トバイアス・アンドリオン(Tobias Andrion)はカードセット「レジェンド」で初登場した伝説のクリーチャー・カードである。
トバイアス・アンドリオンは、フレイバー・テキストで語られたシオールタン帝国(Sheoltun Empire)の軍事行政官として、ドミナリア次元の歴史に(特にベナリアに)影響を与えた人物である。
初出から28年。カードセット「団結のドミナリア」において、「語り継がれる伝説1」という特別枠でリデザインされ、悪運尽きた征服者、トバイアス(Tobias, Doomed Conqueror)という新バージョンで収録された。
本記事では、ドミナリアの歴史に名を刻んだ偉人トバイアス・アンドリオンを紹介する。
トバイアス・アンドリオンの解説
Administrator of the military state of Sheoltun, Tobias is the military right arm of the empire and the figurehead of its freedom.
軍事国家シオールタンの行政官、トバイアス・アンドリオンは、帝国の軍事の要にして、名のみの自由の看板でもある。
引用:トバイアス・アンドリオン(Tobias Andrion)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
トバイアス・アンドリオン(Tobias Andrion)はドミナリア次元の人間男性で、シオールタン帝国(Sheoltun Empire)において最も高名な軍事行政官であった。
シオールタン帝国初期の軍事作戦において多大な貢献を果たし、当時の香辛料諸島で長年に渡り暴虐を尽くしていた伝説的な海賊団たちを撲滅せしめた。トバイアスの軍事作戦は大胆不敵であり、30年間に渡って海賊を追い詰め、極秘の隠し砦の数々さえも潰して行ったのである。
設定集The Art of Magic: The Gathering – Dominariaによれば、シオールタン帝国は氷河期に複数の商業船団が提携したのが発祥である。2ゆえに、トバイアス・アンドリオンは氷河期中の人物と考えられる。
ただし、氷河期中は商業船団の提携に過ぎず、その次の洪水時代(AR2934-3285年)になってから帝国が成立したという意味でも解釈は可能ではあるので、その場合はトバイアスは洪水時代の人物となる。
トバイアス・アンドリオンの死
海賊退治に名を馳せたトバイアスであったが、悪運の尽きる時が来た。海賊船「波の落とし子号(Wavespawn)」の待ち伏せに遭って命を落としたのである。
その死の状況について様々に語られているが、死因は魔法の稲妻であるという点では概ね一致している。
死の舞踏伝説
トバイアス・アンドリオンの死に関する伝説の中にはおどろおどろしいものもある。
それによると、トバイアスの死体は即座にリアニメイト(アンデッドとして復活)して、海の底に沈んだ乗組員たちの亡骸の上で踊り始めた。しかもその死の舞踏は今日まで続いている、というのである。
語り継がれるその名
We’ve been learning history until my mind feels as if it’s been danced on by the ghost of Tobias Andrion himself!
私たちは歴史を学んでいるところです。それはもうトバイアス・アンドリオンの幽霊と踊らされてるみたいな気分になるまで!
引用:公式記事Encyclopedia Dominiaの掌編The Hero’s Taleから、あるベナリアの勇士見習いが母に宛てた手紙の抜粋
上が英語原文、下が私家訳
トバイアスの偉業はシオールタン帝国が滅んでも、後世のベナリアにおいて語り継がれている。
歴史的な海賊退治しかり、死の舞踏伝説しかり、アンドリオン湾(Andrion Bay)という地名しかり、である。
「トバイアス・アンドリオンの幽霊と踊らされてるみたいな気分」というような言い回しが手紙に出てくるほどに親しまれているのだ。
悪運尽きた征服者、トバイアス
Tobias spent decades tormenting pirates on the open sea and decades more dancing lifelessly beneath it.
大海原で何十年もトバイアスは海賊たちを苦しめ続け、息絶えてからそこでさらに何十年も踊り続けた。
引用:悪運尽きた征服者、トバイアス(Tobias, Doomed Conqueror)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
悪運尽きた征服者、トバイアス(Tobias, Doomed Conqueror)はカードセット「団結のドミナリア」でリデザインされた新バージョンである。
イラストは船上で剣を振るうトバイアス・アンドリオンが描かれている。その髪や髭は(以前のカード・イラストとは異なり)濃い茶色をしており、佇まいは若々しく壮健だ。30年間の海賊退治が未だ途上にある場面だと想像がつく。
カード名やカードのメカニズム、フレイバー・テキストを見ると、このリデザイン版カードはトバイアス・アンドリオンの死の舞踏伝説を組み込んだものだと分かるだろう。彼が命を落とすとゾンビとなって蘇り、死の舞踏を始めるのだ。ただし、伝説と違うのは、このカードではトバイアス本人だけでなく一緒に死んだ仲間たちも一緒に蘇るのである。
また、タフネスが2点であるのは、伝説通りに稲妻の3点ダメージで確実に命を落とすための数値設定だろう。なぜ3点ピッタリにしなかったのか個人的には疑問だったのだが、稲妻の後継となるショックなどの2点ダメージの電撃系呪文でもしっかり殺せるようにしたのかもしれない。
悪運尽きた征服者、トバイアスのフレイバー・テキスト
Tobias spent decades tormenting pirates on the open sea and decades more dancing lifelessly beneath it.
