エルドレインの王権:ピノッキオとブルー・フェアリー

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カードセット「エルドレインの王権」児童文学「ピノッキオの冒険」モチーフのカードをまとめた。さらに、ピノキオの冒険とエルドレイン次元の「ブルー・フェアリー」の比較を行った。

小説「Throne of Eldraine: The Wildered Quest」



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ピノッキオとブルー・フェアリーの解説

カードセット「エルドレインの王権」には、児童文学「ピノッキオ1の冒険」をモチーフとしたカードが収録されている。

ピノッキオブルー・フェアリーは「ピノッキオの冒険」の登場人物である。主人公のピノッキオは意志を持ち動く木の人形の少年。苦難を乗り越えて精神的に成長して、最後には妖精ブルー・フェアリーの力で人間になる。

「ピノッキオの冒険」は原典作品から派生したり、アレンジした映画や漫画、絵本など沢山のバリエーションが存在している。英語圏で俗にブルー・フェアリーと呼ばれるキャラクターは原典では「トルコ石の髪のフェアリー」である。

エルドレインの王権では、ピノッキオはほぼそのままの印象でカード化されている。その一方で、ブルー・フェアリーに関しては原典でなくアレンジされたディズニーのアニメ映画の方の影響が強く見られる。また、青のカードには文字通り「青い肌のフェアリー」が多数登場している。小説「Throne of Eldraine: The Wildered Quest」にも「blue faerie」が出てくるが、「ピノッキオの冒険」の助言者・後援者のフェアリーとは全然違った、意地悪でいたずら好きな定番のフェアリーとして描かれている。

したがって、本記事では以下3つに分けて紹介する。



エルドレインの「ピノッキオの冒険」をモチーフとしたカード

知りたがる人形(Inquisitive Puppet)

“The strings were gone, but he still felt the pull of invisible forces tugging at his mind.”
–Beyond the Great Henge
「糸はなくなったが、まだ見えない力に心が引っ張られているように感じていた。」
–グレートヘンジを超えて
引用:知りたがる人形(Inquisitive Puppet)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

知りたがる人形(Inquisitive Puppet)

データベースGathererより引用

知りたがる人形(Inquisitive Puppet)はMTG版のピノッキオである。カード自体は木製人形の少年アーティファクト・クリーチャーであり、人間に生まれ変わるメカニズムが込められている。

イラストの背景にうっすらと浮かびあがる姿はブルー・フェアリーであろう。フレイバー・テキストによると、MTG版のピノッキオは操り人形であった時の糸が無くなっても見えない力に引っ張られているように感じている。見えない力はブルー・フェアリーかもしれない。

動かすフェアリー(Animating Faerie)

A true puppet master has no need for strings.
本物の人形使いに糸は必要ない。
引用:動かすフェアリー(Animating Faerie)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

動かすフェアリー(Animating Faerie)

データベースGathererより引用

動かすフェアリー(Animating Faerie)はアーティファクトをクリーチャー化するメカニズム内蔵のフェアリー・カード。出来事の「命の吹き込み(Bring to Life)」がクリーチャー化である。

「ピノッキオの冒険」を原作とするディズニー映画では、ブルー・フェアリーがピノッキオをただの木の人形から意志を持って動けるようにする。このカードはその展開になぞらえたものだろう。

フレイバー・テキストによると、このフェアリーを「本物の人形使い」と呼び「糸」が不要であるとしている。知りたがる人形(Inquisitive Puppet)のフレイバー・テキストと呼応しており、MTG版ピノッキオ誕生の場面と見ることもできる。

実は、このカードだけがエルドレインの王権の青のフェアリーで肌が青くない。

青い肌のフェアリーに該当するカード

カードセット「エルドレインの王権」の収録されている青のカードに出てくるフェアリーは青い肌をしている(青紫、青、赤紫など幅はある)。

追加公式情報

ワールドガイド記事Planeswalker’s Guide to Eldraineによると、エルドレインのフェアリーはひとまとめにフェイ(Fae)と呼ばれている。僻境にいるフェイには一般的な種類が3つある。青いカードのフェイはその3種類の中でも泥棒のフェイ(Thieving fae)が相当する。

