アルケミー:ニューカペナの街角の黒カード

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MTGアリーナ限定のカードセット「アルケミー:ニューカペナの街角」が実装された。カードセット「ニューカペナの街角」と世界設定を同じくしたセットであり、新規カードはニューカペナ次元のものとなっている。

デジタル限定セットのためか、ウィザーズ社公式のカードギャラリー(リンク)には英語版テキストの画像しかなく、和訳版のカード名やフレイバー・テキストの有無すらも確認できない。MTGアリーナを調べない限り知ることができないのだ。

だから、本サイトでは「アルケミー:ニューカペナの街角」の各種カードの和訳カード名とフレイバー・テキストを記事としてまとめて記録に残すことにした。また、各カードには背景世界的な分析やコメントも加えている。

第3回目となる今回は「アルケミー:ニューカペナの街角」の黒単色カードを取り上げる。

※ MTGアリーナ限定のアルケミーのカードは、紙として印刷された通常のカードとは違い、後々バランス調整の名目でデータが修整される可能性がある。したがって、この記事の記述は執筆時点の情報に基づいている点に注意されたい。

アルケミー:ニューカペナの街角の黒カード

カードセット「アルケミー:ニューカペナの街角」には、黒単色のカードはアンコモンに2種類、レアに1種類が収録されている。

この内、アンコモン1種類にはフレイバー・テキストが付いている(実は「アルケミー:ニューカペナの街角」でフレイバー・テキスト付きのカードは全5種類しかない)。



アンコモン

アンコモンは以下の2種である。

破壊的終焉

破壊的終焉(Shattering Finale)

破壊的終焉(Shattering Finale)
公式カードギャラリーより引用

破壊的終焉(Shattering Finale)のイラストには3人の人物が描かれている。

まず画面中央下側には2人。人質を取った大柄の男(オーガか?)がいる。この男は人質の背中側に立ち、右腕を首に回して絞めつけており、左手には武器か何かを持っていて部屋の反対側にいる相手に向けて腕を突き出している。

そして画面の右上には3人目、黒い外套と帽子の人物が居て、左手にはステッキか傘か何かを携えている。手前に伸ばした右腕の先端は赤い閃光を発しており、手持ちの銃器か魔法の指鉄砲で弾丸を発射した瞬間である。

弾丸は天井からぶら下がった照明の鎖を打ち抜き、今まさに人質を取った男の頭上へと落下してくるところだ。照明の重みに潰されて迎える破壊的終焉は近い。

ザンダーの目覚め

“Death is part of doing business.”
「死はビジネスの一部だ。」
引用:ザンダーの目覚め(Xander’s Wake)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

ザンダーの目覚め(Xander's Wake)

ザンダーの目覚め(Xander’s Wake)
公式カードギャラリーより引用

ザンダーの目覚め(Xander’s Wake)は明らかにカード名が誤訳である。「ザンダーの通夜」くらいが正しい名称だ。

公式和訳版では「目覚め」となっているがここが誤訳である。「wake」が動詞の場合は「目覚める・目覚めさせる」という含みになるのだが、名詞の「wake」にはそんな意味はなく1、このカードの場合は「通夜・弔問」が相応しい。この用法での「wake」にも色々と意味に幅があるのだが、埋葬前の故人の遺体を夜通し守るとか、埋葬するまでの期間のことだとか、告別だとか、日本語の「通夜・弔問」という言葉の範疇に大体収まるものだ。

メモ:他言語版の「wake」
参考までに、英語版と日本語版だけでなく他の言語版カードでもカード名を調査してみた。日本語以外では「wake」をどのように翻訳しているのだろうか?(誤訳は日本語だけだろうか?)

ドイツ語版「Totenwache」、イタリア語版「Veglia」、スペイン語版「Velatorio」、ポルトガル語版「Velório」、フランス語版「Veillée」の5つの言語版では、「通夜・弔問」に類する内容の言葉であった。

ロシア語版の「Прошание」は「別れ」の意味なので、「告別」的な解釈だと考えられる。

唯一違ったのがハングル版で、「跡」を意味する「자취」と訳している。これは「通夜・弔問」とは別の「wake」、「船などが通った跡」を意味する方の名詞「wake」に誤解釈していると考えられる。つまり、和訳版とは違った方向に間違っているのだ。

以上のように、日本語版とハングル版を除けばどの翻訳版でも「通夜・弔問」に解釈ができていると確認できた。

では、カード名を確認したところで改めてカードを見ていこう。

蒐集家、ザンダー卿(Lord Xander, the Collector)

蒐集家、ザンダー卿(Lord Xander, the Collector)
データベースGathererより引用

ザンダー卿(Lord Xander)は貴顕廊一家のボスである吸血鬼・デーモンの男性であった。

殺害(Murder)

