カンジー(Kangee)はカードセット「インベイジョン」収録の巣を守るものカンジー(Kangee, Aerie Keeper)が初出のドミナリア次元のキャラクターである。
最初のカード化から20年後の2020年、カードセット「統率者レジェンズ」では空の管理者、カンジー(Kangee, Sky Warden)として再デザインされた。
本記事では新カードとなったカンジーの設定とストーリーを含め、関連カードや新設定によって生じた新たな可能性についても探ってみた。
追記(2023年2月25日):細かい修整とリンクを追加。
空の管理者、カンジーの解説
“Let their horrors and machines come. We will meet them blow for blow.”
「化け物も機械も来るなら来い。拳には突風で迎え撃つ。」
引用:空の管理者、カンジー(Kangee, Sky Warden)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
空の管理者、カンジー(Kangee, Sky Warden)はドミナリア次元オタリア大陸に住む鳥系人型種族エイヴンの魔術師の男性である。オタリア北部オーダーの指導者として兵士と弟子の支持を集めていた。AR4205年のファイレクシア侵略戦争では、配下の軍勢と鷹を率いてドミナリア各地を飛び、主要な戦場で戦ってドミナリア連合の英雄として歴史に名を刻んだ。→ストーリー詳細はこちらの節を参照
カードのメカニズムは、カンジーが攻撃に回れば飛行を持つ攻撃クリーチャー全てのパワーを+2強化し、ブロックに回れば飛行を持つブロック・クリーチャー全てのタフネスを+2強化する。カンジー自身が飛行クリーチャーであり、警戒を持つため攻撃に参加してもブロックに回せるようになっている。飛行部隊を全体強化するキャラクター性は最初のカンジーからしっかり受け継がれている。
フレイバーテキストを見ると、「化け物も機械も来るなら来い。」とは機械ゾンビの怪物であるファイレクシア軍のことだ。ちなみに「化け物」と訳されている原語は「horror(ホラー)」である。
フレイバーテキスト後半の文は翻訳のセンスが光る。「blow for blow」は「殴られたら殴る」「拳には拳を」くらいの意味合いだが、「blow」には「風」と「殴打」の両方の意味があることに着目して、「拳には突風で迎え撃つ。」と訳している。空飛ぶカンジーの方の「blow」を「風」の意味で解釈したのだ。
巣を守るものカンジー
巣を守るものカンジー(Kangee, Aerie Keeper)はカードセット「インベイジョン」に収録された最初のカンジーである。
このカードの初出時点で、イラストのカンジーがドミナリア連合の紋章を刻んだペンダントをしていることから、ドミナリア陣営であることだけははっきりと分かっていた。それ以外は謎であり、未知の鳥人間種族キャラクターであった。
このカードはインベイジョン・ブロックの目玉の1つキッカー・メカニズムを備えており、キッカー・コストの「2+X」点マナを払って唱えると、カンジーの上には羽根カウンターX個が置かれて戦場に出る。全ての鳥クリーチャー(これ自身を除く)は羽根カウンター分の+1/+1修正が加わって強化されるのだ。新メカニズムのキッカーに独特な羽根カウンター、鳥の全体強化と斬新さはあったものの、効果に見合わないほどコストが重く設定されていて評価の高いカードではなかった。
新旧カンジーのイラスト比較
以上、2度にわたってカード化された新旧カンジーのカードを見てきた。
新旧カンジーのイラストの姿は似ているようで、大小の色々な違いが感じ取れるはずだ。この違いを具体的に指摘しよう。
カンジーのイラストを切り出して上下に並べてみた。
カンジーの外見は全体的にディティールアップされたが、基幹部分の要素は全く同じである。肩当て、紺の胴衣、腕甲、白い腰布、赤い飾り紐、杖の先端の赤い珠、どれも細部の違いがあれど同じだ。胸のペンダントもドミナリア連合の紋章で変わりはない。
ただ、その中でも違いが顕著なのが「仮面」である。旧デザインでは鳥とも何とも言えない曲がった先端だったくちばしが鋭くまっすぐになり、一目で鳥類であると分かるように変わっている。これならオタリア大陸のエイヴンと同種族だと言われても納得できる。
また、カンジーが従えている鳥の種類も変更されており、新イラストでは全て「鷹」に統一されている。
カンジーのストーリー
カンジーはエイヴンの魔術師であり、オタリア大陸北部地域(Northern Reaches)に拠点を置く北部オーダー(The Northern Order)の指導者であった。強い影響力を持っており、カンジーの下には命令に服従する兵士と教えを乞う見習い魔術師が大勢集っていた。
カンジーの住処(aerie)はスコルテン山脈(Skollten Mountains)にあり、彼の目となって周囲数百マイルの出来事を見てくる鷹の大群を飼っていた。
AR4205年のファイレクシア侵略戦争時、オタリア大陸はファイレクシアの攻撃目標とならなかった(戦略的重要度は低いと判断された)。しかし、カンジーと彼に従う者たちはドミナリア全土を脅かす大きな危機と戦う義務を感じ、ドミナリア連合に参加した。カンジーは軍勢と鷹の群れを従えて、いくつかの大戦場で戦ったのだ。
