硬鎧の大群(Scute Swarm)はカードセット「ゼンディカーの夜明け」収録のクリーチャー・カードである。今回はゼンディカー次元に生息する昆虫「硬鎧虫(Scute Bug)」とその関連カードを解説する。
はじめに
カードセット「ゼンディカーの夜明け」が登場して、巷では硬鎧の大群(Scute Swarm)を何百体も増やすデッキが話題になっている。
硬鎧の大群は、土地が出るたびに自身と同じコピーを作り出すメカニズムがあるため、1体が2体に、2体が4体、8体、16体…と倍々になってあっという間に3桁の大群となってしまう。変容クリーチャーとの組み合わせると貧弱な1/1ではなく、変容した逞しい姿のままにコピーをどんどん作り出していく。
MTGアリーナでは実装してすぐに流行しており、PCに負担をかける勢いでコピーを生成する様は圧巻だ。PC破壊デッキとかサーバ破壊デッキなどと冗談めかして語られ、禁止待ったなしではと噂されるヤベー奴なのだ。
ということで、巷で今話題の硬鎧の大群(Scute Swarm)を本サイトでも取り上げてみようと思い立った。(本当は数か月前から続けている「プロフェシー戦争」の記事の続きを書き上げたいのだけれど、調査したデータ量が多くて中々まとめ切らないのだ…)
硬鎧虫の解説
硬鎧虫(Scute Bug)はゼンディカー次元に生息する甲虫の1種である。頑丈なかたい殻を持ち、大群を形成する習性がある。
「硬鎧」と訳されている「Scute」は「亀の甲羅やワニの硬い鱗、アルマジロの硬い板」などを指し、元々は「盾」を意味した言葉である。ゼンディカーの固有種として「硬鎧」と味付け訳をしたのだろう。なかなか雰囲気がある和訳名称だ。
最初の硬鎧虫は2009年のカードセット「ゼンディカー」収録の硬鎧の群れ(Scute Mob)であった。小説Zendikar: In the Teeth of Akoumでも硬鎧虫(Scute Bug)の名称で顔見せしている。2種類目の硬鎧虫は2020年のカードセット「ゼンディカーの夜明け」の硬鎧の大群(Scute Swarm)であり、実に11年ぶりの登場となった。
2種類の硬鎧虫カードを見ると、カードのメカニズムとしての共通項はそれほどないが、土地が増えると群れを成してどんどん増えていく雰囲気が持たされている。
小説での硬鎧虫
小説Zendikar: In the Teeth of Akoumでは「硬鎧虫(Scute Bug)」の名称で登場している。ただし、群れ成す甲虫としては出て来ておらず、ゼンディカー次元に生きる虫という描かれ方であった。入れ物に活用される殻や硬鎧虫が引っ掻いた跡などが言及されているが、生きた硬鎧虫そのものは出てきてはいない。
作中では硬鎧虫の殻が、「血棺(Bloodbier)の蒸留物」という矢じりに塗る毒物の入れ物として利用されていた。ちなみにゼンディカー次元でなくイニストラード次元には血茨(Bloodbriar)という似た名称の植物の精霊がいるが無関係である。
硬鎧の群れ
“Survival rule 781: There are always more scute bugs.”
–Zurdi, goblin shortcutter
「生き残りの法則781:硬鎧虫はいつでももっといる。」
–ゴブリンの近道抜け、ザーディ
引用:硬鎧の群れ(Scute Mob)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
硬鎧の群れ(Scute Mob)は最初の硬鎧虫カードである。
土地が5枚以上であれば毎ターン+1/+1カウンターが4個ずつ乗っていくというメカニズム。サイズアップするこの能力で群れが大きくなっていくフレイバーを表現している。
硬鎧の大群
“Survival rule 782: There are always more scute bugs.”
–Zurdi, goblin shortcutter
「生き残りの法則782:硬鎧虫はいつもいつももっといる。」
–ゴブリンの近道抜け、ザーディ
引用:硬鎧の大群(Scute Swarm)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
硬鎧の大群(Scute Swarm)は11年ぶりに登場した2番目の硬鎧虫カードである。
今回は、土地が6枚以上出ているなら土地が出るたびに自身のコピーを生み出すというメカニズムによって、大群形成の雰囲気を描いている。前回の硬鎧の群れ(Scute Mob)とは違ったアプローチに挑戦しており、それでいてイメージは同じという、絶妙なデザインとなっている。
フレイバー・テキストは、前回と法則の番号が違うバージョンとなっている(前回が法則781で今回は法則782)。ただし、法則の番号が違っているだけで、その内容は全く同じ文章である。
実は英語原文は全く同一の内容なのだが、和訳製品版では2回目ということを強調してなのか、「いつでも」ではなく「いつもいつも」と翻訳を変えてきている。英語原文は一語一句同じ文章で面白さを出そうとしており、和訳製品版は繰り返しであることを強めて天丼なおかしさを意識させようとしているようだ。笑いのアプローチが違うのが興味深いところである。
命拾い
“A good explorer has to be as slippery as a gomazoa, as tough as a scute bug, and luckier than a ten-fingered trapfinder.”
–Arhana, Kazandu trapfinder
「良い探険家ってのは、ゴーマゾア並みにつかみどころが無くて、硬鎧虫並みに頑丈で、十本指の罠探し並みについてなくちゃダメよね。」
–カザンドゥの罠探し、アルハーナ
引用:命拾い(Narrow Escape)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
命拾い(Narrow Escape)はカードセット「ゼンディカー」収録のカードである。フレイバー・テキストでは硬鎧虫は頑丈で、それが良い探検家の条件の1つだ、と語られている。
さて、硬鎧虫について一通り解説できたので今回はここまで。
追記:MTGアリーナでついに対処
硬鎧虫が問題になっていたMTGアリーナではついに2020年12月の更新でトークンに制約を課すことになった。プレイヤーごとに生成できるトークンの上限が250体に制限されたのだ。上限を越える場合はトークン生成をしてもなにも起こらない。(リンク)
アリーナにはすでに12月10日付で修正が適用済みだ。「予期せぬマッチの終了」問題がこれでやっと起こらなくなった。めでたしめでたし。