兄弟戦争:ストーリー(過去時間軸)第1回

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カードセット「兄弟戦争」の連載ストーリー、過去時間軸の第1回「The End(邦題:終わり)」の雑感を記す。

過去時間軸第1回の公式リンク

The Brothers’ War | Episode 1: The End

The Brothers' War | Episode 1: The End
The world ends. Snow falls in Penregon. The grain runs low. The dead walk. A resumption of old work. The Talites arrive.

メインストーリー第1話:終わり

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過去時間軸第1回の雑感

第1回「The End(邦題:終わり)」を読んでの雑感を思いつくままにザックリと書き記していく。

基本の方針はカードセット「団結のドミナリア」第1話の雑感と同じ。

第1回の舞台

兄弟戦争:過去時間軸第1回地図
アンティキティー戦争期のテリシア地図

カードセット「兄弟戦争」の連載ストーリー、過去時間軸の第1回の舞台を地図上で確認しよう。

時代設定:AR69年
主舞台:ペンレゴン

ペンレゴン(Penregon)はテリシア大陸東岸の港湾都市で、かつてのアルガイヴ国首都だ。アルガイヴ・コーリス連合の王侯貴族が宮殿の崩落で滅んだため、カイラがペンレゴンの指導者となっている。

ペンレゴンの西に連なる山脈地帯がカー山脈1(Kher Ridges)だ。ペンレゴンの東海が臓物海(Visceral Sea)で、大陸南東にあったアルゴス(Argoth)の島は戦争終結時の爆発でほとんど吹き飛んでしまった。

地図上に矢印で記したのは、タル教徒の進路である。大陸北部のギックス僧院(Monastery of Gix)を滅ぼし、ヨーティア国の首都クルーグ(Kroog)の廃墟を通り抜け、冬が明けるとカー山脈を越えてコーリス(Korlis)を解放、そしてペンレゴンに到着したのだ。

カイラ・ビン=クルーグ

カイラ・ビン=クルーグ(中央)

カイラ・ビン=クルーグ(中央)
過去時間軸ストーリー第1回より引用

カイラ・ビン=クルーグ(Kayla bin-Kroog)は過去時間軸のストーリー第1回と第2回の主人公。

ヨーティア国の姫として生まれ、ウルザと結婚し、首都クルーグ陥落し母国がファラジ帝国に占領された後はアルガイヴ・コーリス連合国に身を寄せていた。兄弟戦争が終結した現在はペンレゴンに生き残った貴族として、都市の指導者となっている。

「カイラ・ビン=クルーグ」という名前の表記について。カードセット「兄弟戦争」では、カード化したカイラのカード名でもストーリーの公式和訳版でも、今までとは訳し方が変わってしまっている。伝統的なMTG翻訳に従えば「bin-Kroog」は「ビン=クルーグ」とするべきなのだが、何故か「ビン・クルーグ」になっているのだ。本サイトは従来通りの表記「カイラ・ビン=クルーグ」で通すことにしている。

タウノス

タウノス(Tawnos)

タウノス(Tawnos)
過去時間軸ストーリー第2回より引用

タウノス(Tawnos)はウルザの弟子で、カイラの友人であった人間男性の工匠。アルゴス島の最終決戦場から生還した。

ペンレゴンの復興のため、平和利用目的の公用自動人形(Civil Automatons)、略して公用機(Civil)を開発した。

ミュレル

ミュレル(Myrel)

ミュレル(Myrel)
過去時間軸ストーリー第2回より引用

ミュレル(Myrel)はペンレゴンの偵察隊隊長。人間女性。

個人的に「Myrel」という綴りで「ミュレル」と読ませるのに違和感を覚える。「マイレル」くらいじゃないだろうか(でなければ「ミレル」)。

ラディック

ラディック(Raddic)はヨーティア出身の人間男性で、現在はタル教徒の指導者である。10万人かそれ以上とも思えるタル教徒の行軍を指揮し、ペンレゴンには同志と援助を求めて立ち寄ったという。

アラー(Alah)は現在のミュレルの僚友であるが、話の流れからして元は敵軍のファラジ帝国軍人であったに違いない。旧時代勢力の垣根を越えて協力するタル教会の在り方が、ラディックとアラーの2人の関係で端的に示されている。

タル教

タル(Tal)はヨーティアの太陽に関係する古代神。戦前は目立たない宗派であったようだが、機械魔術の浄化を唱える信者たちの旗頭であり精神的主柱となっている。

タル教徒はテリシア中央北部のギックス僧院を攻め滅ぼし、クルーグの廃墟を通過し、カー山脈を越えて東進してコーリスを解放した。現在はウルザの遺した「鉄の塔」を標的と定めており、その途中でペンレゴンにやってきた。タル教徒はペンレゴンを機械に堕落したままの救えない街と見做している。

