統率者レジェンズ:テヴェシュ・ザット

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愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット(Tevesh Szat, Doom of Fools)カードセット「統率者レジェンズ」に収録される伝説のプレインズウォーカー・カードである。テヴェシュ・ザットは初出がカードセット「アイスエイジ」と、起源がMTG初期の古いキャラクターだ。

今回はテヴェシュ・ザットのストーリーと設定の概略を解説すると共に、このキャラクターがMTG史上でどのように扱われてきたかを語りたい。

※ 今回の記事は設定とストーリーは概略解説に留まっている。詳細な解説は割愛しているのであらかじめご了承いただきたい。そして、記事の半分はテヴェシュ・ザットというキャラクターの扱われ方の経緯を私個人の視点から語っている。

テヴェシュ・ザットの解説

愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット(Tevesh Szat, Doom of Fools)

愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット(Tevesh Szat, Doom of Fools)
データベースGathererより引用

愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット(Tevesh Szat, Doom of Fools)はドミナリア次元サーペイディア大陸出身1のプレインズウォーカーの男性である。元はテヴ・ローングレイド(Tev Loneglade)という名の人間の魔術師であった。

テヴェシュ・ザットとしての姿は、蛇人間ナーガに似た巨人で、体表は青黒く、下半身は幾叉にも分かれた尻尾のような触手が生えている。歪んだドラゴンのようなとも形容されるが、ドラゴンと結び付けて語られるのはインベイジョン・ブロック期で再登場した時だけである。それ以前はコミックや記事で悪魔(デーモン)や悪魔王(Demon Lord)と呼ばれたことがある。

「愚者滅ぼし」あるいは「全愚者の破滅(Doom of All Fools)」を自称している。愚かな者どもを破滅させ、世界に死の「静寂(Silence)」をもたらすことを自身に使命と課している。いわばドミナリア史に繰り返し登場する邪悪である。

テヴェシュ・ザットが関与した所業を列挙すると、サーペイディア諸帝国群の滅亡、氷河王国ストーガードの崩壊、エルダー・ドラゴンのクロミウム・ルエルの殺害、氷河期寒冷化の促進、シャンダラー次元への侵略、プレインズウォーカー戦争、破滅をもたらす上古族ドラゴンの再誕、ナイン・タイタンズのメンバー殺害…などである。

「静寂(Silence)」はテヴェシュ・ザットがよく口にする単語だが、「s」の音を重ねて「Ssssssilence」のように発音する。この「s」を重ねる特徴的な発音は「silence」だけに限定されない。英語圏では喋る蛇系キャラクターはよくこういった喋りをするもので、蛇の「シャー」とか「シュー」とかの鳴き声をイメージした定番のキャラ付けだ。ちなみに、テヴェシュ・ザットのこの喋り方はコミックだけのもので小説Invasion小説Planeshiftでは出てこない。



テヴェシュ・ザットの2つの手法

悪意ある助言(Malicious Advice)

デアリガズを唆すテヴェシュ・ザット
悪意ある助言(Malicious Advice)
データベースGathererより引用

テヴェシュ・ザットは2つの手法に通じている。1つ目が、ドミナリアの指導者たちに囁きかけ、被害妄想を煽って無分別な行動へと駆り立てる手練手管である。もう1つが、意のままにならぬ相手を魔法で殺害する実力行使だ。

手練手管の例を挙げれば、ストーガードのミーコ王に悪意ある助言を与えて破滅に導いたり、シヴのドラゴン国家群の長デアリガズを唆して上古族を復活させて戦争にさらなる破壊と混乱をもたらしたことなどである。

実力行使によって敵を排除した例は多いが、プレインズウォーカーのフレイアリーズと対決して打ち負かし、ファイレクシア内でダリアを倒して食い殺すなど強敵相手でも勝利する実力を示している。ただし、ストーリー上でしばしば倒すべき悪役として扱われるので、敗北して逃げ出す描写も少なくない。

テヴェシュ・ザットの色と魔法

闇への追放(Dark Banishing)

