イニストラード:吸血鬼の新生子

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新生子(しんせいし:Neonate)」とは、イニストラード次元の吸血鬼に関するストーリー用語である。

この「新生子」に言及したカードは、イニストラード次元が舞台になる度に少しずつ数を増やしている。先日発売されたカードセット「イニストラード:真夜中の狩り」でも、新生子の衝動(Neonate’s Rush)というインスタント・カードが収録されたばかりだ。

今回は、イニストラード次元の吸血鬼の新生子(Vampire Neonate)について取り上げる。

吸血鬼の新生子の解説

新生子の衝動(Neonate's Rush)

新生子の衝動(Neonate’s Rush)
データベースGathererより引用

イニストラード次元では、吸血鬼となったばかりの者を「新生子(しんせいし)」と呼んでいる。

「Neonate」という英単語は「生まれて間もない子」のことで、日本語では「新生子・新生児・新生仔」などと訳される(人の場合は「…児」、動物の場合は「…仔」と漢字を使い分けるようだ)。

イニストラードの吸血鬼は貴族的で洗練された雰囲気があるものだ。しかし、新生子はまだ成りたてのためか各種カードにおいては吸血衝動の快楽に身を任せての短慮や粗暴、暴力的な面が強調されて描かれている。



吸血鬼の新生子

One day, they may be paragons of deadly elegance. For the moment, they possess nothing but thirst.
いつか、彼らは優雅の極致として模範となるだろう。今のところは、彼らには渇きしかない。
引用:吸血鬼の新生子(Vampire Neonate)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

吸血鬼の新生子(Vampire Neonate)

吸血鬼の新生子(Vampire Neonate)
データベースGathererより引用

吸血鬼の新生子(Vampire Neonate)というまさにそのものズバリなカードも存在している。このカードはカードセット「基本セット2019」収録のクリーチャー・カードである。基本セット2019には特定の舞台となる次元が設定されていないが、吸血鬼の「新生子」という表現は他の次元では見られないため、このカードはイニストラード次元の吸血鬼であろう。

新生子の別称

新生子は別の言い方で表現されることがある。

まずは1つ目。「新参者(Newly-sired)」はいくつかのフレイバー・テキストで見られる表現だ。設定解説記事A Planeswalker’s Guide to Innistrad: Stensia and Vampiresによると、「siring」あるいは「to sire」でイニストラードの吸血鬼が新たな吸血鬼を生み出す「繁殖」1を意味している。したがって、「Newly-sired」をより正確に言い表すなら「新たに繁殖した吸血鬼」となる。

続いて2つ目。イニストラード次元をD&Dで遊ぶルールである「Plane Shift: Innistrad」では、新生子は「a newly spawned vampire」と説明されている。すなわち、「新たに生まれた吸血鬼」あるいは「新たな落とし子」との意味である。

新生子を描いたカード

血に狂った新生子

While elder vampires select their meals with care, the newly sired frenzy at the first whiff.
古参の吸血鬼が注意深く食事を選ぶのに対し、新参者は最初の臭いに狂乱する。
引用:血に狂った新生子(Bloodcrazed Neonate)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

血に狂った新生子(Bloodcrazed Neonate)

血に狂った新生子(Bloodcrazed Neonate)
データベースGathererより引用

血に狂った新生子(Bloodcrazed Neonate)はカードセット「イニストラード」収録のクリーチャー・カードである。「イニストラード」は初めてイニストラード次元が登場したカードセットであり、このカードがMTG史上初の新生子に言及したカードとなる。

新生子が吸血衝動に狂乱している様子が表現されている。

フレイバー・テキストで「最初の臭い」と訳されている「the first whiff」は「最初のひと嗅ぎ」と捉えた方が理解しやすいだろう。注意深い古老と違って新生子の吸血鬼は、血にありつける…となったら最初のひと嗅ぎで我を忘れて狂乱してしまうのだ。

傲慢な新生子

“Manners are for mortals.”
「礼儀作法など、定命の者でもあるまいし。」
引用:傲慢な新生子(Insolent Neonate)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

傲慢な新生子(Insolent Neonate)

傲慢な新生子(Insolent Neonate)
データベースGathererより引用

傲慢な新生子(Insolent Neonate)は「イニストラードを覆う影」収録のクリーチャー・カードである。

傲慢な物言いをして、吸血鬼たちが連なるテーブルに直に腰掛ける無作法を犯しているが、所詮は新生子である。吸血鬼の力を手に入れたばかりの力無き新参が粋がっているだけであろう。

カードのメカニズムの方では、これを生け贄にして手札のカード1枚を新たなカードと交換する効果がある。愚かな餓鬼のやることだと古老たちにお目こぼしをもらってるうちはいいが、いざとなれば利用された上に容赦なく切り捨てられる、そんな意味合いの能力なのではないか?

