ドミナリア史:ファイレクシア侵略戦争期

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ファイレクシア侵略戦争期(Phyrexian Invasion)はドミナリアの時代区分でAR4205年~AR4306年の時代である。

追記(2023年2月25日):この時代を舞台とした短編の情報を追加した。

追記(2023年2月26日):この時代を舞台とした短編の情報を更に4作品追加した。その後、同日中に誤字修正。

追記(2023年2月27日):この時代を舞台とした短編の情報を更に2作品追加した。同日中にもう1作書き足した。

追記(2023年2月28日):ファイレクシア侵略戦争が年を跨ぐ解釈に関して、過去の公式記事からそれを補強する情報を掘り越せたため、追加情報として書き加えた。

ファイレクシア侵略戦争期の概略

ウェザーライト号(左下)とヨーグモス(右上)
レガシーの兵器(Legacy Weapon)一部拡大図

ファイレクシア侵略戦争期(Phyrexian Invasion)と定義された時代はAR4205年勃発のファイレクシア侵略戦争を初めとして、カローナ戦争が起こる直前までの期間を指している。ドミナリアに対するファイレクシアの破滅的な次元間侵略、および、戦後の新たな暗黒時代の世紀である。

狭義の意味で「ファイレクシア侵略戦争(Phyrexian Invasion)」はAR4205年の戦争を指す(そして狭義の意味で用いられる方が一般的1)。

また、ファイレクシア侵略戦争は同4205年に発生したプロフェシー戦争の終結から数週間後に開戦となっている。

戦争後の時代は「侵略戦争後(Post Invasion)」と呼んで区別される。2



ファイレクシア侵略戦争の期間

AR4205年勃発のファイレクシア侵略戦争は実際にいつまで戦争状態が続いていたのか。その期間は公式資料によって異なる。

簡易年表とブロック小説の食い違い

当時のウィザーズ社公式サイトの簡易年表では、インベイジョン・ブロックは全てAR4205年中に発生したとされていた。ところが、インベイジョン・ブロック小説三部作の記述に準ずれば戦争は年を跨いで続いて終結している(ゆえに戦争期間AR4205-4206年)。終戦時に1年の食い違いがある。どちらを取るべきだろうか?

簡易年表の問題点

旧公式サイト簡易年表(クリックで画像展開)

Magic Set Timeline(旧公式サイト簡易年表)

この簡易年表がどういったものか語ろう。

この年表は公式雑誌Duelistで始めに雛形が発表され、後にウィザーズ社公式サイトに転載、カードセットが発売されるたびに追加されていたものだ。ただし、初めて公表された時点で既に明らかな間違いがあり、サイト上から消えるまでずっと訂正されなかった

その上、新たにブロックが追加される際には、ブロック内の3つのカードセットは全て同じ年に発生していると記載されたものの、そのストーリーを詳細に語るブロック小説では1年を超えて時間経過しているという齟齬が複数確認できた。こちらも最後まで訂正されなかった。

つまり、簡易年表はガイドラインになりはしても、全幅の信頼まではおけないものだった。

インベイジョン・ブロック小説三部作の時系列

以上から、本サイトでは信憑性のより高いインベイジョン・ブロック小説三部作の記述を採用する。

では小説の時系列に則って、より細かく戦争の推移を見る。

次元の門(Planar Portal)

次元の門(Planar Portal)
データベースGathererより引用

小説Invasionは、侵略第一段階としてサーボ・タボークが指揮するファイレクシア軍がドミナリア各地に攻撃を仕掛けた。テフェリーがザルファーとシヴをフェイズアウトさせ、戦線を離脱した。ウルザがナイン・タイタンズを結成。コイロスの戦いでサーボ・タボークが敗退し、ドミナリア連合は束の間の勝利を手に入れた。

次元の被覆(Planar Overlay)

次元の被覆(Planar Overlay)
データベースGathererより引用

小説Planeshift冒頭でまず戦争が1年を超していると明らかになり、侵略第二段階のラースの次元被覆が発生した。ファイレクシアの人工次元ラースが次元丸ごと、ドミナリアの地表に重なるように転移したのである。この後、何か月も戦争が継続している。上古族の復活と再封印。ナイン・タイタンズによるファイレクシア次元への直接攻撃。などがあった。

レガシーの兵器(Legacy Weapon)