闇への追放(Dark Banishing)
データベースGathererより引用

テヴェシュ・ザットのカードは黒単色であり、ストーリー上の描写や解説でも黒を主属性としている。黒の次に青の魔法を得意としており、さらに赤の魔法もよく用いている。

テヴ・ローングレイド時代でも主属性は黒で同じだが、緑と白の魔法を振るう場面も存在している。怪物化の影響なのか、その後は緑と白のほぼ魔法は使っていない。

今回のカード化では黒単色となったものの、描写に準ずれば青黒や青黒赤で第2第3のテヴェシュ・ザットが再デザインされてもなんらおかしくはない。

テヴェシュ・ザットのカード・メカニズム

愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット(Tevesh Szat, Doom of Fools)

特別版イラストの愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット(Tevesh Szat, Doom of Fools)
データベースGathererより引用

愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット(Tevesh Szat, Doom of Fools)カードセット「統率者レジェンズ」用にデザインされており、統率者ドラフト戦に対応したカードということになる。統率者として使用可能なプレインズウォーカーなのもそのためだ。

色が黒単色なのは主属性が黒という設定に合致している。

+2忠誠度能力はスラル・トークンの生成だ。登場作品内でスラルを使役する描写は無いのだがスラルはサーペイディア発祥の種族であるので、テヴェシュ・ザットとサーペイディアの繋がりを示す意味で選択されたのだろう。

残り2つの忠誠度能力と、共闘能力は味方・仲間そして裏切りを意識させるものだ。テヴェシュ・ザットは味方の振りをして近づいてくるし、あるいは味方陣営を自滅に誘導したり、自らの手で殺害したりもする。そういった作中描写を反映させたものと考えられる。

テヴェシュ・ザットのストーリー概略

ここではテヴェシュ・ザットのストーリーの全体の流れを説明しよう。ただし、今回は詳細な情報は割愛し、あくまで概略説明である。

サーペイディアの魔術師テヴ・ローングレイドAR-19世紀頃の生まれで、プレインズウォーカーとして世界中を見て回ったが、いつしか世間の愚かさに幻滅し、2000歳の頃にはサーペイディアのヘイヴンウッドの奥地で世捨て人となっていた。

Farrelite Priest

オリヴァー・ファレル派の僧侶
Farrelite Priest
データベースGathererより引用

テヴの最愛の妹が戦士のティモリン・ローングレイド(Tymolin Loneglade)である。ティモリンはテヴの魔法で若い姿のまま同じ時を重ねており、彼女の存在だけがテヴが正気を保っている理由だった。しかし、AR170年頃、ティモリンが宗教的熱狂者オリヴァー・ファレル(Oliver Farrel)に殺害された事件を契機に、テヴは自己抑制を失い狂気の怪物に変身し、愚者滅ぼしテヴェシュ・ザットを名乗った。

テヴェシュ・ザット(サーペイディア時代)
マジック・ザ・ギャザリング(MTG)のプレインズウォーカー「テヴェシュ・ザット(Tevesh Szat)」を紹介。テヴェシュ・ザットのオリジン・ストーリーや妹ティモリン・ローングレイドの解説を行った。

ドミナリア氷河期にはテヴェシュ・ザットは「12世界のシャード」内に捕らわれていた(シャードについては氷河期の記事を参照)。

AR25世紀頃、ストーガード氷河王国のミーコ王に陰から悪意のこもった助言を授け、ストーガードを破滅させた。このとき王国の宮廷魔導士フレイアリーズがプレインズウォーカーとして目覚める。

屍術師リム=ドゥール(Lim-Dûl the Necromancer)

屍術師リム=ドゥール(Lim-Dûl the Necromancer)
データベースGathererより引用

氷河期末期、テヴェシュ・ザットと同盟者のレシュラックの2人に仕える屍術師リム=ドゥールはアンデッドの大群でテリシア大陸を脅かす。

AR2934年、虚月の頂上会議に出席した。氷河期の現状確認と今後の対策を議論するもので、ファラリンの号令でテヴェシュ・ザットら参加者がドミナリアの月である虚月に招聘された。対立する立場の参加者間で戦闘が発生し、テヴェシュ・ザットはクロミウム・ルエルを殺害し、フレイアリーズとの決闘に勝利した。

氷山(Iceberg)

