カードセット「兄弟戦争」の連載ストーリー、現在時間軸の第1章の雑感を記す。
現在時間軸第1章の公式リンク
The Brothers’ War | Chapter 1: Stronghold
現在時間軸第1章の雑感
第1章を読んでの雑感を思いつくままにザックリと書き記していく。
基本の方針はカードセット「団結のドミナリア」第1話の雑感と同じ。
第1章の舞台
カードセット「兄弟戦争」の連載ストーリー、現在時間軸の第1章の舞台を地図上で確認しよう。
カードセット「団結のドミナリア」のストーリーを受けて、テフェリーらは本拠地を移転する。潜伏工作員だったアジャニには知られていない秘密の場所を選別したところ、遥か昔のウルザの搭(Urza’s Tower)が新たな拠点となった。タイトルの「Stronghold」である。
この塔の位置はどこか?
兄弟戦争期のウルザは複数の塔を建設しているが、この新拠点は、人里離れた霧に覆われた渓谷に隠されており、何世紀も略奪も受けずに手つかずのまま放棄されていた。ウルザがここを兄弟戦争の惨禍から離れた個人的な作業場としていた、と伝えられている。
これは小説The Brothers’ Warで最初に登場した塔に違いあるまい。AR28年にヨーティアの首都クルーグがファラジ帝国の攻撃で陥落した後、ウルザはカー山脈のアルガイヴの国境付近にある霧深い渓谷に、塔を立てて拠点としていた。AR31年に、クルーグ陥落以来ずっと離れ離れとなっていたカイラとタウノス、ハービンの3人が辿り着き、ウルザと再会した場所だ。その頃のウルザは何年もこの塔から動かずに計画し準備をしていたことが分かっている。条件は満たしている。
1999年のカレンダー付属地図にはこの塔の位置が記載されている。そこから現代ドミナリア世界地図での位置を推定して、マークしたのが上記の地図となる。現在の新アルガイヴ、カー山脈東部である。
ウルザの塔に集結したメンバー
カードセット「団結のドミナリア」のストーリー最後のマナ・リグでの戦いから、数週間が経過している。
新拠点であるウルザの塔には、テフェリー、ジョダー、サヒーリ・ライ、ケイヤ、レンと七番、エルズペス、ビビアン・リードらが終結した。また、ドミナリアの各地域、別の所次元においても目的を同じくする同志たちが活動していた。
テフェリー
テフェリー(Teferi)はレンと七番を探し出して説得し、塔まで連れて帰還したばかりだ。
テフェリーはこの1か月間というもの多元宇宙全域で新ファイレクシアに対抗する協力者を探し歩いてきた。古参からは拒絶されたが、灯争大戦で共闘した若いプレインズウォーカー、サヒーリ・ライとケイヤは仲間になってくれた。
そしてレンを探しに出発したすぐ後に、エルズペスとビビアン・リードが塔にやって来ていたと知った。
ジョダー
ジョダー(Jodah)は占術探知を防ぐため、新たな拠点が必要だと提案した人物だ。テフェリーも賛同したが、それがウルザの塔だというのには必ずしも賛成ではなかった。
ジョダーは塔に到着したばかりのテフェリーを、温かい緑茶とお茶菓子の朝食を用意して出迎えた。
ジョダーが朝食に用意したビスケットはキイェルドーの伝統的なビスケットで、調理器具をサヒーリに作ってもらったのだという。
テフェリーが口にすると、甘くなく、塩気と妙な酸味が効いていて、歯の間に砂みたいな粒が残った。「こんな味なのか?」と尋ねられたジョダーも味見すると、「ゴキブリ粉末が古くなってるかもしれないね」と返答した。「ゴキブリ粉末だって」と目を見張るテフェリーを気にせずに、ジョダーはビスケットの残りをもぐもぐ口に頬張りながら肯定した。テフェリーは食べかけのビスケットを皿に戻した。
ジョダーは暗黒時代に生まれ2500年間の過酷な氷河期を生き抜いたツワモノである。昆虫食に抵抗はないのだろう。一方、氷河期以降に生まれたテフェリーはそうはいかなかったようだ。
ジョダーの用意したお茶の方は緑色で、レモンと蜂蜜の香りがテフェリーの心の凝りをほぐした。
テフェリーはタイムマシン完成後に自分は不在となってしまうため、ジョダーに新たなリーダーとなることを「考えて欲しい」と述べると、ジョダーは「(60年前と違って)命令しないのだな」と驚いてみせ、テフェリーは「頼む方が賢いと学んだんだよ」と返した。およそ60年前、AR4500年に2人は小説Planar Chaosで対面しており、その時を想起したやり取りだ。
ジョダーは、これもリーダーの仕事だな、とエルズペスの宥め役に回った。
ビビアン・リード
ビビアン・リード(Vivien Reid)はニューカペナ次元からエルズペスと共に来訪した。
ビビアンは新ファイレクシアの内通者ウラブラスクからの情報を共有した。新ファイレクシア次元の状況、エリシュ・ノーンがほぼ派閥を統一し、「1つの特異点」を作ろうとしていること、そしてウラブラスクはミラディン人と連携して革命を計画しており、その実行は数日後だということ、更に仲介者として接触してきたテゼレットのことを。
ビビアンは作戦会議に参加すると休息も取らずに旅立った。これからの予定はラヴニカ次元のジェイスに状況報告し、次にイコリア次元では防衛組織を構築に尽力するつもりだ。
ケイヤ
ケイヤ1(Kaya)はメンバーたちに各所の状況をまとめて報告した。
カルドハイム次元とイクサラン次元では既に動員令が発動されている。ジェイスはラヴニカ次元でギルドの支援を求め、チャンドラはゼンディカー次元でニッサと接触している。この塔での任務が完了後に、サヒーリはカラデシュ次元の防衛の先陣を切る予定。新ファイレクシア次元では、コスが率いるミラディン陣営がファイレクシアの核への攻撃を計画している。