レガシーの兵器(Legacy Weapon)
データベースGathererより引用

三部作の最終作、小説Apocalypseではファイレクシア次元は破壊されたが、侵略最終段階としてヨーグモス自身が巨大な黒い雲となってドミナリアに出現した。レガシーの兵器でヨーグモスを完全に消滅させたことで終戦を迎えた。そして翌年に終戦記念の式典がアーボーグの地で執り行われた。

ファイレクシア侵略戦争の期間はAR4205-4206年で、ラースの次元被覆はAR4206年に起こり、同年中に終戦。終戦記念式典はAR4207年に行われた。
追加情報:
本記事公開後に、オンスロート・ブロック頃の公式記事Where Are They Now: Planeswalkersの中に、ファイレクシア侵略戦争の長さに言及した表現を発掘した。

記事中では「the year-long onslaught」つまり「1年間通して続いた猛攻撃」となっている。AR4205年の途中で開戦したのは明白なため、1年間通すと翌4206年の同じ月までと解釈できる。この記事でも年を跨いで戦争が継続していることが裏付けされることになる。

また、先述した通り小説ではラースの次元被覆より後で戦争が何か月も続いていることから、開戦時期はAR4205年の後半に置くのが適切と思われる。



侵略戦争後

侵略戦争後(Post Invasion)」のドミナリアには戦争による破壊の爪痕が残された。衰退した文明の暗黒時代、戦後復興が進められた。セラ教会やトレイリアのアカデミーのように力を残せた組織や国家は数少なかった。

この時代において、オタリア大陸は例外的に繁栄していた。侵略戦争中、戦略目的として重要視されなかったオタリアだけは戦場にならなかったのだ。難民となった人々がこの無傷の大陸に集まっていった。

オタリアでは2つの組織が力をつけていた。財産の神クベール(Kuberr)を信奉する陰謀団(The Cabal)は、本拠地カバル市を中心に、闘技場競技「ピット・ファイト」を大陸全土で開催していた。オーダー(The Order)は祖神を信奉する騎士団的組織で、大陸の北の「北部オーダー」と南の「南部オーダー」に分かれていた。

オタリア大陸東方のアイルズメア海では、頭足類系人型種族セファリッドの海の帝国(The Mer Empire)が、マーフォークに代わって台頭して権勢を振るった。

ミラーリ争奪戦

ミラーリ(Mirari)

ミラーリ(Mirari)
データベースGathererより引用

AR4305年、オタリア大陸にて秘宝ミラーリが発見され、様々な陣営がその争奪戦を繰り広げることになった。

ミラーリはそれを所有した人々に人知を超える強大な力をもたらすと共に、その力への欲望に飲まれた使用者をその周囲諸共に破滅させた。北部オーダーの本拠地「城塞」は廃墟となり、海の帝国の北の宮廷は壊滅し大陸北部に大洪水が襲い、カバル市は具現化した悪夢によって荒廃した。

ミラーリの目覚め(Mirari's Wake)

ミラーリの目覚め(Mirari’s Wake)
データベースGathererより引用

パーディックの蛮族カマールは自分もミラーリの力の誘惑に堕落しかけるものの克服し、ミラーリを狙う最後の1人ラクァタスを倒すと剣の柄に嵌めたミラーリをクローサの森の奥地に捨てることで、争奪戦は終結した(ただしミラーリが原因となる騒動や災厄はまだ続くことになる)。

ファイレクシア侵略戦争期のストーリーはどこで読める?

ファイレクシア侵略戦争期のストーリーラインは2つある。

1つ目のストーリーラインが時代初期の侵略戦争を扱ったインベイジョン・ブロック小説三部作である。小説Invasion小説Planeshift小説Apocalypseの3作。

2つ目のストーリーラインは時代末期のオタリア大陸を舞台にしたミラーリ争奪戦を描くオデッセイ・ブロック小説三部作である。小説Odyssey小説Chainer’s Torment小説Judgmentの3作。

関連するストーリー

短編集などに収録された複数のストーリー作品が該当する。(適宜追加する予定)

※ 書籍の短編作品はブロック小説に比べるとマイナーな存在で、読者の規模はより少なく、レビューされたり論じられたりする機会は余りないものだ。本サイトではどんなストーリー作品でも日本のファンに知ってもらいたいと考えているため、こうして紹介できる機会にはなるべく長編小説よりも詳細に解説を加えることにしている。