氷山(Iceberg)
データベースGathererより引用

頂上会議後、テヴェシュ・ザットはストーガード遺跡に眠るアーティファクトを次々に消費し、生み出した魔力を用いてドミナリア中の氷河の成長を促進させた。世界を氷漬けにして死の静寂に包む目論見だったが、フレイアリーズの刺客、キイェルドー騎士ジェウール・カルサリオンによる邪魔が入る。テヴェシュ・ザットが対応していた間にフレイアリーズが先に世界呪文を完遂して氷河期を終わらせてしまった。

テヴェシュ・ザットはドミナリアを離れ、同盟者のレシュラックと下僕の屍術師リム=ドゥールと共にシャンダラー次元に侵攻する。シャンダラーの豊潤なマナの奪取が目的だったものの、最後にはシャンダラーの守護者ケナン・サーマルに敗退して、どこかへと去った。それ以降1200年余りの動向については情報がない。

真の後継者、ジャレッド・カルサリオン(Jared Carthalion, True Heir)

プレインズウォーカー戦争に参戦した1人
真の後継者、ジャレッド・カルサリオン(Jared Carthalion, True Heir)
データベースGathererより引用

AR4196年、コロンドール大陸でプレインズウォーカー戦争が勃発し、テヴェシュ・ザットも参戦した。この戦争には同盟者だったレシュラックも加わったほかに、氷河期中に因縁のあったラヴィデル、クリスティナ、テイジーア2、テイジーアの義理の娘ダリア、そしてジェウールの一族の子孫に当たるジャレッド・カルサリオンらも関与していたとされる。詳細は知られていないが戦争の首謀者ラヴィデルが倒されコロンドールは荒廃した。

AR4205年、ファイレクシア侵略戦争ではウルザの招集に応じて、かつての敵たちと共にナイン・タイタンズを結成した。

テヴェシュ・ザットはドラゴン国家群の長デアリガズを言葉巧みに操って、太古のドミナリアを支配した上古族ドラゴンの復活に向かわせる。その結果、戦場は混乱を深めることとなる。

テヴェシュ・ザットはナイン・タイタンズとしてファイレクシア次元に乗り込んで戦いつつも、仇敵であるタイタンズのメンバーを殺害し始め、クリスティナとダリアの2人まで命を奪ったところでウルザに処刑されてしまう。テヴェシュ・ザットの命はファイレクシアとの決戦兵器「魂爆弾」の燃料にされるのだった。

以上で、テヴェシュ・ザットの設定とストーリーの概略を説明し終わった。記事の残りはMTG史においてテヴェシュ・ザットと言うキャラクターがどのように露出し、そしてどのように扱われてきたか、私個人の視点から語りたい。



テヴェシュ・ザットと言うキャラクターの経緯

Minion of Tevesh Szat

Minion of Tevesh Szat
データベースGathererより引用

テヴェシュ・ザットは1995年6月発売のカードセット「アイスエイジ」で初登場したキャラクターである。ただし、テヴェシュ・ザットに言及するカードは「Minion of Tevesh Szat」つまり「テヴェシュ・ザットの下僕のデーモン」たった1枚だけで、彼がどういうキャラクターなのかは全く分からなかった。

テヴェシュ・ザットの活躍の場はカードセットではなく、アルマダ・コミックの方にあった。

アルマダ・コミックでの活躍

テヴェシュ・ザット初登場シーン
コミック版アイスエイジより引用

カードセット「アイスエイジ」発売に続き、1995年7月から10月にかけてコミック版アイスエイジ全4冊が発行され、ここでテヴェシュ・ザットがプレインズウォーカーであることが語られる。鱗に覆われた巨人で、下半身は幾叉にも分かれた蛇の尻尾のような触手…という異形のビジュアルはカードだけでは知ることができないものだった。

アイスエイジのコミックでは他のプレインズウォーカーとの関係が描かれている。レシュラックとは同盟関係にあったが、テイジーアやクリスティナ、フレイアリーズとは対立していた。中でもフレイアリーズとの因縁が深く宿敵同士という扱いであった。

ちなみにコミックに登場したレシュラックとフレイアリーズも、テヴェシュ・ザットと同期のカードセット「アイスエイジ」初出のキャラクターである。2人のビジュアルやストーリー、正体がプレインズウォーカーである事実はコミックを読まなければ分からない。しかし、2人はアイスエイジの複数種類のカードで言及されており、テヴェシュ・ザットよりもキャラクターの外形が読み取れる分、一般認知度はまだそれなりにあった。

