受難の天使(Angel of Suffering)はカードセット「ニューカペナの街角」収録のクリーチャー・カードである。
今回は、MTG史上初の「天使・ナイトメア」カードである受難の天使を取り上げる。
受難の天使の解説
“If you wish for blessings, mortal, ask your demon masters. We’ve given enough to your kind.”
「定命の者よ、祝福や不死を望むなら、あなたが仕える悪魔に頼みなさい。あなたのような類にはもう十分与えました。」
引用:受難の天使(Angel of Suffering)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
受難の天使(Angel of Suffering)はニューカペナ次元の天使である。
カードのゲーム的なデータを見ると、黒単色でクリーチャー・タイプが天使でありナイトメアでもあるという、異色のクリーチャーだ。
MTGでは通例、天使は白単色か白を含む多色である。黒い天使は堕天使であるとか、特定の次元での特殊な設定の下で存在しているものとなる。
また、ナイトメアは夢魔や悪夢系のニュアンスがあり、このカードの他に「天使・ナイトメア」の組み合わせを有するクリーチャー・カードは(「ニューカペナの街角」現時点では)存在しない。
受難の天使のフレイバー・テキスト
“If you wish for blessings, mortal, ask your demon masters. We’ve given enough to your kind.”
「定命の者よ、祝福や不死を望むなら、あなたが仕える悪魔に頼みなさい。あなたのような類にはもう十分与えました。」
受難の天使(Angel of Suffering)のフレイバー・テキストには、この天使を理解するための情報が少ないながらも含まれているようだ。
ただし、和訳製品版の文章はまたもや間違っているので、まずそれを正さないといけない。
フレイバー・テキストを修正する
ではまず「定命の者よ、祝福や不死を望むなら」となっている部分だ。原文では「If you wish for blessings, mortal」である。
「mortal」とは「定命の者、寿命のある者」のことでニューカペナでは人間を始めとする多くの知的種族が該当する(天使のような寿命のない存在は「immortal」)。
「If you wish for blessings」のところは「祝福を望むなら」との意味であり、和訳製品版のように「不死」までは望んでいないのだ。
次に「あなたが仕える悪魔」の部分だが、原文は「your demon masters」となっていて、これは都市ニューカペナを牛耳る5つの一家の5人のボスを指し示している。ボスたちは何世紀もの昔に、アークデーモンらと契約して天使を罠にはめ、自らもデーモンとなった者たちだ。
ニューカペナの大部分の住人はその真実を知らされていないとはいえ、実質的には「デーモンの主人たち」の支配と庇護の下で暮らしているのである。
以上を踏まえて文章を修正してみた。
修正したフレイバー・テキストと解釈
「定命の者よ、祝福を望むなら、デーモンの主人たちに頼みなさい。あなたのような類にはもう十分与えました。」
かつて天使はデーモンの罠によって停止状態の彫像に封じられた。天使の実体は「光素(Halo)」へと変換されると、街の守りや発展など様々な用途に利用されてきた。ニューカペナの大都市は「光素」なくては存在しえず、つまり天使の犠牲の上に成り立っているのだ。
街に暮らす住人は真実を知らぬとはいえ、例外なくその恵みを享受している。「ニューカペナの街角」のストーリーでジアーダ(Giada)が天使の力に目覚めた後、街に再び天使が現れてきている。住人と天使の遭遇は必然である。
何世紀も姿を消していた天使を目撃した街の住人は、この受難の天使に祝福を授けて欲しいと望んだのだろう。だが、裏切られ今まで散々犠牲にされてきた天使は、祝福なら街を牛耳るデーモンの主人どもを頼るがいい、と拒絶した。こんな流れが想像できる。
受難の天使のイラスト
受難の天使(Angel of Suffering)のイラストを調べてみると、ニューカペナ次元の他の天使と大きく異なる特徴を持つことに気付ける。それが「光輪(Halo)」である。
ニューカペナの天使は(主に)頭の後ろに、ステンドグラスにも似た水色や紫色の「光輪」が輝いている。1光輪はほとんど円を描くような形をとることが多い。
ところが、受難の天使には鈍い黄色をした断片的な光輪しかないのだ。色も形も量もまるで違っている。
なぜ受難の天使の光輪が違うのか?
受難の天使の「光輪」が他の天使と大分違う理由には思い当たることがある。それが「光素」だ。
先述した通り、「光素」は天使の実体が変換されたもので、ニューカペナで様々な用途に利用されてきた資源だ。
日本語では「光素」と「光輪」は別の用語に見えるが、実は英語ではどちらも「Halo」という同じ単語である。つまり、資源の「光素」と、天使に輝く「光輪」は同じものと見做せるのではないか?その線で考えてみると次のような推測ができる。
受難の天使は何世紀もの間「光素」に変換されて抜き取られ過ぎたため、本来の姿で復活できたものの「光輪」の輝きは失せ、量も減ってしまった。
十分筋が通っている仮説に思えるのだがいかがだろうか?
さいごに
受難の天使に関して思いつく限りの考察と仮説を書き連ねてみた。「ニューカペナの街角」は公式な設定や解説が不十分かつ不明瞭なので、この神話レアの天使カード1枚についても、長々と語ってみたものの結局、推測や仮説の域を出ることはできなかった。
「受難の天使は光素を抜かれ過ぎたことで、人々に祝福を与える聖なる存在ではもはやなくなり、まるで悪夢のような堕天使と化した者たちなのかもしれない。」取りあえずは、これが私の現時点での結論かな。
では今回はここまで。
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