短編Phyrexian Creations

短編Phyrexian Creations短編集The Myths of Magic収録)は、テリシア地方新アルガイヴ方面を攻撃するファイレクシア軍の物語だ。

工匠大学3のある都市4が最初に襲撃を受け、学者ゴドウィン(Godwyn)が攻撃軍指揮官のファイレクシアンに改造された。彼はファイレクシア化によりヨーグモスの救いをもたらすと信じるようになり、垣魔術師の少女カーリ(Kari)をファイレクシアンに変え副官とした。攻撃軍は進軍しつつエルベレス(Elbreth)カルム(Calum)トリバー(Toribah)と諸都市を陥落させ、首都アーギヴィーア(Argivia)を攻め落とす。

カーリはアーギヴィーアの図書館に収められたスラン時代末期に書かれたレベックからグレイシャンに宛てた手紙の一部を発見した。ヨーグモスを糾弾する内容で、罠にかけられ変容され奴隷になったという女性レベックに共感を覚えたカーリは、死がより以上の救いを私たち2人にもたらすとしてゴドウィンに毒の口づけをすると、共に都市を焼く業火へと身を投じたのだった。

トリーヴァの廃墟(Treva's Ruins)

ゴドウィンによって破壊された後のアーギヴィーアを描いたカード
トリーヴァの廃墟(Treva’s Ruins)
データベースGathererより引用

ファイレクシア侵略戦争中なのでAR4205年かAR4206年である。破壊されたアーギヴィーアと図書館は小説Planeshiftに出てきているので、それよりも前の出来事となる。

余談だが、ゴドウィンの攻撃軍の攻撃で焼き払われたアーギヴィーアの図書館は、その最下層よりも更に奥深くの地下に上古族ドラゴンのトリーヴァ(Treva)が封じられていた場所である。トリーヴァの廃墟(Treva’s Ruins)が廃墟である理由は、もちろんゴドウィン軍の攻撃後だからだ。

短編Behold, The Fish

短編Behold, The Fish短編集The Secrets of Magic収録)だ。

ファイレクシア侵略戦争の終戦間際、ヨーグモスの死の雲がマーフォークの居住地エリタレイトに迫ると、プレインズウォーカーのボウ・リヴァーが死の雲に立ちはだかり命を賭して居住地を守った。これが短編の始まりの場面である。ここは小説Apocalypseで既に描かれた出来事で、それを守られる側からの視点で再話したものだ。

物語は終戦直後へと続き、ほぼ壊滅状態のヴォーデイリア帝国では軍国主義の生存者が帝国の再建を企んでいた。しかし混乱に乗じて、エリタレイトのマーフォークの1人が生き残った貴族を騙り、ヴォーデイリアの新たな支配者オーメン皇帝(Emperor Omen)となってしまった。オーメンは帝国を平和的な方向に導いた後に死を偽装して表舞台から去ったのである。

時代設定はAR4206年の戦争末期から、侵略戦争後である。これまで女帝ガリーナの君臨する厳格な階層社会かつ軍事国家であったヴォーデイリア帝国が、より平和的な国家へと変化していく契機となった事件を描いている。

短編Journey Home

頑強なるバルソー(Balthor the Stout)

頑強なるバルソー(Balthor the Stout)
データベースGathererより引用

短編Journey Home短編集The Secrets of Magic収録)は、インベイジョン・ブロックとオデッセイ・ブロックを繋ぐ作品の1つである。

ファイレクシア侵略戦争の終戦直後、オタリア出身のドワーフ、バルソー(Balthor)が戦場でウルザの杖を発見し、その後、ファイレクシアの残党と戦っている同郷の蛮族マトック(Matoc)5と出会った。この作品は2人が一緒に北の戦地から故郷オタリア大陸へと船旅で帰還し、パーディック山脈に落ち着くまでの話である。

主人公のバルソーは、オデッセイ・ブロックの主要登場人物のバルソーその人である。マトックの方は、オデッセイ・ブロックの主人公カマールの祖父に当たる人物だ。そして、バルソーの発見したウルザの杖は剣に鍛え直されて、後にカマールの愛剣となるのである。

この物語はAR4206年以降の侵略戦争後が舞台だ。

短編Ereth the Mighty

短編Ereth the Mighty短編集The Monsters of Magic収録)は、テリシア地方ヤヴィマヤの森を舞台にした物語だ。侵略戦争が記憶に新しいこの時代、ヤヴィマヤに逃げ込んだ人間たちが無数の難民キャンプで暮らしていた。