これが暗黒時代テリシアで権勢を誇るタル教会の始まりである。魔術と工匠術、およびその術者を徹底的に弾圧し、異端審問や魔女狩りを行い、テリシア各地の都市国家群に多大な影響力を有することになる。

教会による魔法弾圧はカードセット「ザ・ダーク」小説Dark Legacy時点でも存在したもの。ただし、タル教会というより具体的な実態を備えて描かれたのは小説The Gathering Darkにおいてである。タル信仰の起源がヨーティアの古い宗教にあることもそこで言及済みであった。

今回の連載第1回ではタル教会隆盛の始まりと、最初の指導者ラディックという人物の存在が初めて語られている。

タル教会とタル教徒

今回の連載第1回と第2回ではタルの信奉者を、原語では「Talite」と表記している。これは小説The Gathering Darkでは見なかった書き方で、今回が初となる表記法だ。意味はそのまま「タル教徒」だ。

公式和訳版では「The Church of Tal」を「タル教団」、「Talite」を「タル教団員」と訳しているが、私にはしっくりこないので本サイトはそれぞれ「タル教会」と「タル教徒」と表記することとした。

記事の残りは少し細かい部分を取り上げる。



臓物海

ヴィセリッドの徒食者(Viscerid Drone)

ヴィセリッドの徒食者(Viscerid Drone)
データベースGathererより引用

臓物海(Visceral Sea)。テリシアの東の海の名称が初めて登場した。「visceral」とは「内臓」のこと。

この名称は甲殻類系種族ホマリッドの一種、ヴィセリッド(Viscerid)から新規設定されたものであろう。ホマリッドは南半球の冷たい深海に生息していたが、氷河期到来による寒冷化で生息域を北へと拡大し繁栄していく。そして、酒杯爆発で大陸プレートが裂けて生じた深海大海溝を辿り、北半球のテリシアにまで到達し、氷河期以降もテリシアの海域に定着することになる。それがヴィセリッドだ。

おそらくは何世紀かの後、東の臓物海からホマリッドが出現し、テリシア人は未知の種族に臓物海の生き物という意味で「ヴィセリッド」と名付けることになるのだろう。

ヴィセリッドの存在からの逆算で名付けられた海というわけだ。しかし、テリシア人がこの海を「臓物海」などと不気味な名称で呼んだそもそもの理由は定かではない。

割れた窓

The papers fluttered to the floor some distance away near a cracked-open window overlooking the city, where they mixed with the melting flakes of snow drifting in.
報告書は床を滑り、見下ろす窓の近くで止まった。わずかな隙間から吹き込む雪が融け、報告書に染みていった。
引用:上が原文、下が公式和訳版

内容と表現が削ぎ落されたり挿げ変わっていたりしている。

具体的には、窓がどこを見下ろすものかという情報が欠落し、この窓が割れていることが抜かされてただの隙間風のように書き換えられ、融けかけの雪と書類が混ざったという状況が雪が染みると変更されている。

報告書は床を滑って、街を見下ろす割れた窓の近くで止まり、吹き込んでくる融けかけの雪と混ざり合った。

戦後5年経っても、かつて栄えた首都ペンレゴンの政治と権力の中心ともいえる会議室ですら、割れた窓1つ修理できていない。

カイラはタウノスの言葉を正した

“The world has changed since I was last a part of it.” Tawnos said, tucking his cloak around himself. “I never knew it to snow this close to the sea.”
“The world was changed,” Kayla corrected him.
「私がかつていた世界は変化しつつあります」 タウノスは外套を身体に巻きつけた。「こんなにも海の近くで雪を見たのは初めてでした」
「世界は変わってしまったのです」 カイラは彼の言葉を正した。
引用:上が原文、下が公式和訳版

公式和訳版はカイラが何を訂正したのかが分かってない作文だ。タウノスが変化途中と言ったので、カイラが変化済みだ、と訂正しているのではない。

原文を見れば、タウノスは「The world has changed」つまり完了形で「世界は変わった」と言い、カイラの方は「The world was changed」と受身形で「世界は変えられた」と述べている。

「私がかつていた世界は変わってしまいました。」 タウノスは外套を身体に巻きつけた。「こんなにも海の近くで雪を見たのは初めてでした」
「世界は変えられてしまったのです。」カイラは彼の言葉を正した。

勝手に世界が変化したんじゃなく、兄弟戦争が、ウルザが、戦争に加担したあなたや私たちが、変えてしまったんだ、他人事のような口振りは止めなさい、という意味合いである。