フレイアリーズ(氷河期の姿)
コミック版アイスエイジより引用

コミック版アイスエイジに少し遅れ、1995年9月から10月にはコミック版フォールン・エンパイア全2冊が展開される。この物語はアイスエイジよりも何世紀も前のサーペイディア大陸が舞台だったが、ここでテヴェシュ・ザットのオリジンが明かされることになった。テヴェシュ・ザットはアイスエイジよりも古いカードセット「フォールン・エンパイア」に縁があったとなり、キャラクターに深みが増した。

テヴェシュ・ザットの次の登場は、1996年3月から4月のコミック版シャンダラー全2冊である。これはコミック版アイスエイジのストーリーから直接繋がる続編であり、テヴェシュ・ザットと仲間のレシュラック、下僕の屍術師リム=ドゥールが引き続いて登場する。舞台はドミナリア次元からシャンダラー次元に移った。このコミックシリーズは、翌年1997年にMicro Prose社から発売されたPCゲーム版MTGの前日譚に当たる物語であった。シャンダラーを舞台にしたPCゲーム現在から数世紀前の過去の出来事である。

Battlemage版テヴェシュ・ザット
Battlemage公式サイトより引用

アルマダ・コミックは全シリーズの総決算である「プレインズウォーカー戦争(Planeswalkers’ War)」が展開される予定にあったが、そこに至る前に出版が終了してしまう。1996年末頃に発売されたPCゲームBattlemageはこの「プレインズウォーカー戦争」を題材にしており、テヴェシュ・ザットはプレイヤー用キャラクターとして選択できる全6人のうちの1人に抜擢された。コミックで縁のあったレシュラックとクリスティナもプレイヤー用キャラクターになっている。

認知度の低さ

以上のように、テヴェシュ・ザットは1995年から1996年のコミックシリーズを通してオリジンから始まり、氷河期での暗躍、他次元への侵略、そして強力なプレインズウォーカーが絡む大戦争に至るまで、大規模ストーリーの主要人物として活躍してきたキャラクターであったのだ。だが、テヴェシュ・ザットの認知度は決して高くはなかった…むしろ一般ユーザーにとってはプレインズウォーカーであることはもちろん、名前すら認識されていなかっただろう

認知度の低さの最大の理由は、テヴェシュ・ザットに言及するカードは1種類だけで、しかもレア・カードなので手に入りにくく、競技シーンで活躍するカードでもなかったことだ。これではカードからテヴェシュ・ザットに興味を持つユーザーが多くなりようはない。

また、そもそもの問題として一般のMTGユーザーはアルマダ・コミックを読んでいない状況があった。コミックの入手も(日本はもちろんのことアメリカでも)簡単ではなかったようだ。個人的に観測した範囲内ではあるが、20年ほど前から現在までの海外のネットコミュニティでの反応を見た限り、コミック既読者は少数であったと感じる。

さらなる理由は、コミック関連を除けば、ウィザーズ社公式の媒体でテヴェシュ・ザットの設定をきちんと取り上げなかったことだ。公式雑誌Duelistが1996年に発行したOfficial Encyclopedia, Volume 1ではテヴェシュ・ザットとレシュラックは屍術師リム=ドゥールの主たる「悪魔王(Demon Lord)」としか書かれていない。これは過去の公式サイトのアイスエイジの解説文などでも同様であった。

現在のウィザーズ社公式サイトでは、カードセットのストーリーは商品解説ページでもある程度詳しく書き込まれているし、舞台となる各次元や各キャラクターの解説も専門のページでかなり詳細に無料で公開されている。積極的に情報を発信してキャラクターに興味を引こうとしている。

だが、これが初期のMTGでは真逆で、キャラクターを知りたければ(カードだけでは足りないので別途に)登場する作品を購入して自分で読んで確かめるしかなかった。そうして初めて明かされる情報自体に希少性と価値があり、ウィザーズ社公式が他の媒体で同じ情報を公開することはそう多くはなかったのだ。



再登場は最期の別れ

プレインズウォーカーの嘲笑(Planeswalker's Scorn)