オブ・ニクシリスの魔法の指鉄砲から凶弾が放たれた!
殺害(Murder)
データベースGathererより引用

ザンダー卿は、別次元からの来訪者オブ・ニクシリスの魔法の指鉄砲によってその命を絶たれた。

オブ・ニクシリスの魔法の指鉄砲

ザンダーの目覚め(Xander’s Wake)一部拡大表示

Xander’s Wake」こと「ザンダーの通夜」は、「ニューカペナの街角」のストーリーで命を落としたザンダー卿の通夜の様子を描いたカードなのだ。

イラストには、中央にザンダー卿の棺があり、額入りの遺影が飾られ、貴顕廊一家の構成員であろう吸血鬼たちが弔問に訪れている。棺の回りに置かれた剣は、かつて暗殺者として名を馳せた故人縁の品であろう。弔問客の1人は剣を手に取って、棺に描かれたラインをなぞっているが、おそらくそういう作法なのだろう。

フレイバー・テキストは「死はビジネスの一部だ。」と訳されている。これはもう少し噛み砕いて言い換えるなら「一家の仕事には死はつきものである。」くらいとなるだろうか。巨大都市ニューカペナの裏社会を牛耳る一家のボス、その仕事は常に危険と隣り合わせなのである。



レア

レアは以下の1種のみだ。

偶像の魔神

偶像の魔神(Graven Archfiend)

偶像の魔神(Graven Archfiend)
公式カードギャラリーより引用

偶像の魔神(Graven Archfiend)は、「ニューカペナの街角」関係では、5つの一家のボスたち以外の初めてのデーモン・クリーチャー・カードである。

ニューカペナ次元の設定では、数世紀前にアークデーモンたちが一家のボス5人と結託し、大部分の天使を停止状態にして彫像に封じてしまった。それ以来、この次元では天使の姿は見られなくなり、同時にデーモンらも姿を消したのだ。残ったのはアークデーモンとの契約で、自分自身もデーモンと化した5人の一家のボスだけであった。

この設定を反映して、カードセット「ニューカペナの街角」には5人のボス以外にデーモン・カードは収録されていなかったのだ。では、この6種類目のニューカペナ次元のデーモン、偶像の魔神(Graven Archfiend)はどういう存在なのだろうか?今まで姿を隠していた正真正銘のデーモンなのか?

私が思うに、可能性は3つ挙げられる。

偶像の魔神(Graven Archfiend)一部拡大図

可能性の1つ目は「今まで数世紀来、人々の前から姿を隠して来たデーモン」である。実はカードやストーリーで描かれた範囲の外では、デーモンは存在し続けていたのではないだろうか?社会と接触を持たないようにしていたからか、都市に据え付けられたガーゴイルに擬態して素知らぬ顔で都市内に居たからのか、理由はいずれにしろ、デーモンは常にそこにいたという説である。

壮麗なる変化(Majestic Metamorphosis)

天使の帰還を描いたカードの1つ
壮麗なる変化(Majestic Metamorphosis)
データベースGathererより引用

可能性の2つ目は「現代に復活したデーモン」である。天使を封じる際に、その代償をデーモンも払う必要があり、自らも彫像に封じられていたのではないだろうか?「ニューカペナの街角」のストーリーが終了した後、天使は徐々に封印から逃れて姿を現わし始めている。ならば、デーモンもまた復活しつつあると考えるのは道理であろう。こういう説となる。

近代性の模範(Paragon of Modernity)

近代性の模範(Paragon of Modernity)
データベースGathererより引用

最後に、可能性の3つ目は、本物のデーモンではなく「人造デーモン」である。

カードセット「ニューカペナの街角」には、近代性の模範(Paragon of Modernity)というカードが収録されている。フレイバー・テキストによると、これは都市の職人が複製した人造天使なのである。

聖なる存在を模倣したのなら、その対となる存在を模倣しない理由はないだろう。こういう説だ。

ニューカペナ関係は公式の設定語りが満足でないため、偶像の魔神とデーモンについては何が正しいのか正直分からない。

まあ、想定したくない第4の可能性「カードのデザイナーは特に考えてなく、クリエイティブ部門がもっともらしい理由を後付けしてくれるのに丸投げ」って線もありえそうなのだが……。いやそんなことはないと信じたいし、後付けでもきちんとした説明が後々されるって、私は期待しているよ。

さいごに

これでカードセット「アルケミー:ニューカペナの街角」における黒単色のカードを紹介し終えた。

ザンダー卿の通夜が「目覚め」と誤訳された件は、日本のストーリーファン界隈に大きな衝撃を与えていると感じている。ザンダー卿は人気のあるキャラクターだったので、「ザンダーの目覚め」つまり死から蘇ったのか、と歓喜したファンが少なくなかったのだ。ザンダー卿はデーモンであり吸血鬼である。だから、たとえ死んでも復活しておかしくはない、と思わせる説得力があった。「目覚め」でなく「通夜」が正しいと知ったファンの落胆ぶりは燦燦たるものだ。誤訳のもたらす悲劇である。

次回は色の順番通りに赤カードとなる。

では今回はここまで。

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  1. 死語となった昔の用法には名詞で「目覚め」の意味も無くはなかったようではある