泥棒のフェイは手の届くところのものは何でも盗み、行く先々で騒ぎと不満の種をまいていくトリックスターである。身体は小型で、リンゴよりも大きくはなく、先の尖った青い羽と髪を持っている。盗んだ鍵を鋭く磨いて剣に変え、2人間の衣服から引き裂いたぼろきれをまとう。小さい身体にも関わらず、泥棒のフェイは自惚れの自慢屋なのでいつも犯罪の痕跡を残して去っていく。だから、被害者の人間は自分が誰にしてやられたかをありありと思い知らされるのだ。3泥棒のフェイはペテンと悪巧みを満喫している。

また、泥棒のフェイは王国内で見かけるフェイの中でも一般的な種類である。人間の家や城に忍び込んでくすねて回っているのだ。

厚かましい借り手(Brazen Borrower)

厚かましい借り手(Brazen Borrower)

データベースGathererより引用

厚かましい借り手(Brazen Borrower)は盗みを働くフェアリー。出来事の些細な盗み(Petty Theft)はパーマネントを手札に戻すバウンス効果を盗みと表現している。

イラストを見ると場所はエンバレス城で、赤い液体の入ったガラス瓶を脇に抱えたフェアリーをエンバレスの騎士らしき人物が追い掛けている。「借りる」と言いつつ「盗んだ」のだろう。

願いのフェイ(Fae of Wishes)

願いのフェイ(Fae of Wishes)

データベースGathererより引用

願いのフェイ(Fae of Wishes)は、願いを成就させるフェアリー。出来事の成就(Granted)だが、原文の「Granted」は「願いを叶える」という意味合いがある。

カードセット「エルドレインの王権」の青カードのフェアリーは、大部分が盗みや意地悪ないたずらを実行しているが、このカードは願いを叶えるという恩恵を与えてくれる。

フェアリーの陣形(Faerie Formation)

The throng flitted from castle to castle, leaving a trail of star-crossed love, damaging rumors, and missing heirlooms in their wake.
まとまって城から城へと飛び回り、不運な愛と酷い噂と消えた家宝の痕跡を残してゆく。
引用:フェアリーの陣形(Faerie Formation)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下がMTGアリーナの和訳

フェアリーの陣形(Faerie Formation)

データベースGathererより引用

フェアリーの陣形(Faerie Formation)は群れを成して飛ぶフェアリー。フレイバー・テキストによると城から城へと渡り、行く先々で性質の悪いいたずらを仕掛けている。

フェアリーの荒らし屋(Faerie Vandal)

History may be written by the triumphant, but it’s often rewritten by the troublesome.
歴史は勝者によって綴られるというが、厄介な者に書き換えられることも多い。
引用:フェアリーの荒らし屋(Faerie Vandal)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

フェアリーの荒らし屋(Faerie Vandal)

データベースGathererより引用

フェアリーの荒らし屋(Faerie Vandal)は、フレイバー・テキストによると、書物に綴られた歴史を書き換えるフェアリーである。

カードセット「エルドレインの王権」では、書物を破損するフェアリーに秘本の略奪者(Tome Raider)もいる。

惑乱スプライト(Hypnotic Sprite)

惑乱スプライト(Hypnotic Sprite)

データベースGathererより引用

惑乱スプライト(Hypnotic Sprite)は催眠魔法を使うフェアリー。出来事の催眠の輝き(Mesmeric Glare)が相手を惑わすフェアリーの魔法を表現している。

イラストで催眠をかけられている人物は、その衣服と装飾からアーデンベイルの貴族か少なくとも富裕層と思われる。このスプライトが金の丸い装飾物を外して盗んでいる。

オーコの取り巻き(Oko’s Accomplices)