主人公はヤヴィマヤ・エルフの女性エレス(Ereth)で、彼女は偉大な英雄として名を歴史に残したいと夢想していた。彼女の師ゾーリッチ(Zorich)はヤヴィマヤ・エルフの男性で、アカデミーの校長6であった。

ある時、ファイレクシアの残党が現れヤヴィマヤを脅かし始めた。ゾーリッチは残党ファイレクシアンと戦うために、弟子のエレス、そしてオムレリア派7という人間のドルイド団の協力を得て、巨大な茨の精霊(Thorn Elemental)を召喚する魔法を実行した。

茨の精霊(Thorn Elemental)

茨の精霊(Thorn Elemental)
データベースGathererより引用

果たして茨の精霊を呼び出せたものの、エレスは事件の真相を知った。全てはゾーリッチが仕組んだことだった。実は、ファイレクシアンの残党はゾーリッチが偽装した偽者であり、人間を嫌悪する彼はヤヴィマヤから人間を排除するために茨の精霊を利用する計画だったのだ。エレスは精霊に命じてゾーリッチを倒すが、精霊召喚に参加した者は誰も生き残れなかった。

エピローグにおいて、後世のヤヴィマヤのアカデミーでこの事件が真実とは異なる伝承となってしまったことが明かされる。ゾーリッチは残党ファイレクシアを倒してヤヴィマヤを救えたが、茨の精霊の魔法は制御困難で精霊は残党の次に彼と弟子、ドルイドたちも殺してしまったというのだ。本当の勇者であったエレスは、偉人ゾーリッチの無名の弟子としか歴史には残らなかった。

本編は侵略戦争後の初期と考えられる。エピローグは、この物語が「古代の書物(an ancient tome)」に記され、それは「何世紀も昔(Centuries ago)」の出来事だと語られていることから、ファイレクシア侵略戦争期よりも後の時代、おそらく修復時代以降(AR4500年以降)ではないかと思われる。



短編True Enough

短編True Enough短編集The Monsters of Magic収録)の舞台シルヴァイン(Sylvayn)は平地と森の境あり、街外れに川が流れる小さな街だ。

シルヴァインのオリィ(Oly)は老いた酔いどれの男性で、雌の老犬キャシー(Old Cassie)の飼い主だ。オリィと老犬はある晩、怪物と遭遇した。コウモリの翼を持ち、サソリの尻尾があり、鎌のような腕を持ち、言葉を喋る怪物で、街の外の平原へと飛び去った。

怪物出現のニュースはシルヴァインの民を浮足立たせた。だが幸運なことに街には今、フリン・ラルー(Flyn LaRouxe)という世界の方々を旅してきた流れの雇われ剣士が滞在していた。フリンは怪物退治を引き受けることになり、また別の夜に現れた第2の狼の怪物を首尾よくやっつけたのだった。怪物は退治されると、その体は消え去った。

英雄フリンは褒美をたんまりと頂戴してシルヴァインを旅立った。そこで、ふとオリィは怪物とフリンが脚の同じ場所に怪我をしていたことを思い出し、フリンこそが怪物の正体だったと看破した。フリンは姿を変える能力を持つ「変異種(Morphling)」だったのだ。

変異種(Morphling)

変異種(Morphling)
データベースGathererより引用

まんまと騙された街の面々は顔を青くするのだが、考え過ぎだと全員でオリィを否定した。もし認めてしまったら、ベナリアの向こうまでシルヴァインの街が笑いものにされてしまうのは間違いない。面子を守るため誰もが真相に気づかない振りをしたのだ。

この作品の時代設定は明らかに侵略戦争後である。その上、フリンは訪れたことのある土地の1つにザルファーを挙げているのだが、この時代には既にフェイズアウトしてドミナリアから失われているはずだ。つまり、ザルファーがまだ存在していた頃(AR4205年以前)からはそれほど年月が経っていない、侵略戦争後の初期と思われる。

南エローナ大陸北部(1997年カレンダー付属地図)

そして、シルヴァインがどこにあるかについて。詳細な位置は不明ながら、ベナリアとラノワールの領土から幾分か離れており、かつ、両国に挟まれた南エローナ大陸の一帯のどこかに存在すると考えられる。地図上には、平地と森の境で川が流れている条件に該当する地形は複数ある。