リデザインされたテヴェシュ・ザット
プレインズウォーカーの嘲笑(Planeswalker’s Scorn)
データベースGathererより引用

こうして存在すら認知されずにいたテヴェシュ・ザットはファイレクシア侵略戦争で再登場を果たすことになる。(その少し前、2000年5月にアイスエイジを語り直した小説The Eternal Iceが発行されたがテヴェシュ・ザットは名前のみの言及で終わっている。しかも「Tevesh」が「Tvesh」に誤記されている。)

2001年2月発売のカードセット「プレーンシフト」において、テヴェシュ・ザットはいくつかのカードに登場することになった。テヴェシュ・ザットの姿はコミックを下敷きにリデザインされた。この時初めて、テヴェシュ・ザットの姿とキャラクターを知ったMTGユーザーが大半であったはずだ。

プレインズウォーカーの好意(Planeswalker's Favor)

リデザインされたフレイアリーズ
プレインズウォーカーの好意(Planeswalker’s Favor)
データベースGathererより引用

小説の方ではプレーンシフトに先立ち、2000年10月の小説Invasionですでに再登場しており、テヴェシュ・ザットの他にテイジーア(とその養女ダリア)、クリスティナ、フレイアリーズといったアルマダ・コミックで敵対したキャラクターと共にナイン・タイタンズを結成した。強力なプレインズウォーカーたちは敵対関係を一旦置いておき、ファイレクシアの脅威からドミナリアを守る同盟が結ばれたのだ。

続編の小説Planeshiftはカードセット「プレーンシフト」と同時期に発行された。カードセットでは曖昧にしか知ることができなかったが、この小説ではテヴェシュ・ザットの暗躍やナイン・タイタンズの面々が本領発揮したファイレクシア次元攻略戦がきっちりと描写されている。ただ、残念なことに、この小説2作品中では「Tevesh」が「Tevash」と誤記されている。

闇の疑惑(Dark Suspicions)

ウルザに裏切りを暴かれたテヴェシュ・ザット
闇の疑惑(Dark Suspicions)
データベースGathererより引用

では、再登場したテヴェシュ・ザットは何をやったか?「裏切り」である。

テヴェシュ・ザットは、かつてドミナリアを死の静寂が包む氷の世界にしようとしたが、それは完璧な記憶の中に保存するためであり、ファイレクシアに荒らされるのは許しがたい、と表明してナイン・タイタンズに参加した。他のメンバーはテヴェシュ・ザットを決して信用できなかったものの、その表明を受け入れたのだ。だが、ファイレクシアに乗り込んだテヴェシュ・ザットはコミックの仇敵たちの殺害を開始する。クリスティナとダリアの2人の命を首尾よく奪えたところで、ウルザの糾弾によって裏切りが暴かれた。ウルザに処刑されたテヴェシュ・ザットの命は「魂爆弾」の燃料となった。

打破(Confound)

処刑されるテヴェシュ・ザット
打破(Confound)
データベースGathererより引用

ウルザが語るところによると、ファイレクシアとの決戦兵器「魂爆弾」にはプレインズウォーカーの命が必要だったが、無実の者を犠牲にはできない。だから、必ず裏切るであろうテヴェシュ・ザットをあえて仲間に引き入れ、罪を犯したところで処刑して爆弾の燃料にした、というのだ。

……正気だろうか。

テヴェシュ・ザットは別にファイレクシアに寝返ったわけでもなく、ただ単に仇敵たちに闇討ちをしてドミナリア側の戦力を削ぎ、状況を混乱させただけで退場させられた。宿敵のフレイアリーズとの絡みもほとんどない。爆弾の材料にされるためだけの再登場だったのか?しかも、ウルザはおかしな理屈でここまで非道に走っておきながらも、この後にファイレクシアに寝返るのだ。

この狂気の沙汰のストーリーに利用されるために、テヴェシュ・ザットは再登場し、そして永遠に退場することになった。テイジーアもこの戦争中に死亡したので、アルマダ・コミック再登場組はフレイアリーズ1人しか生き残れなかったことになる。

これが「大きなストーリーの節目に旧キャラクターが再登場すると死亡する可能性が高い」「節目には旧キャラの大量処分」…そう噂されるようになる最初の大事件であった。ちなみに、およそ5年後に大きな節目となる時のらせんブロックのストーリーが発生するが、フレイアリーズとレシュラックが再登場して死亡し、ナイン・タイタンズの最後の生き残りで初期小説作品が初出のウィンドグレイス卿もこのときに絶命している。