They function as everything from assassins to jesters in the name of their fae king.
フェイの王の名のもとに、暗殺者から道化師まで何でもやる。
引用:オーコの取り巻き(Oko’s Accomplices)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

オーコの取り巻き(Oko's Accomplices)

データベースGathererより引用

オーコの取り巻き(Oko’s Accomplices)はエルドレイン次元とは別の次元からの来訪者オーコを「(自分たちの)フェイの王(their fae king)」と呼ぶフェアリーたち。左手のフェアリーはハサミを剣にしている。

秘本の略奪者(Tome Raider)

“Humans are so forgetful. Every page I steal becomes a secret they can’t remember.”
「人間ってとっても忘れっぽい。私が盗んだページは全部思い出せない秘密になっちゃうんだから。」
引用:秘本の略奪者(Tome Raider)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

秘本の略奪者(Tome Raider)

データベースGathererより引用

秘本の略奪者(Tome Raider)は書物のページを盗むフェアリー。

カードセット「エルドレインの王権」では、書物を破損するフェアリーにフェアリーの荒らし屋(Faerie Vandal)もいる。

無礼の罰(Didn’t Say Please)

“If you’re in our home, we expect you to mind your manners.”
「私たちの家にいるときは、礼儀をわきまえなさい。」
引用:無礼の罰(Didn’t Say Please)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

無礼の罰(Didn't Say Please)

データベースGathererより引用

無礼の罰(Didn’t Say Please)は魔法の紐で顔を雁字搦めにしているフェアリー。

「無礼の罰」と訳されたカード名「Didn’t Say Please」は「お願いします(プリーズ)と言わなかったよな」くらいの意味。

極小(So Tiny)

His sword sounded like a silver chime on the glass jar, and the sprite laughed with delight.
ガラス瓶に剣が当たるとチャイムのような音がして、スプライトは嬉しそうに笑った。
引用:極小(So Tiny)名のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

極小(So Tiny)

データベースGathererより引用

極小(So Tiny)では魔法で縮小化された剣士がガラス瓶に閉じ込められている。

フェイ隠し(Stolen by the Fae)

Denizens of the wilds don’t always seek to harm intruders. Sometimes they simply misplace them.
僻境の住民たちは侵入者に必ず危害を加えるわけではない。変な場所へ連れて行くだけのこともある。
引用:フェイ隠し(Stolen by the Fae)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

フェイ隠し(Stolen by the Fae)

データベースGathererより引用

フェイ隠し(Stolen by the Fae)は青い肌のフェアリーたちに連れ去られる人物が描かれている。

カード名で「隠し」と訳される原文は「Stolen」で「盗まれる」という意味である。泥棒のフェイは物だけでなく人間すら盗んでいく。

輝き追い(Shinechaser)

輝き追い(Shinechaser)

データベースGathererより引用

輝き追い(Shinechaser)はイラストを見ると、鋭く磨かれた歯を持つ鍵の剣を持ち、ボタンがついた人間の衣服の切れ端を身にまとう小型のフェイだ。肌はほとんど白に近い青白さで、他の青カードのフェアリーほど青みが薄いものの、泥棒のフェイの特徴を備えている。

型破りな協力(Improbable Alliance)

“I agreed to light his way as long as he always had my back.”
–Squill, Mistford pixie
「私を守ってくれるんだったら、道を照らしてやってもいいって言ったのよ。」
–ミストフォードのピクシー、スクウィル
引用:型破りな協力(Improbable Alliance)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

型破りな協力(Improbable Alliance)

データベースGathererより引用

型破りな協力(Improbable Alliance)には照明代わりにされた青い肌のピクシーが描かれている。このカードについてはこちらでも扱っている。

オーコの歓待(Oko’s Hospitality)

“My advisors recommend I let them eat you.”
–Oko
「私の補佐たちが、君を食べさせろと言っているんだ。」
–オーコ
引用:オーコの歓待(Oko’s Hospitality)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

