野リンゴの群勢(Crabapple Cohort)はカードセット「シャドウムーア」に収録されたクリーチャー・カードである。
フレイバー・テキストで何かおかしいぞと引っ掛かりを覚えたカードをピックアップする。
現在、灯争大戦の小説『War of the Spark: Ravnica』を読書中。
野リンゴの群勢の解説
Seven wives made seven pies from seven apples, each plucked from its branches. Now bare and bitter, it comes to exact its price: one apple, one bone.
七人の女房が、七個のリンゴを枝からもいで、こしらえたのは七つのパイ。剥かれて苦しんだ代償は、リンゴ一個に骨一体。
引用:野リンゴの群勢(Crabapple Cohort)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ふと10年前の古いカードの和訳版が目に留まった。それがこの「野リンゴの群勢(Crabapple Cohort)」だったが、フレイバー・テキストの日本語の意味がスッと頭に入ってこなかった。
「七人の女房が、七個のリンゴを枝からもいで、こしらえたのは七つのパイ。剥かれて苦しんだ代償は、リンゴ一個に骨一体。」
「剥かれて苦しんだ代償」とは何だ?誰が何を剥かれたのか?
その「代償は、リンゴ一個に骨一体。」とは誰が払ったんだろう。
「リンゴ一個に骨一体」とは「リンゴ一個につき骨一体」なのか「リンゴ一個に加えて骨一体」なのかで全然違ってしまうが、どっちなのだ?
よく見ると「骨一本」ではなく「骨一体」だ。つまり遺骸1人分ということだな。
果たしてどういう意味の文章なのか、和訳製品版から考えてみた(取りあえず初めは英語原文を確認せずに)。
野リンゴの群勢の和訳製品版
「剥かれて苦しんだ代償」
この主語は何だろう?文中には「女房」か「リンゴ」か「パイ」が出てくるが、「リンゴ」ならつじつまが合いそうだ。リンゴの実は皮を剥かれて料理されるから、「剥かれて苦し」むの主語には相応しいだろう。
「リンゴ一個に骨一体」
「骨一体」である。「一本」ではなく「一体」。ということは遺骸1人分である。
「剥かれて苦し」められたリンゴがさらに「骨」まで「代償」として払わされるのは泣きっ面に蜂でおかしいだろう。払うのは「女房」となるだろう。
まとめると、「リンゴの木は7人の女房に7個のリンゴをもがれてしまった。さらにリンゴの実が皮を剥かれて苦しめられた。代償として、リンゴ1個につき女房1人の命を奪った」と読み取れるだろうか。
しかし、これらは間違った解釈であった。
野リンゴの群勢の英語原文で答え合わせ
では本当の意味を英語原文で確認する。
Seven wives made seven pies from seven apples, each plucked from its branches. Now bare and bitter, it comes to exact its price: one apple, one bone.
引用:英語原文フレイバー・テキスト
原文は「誰が」「何を」の点で曖昧な部分はない。直訳すると意味が取れてしまった。
「剥かれて苦しんだ」の主語は「それ(リンゴの木)」。「代償」を払うのは「女房達」。
和訳製品版の「剥かれて」とは、リンゴの皮を剥くではなくて、リンゴの実を摘み取られて「裸にされた」リンゴの木であった。
「bone」は複数形の「bones」で遺骸の意味を持つが原文は単数形である。したがって1人分の骨ではなく「骨1本」の方が適切だろう。
野リンゴの群勢を訳してみた
原文は韻をたくさん埋め込んであって調子がいい。童話っぽい雰囲気が出ている。
その辺を注意して語調を整え、作文に挑戦してみた。
7人の女房が、7個のリンゴで、7つの焼き菓子をこさえるために、めいめい枝からもいでった。これじゃ裸で凍えちまうと、そいつがお代を取り立てにくる。リンゴ1個で骨1本。
注:7は全部「なな」と読むこと
女房たちがリンゴの木をもいで丸裸にして帰ったら、リンゴの木が代金を取り立てにやってきた。リンゴの実1個につき骨1本をもらっていくぞ。…というちょっと怖いおとぎ話であった。
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