統率者レジェンズでカード化されるまで

テヴェシュ・ザットの信奉者(Disciple of Tevesh Szat)

テヴェシュ・ザットの信奉者(Disciple of Tevesh Szat)
データベースGathererより引用

テヴェシュ・ザットがストーリーから退場した後、2種類の関連カードが制作されている。1枚目が2006年のカードセット「コールドスナップ」に収録されたテヴェシュ・ザットの信奉者(Disciple of Tevesh Szat)である。

カードセット「コールドスナップ」では関連カードが収録された以上に重要だったのが、アルマダ・コミックのアイスエイジ全話3が公式サイトで無料公開されたことだ。この時に誰でもコミックでのテヴェシュ・ザットを確認できたし、レシュラックやフレイアリーズの最初の姿も同様に知る機会が持てたのだ。4レシュラックとフレイアリーズはコールドスナップと同時期に展開していた時のらせんブロックのストーリーに再登場していたので、このタイミングでの公開はファンにとって嬉しいプレゼントであった(上述の通り2人ともこのストーリー中に死亡してしまうのだが)。

真冬(Dead of Winter)

真冬(Dead of Winter)
データベースGathererより引用

もう1枚のテヴェシュ・ザット関連カードが、2019年のカードセット「モダンホライゾン」真冬(Dead of Winter)であった。このセットでは、アイスエイジで初登場であった氷雪メカニズムが久々に主軸の1つとして組み込まれており、そのためのテヴェシュ・ザットの起用だったと考えられた。まさか1年後にテヴェシュ・ザット本人がプレインズウォーカー・カードになるとはほとんど予想されていなかったはずだ。

同2019年には日本公式サイトの連載コラムにおいてテヴェシュ・ザットが司会進行キャラクターに抜擢され、日本での認知度向上にいささかなりとも貢献したであろうことが想像できる(テヴェシュ・ザットのオールナイトヤバナリア!)。

2020年、テヴェシュ・ザット本人がカードセット「統率者レジェンズ」で初のカード化となった。イラストはカードセット「プレーンシフト」のリデザイン版ではなく、アルマダ・コミック版に準じた姿である。カード化に際して公開された設定解説は、短いながらも、アルマダ・コミックを踏まえた包括的な内容となっている。

カード化発表時に驚かされたのだが、アルマダ・コミック期やインベイジョン・ブロック期の再登場に比べて、MTGユーザーの反応がよかったことだ。個人的に遭遇したものをざっくり挙げると「ナイン・タイタンズの裏切り者」「ウルザに爆弾にされた奴」「シスコンのプレインズウォーカー」そういった感じのテヴェシュ・ザットのことを「前から知っている」反応がそこかしこで見られたのだ。

ファイレクシア侵略戦争時の印象があるとはいえ、それももう20年近く前になる。それでも、どマイナーなキャラだったテヴェシュ・ザットが現在では多くのユーザー5に認知されている。

思えば15年20年前に比べれば、現在はネット上のファンコミュニティや非公式wiki、ヴォーソス向けPodcastや動画配信などなど、ストーリーや背景世界情報を共有できる環境が整備されている。小説の電子書籍化で、ヴォーソスが古い原典作品にアクセスできる間口も広がっている。

古いキャラクターだからといって忘れられて消えることはないのだ。時代が変わったのだな、としみじみ感じいる。

では今回はここまで。

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  1. 明記されてはいないものの、幼い頃に兄妹でサーペイディアで遊んでいたというコミックの記述からほぼ間違いはないと考えられる
  2. 基本セット第5版のフレイバー・テキストで「テイジーア」、過去の雑誌記事では「テイザー」と表記されていた。公式の発音ガイドは「TAY-seer」なので、本サイトでは正確な表記を採用する
  3. 公開されたのは最初の4冊4話のコミック版ではなく、その後に2話ごとにまとめて全2冊にして発行された合本バージョンの方である
  4. 私もこのときにコミック版を初めて全話読むことができ、興奮した勢いでアルマダ・コミック全タイトル全巻を海外ショップから購入することにした(古い本なので在庫なしのものもあり、全種類揃えるまで数年かかった)。
  5. 一般のMTGユーザーとまではいわないけど