セイボリー?

small, steaming, savory pastries
小さくも湯気を立てるセイボリーのパイ
引用:上が原文、下が公式和訳版

「savory」が料理の材料のように「セイボリー」と訳されてしまっている。

湯気を立てる香ばしい小さなペイストリー(パン菓子)

タウノスはうつむいていない

Tawnos said, quiet but firm, eyes downcast.
うつむいて小声で、だが確固としてタウノスは言った。
引用:上が原文、下が公式和訳版

タウノスは「うつむいて」はいない。「目を伏せて」いるだけ。

うつむく:顔を下に向ける
目を伏せる:視線をそらして下を向く

タウノスは伏し目がちに静かに、しかししっかりと言った。

ミシュラが機械と融合していた…の件

“Turned by that creature. Fused with a machine.”
「その生物へと変えられていました。機械に融合して」
引用:上が原文、下が公式和訳版

全然違う。

「that creature」は、ドラゴン・エンジンと融合したミシュラのことではなく、この文の少し前で言及されたデーモン(すなわちギックス)のこと。

「あの怪物によって改造されていました。機械と融合した姿に。」

獅子の堂とペンレゴン港

獅子の堂(The Lion’s Hall)ペンレゴン港(Penregon Harbor)の2つの名称は今話が初出のはずだ。

アルガイヴとアルガイヴ王族の象徴として「ライオン」が用いられるという事実も今回が初めてであると思われる。

ウルザからカイラへの言伝

“He asked me to tell you to, ah”—Tawnos sipped his own tea—”to ‘remember him not as he was, but as he tried to be.'”
「貴女に伝えてくれとの事でした。その――」 タウノスは茶を一口すすった。「そのままの私ではなく、私がなろうとした私を覚えていてほしい、と」
引用:上が原文、下が公式和訳版

このウルザの言伝は小説The Brothers’ Warのエピローグからの引用だ。

額は脈打たない

The pulse at Kayla’s temple quickened
カイラの額の血管が大きく脈打った。
引用:上が原文、下が公式和訳版

「temple」は「額」ではなく「こめかみ」であるし、額は血管が浮き上がることはあっても拍動はしない。

数か月遅れではない

Spring arrived months later,
数か月遅れの春が訪れると、
引用:上が原文、下が公式和訳版

この文章は例年より数か月春が遅いという意味ではない。温かい季節が年ごとに短くなっているのは事実であるにしても、それとこの文の表現は関係ないのだ。

数か月後に春が訪れると、

この文は単にタウノスの訪問から数か月経過して春となったという時間経過に過ぎない。

最も沢山ではない

the earth where the worst of the war’s machines had died
あの戦争の機械が最も沢山倒れた場所
引用:上が原文、下が公式和訳版

原文は「最悪」という度合いであって、公式和訳版のように「最も沢山」と数量のことではない。

戦時中の機械の中でも最悪の部類が倒れた場所

トマクルの戦いの発生した年が確定

再帰のオベリスク(Obelisk of Undoing)

再帰のオベリスク(Obelisk of Undoing)
データベースGathererより引用

the Tomakul Campaign of 955
955年のトマクル戦役
引用:上が原文、下が公式和訳版

この955年は当時の暦「ペンレゴン創設暦(PF)」のもの。PF912年がAR0年に当たる。

したがって、955-912=43となり、トマクルの戦いはAR43年の出来事と確定した。

私は以前の検証記事で「AR43年以前」としていたが、これからはAR43年とハッキリ書けるようになった。

クルーグの陥落は春の朝

カイラが祖国首都クルーグの陥落を「A hazy spring dawn」と想起する。つまり、靄のかかった春の朝の出来事であった。

季節が言及されたことで、クルーグ陥落がAR28年春だと判明した。

タウノスのメモ

He was jotting notes on the steps necessary to arm the civils—reminders, orders, ideas.
彼は公用機を武装させるために必要な手順を書き留めていた――合図、命令、着想。
引用:上が原文、下が公式和訳版

この文脈なら「reminders」は「合図」でなく「覚え書き」とか「注意書き」みたいな含みだろう。



さいごに

カードセット「兄弟戦争」で一番初めに公開された連載ストーリー、過去時間軸の第1回「The End(邦題:終わり)」を取り上げてみた。読んでみての個人的な雑感語りである。次は続編である過去時間軸第2回について語りたい。どんどん記事に書いて行かないとあっという間にストーリーは連載最終回を迎えそうだ……。

では、今回はここまで。

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  1. 本サイトでは今までは「カー分水嶺」と律儀に訳してきたが、もっと単純な表記に改めた