大海原で何十年もトバイアスは海賊たちを苦しめ続け、息絶えてからそこでさらに何十年も踊り続けた。
悪運尽きた征服者、トバイアスのフレイバー・テキストは、またもおかしな翻訳がされている。この文章はもちろんトバイアスの海賊退治の経歴と、死の舞踏伝説を語っているものだ。
公式和訳版において「そこで」となっている部分が、トバイアスの物語的にも文法的にも間違っている。原文は「beneath it」つまり「その下で」という意味合いだ。
では、どこの下なのか?というと、文章の前に出てくる「大海原で(on the open sea)」に答えが見つけられる。こちらは「大海原(the open sea)」の「上(on)」つまり「海上」なのだから、「beneath it」は「大海原の下」つまりは「海面下」や「海底」を示しているのだ。
トバイアスの死の舞踏伝説は、公式記事Encyclopedia Dominiaの原文に当たると「at the bottom of the ocean」と書かれており、「海底」で踊っていると確定できる。
海上で何十年もトバイアスは海賊たちを苦しめ続け、息絶えてから海底でさらに何十年も踊り続けた。
ということで、「on the open sea」と「beneath it」という言葉の対応関係を意識して文章を修正してみた。
フレイバー・テキストの原文だけでは、海の底かどうかまでは判断できなくとも海面下なのは明らか、なのに「そこで」と曖昧にぼやかすやり方は個人的に好みではない。
トバイアス・アンドリオンの登場作品
トバイアス・アンドリオンに関するストーリーや設定は、1996年頃の公式サイト記事Encyclopedia Dominia内で語られたものである。
フレイバー・テキストで言及されたシオールタン帝国や彼の軍事行政官としての名声などは、この記事内で拡張されており、トバイアス・アンドリオンはドミナリア次元の歴史に名を刻む偉人にまでなったのである。
記事内で彼の設定を詳細に語っているTobias Andrionの文章を以下に引用しておこう。初めに英語原文、その下に本サイトの独自訳を添えている。
ちなみにEncyclopedia Dominiaの内、トバイアス本人を扱った解説記事はこれ1つだけである。だが、ベナリアに関する2つの掌編において、トバイアスの踊りを用いた表現が出て来たり、シオールタン帝国への言及がされたり、アンドリオン湾が地図に記載されたりもしていたことは注記しておく。
Tobias Andrion was the most famed military administrator in the ancient Empire of Sheoltun. In the earlier, all-important military campaigns of Sheoltun, he was instrumental in establishing the young empire’s military dominance over its neighbors. But his true legacy to Central Aerona was his successful campaign to eliminate the long-standing, organized piracy that once tyrannized the waves.
Although Sheoltun already held the mainland with an iron grip when Tobias was born, it was not yet established on the islands. Tobias dared to battle the legendary pirates of the Spice Isles, and, even more daringly, succeeded in turning the tide of the once-invincible raiders. Over the course of three decades, he ran the marauders down and destroyed even their most hidden fortresses. Unfortunately, Tobias was himself slain in an ambush by the captain and crew of the pirate ship Wavespawn.
Although the exact nature of Tobias’s death varies widely from tale to tale, most stories suggest he was struck down by magical lightning. A terrible legend claims that Tobias was almost immediately reanimated, to dance upon the lifeless remains of his crew at the bottom of the ocean–a macabre dance he continues until this day.
トバイアス・アンドリオンは古代シオールタン帝国の最も高名な軍事行政官であった。シオールタン初期の極めて重要な軍事作戦において、彼は近隣諸国に対する若き帝国の軍事的優位性を確立するため貢献したのだ。とはいえ、中央エローナにおけるトバイアスの真の遺産は、海で暴虐を振るっていた長期的・組織的な海賊行為に対して、撲滅作戦を成功させたことである。
トバイアスが誕生した頃には、シオールタンは既にエローナ本土を手中に収めていたが、島々はまだ平定されていなかった。トバイアスは香辛料諸島の伝説的な海賊団に果敢に、さらに大胆不敵に、戦いを仕掛けることで、無敵を誇った略奪者との形成を逆転させたのだ。30年に渡って賊を追い詰め、極秘の隠し砦すら壊滅させた。だが、さしものトバイアスも運が尽き、海賊船「波の落とし子号」の船長と乗組員による待ち伏せに遭い、命を落としたのだった。
トバイアスの死因は物語によって大きく異なっているものの、ほとんどの物語が魔法の稲妻に撃たれたと示唆している。ある恐怖伝説によれば、トバイアスの死体は即座に動き出し、海底に沈んだ乗組員たちの亡骸の上で踊り始めた……この死の舞踏は今日においても続いているのだそうだ。
引用:公式記事Encyclopedia DominiaよりTobias Andrion(リンク)
上が英語原文。下が私家訳
アンドリオン湾
アンドリオン湾(Andrion Bay)は南エローナ大陸の北西にある湾岸地域で、首都ベナリア市がある西に細長く突き出た半島の南側の、深く切り込んだ湾が該当する。
アンドリオン湾とは、もちろん本記事で解説したトバイアス・アンドリオンから命名された地名である。
さいごに
これにてシオールタン帝国軍事行政官トバイアス・アンドリオンの解説は終了である。
当初はこの記事内でシオールタン帝国の方も網羅しようかと想定していたのだが、冗長になると判断してまたの機会にすることにした。
では、今回はこれまで。
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