統率者2019:ヨーグモスの息子、ケリク

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ヨーグモスの息子、ケリク(K’rrik, Son of Yawgmoth)はカードセット「統率者2019」に収録された伝説のクリーチャー・カード。過去のカードセット「ウルザズ・レガシー」において、ウルザに敵対するファイレクシアの敵役としてストーリーに登場したケリクのカード化である。

ヨーグモスの息子、ケリクの解説

ヨーグモスの息子、ケリク(K'rrik, Son of Yawgmoth)

カードギャラリーより引用

ヨーグモスの息子、ケリク(K’rrik, Son of Yawgmoth)AR34世紀のファイレクシア人である。

ケリクは潜伏者(Sleeper)あるいは潜伏工作員(Sleeper Agent)と呼ばれる一見すると普通の人間の姿をしたタイプである。潜伏工作員は、肉と機械からなる真の身体1を、人間そっくりに偽装している。



ケリクとケリックの違い

ケリクは潜伏工作員としての名前は「ケリック(Kerrick)」と名乗っている。カードセット「ウルザズ・レガシー」の各種フレイバー・テキストでは「潜伏工作員ケリック(Kerrick, sleeper agent)」と記載されているが、これは全てケリクの別名に過ぎない。

ケリク(K’rrik)」という名前は当時のカードには登場しておらず小説Time Streamsで明かされた設定である。

大雑把に言って、ケリクが本名で、ケリックは偽名である。

ケリクの外見

潜伏工作員ケリックは、背が高く強靭で、褐色の肌に金髪で青い瞳の魅力的な「人間の青年男性」にしか見えない。

一方、このカードのイラストは、潜伏工作員ケリックではなく、ファイレクシア人のケリクとしての姿である。後述のように、ケリクはトレイリア島の山峡エリアに閉じ込められてしまうが、そこでおよそ100年が経過した頃の外見がほぼこのイラストの通りなのである。ケリクは骨や鋼鉄、培養組織で肉体強化を施しており、その肩や肘、前腕、指に生えたトゲの山は有毒のカサゴ類由来のものである。

ケリクは「ヨーグモスの息子」なのか?

カード名の「ヨーグモスの息子(Son of Yawgmoth)」とはどういう意味なのか?ケリクはヨーグモスの実子なのか?

小説Time Streamsの第11章に2回該当する記述が登場する。

そこでは、ケリクは自分の帝国のファイレクシア人らに対して「ヨーグモスの息子」を名乗っている。ヨーグモスを「偉大なる神(greater god)」と称揚し、帝国のファイレクシア人をファイレクシアの「子ら(children)」あるいはヨーグモスの「子孫(sions)」と呼んでいる。小説作中で、ケリクがヨーグモスの血を分けた実子という記述はない。したがって、ケリクは「神の子」を自称したと見るのが妥当だ。

ヨーグモスの息子、ケリクの略歴

AR3306年2、ケリクは難破船の漂着者としてトレイリア島に辿り着く。そこはファイレクシアの仇敵ウルザ(Urza)の本拠地であることが判明する。現地に住む少女ジョイラ(Jhoira)に匿われたケリクは、無害な青年ケリックを装って騙し、ウルザらアカデミー側に知られることなく潜伏に成功した。

ファイレクシアの抹殺者(Phyrexian Negator)

カードデータベースGathererより引用
後にカード化された「ファイレクシアの抹殺者(Phyrexian Negator)」
抹殺者には様々な形態の種類がある。H.R.ギーガー的なデザインの有名なこのタイプは数世紀後のダヴォールのもの

1年近くが経過、ケリクはアカデミーの秘密の通路を発見し、秘密裏にファイレクシアの精鋭部隊「抹殺者(Negator)」24体を招集しトレイリアのアカデミーに奇襲をかける3。少女ジョイラ、少年テフェリー(Teferi)を初めとする生徒やバリン(Barrin)ら大人の学者を虐殺し、アカデミーをほとんど壊滅状態にしてウルザの企みを潰えさせた。ファイレクシアの勝利だ。

Temporal Aperture

カードデータベースGathererより引用
ウルザのタイムマシーンのカード化「Temporal Aperture(「時間開口装置」くらいの意)」

…ところがその時、アカデミーのゴーレム「カーン(Karn)」が危険を賭して4時間フィールド歪曲装置(いわゆるタイムマシーン)で過去に飛び、襲撃前のケリクを攻撃して足を痛めつけ、さらにウルザに警告を与えてしまった。過去が改変されて、ケリクの奇襲によるアカデミー壊滅は起こらなかったことになった。修正された時間の流れでは、負傷したケリクの襲撃は予定通りに運ばず、ウルザも事前情報を得て対応する心構えを持てた。