更に、ケイヤがカルドハイムから持ち帰った情報を、ビビアンのものと統合して敵の意図を推測。カルドハイム次元の世界樹は全ての領界同士を瞬時に行き来可能にするネットワークであり、もしファイレクシアンが世界樹を複製あるいは別目的に利用できたとしたら、多元宇宙のどの次元にも連結して即座に直接攻撃が可能となってしまうだろう。
テフェリーはケイヤの人脈を通じて更なる情報収集を頼んだ。
サヒーリ・ライ
サヒーリ・ライ(Saheeli Rai)はウルザの塔の作業場で、酒杯の複製品とタイムマシン「Temporal Anchor(時間錨?)」を製作作業中だった。酒杯は出来上がっており、タイムマシンは今夜にも完成予定であった。
テフェリーには、目的の下で協力する皆を象徴する、小型の機械仕掛けの孔雀をプレゼントした。
レンと七番
レンと七番(Wrenn and Seven)はテフェリーに貴重な助言をして精神的な支えとなっている友人だ。
テフェリーはレンを探し回って、クライデ(Cridhe)という次元でようやく発見した。レンと七番はこの次元の氏族樹から強烈なマナ・シャワーを浴びているところだった。クライデは小説The Cursed Landで物語の舞台となった島型の次元で、氏族樹も作品内で語られたものである。これまではこの小説を除いて、他のストーリー作品では言及された事すらなかった次元である。
エルズペス
エルズペス(Elspeth)は友人アジャニを求めてドミナリアに戻ってきた。ニューカペナ次元での成果を携え、ビビアン・リードを同伴して塔に来たのだ。しかし、アジャニはファイレクシアの潜伏工作員に改造され、すでに本来の彼は失われてしまっていた。
アジャニの喪失にひどく落ち込んだエルズペスは、テフェリーにささくれだった感情をぶつけ、新ファイレクシアへの攻撃計画に対しては辛辣に全否定した。
エルズペスはウルザの塔を離れるつもりだったものの、ジョダーの取り成しもあってか、旅立つ前にテフェリーに再び対面した。まずエルズペスはテフェリーに謝罪すると、テフェリーの勧めで食事を共にした。彼の娘を守りたいという愛情の吐露を受けた後、エルズペスは仲間となって塔に残ることを決めた。
エラダムリーの言葉の引用元
There are times when destiny calls forth a people and demands an action. Now is the time. We are the people. This is our action.
— Eladamri, Lord of Leaves
ストーリー第1章冒頭から引用
第1章の冒頭は、ファイレクシア侵略戦争時の英雄エラダムリー(Eladamri)の言葉を引用している。この出典は何処だろうか?それは次に紹介するカードだ。
“There are times when destiny calls forth a people and demands an action. Now is the time. We are the people. This is our action. Charge!”
–Eladamri, Lord of Leaves
人々を奮い立たせ、その人々に行動を要求するときというものがある。今がそのときだ。我々がその人々だ。これがその行動だ。行け!
–葉の王、エラダムリー
引用:覚醒(Awakening)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
覚醒(Awakening)はカードセット「ストロングホールド」収録のエンチャント・カードである。
このフレイバー・テキストは、ラース次元の民衆を奮い立たせ、エヴィンカーの要塞への攻撃を出るという、エラダムリーの檄である。最後の「行け!(Charge!)」を除けば同一の文章である。
「要塞」つまり「Stronghold」はストーリー第1章のタイトルと同じだ。覚醒のフレイバー・テキストは要塞への攻撃なので状況は異なるが、今こそ行動すべしと決起した人々の姿は重なるものがあろう。
ドミナリア各地の報告
シヴでは、ジョイラがドラゴン、ヴィーアシーノ、ゴブリン、ギトゥ族を結集させている。
オルヴァーダは長年ベナリアとは険悪な関係にあったが、豪商たちはそれを一旦脇に置いて、黎明をもたらす者ライラ率いるセラ軍に食料と物資を提供することに同意した。
アーボーグでは、生者を救済するためウィンドグレイス卿が蘇った噂が聞こえてくる。
さいごに
カードセット「兄弟戦争」の連載ストーリーが公開され始めた。どうやら「現在時間軸」編と、タイムマシンで兄弟戦争を観察する「過去軸」編の2つの流れで語っていく趣向のようだ。現在時間軸の方は「章(Chapter)」で、過去軸の方は「回(Episode)」で話数を換算して区別するようである。
本記事はストーリー作品の雑感の初回として、現時点では公式和訳が未公開状態である第1章「Stronghold」を選んだ(明日の昼にでも公式和訳版は出てくると予想しているが…)。新拠点ウルザの搭でテフェリーを中心に仲間が集まり、各次元での同志たちも着々と対新ファイレクシアへの準備を進めているようだ。
現在・過去の2軸で語られるストーリーには興味が尽きないが、この2軸展開は欲張り過ぎではないかと不安も覚えている。直近の「ニューカペナの街角」と「団結のドミナリア」のストーリーは尺足らずで話が駆け足になったり、説明不足で納得しきれない展開が起こったりだったのだ。今回は話数は十分に取ってじっくりと描写をしてほしいものだ。
では、今回はここまで。
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