新生子の衝動

“We spend our entire existence pursuing the joy of our first night’s feast.”
–Anje Falkenrath
「私たちは初夜の晩餐に味わった快感を一生涯かけて追い続けるの。」
–エインジー・ファルケンラス
引用:新生子の衝動(Neonate’s Rush)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

新生子の衝動(Neonate's Rush)

新生子の衝動(Neonate’s Rush)
データベースGathererより引用

新生子の衝動(Neonate’s Rush)はカードセット「イニストラード:真夜中の狩り」収録のインスタント・カードである。

フレイバー・テキストとイラストを見るに、新生子の吸血鬼が初めての吸血…すなわち「初夜の晩餐」を行って恍惚としている。イラストの左奥には首筋から血を流す犠牲者の女性がいる。イニストラード次元の吸血鬼は、こうして知った吸血の快感を追求するために自分の全存在を費やすのだという。

エインジー・ファルケンラス(Anje Falkenrath)

エインジー・ファルケンラス(Anje Falkenrath)
データベースGathererより引用

フレイバー・テキストのコメントの発言者がエインジー・ファルケンラス(Anje Falkenrath)である。ファルケンラス家はイニストラードの吸血鬼の四大血統の一角であり、エインジーは一族でも最古参の部類に入る無慈悲で冷酷で残忍な人物だ。



新生子を間接的に描いたカード

神出鬼没な拷問者

Older vampires are usually more cautious than the newly-sired, calling upon ancient magic for which neonates lack patience.
大抵の古参の吸血鬼は新参者よりも注意深く、新生子が持ち合わせていないような忍耐を必要とする古代の魔法を利用する。
引用:神出鬼没な拷問者(Elusive Tormentor)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

神出鬼没な拷問者(Elusive Tormentor)

神出鬼没な拷問者(Elusive Tormentor)
データベースGathererより引用

神出鬼没な拷問者(Elusive Tormentor)は「イニストラードを覆う影」収録のクリーチャー・カードである。

両面カードであり、表の神出鬼没な拷問者は古参の吸血鬼の素の状態を示し、裏面の陰湿な霧(Insidious Mist)は霧状に姿を変えた吸血鬼を描いている。条件を満たせば吸血鬼から霧に、霧から吸血鬼に変身できるのだ。

陰湿な霧(Insidious Mist)

陰湿な霧(Insidious Mist)
データベースGathererより引用

霧に変身した吸血鬼はイラストのように窓の格子をすり抜けて侵入できる。カードのメカニズムを見ても、ブロックされなくなるし、ブロックをすり抜けた後に元の姿に戻ることもできる。まさにイメージ通りだ。

イニストラードの吸血鬼の四大血統にストロムカーク(Stromkirk)がある。ストロムカークは青への親和性が伺える上に、古参の中には霧への変身を習得した者たちがいると設定されている。このカードは表が黒の吸血鬼で裏面は青の霧状態であり、明らかにストロムカークの古参吸血鬼を描いたカードだと分かる。

フレイバー・テキストでは、注意深い古参吸血鬼との対比として「新生子」への言及がされている。新生子にはより年嵩の吸血鬼のような忍耐力が欠けている、とのことだ。数々の新生子のカードを見ればそれは納得である。

おまけ:神出鬼没な拷問者のフレイバー・テキスト

Older vampires are usually more cautious than the newly-sired, calling upon ancient magic for which neonates lack patience.
大抵の古参の吸血鬼は新参者よりも注意深く、新生子が持ち合わせていないような忍耐を必要とする古代の魔法を利用する。

最後のこの節はおまけだ。

神出鬼没な拷問者の和訳製品版フレイバー・テキストはおおむね正しい翻訳だと言える。だが、個人的に少し不満が無いわけではない。それで、試しに自分なりに訳してみたのだ。

まず、「大抵の古参の吸血鬼は新参者よりも注意深く、」の節全体が、文末の「(古代の魔法を)利用する。」に掛かっているようにも読めるのが少しよろしくない。原文を簡略化するなら「より歳を重ねた吸血鬼は注意深い、(そして、彼らは)古代魔法を行使する。」との形なのだから。

次に、後半の「新生子が持ち合わせていないような忍耐を必要とする」という修飾部が冗長なのもが読み難さを増していると私は感じる。ただし、「calling upon ancient magic for which neonates lack patience」は訳すのが面倒な形でもあるのは確かだ。

「ancient magic for which neonates lack patience」は、「neonates lack patience for ancient magic(新生子は古代魔法のための忍耐が欠けている)」の変形だと解釈できる。日本語に置き換えると和訳製品版のようになるのは正しくはあるのだが……。

私の訳した文章はこちら。

より歳を重ねた吸血鬼は新参者よりも注意深いのが普通であり、古代魔法を行使できるが、そのための忍耐力が新生子には欠けている。

少し文章を崩してしまったけれど、私はこういう風に文章の流れを変えない方が好みだ。ぶっちゃけ、ただのわがままでは?と言われれば、まあそれはそう。

では今回はここまで。

吸血鬼の新生子の関連記事

  1. 「繁殖」という訳語は記事の公式和訳版からの引用である。ただし、この和訳版は翻訳が一定しておらず「吸血鬼化」や「一族を増やすこと」などとも訳されている