隔離(Sunder)

カードデータベースGathererより引用
時間災害の瞬間を描いたカード「隔離(Sunder)」

ウルザ陣営はケリクの魔手から救われたが、皮肉にもそこでタイムマシーンが過負荷から大爆発を起こしてしまう。アカデミーもトレイリア島も破壊の嵐が吹き荒れ、トレイリア島には時間流が異常な場所が各所に出現した。場所によっては極端に速く、別のところではほとんど時間が停止してしまうほどであった。ケリクと抹殺者は速い時間流の山峡エリアに捕らわれてしまった。エリア外は普通の10年が過ぎるうちに、ケリクの方ではおよそ100年が経過するほどの速さだ。しかも時間の壁を乗り越えて脱出は不可能であった(今のところは)。

厳かなモノリス(Grim Monolith)

カードデータベースGathererより引用
ケリクの帝国を描いたカード「厳かなモノリス(Grim Monolith)」

ケリクの手持ちは、時間災害を生き残った10余りの部下と資源の乏しい山峡地帯のみだったが、時間だけは有り余っていた。ケリクはいつしか外部に脱出し、ウルザとアカデミーに報復するため、山峡にファイレクシアの帝国を築きあげていくのだった。

通常時間ではAR3360年近くまで、トレイリア島ではケリクとアカデミーの戦争状態が続くこととなった。

ヨーグモスの息子、ケリクに言及するカード

カードセット「ウルザズ・レガシー」でケリク(ケリック)に言及するカードを、おおよそ時系列順に並べて注釈を加えた。

潜伏工作員の悪知恵(Sleeper’s Guile)

潜伏工作員の悪知恵(Sleeper's Guile)

データベースGathererより引用

潜伏工作員の悪知恵(Sleeper’s Guile)はまだ若い姿のケリクを描いている。ファイレクシア生物を補修、あるいは、改造しているようだ。

小説Time Streamsでは、山峡は黒曜石や玄武岩の鉱脈はあるが肝心の鉄は黄金よりも希少資源であった。十分な鉄がなければ鋼もパワーストーンもアーティファクト・クリーチャーも新たに生産できない。ケリクの発明の才をもってしても資源不足はどうしようもなかったことが語られている。

このカードのような地道な作業が、ケリクの帝国の礎になったのだろう。

ファイレクシアの後裔(Phyrexian Broodlings)

With limited resources and near unlimited time, Kerrick used parts from one beast to build another.
限りある資源とほとんど無限の時間があったケリックは、獣から取った部位を他の獣を作り上げるために使った。
引用:ファイレクシアの後裔(Phyrexian Broodlings)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が公式和訳版

ファイレクシアの後裔(Phyrexian Broodlings)

データベースGathererより引用

ファイレクシアの後裔(Phyrexian Broodlings)が描くのはケリクの帝国のファイレクシア人がいかにして数を増したか?その一端の説明である。

抹殺者10体ばかりから始まったケリクの帝国は、およそ100年後5の世代では200体にまで増えている。ファイレクシア人に必要な鉄が欠乏した山峡一帯でどうやって数を増やすかというと、フレイバー・テキストに答えがある。1体を分割して複数体にすればいいのだ。

狂気の瀬戸際(Brink of Madness)

“The fools thought me dead. But I built an empire inside my tomb.”
–Kerrick, sleeper agent
馬鹿な奴らはおれが死んだと思った。だがおれは墓の中で帝国を築いていたんだ。
–潜伏工作員ケリック
引用:狂気の瀬戸際(Brink of Madness)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が公式和訳版

狂気の瀬戸際(Brink of Madness)

データベースGathererより引用

狂気の瀬戸際(Brink of Madness)に描かれるのは初老の姿となったケリク。

トレイリア島から逃げ出したウルザたちは10年後に帰還して初めてケリクが生き残って帝国を建設していることを知った。

余談。Duelist誌#40のミニコラム「Switched Art」によると、このカードのイラストは元々は特定のキャラクターを描いたものではなかったが、印刷になる前に、このカードはケリックを描くように注文がつけられ現在の形になった。元のイラストはカードセット「ウルザズ・デスティニー」収録の「塩水の予見者(Brine Seer)」へと転用された。