短編Dragon Lord

短編Dragon Lord短編集The Dragons of Magic収録)は、ファイレクシア侵略戦争から戦後にかけての物語だ。主役はオタリア大陸北部地域のドラゴン、イーギン(Eagyn)である。インベイジョン・ブロックとオデッセイ・ブロックの橋渡しとなる作品とも言え、オデッセイ・ブロックの開始直前に発表された。

イーギンは侵略戦争時にドラゴン国家群の一員としてファイレクシアンと戦い、戦後には北部オーダーに加入し指導者的立場となった。

遊牧の民の長ピアナ(Pianna, Nomad Captain)

遊牧の民の長ピアナ(Pianna, Nomad Captain)
データベースGathererより引用

短編中にはAR4305年のミラーリ争奪戦時に北部オーダーの指導者を務めることとなるピアナ(Pianna)が、少女として登場していた。こちらが作中の現在時間軸となるが、ピアナが少女なのでファイレクシア侵略戦争期も後半、AR4305年の数年から数十年前と考えられる。

短編の内容は別記事で要約しているのでそちら(リンク)を参照のこと。

統率者レジェンズ:空の管理者、カンジー
マジック・ザ・ギャザリング(MTG)の「カンジー(Kangee)」を紹介。インベイジョンが初出で、統率者レジェンズで2度目のカード化。カンジーのストーリーや設定の解説と考察を行った。

短編Seasons of Slaughter

短編Seasons of Slaughter短編集The Monsters of Magic収録)は、オタリア大陸を舞台としている。

陰謀団は、5年ごとに遊牧民から数万頭もの動物を集め、畜殺し食肉処理してソーセージに加工していた。このためだけに港近くに一時的なテントの都市を形成し、家畜を閉じ込める囲いや食肉処理場が幾つも立てられるのだ。この作品は、陰謀団の大規模な食肉処理事業に際し、家畜を狙う吸血ドラゴン(Vampiric Dragon)が襲って来たという物語だ。

陰謀団のキャンプ指揮官ブリック(Camp Commander Buric)は今回の食肉処理を監督する男性で、マドガ(Madga)はブリックの副官である女性だ。ある夜に家畜が襲われ、警備人員にも死者が出た。ブリックとマドガの捜査により、犯人は1体の吸血ドラゴンと判明したが、闘技場の外では滅多に見ることのない恐るべき怪物であった。

吸血ドラゴン(Vampiric Dragon)

吸血ドラゴン(Vampiric Dragon)
データベースGathererより引用

ブリックは陰謀団の貴重な魔法の護符を携えており、これを使用すればジュカリ・デーモン(Jucarri Demon)を召喚できるものの、おいそれと使うのは躊躇われた。しかし、吸血ドラゴンが再度襲来すると選択肢はなくなった。呼び出されたデーモンによって吸血ドラゴンを撃退することはできたが、多くの人命が失われてしまった。

死体の山を前に、ブリックは食肉加工担当者へとソーセージの材料に混ぜろと指示を出したのだった。陰謀団のソーセージは安さで人気だが、品質は保証できないのだ。

この作品の時代設定を描写から読み取る。まず5年ごととはいえ数万頭もの家畜を扱う大規模な食肉処理が定期的に行われるほどオタリアが栄えており、陰謀団の本拠地カバル市が健在である。それに加え、キャンプ都市の港ではケルドの輸送船が生きたままの家畜を積み込む様子が確認できる。ファイレクシア侵略戦争以前のオタリアは辺境地とみなされる大陸であり、遠方のケルドから貿易船がやって来ることはおそらくかつては無かったはずだ。以上を踏まえると、侵略戦争後でミラーリの災厄が起こるより前の時代(少なくともAR4305年のカバル市の崩壊より前)だと考えられる。

ちなみに作中ではオタリア独自の動植物が登場している。遊牧民の家畜としてバイソンとパノック(panok)の2種類が出てくるが、後者は本作のオリジナル生物と思われる。また、ウクリクの花(ukrik flower)は、5年に一度咲き誇り地面を覆うマスタードイエローの植物で、キャンプ都市の場所に生えていた。

短編Stolen Harvest

ラクァタス大使(Ambassador Laquatus)

ラクァタス大使(Ambassador Laquatus)
データベースGathererより引用

短編Stolen Harvest短編集The Secrets of Magic収録)は、マーフォークが支配する海の帝国において、セファリッドが下剋上を果たす物語だ。

