カードセット「兄弟戦争」の「注目のストーリー」カードを並べて、ストーリーの流れを初めから結末までを紹介したい。
「その2」である本記事では「過去時間軸」編の続きからである。
※ 本記事での「注目のストーリー」の順番は本サイトの独自の判断で並べたものである。ウィザーズ公式のものではないのであらかじめ注意されたい。
過去時間軸ストーリー
カードセット「兄弟戦争」の過去時間軸の「注目のストーリー」カードは、アンティキティー戦争期から暗黒時代初期に渡る兄弟戦争と戦後の余波を描くものだ。
ほとんどが小説The Brothers’ Warに基づいた名場面であり、小説から努めて忠実に抜き出している。
機械力
The Warlord decreed that only someone who could move the statue would be strong enough to marry the princess. So Urza moved it.
大将軍は、この像を動かせるほどの強き者のみに愛娘を娶らせると宣言した。そこでウルザは像を動かした。
引用:機械力(Machine Over Matter)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
機械力(Machine Over Matter)は、ウルザが自動人形を制作して、ヨーティア国の姫カイラ・ビン=クルーグの婿選びの試験を見事に突破した場面である。
ヨーティアの王でありカイラの父である大将軍(The Warlord)は、王女の婿選びの公開試験を実施したのだ。大将軍は翡翠の像を動かせるほどの強い男を望んだものの、ウルザは機械の自動人形の手で持ち上げてしまった。この頓智は本意ではなかったが、優れた工匠術は国に必要だと頭を切り替えて、ウルザを婿と認めたのだった。
ウルザの目的は、名高い美姫でもなく、ヨーティアの権力でもなく、褒美として授かる宝の山でもなく、宝の中にひっそり埋もれたスランの書物「ジェイラム秘本(Jalum Tome)」なのであった。婚礼の祭典が終わった夜は新婦をほったらかしにしてその本を読み漁ったのだった。
ウルザの工匠知識を得たヨーティアは羽ばたき飛行機械をはじめとする機械の生産や新たな発明品で大いに栄えることになった。ウルザは工匠長(The Chief Artificer)の称号を授かった。
余談。カード名の「Machine Over Matter」は「mind over matter」という成句を捩った命名だ。元の成句は「物体(肉体)的な問題を克服できる精神力(意志力)」くらいの含みがあるが、「精神力(mind)」の部分を「機械(machine)」に置き替えたことで、機械の力で回答を示したウルザの姿に当てはまるようになっている。過去には「精神力(Mind Over Matter)」というウルザに関係する青の有名カードが存在しているため、当然そちらを意識もしているだろう。
鋼と油の夢
Mishra’s nightmares of Phyrexia rang with screams of agony and groans of twisted metal. The sounds stayed with him long after he awoke.
ミシュラはファイレクシアの悪夢を見た。悪夢の中では、苦悶の悲鳴と歪んだ金属の軋む音が鳴り渡っていた。その残響は目が覚めてからずっと、彼の心に残っていた。
引用:鋼と油の夢(Dreams of Steel and Oil)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
トカシアのキャンプから失踪したミシュラは闇雲に大砂漠をコイロス目指して進んでいた所、ファラジのスワルディ族に捕縛され、奴隷として肉体労働を課せられていた。
落ちぶれたミシュラは偶然にもハジャール(Hajar)に発見される。ハジャールはトカシアの発掘キャンプでミシュラと友情を育んだファラジの青年だ。友を救うため、ハジャールはスワルディ族を統治する長王にミシュラの有用性を訴えた。ミシュラは長王に言語学知識や計算力を示したことで認められ、長王の息子の家庭教師に命じられた。肉体労働から自由になり待遇が劇的に改善した。
長王の息子は怠惰かつ傲慢で勉強の意欲も無く、暴力的で手の施しようのない生徒であった。ところが、意外にも冒険譚や英雄譚には強い興味を示し、ミシュラはそこを切り口として言語学と歴史を教えていった。そしてある夜、ミシュラは奇妙な夢を見る。それはファイレクシアの様々なイメージであり、鋼と油の夢(Dreams of Steel and Oil)のカードが表現する場面であった。
ミシュラが悪夢から目覚めると、外では突如出現したドラゴン・エンジンがスワルディの人々を殺し、宿営地を破壊していたのだった。
ミシュラの支配
Power radiated from the Weakstone, binding the dragon engine to Mishra’s command.