なるほど。このイラストはケリクであるとウィザーズ社公式が保証してくれているのだ。しかし、ケリクが着ている格子模様の衣類はトレイリアのアカデミーのものだ。なぜ、彼がアカデミーの服を着ているのか?この疑問の答えは20年経った今でも分からない。個人的な想像ではあるけれど、イラストを描くために与えられる公式資料にスタイルガイドがあるが、イラスト担当者の手元には衣服のスタイルガイドがアカデミーのものしか届いてなかったのではないだろうか…。

打倒(Subversion)

Kerrick’s corrupt domain swelled like a blister on Tolaria’s skin.
ケリックの堕落した領地は、トレイリアの皮膚にできた水ぶくれのようにふくらんだ。
引用:打倒(Subversion)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が公式和訳版

打倒(Subversion)

データベースGathererより引用

カード名の「Subversion」は「国や政府の転覆、あるいは、それらの打倒」を意味する。ケリクの帝国はトレイリア島に再建されたアカデミーのすぐ隣で、着々とその打倒を計画して準備し、軍備を増強していった。

村八分(Ostracize)

Kerrick was to find that some borders can never be crossed.
ケリックは絶対に越えることのできない境界線があることを知る運命だった。
引用:村八分(Ostracize)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が公式和訳版

村八分(Ostracize)

データベースGathererより引用

イラストに描かれるのは人ならざる姿となったケリクの後ろ姿である。ケリクの帝国から外部の普通の時間流のエリアを覗き見ている。

フレイバー・テキストでは、「絶対に越えることのできない境界線があることを知る」と書かれており、時間の壁を超えることができないことが示唆されている。この事実は山峡エリアに閉じ込められて間もなく判明している。脱出する試みに失敗し貴重な配下の抹消者1体を失っている。時間災害を生き残った12体のうちおよそ1割を損失したことになり、ケリクには大損害であった。

吸臓鬼(Eviscerator)

It roamed the time bubble like a captured animal. Kerrick knew he must soon find a way to unleash it on Tolaria or destroy it.
そいつは捕らわれた動物のように、時の泡の中を歩き回った。ケリックはそいつをトレイリアで解き放つ方法か、あるいは破壊してしまう方法を見つけなければならないことを知った。
引用:吸臓鬼(Eviscerator)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が公式和訳版

吸臓鬼(Eviscerator)

データベースGathererより引用

吸臓鬼(Eviscerator)はフレイバー・テキストによると、ケリクの帝国で誕生した新世代のファイレクシア生物のようだが、制御不能な危険な存在であるらしかった。トレイリアに解き放つ方法はまだ見つかっていない…ということは、この時点ではまだ、時間の壁を抜けて外部に出ることができなかったようだ。

フレイバー・テキスト原文にある「soon(すぐに)」が和訳製品版では訳出されていない。

無慈悲(No Mercy)

“We had years to prepare, while they had mere minutes.”
–Kerrick, sleeper agent
我々には準備の時間が何年もあったが、あいつらには数分しかなかったわけだものな。
–潜伏工作員ケリック
引用:無慈悲(No Mercy)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が公式和訳版

無慈悲(No Mercy)

データベースGathererより引用

無慈悲(No Mercy)ではケリクの軍団がとうとう時間の壁を乗り越え、外の世界へと進撃をしている情景が描かれている。

ヨーグモスの息子、ケリクの登場ストーリー

ケリク本人は小説Time Streamsにのみ登場している。

これ以降のウルザやトレイリアのアカデミー、ファイレクシアに関連する作品では、ケリクの名前やトレイリアに与えた影響が言及されたくらいにとどまっている。

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  1. ゆえにファンからはファイレクシア人は俗にサイボーグ・ゾンビなどと呼ばれることもある
  2. 小説Time Streamsによると、時間災害発生がAR3307年で、ケリクの漂着はその「nearly a year ago(1年近く前)」である。したがって、AR3307年に漂着した可能性は残る
  3. 作中ではトレイリア近海のどこかにケリクのポータルがあると推測されていた
  4. カーンはタイムトラベルを実行するたびに高熱を帯びてしまうが、今回ばかりは自身が融解しても友人を救えるなら構わないと覚悟していた
  5. 山峡エリアでは100年だが、外では時間災害から10年経過したAR3317年、島から脱出したウルザやカーンらがトレイリアに帰還する。