カード紹介:地の毒

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地の毒(Psychic Venom)カードセット「リミテッドエディション(基本セット第1版)」収録のエンチャント・カードである。つまり、MTG最古のカードの1つだ。

このカードは何を意味している魔法なのだろうか?今回は、地の毒をストーリー作品や世界観設定の面から読み解いていく。

地の毒の解説

地の毒(Psychic Venom)

地の毒(Psychic Venom)
データベースGathererより引用

地の毒(Psychic Venom)は土地カードにつけるエンチャント・カードで、その土地がタップするたびに土地のコントローラーに2点のダメージを与える。したがって、大抵は対戦相手の土地につけて、その土地からマナを出ためにタップするのをためらわせる抑止効果を見込んで用いられるものだ。

以上のように、このカードはゲーム上のメカニズムや狙いは分かりやすい。だがその一方で、MTGの世界感的にはどういった魔法を表しているのかがはっきりしない。和訳名「地の毒」のように土地に毒を撒いているのだろうか?イラストの毒蛇と意味深な一対の目はどんな意味合いがあるのか?

小説やコミックなどストーリー作品を見渡してみたが、「地の毒(Psychic Venom)」がそのまま登場している作品は見つからなかった。読解は少々難しそうだ。



地の毒のカード名

まずカード名の確認から始める。

和訳製品版のカード名は「地の毒」だが、原文にそんな意味はない。

「土地に毒を与える」と言われれば直感的に正しく思えてしまうけれど、和訳名は直訳ではない。おそらくはカードのメカニズム的な要素を汲み取った造語なのだ。したがって、和訳名の「地の毒」は正しい解釈の妨げにしかならないので、忘れることにする。

カード名原文は「Psychic Venom」で、「Psychic」は「精神的な・超能力の」、「Venom」は「毒」を意味している。つまり本来は「精神の毒」や「超能力的な毒」といった意味合いになる。

これでカード名の意味が確認できた。では、改めて土地に関わる「精神毒(Psychic Venom)」とは何なのかを探っていこう。

土地と精神リンク

呪文の鞄(Spell Satchel)

時代も次元も異なるが呪文の入った小鞄を表すカード
呪文の鞄(Spell Satchel)
データベースGathererより引用

土地の「精神毒(Psychic Venom)」とは何か?

ここで「土地」と「Psychic」の2語に注目すると、私にはヒントとなる記述に心当たりがあった。MTG初の長編小説アリーナ 魔法の闘技場である。

小説アリーナ 魔法の闘技場作中では、闘士1と呼ばれる魔術師は呪文の小鞄2の中に「小分けにした土くれ」と「護符3」を携帯している。「土くれ」はゲーム上の「土地カード」に、「護符」は「呪文カード」に相当している。

この「土くれ」は、闘士が魔法の源である土地との間に「精神的なリンク(Psychic Link)」を結ぶ補助となる、と解説されている。つまり、遠隔の土地からマナを引き出して利用するには、術者と土地の間にリンクが必要であり、それは「精神的・超能力的(Psychic)」なつながりだというのだ。

土地との精神リンク

マナ結合(Manabond)

マナ結合(Manabond)
データベースGathererより引用

小説アリーナ 魔法の闘技場の「土地との精神リンク」は一般化して扱ってよい設定なのだろうか?

調べてみると、各種ストーリー作品や世界観解説記事においては、土地とのリンクとか、マナのリンク、マナとの結合4、あるいは抽象的に「土地の記憶」などと表現されていた。

土地カードはプレイヤーが扱うマナを生み出す土地との結びつき(リンク)を示しており、小説アリーナ 魔法の闘技場以後もこの土地とのリンクは(いくぶん表現は変えているものの)何度も言及されていると判明した。

ならば、土地カードからマナを引き出すための「精神リンク」はMTG世界共通の性質と言っても問題なさそうだ。これを利用すれば、「精神毒(Psychic Venom)」にうまく説明がつけられる。

土地の精神毒とは

では判断材料が揃ったので、「地の毒」こと「Psychic Venom」がどのようなカードなのかを読み解こう。

まず、カード名は「精神毒・超能力的な毒」という意味合いだ(「地の毒」は忘れる)。

次に、設定ではプレイヤーは土地カードとリンクを結んでおり、タップしてマナを引き出すことができる。これは「精神的・超能力的なリンク」だ。

そして、「Psychic Venom」はメカニズム上は土地につけるエンチャント・カードであり、その土地がタップするたびにプレイヤーに2点のダメージを与える。このダメージが「毒」であろう。

以上を踏まえると、この「Psychic Venom」というカードはプレイヤーと土地の間の「精神リンク」を蝕む「毒」といった意味合いが持たされている、と考えられる。毒に侵された精神リンクを経由して土地からマナを引き出せばダメージを受けるのである。

これが私の結論だ。



地の毒のイラスト

地の毒(Psychic Venom)

地の毒(Psychic Venom)
データベースGathererより引用

カードの読み解きは終わった。後回しにしていたイラストの方を考えてみたい。

先述したが、地の毒はストーリー作品への登場は確認できなかった。もちろん、見つめる目と毒蛇の組み合わせの描写も見当たらなかった。

私の考えでは、このカードのイラストは(身も蓋もないが)カード名の「Psychic Venom」の2単語をそのまま描いたものだろう。

こちらを真正面から見つめる両眼は「Psychic」つまり「精神的・超能力的」なイメージ。そして、牙を剥く毒蛇は「Venom」すなわち「毒」だ。

想像だが、カードのイラスト発注は「Psychic Venom」というカード名だけで、後はイラストレイターの自由な発想にお任せしたんじゃなかろうか?土地とのリンクを結んでマナを出す云々…という設定的な側面から切り込んだイラストとはちょっと思えないのだ。







ネタが尽きた。では、今回はここまで。

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  1. 原文「fighter」
  2. 原文「Spell Satchel」
  3. 原文「Amulet」。邦訳小説では「護符」とも訳されているが、ほぼ大部分で「呪符」となっている。本サイトでは原語により近い「護符」を採用する
  4. 「mana bond」出典