ウィークストーンから力が放射され、ドラゴン・エンジンはミシュラの命令に束縛された。
引用:ミシュラの支配(Mishra’s Domination)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
スワルディ族の宿営地を突然襲ったドラゴン・エンジンを、ミシュラはウィークストーンで制御下に置いた。ミシュラの支配(Mishra’s Domination)の場面である。
長王はドラゴン・エンジンに殺されたため、息子が新たな長王となった。家庭教師ミシュラは奴隷階級から解放されて、新長王の側近たる魔術師の地位に就いたのだった。新長王はファラジを統一した帝国の樹立を夢想しており、ミシュラはその意に応えるため何年間も奔走することになるのだった。
敵意ある交渉
敵意ある交渉(Hostile Negotiations)はAR26年に起こった出来事である。ここに至った経緯は次の通りだ。
ヨーティアは工匠長ウルザを手にしたことで、アルガイヴをも超える新型の羽ばたき飛行機械の開発に成功した。大将軍ら枢密院は羽ばたき飛行機械の戦隊を組織して、仇敵ファラジの中枢を皆殺しにする計略を企んだ。ウルザやカイラ・ビン=クルーグは何も知らされていなかった。
AR26年、ヨーティアとファラジの領土問題を話し合う和平会議を、中立国コーリスの街コーリンダで開くこととなった。これはヨーティアの大将軍の呼びかけで開催されたもので、もちろん罠であった。会議に参加したファラジ帝国の長王とその取り巻きに対して、羽ばたき飛行機械による奇襲爆撃を仕掛ける計画だったのだ。
カイラは父王らの動きに危険な違和感を察知していた。敵視していたファラジに対する態度を急に軟化させて和平交渉をしようというのだから。カイラはウルザに相談したものの、人は変わるものだ、と流されてしまった。
かくしてコーリンダの和平会議の場は、羽ばたき飛行機械の大爆撃によるファラジ人虐殺の地獄と化したのだった。
苦々しい再会
The peace summit proved the grudge between Urza and Mishra could end only in blood.
和平交渉で判明したのは、ウルザとミシュラの怨恨は流血沙汰にしかならないということだった。
引用:苦々しい再会(Bitter Reunion)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
苦々しい再会(Bitter Reunion)が描く場面は、コーリンダの和平会議で再会した兄弟を「象徴的に」表現したものだ。2人はヨーティアとファラジの両国に長年蟠っていた確執の中に絡め取られてしまったのだ。
コーリンダで6年振りに再会した兄弟は、互いがヨーティアとファラジの要職に就いていることに驚きつつも、どこか苦い懐かしさを覚えていた。ウルザは自分の工廠と弟子が何人もいることを自慢げに語ると、この数年ファラジの全部族統一にかかり切りだったミシュラは苛立ちを感じもした。少なくともこの時点では双方とも、最後に別れた時のような激しい敵意までは抱いていなかったのだ。
ところが、ヨーティアの大将軍が羽ばたき飛行機械の爆撃を命令するや事態は一変した。卑劣な裏切り行為に激怒した長王は素早く大将軍に飛び掛かり刺し殺してしまった。状況についていけないウルザは何とか弟に弁明しようとするが、ミシュラはそんなことを言ってまた裏切るつもりかと怒声を上げた。
拮抗する兄弟
和平会談は戦場へと一変した。ウルザは大将軍を刺殺した長王を、自分の人型自動機械で取り押さえた。それに対して、ミシュラはウィークストーンを用いて自動人形を無力化しようとした。
拮抗する兄弟(Sibling Rivalry)が描いているのはこの場面だ。ウルザはマイトストーンで自動人形を制御するが、ミシュラはウィークストーンを用いて妨害したのだ。自動人形はこの綱引きで損壊してしまった。
コーリンダの混乱の中、ミシュラは長王を連れて無事に脱出できたものの、会議場に同伴したファラジ人の多くが助からなかった。裏切りと虐殺にファラジ帝国はヨーティアを憎悪した。
一方、ウルザが大将軍の遺体と破壊された自動人形を載せた羽ばたき飛行機械でクルーグに帰還するや、カリスマ指導者を殺されたヨーティア国民はファラジに報復を叫び、ウルザの自動人形を「報復者(アヴェンジャー)」と称えたのだった。
こうして両国は止められない戦争状態に突入したのだ。これが本当の兄弟戦争の始まりかも知れなかった。
クルーグの陥落
As retaliation for the Warlord’s ambush at the peace summit, Mishra leveled Yotia’s Capital city.