海の帝国のマーフォークは産卵した卵を一か所に集め、30年ごとに魔法的な儀式を行い生命エネルギーを注入して成人状態で孵化させる。この儀式には帝国の全員が参加して人口の大部分が失われるものの、生き残れた前世代は貴族階級となり、孵化した新世代には魔法的に強制された貴族への忠誠心が刻まれることになる。

セファリッドの皇帝アボシャン(Aboshan, Cephalid Emperor)

セファリッドの皇帝アボシャン(Aboshan, Cephalid Emperor)
データベースGathererより引用

マーフォークのラクァタス(Laquatus)はこの伝統儀式によって植えつけられた忠誠心を嫌悪しており、属国であるセファリッドの王アボシャン(Aboshan)と結託し、次の儀式の乗っ取りを仕掛けた。セファリッドは儀式の最中に攻撃を仕掛け、儀式により集まって来た生命エネルギーを自分たちの卵へと奪い取ることで、セファリッドの人口を一気に増加させると同時にマーフォークの新世代誕生を阻止した。こうして海の帝国内の力関係が逆転したのであった。

ラクァタスとアボシャンは両名共にオデッセイ・ブロックの登場人物であることから、この短編はミラーリ争奪戦の発生するAR4305年より数年から数十年前の出来事と考えられる。

ファイレクシア侵略戦争期のカードセット

インベイジョン・ブロックのカードセット「インベイジョン」「プレーンシフト」「アポカリプス」がファイレクシア侵略戦争そのものを扱っている。

オデッセイ・ブロックのカードセット「オデッセイ」「トーメント」「ジャッジメント」はファイレクシア侵略戦争期末期のオタリア大陸を描いている。

訳語のブレ

「Phyrexian Invasion」の翻訳は公式でも一定ではない。

インベイジョン・ブロック期はおおむね「ファイレクシアの侵略」と訳されていたが、その後、カードセットのドミナリア期では「ファイレクシアの侵攻」が多くなっている。その他に「の」が省かれて「ファイレクシア侵略/侵攻」になったり、後ろに「…戦争」を付けたり表記に幅がある。

「Invasion」の意味的には「侵略」でも「侵攻」でも間違いではないけれど、用語として本サイトでは「ファイレクシア侵略戦争」で統一する。

ファイレクシア侵略戦争期の年表

AR4205年
プロフェシー戦争終結から数週間後、ファイレクシア侵略戦争が開戦。ザルファーとシヴがフェイズアウト。

AR4206年
ラースの次元被覆。上古族の復活と再封印。ヨーグモスがレガシーの兵器で滅ぼされて終戦。

AR4207年
アーボーグで終戦記念式典。

AR4207年~
オタリア大陸の繁栄。

AR4305年
オタリア大陸でミラーリ争奪戦。



ファイレクシア侵略戦争期のまとめ

  1. ドミナリアのファイレクシア侵略戦争期はAR4205年~AR4306年。
  2. ドミナリアに対するファイレクシアの破滅的な次元間侵略、および、戦後の新たな暗黒時代の世紀である。
  3. オタリア大陸でのミラーリ争奪戦が終息し、カローナ戦争が起こる直前のAR4306年中にこの時代は終わる。
  4. ファイレクシア侵略戦争期の大まかな年表を作成した。

ファイレクシア侵略戦争期の関連記事

ドミナリア史:時代区分
マジック・ザ・ギャザリング(MTG)のドミナリアの歴史を大まかな時代区分に分けて解説する。公式ではAR-20000年からAR4560年までの約2万5千年をフォローしているが、さらに本サイトでは「先史」と「未来」を新たに追加設定して説明する。
  1. なぜならこの時代区分はThe Art of Magic: The Gathering – Dominariaで初めて定義された馴染みの薄いものだから
  2. 短編集などでインベイジョン・ブロックとオデッセイ・ブロックの物語の間の時期を「侵略戦争後(Post Invasion)」と記載していた
  3. 原文「The College of Artifice」
  4. おそらくエピティア(Epityr)と思われる
  5. オデッセイ・ブロックのフレイバー・テキストには「溶岩使いマトック(Matoc, lavamancer)」が存在しているので、祖父マトックは後に溶岩系魔術師に転向したと推測される。カマールも赤の破壊的な魔法をかける場面があるので、蛮族戦士と魔術の組み合わせにはそれほど違和感はない
  6. 原文「the headmaster of the academy」
  7. 作中では「The Omlerias」の他に「druids of the Omleria」との表記が見られる。「Oemleria(インドナツメの類)」の捩りか?