オーコの歓待(Oko's Hospitality)

データベースGathererより引用

オーコの歓待(Oko’s Hospitality)のイラストには、オーコの「補佐たち(advisors)」の中に青い肌のフェアリーも含まれている。

フェアリー・トークン

エルドレインの王権のフェアリー・トークン

エルドレインの王権の
フェアリー・トークン
公式記事より引用

カードセット「エルドレインの王権」のフェアリー・クリーチャー・トークンは全て、青で飛行を持つ1/1クリーチャーである。このトークンのイラストも青い肌のフェアリーである。

エルドレイン王権でフェアリー・トークンを出すカードは以下の4種類である。巧妙な工作員、アリーラ(Alela, Artful Provocateur)フェアリーの陣形(Faerie Formation)型破りな協力(Improbable Alliance)フェイ隠し(Stolen by the Fae)



小説「Throne of Eldraine: The Wildered Quest」のブルー・フェアリー

小説「Throne of Eldraine: The Wildered Quest」に登場したフェアリーは「blue faerie」と呼ばれ、意地悪で、いたずらや盗みなど悪さをする小型の妖精である。歯は小さく鋭い。ペン先と棒で作った剣や槍、棘の矢などで極小の武装している。死亡すると身体は塵となって消えてしまうが、携帯していた武器は残る。

作中で「blue faerie」と呼称されている。ただ、どうして「blue(青)」という名前なのかは具体的に触れられていない。単純に考えて、青い外見のフェアリーなのだろう。いくつかのカードに描かれた青い肌のフェアリーのように。

小説「Throne of Eldraine: The Wildered Quest」



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小説のBlue Faerie(ネタバレ注意)
アーデンベイル城への報告:ある州(canton)で、家臣(steward)が1人の村人を窃盗罪で訴えたが、その男は宝箱の鍵をくすねたのはブルー・フェアリーたちだと主張した(作中では報告のみで真偽は不明)。
小説のBlue Faerie(ネタバレ注意)
アーデンベイル城への報告:ブルー・フェアリーの集団が鶏小屋を荒らし、番犬を悩ませている。
小説のBlue Faerie(ネタバレ注意)
リンデン女王への報告:アーデンベイル城にブルー・フェアリーが侵入した。その内の1体をヘイゼル・ケンリスはスリング(sling:投石器)で殺したが、まだ城内には潜んでいるかもしれない。
小説のBlue Faerie(ネタバレ注意)
本性を現したオーコは茨の玉にブルー・フェアリーの群れを閉じ込めたものを双子に放り投げた。そうとは知らぬ双子が魔法で撃ち落とすと中からブルー・フェアリーが弾け出てきて、極小の槍や棘の矢で双子の馬を突いてきた。群れが双子を困らせているうちにオーコは姿をくらました。

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マジック・ザ・ギャザリング(MTG)のカードセット「エルドレインの王権(Throne of Eldraine)」収録のカードの中からピックアップしてストーリーや設定を解説する。
  1. ピノキオとも。個人的にはピノキオ表記の方に親しみがある
  2. 公式和訳記事プレインズウォーカーのためのエルドレイン案内は「盗んだ鍵を剣にまとめ」と誤訳している。原文の「file」を「削る・磨く」でなく「綴じ込んで整理する・ファイルする」の意味に取り違えてしまっている。
  3. 公式和訳記事プレインズウォーカーのためのエルドレイン案内は「人間の犠牲者は彼らを懲らしめるには何処へ行けば良いかがわかります。」と誤訳している。原文は「Despite their size, thieving fae are cocky and boastful, always leaving marks of their crimes behind so their human victims know exactly who got the best of them.」である。「get the best of…」は「勝負で相手に勝つ、相手を出し抜く」の意。「犠牲者を出し抜いたのが誰かわかる」という原文がどういうわけか「犠牲者は犯人を懲らしめるためにどこに行けばいいかわかる」という全く違う内容が作文されている。