグレーテルに相当するきょうだいは登場しない。いや少なくとも、小さな子供のきょうだいとしては出てこないといった方がよいか。というのは、主人公のローアン・ケンリス(Rowan Kenrith)とウィル・ケンリス(Will Kenrith)の双子がある意味では共通点があるのだ。
作中で2人は僻境の森を探索しているし、僻境の魔女と魔女の小屋とは深い関連を持っており、悪い魔法を使う者によって檻の中に拘束されたりもする。これらはヘンゼルとグレーテルでいえば、森をさまよう2人、魔女の住むお菓子の家に着いた2人、檻に入れられ太らされるヘンゼル、とそれぞれ似ている。



ヘンゼルとグレーテルをモチーフとするカード群

パンくずの道標(Trail of Crumbs)

パンくずの道標(Trail of Crumbs)

データベースGathererより引用

パンくずの道標(Trail of Crumbs)は2人の子供がパンくずを撒いて帰り道の目印を残している。カードを出したときに生成する食物トークンがパンくずを、食物トークンを生け贄に捧げた際にライブラリーを覗く効果が帰りの道標を辿っている表現しているのだろう。

ヘンゼルとグレーテルでは、最初に森に捨てられる際に白い小石を道に残してそれを目印に帰宅している。しかし、再び捨てられた時には小石の用意がなかったので、パンくずを代わりに撒いていった。このパンくずは鳥に食べられてしまったために2人は家に帰りつけずに森の奥をさまようことになり、遂にはお菓子の家へと辿り着く。

MTG版ではパンくずがきちんと帰り道へと導いているようだ。…しかし、そうなるとお菓子の家に行かずに帰宅できてしまって、そこで物語が終わってしまう気がしないでもない。原作の1回目の小石の道標と2回目の失敗したパンくずとが合わさった、いいとこどりのカードかもしれない。

お菓子の小屋(Gingerbread Cabin)

お菓子の小屋(Gingerbread Cabin)

データベースGathererより引用

お菓子の小屋(Gingerbread Cabin)は、ヘンゼルとグレーテルに登場する森のお菓子の家をカード化したものだ。だから、このカードは土地タイプが「森」であり、食物トークンを出す機能を持っている。

知りたがりの二人(Curious Pair)

“It’s gingerbread, like Mother makes. What is there to be afraid of?”
「これはジンジャーブレッドだよ。お母さんが作るのと同じだ。何も怖がることなんてないよ。」
引用:知りたがりの二人(Curious Pair)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

知りたがりの二人(Curious Pair)

データベースGathererより引用

このカードではMTG版のヘンゼルとグレーテルがお菓子の家の飾りを頬張っている。

出来事の方の「分かち合い(Treats to Share)」は食物トークンを生成する。クリーチャーとしての「知りたがりの二人(Curious Pair)」は人間の農民である。つまり、前者はお菓子の家のお菓子を、後者はヘンゼルとグレーテルを表している。

パイ包み(Bake into a Pie)

“My secret ingredient? Well, I can’t tell you that. But here’s a hint. It’s not love.”
「隠し味?それは教えられないね。でもヒントをあげよう。愛情じゃあない。」
引用:パイ包み(Bake into a Pie)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

パイ包み(Bake into a Pie)

データベースGathererより引用

パイ包み(Bake into a Pie)は黒のクリーチャー除去カードで、食物トークンのおまけがついてくる。カード名とフレイバー・テキスト、イラストから、対象をパイに包んで調理してしまうカードであることがはっきりと示されている。

おとぎ話ではカニバリズム的な描写はしばしば目にするものである。「ジャックと豆の木」の巨人は人食いであるし、「ヘンゼルとグレーテル」では魔女は子供を肥え太らせて食べようとした(反撃されて逆にかまどに突き入れられて焼け死んでしまう)。このカード自身は必ずしもヘンゼルとグレーテルに直接結びつけられるものではないが、そういった関連でここで取り上げた。

魔女のかまど(Witch’s Oven)

The wafting smells are both scrumptious and suspicious.
漂ってくる香りは、おいしそうでもあり、怪しげでもあった。
引用:魔女のかまど(Witch’s Oven)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

魔女のかまど(Witch's Oven)

データベースGathererより引用

公式記事Eldraine Check, Part 3によると、魔女のかまど(Witch’s Oven)は元々のデザインでは、ヘンゼルとグレーテルのように魔女を押し込んで殺してしまうような「殺すカード(a kill card)」であった。ただそれでは少々恐ろしすぎたので、クリーチャーを食物トークンに換えるように修正された。これでもまだ少し恐ろしいものだが、グリム童話はそもそもダークなのだ。2

ということで、このカードは魔女が住むお菓子の家のかまど(オーブン)をイメージしたものと言っていいだろう。人食い魔女は子供を調理して食べようとしたが、逆にかまどの中に押し入れられて焼け死んでしまう。

余談:和訳されたヘンゼルとグレーテルでは「暖炉」に魔女を放り込むバージョンが見つかる。調理器具としての「かまど」でなく、暖房器具の「暖炉」になっているのはなぜだろうか?と考える。推測だが、ドイツ語の「ofen」は日本語の「かまど(調理器具)」と「暖炉(暖房器具)」の両方の意味を含んでいるため、翻訳の解釈にブレが生じたのだろう。ちなみに作中で魔女は「ofen」の中にグレーテルを入れて調理しようとするので、暖房器具の「暖炉」は訳としてふさわしくない。

オークヘイムのレインジャー(Oakhame Ranger)

オークヘイムのレインジャー(Oakhame Ranger)

データベースGathererより引用

オークヘイムのレインジャー(Oakhame Ranger)は僻境のエルフで、巨大狐に騎乗する騎士である。出来事の方の「連れ戻し(Bring Back)」では人間トークン2つを生み出す。

グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」ではお菓子の家から2人だけで家路についた。ところが、MTG版では2人を救出する騎士が現れる。それがこのカードだ。

出来事の「連れ戻し」で2人の子供が登場し、この騎士が連れ帰るのだ。イラストのエルフの鞍の後ろには2人の子供が乗っているのが分かるだろう。

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  1. ヘンゼルが男でグレーテルが女。きょうだいではあるが、どちらが年上で年下かは不明。日本では兄妹と解釈する例が散見される
  2. この記事の公式和訳エルドレイン・チェック その3は、原文のニュアンスをところどころ間違って捉えている。例えば、殺すカードから食物トークン生成に修正した件を受けて「Still a little gruesome(それでもまだ少し恐ろしいが)」という原文を、「少しばかり恐ろしい話ではあるが」と全体の総括のように訳しており、緩和したがそれでも怖いというニュアンスが完全に欠落している。