大将軍が仕掛けた和平交渉での不意打ちに対する報復として、ミシュラはヨーティアの首都を更地に変えた。
引用:クルーグの陥落(The Fall of Kroog)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
クルーグの陥落(The Fall of Kroog)はAR28年春の出来事だ。ファラジ帝国はコーリンダでの裏切りと虐殺に対する報復として、ヨーティアの首都クルーグを攻め落として廃墟に変えた。
クルーグ攻撃軍を指揮したのは長王だったが、ここに至るまでの段取りはミシュラの計略であった。
コーリンダ虐殺の同年冬に、ミシュラはアシュノッドと共にコイロスの洞窟で追加戦力を補充したのだ。ヨーティアの飛行機械隊にはドラゴン・エンジン1体では対抗し切れないとの判断である。このとき2人は次元を超えてファイレクシア次元を来訪することとなり、新たなドラゴン・エンジンを3体も手に入れることができた。
そして、ミシュラはもう1度和平会議をやり直そうと持ち掛け、クルーグにファラジ使節団として訪れた。コーリンダで見たドラゴン・エンジン1体も一緒である。だがそもそも和平するつもりなどなく、その夜にミシュラは騒動を起こして砂漠へと逃げていった。ウルザは羽ばたき飛行機械隊の主力を率いてミシュラを追った。これは陽動作戦であった。
こうしてヨーティアの主力がミシュラの捜索に首都を離れて4か月が経過したところで、長王の軍がマルダン川を渡河して急襲し陥落させたのだ。ドラゴン・エンジンはミシュラと砂漠に居るはずだったが、ヨーティアが知らない隠し玉の3体が投入されており、戦いは圧倒的であった。
クルーグ戦では長王が戦死したことで、ミシュラが帝国の実権を握った。首都を失ったヨーティアはファラジ帝国に蹂躙され占領下に置かれ、生存者は散り散りになった。ウルザは故郷アルガイヴに身を寄せて、ファラジ帝国の脅威に備えた監視塔の建設、羽ばたき飛行機械や人型自動機械兵の生産など態勢を整えていくのだった。
ファラジのドラゴン・エンジン
ファラジのドラゴン・エンジン(Fallaji Dragon Engine)は、オリジナルのドラゴン・エンジンを基にして研究し、ミシュラ陣営が開発した純正ファラジ製のドラゴン型自動機械である。
カードでは試作品の段階から飛行能力を有しているが、実際のファラジ製ドラゴン・エンジン第一世代は空は飛べず、飛行可能な発展型は何年も後になる。
小説The Brothers’ Warによると、AR29年に新たに建設したミシュラの工廠内で開発が始まった。前年のクルーグの戦いでは、ドラゴン・エンジン1体が著しく損傷してしまったため、それを分解して研究し、手持ちの技術と素材で模倣することでファラジ製のドラゴン・エンジンの生産が開始された。AR43年には、飛行型で強力な火炎ブレスを搭載したドラゴン・エンジンが実戦配備されていた。
こうして自国製ドラゴン・エンジンを手に入れ、ファラジ帝国軍の機械化が推し進められていく。
さいごに
今回は兄弟戦争の本格的な勃発まで話を進められた。
では、今回はここまで。
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