例えば、ジャムーラ大陸北西部は大規模攻撃の標的となった場所だが、プレインズウォーカーのテフェリー(Teferi)の魔法でザルファーの大地が異なる時空に消失した後、近隣のスークアタ(Suq’Ata)においてカンジーの姿が記録されている。(インベイジョン・ブロック特設サイトより。リンク)
カンジーの軍勢はこうして各地の空で戦って、ファイレクシアの兵員輸送船1が怪物戦士を下ろす前に撃墜していったという。
カンジーのペンダントはドミナリア連合の紋章が刻まれている。これは連合の一員の証明であるが、それのみならず、カンジーが母国オタリアを離れてまで、ドミナリアの様々な種族・国家・勢力と協力しファイレクシア軍と戦った勇敢さと協調の証でもあると言えよう。
戦後のカンジーの動向は現在のところ確認されていない。数十年後の北部オーダーにカンジーの姿はなく、組織の中心人物はドラゴンのイーギン(Eagyn)であった。カンジーはこの時代にはすでに亡くなっていたかもしれないし、スコルテン山脈に隠遁していた可能性もあるだろう。
カンジーの門弟と兵士
カンジーの下には命令を厳守する兵士と魔術師の門弟が集っている。この設定に当てはまるクリーチャー・カードがちゃんと存在している。それがこの節で解説する2種類のカードである。
カンジーに関連するカードはカンジーの補佐(Kangee’s Lieutenant)とカンジーの信奉者(Disciple of Kangee)の2種類のみだが、前者が命令を厳守する兵士を、後者が魔術師の門弟に相当している。
カード上では「エイヴンの兵士」と「人間の魔術師」となっていて、種族で役割がくっきり分けられている。ただ、これはゲーム上のものであることに注意したい。実際には、カンジーの下には人間の兵士もエイヴンの魔術師もいただろうし、それどころか別の種族の者ですら含まれていた可能性がある。
カンジーの補佐
カンジーの補佐(Kangee’s Lieutenant)はエイヴンの兵士である。カードセット「統率者レジェンズ」収録のクリーチャー・カードである。ファイレクシア侵略戦争でカンジーと共にドミナリア各地の戦場を転戦した軍勢はこのカードのような者たちであった。
カード名で「補佐」と訳された「Lieutenant」は「副官・補佐官」あるいは「軍の将校」や「警部補」などのことだ(この「Lieutenant」は階級として日本語化が困る言葉で、その組織によって「中尉」や「大尉」やその他だったりもする)。
カンジーの補佐達はカンジーのような顔全体を隠す「仮面」をしてなく、エイヴンである事実が一目で分かる。また、後述するカンジーの人間の門弟たちがカンジーに倣ってか「仮面」を被っていることと比較するのも面白い。
カンジーの信奉者
When no birds are available, Kangee’s disciples fill the sky with anything that’s willing to fight.
鳥が一羽も見つからないとき、カンジーの信奉者たちは戦ってくれるものなら何でも集めて、それらで空をいっぱいにする。
引用:カンジーの信奉者(Disciple of Kangee)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
カンジーの信奉者(Disciple of Kangee)はカードセット「プレーンシフト」に収録されたクリーチャー・カードである。カード名では「Disciple」は「信奉者」と訳されているが、辞書的には「門弟、弟子、門人」の意味である。
カードのクリーチャー・タイプは「人間・ウィザード」だ。イラストでは鳥のような頭部を持つ人物であるが、拡大して観察してみるとエイヴンのような翼はないし、腕と手は人間のものに見える。どうやらエイヴンに似せた被り物を被った人間で間違いないようだ。
カードのメカニズムは対象を飛行させるものだが、フレイバー・テキストの内容を鑑みるに、鳥がいない時にはカンジーの門弟は戦う意思のある者なら誰でも魔法で空を飛ばして戦力としているとのこと。もちろん自分自身が空を飛ぶために魔法を使うこともあったろう。そしてイラストで宙に浮かされているのはどうやらカヴー(Kavu)だ。
カンジーと北部オーダー
「オーダー(The Order)」はドミナリア次元オタリア大陸の軍事組織である。2人間の遊牧民とエイヴンが構成員である。
オーダーは大陸の北と南の2地域でそれぞれで別個に活動しているが、今回の本題となるのは「北部オーダー(The Northern Order)」である。
北部オーダーと北部地域
「北部オーダー(The Northern Order)」はオタリア大陸北部地域(Northern Reaches)4で活動した軍事組織である。
北部オーダーの本拠地は大陸東岸に位置し、単に「城塞(The Citadel)」と呼ばれる要塞都市である。この城塞はAR4305年に秘宝ミラーリ(Mirari)の力で壊滅したものの、数年後には再建している。ちなみに、上記地図上のアボシャン海溝(Aboshan Trench)もAR4305年にミラーリの魔力が原因で大陸が裂けてできたものだ(したがって、カンジーの時代にはまだ存在していなかった)。
オーダーの起源はおそらくAR4205年のファイレクシア侵略戦争かその少し前だと考えられる。カンジーはファイレクシア侵略戦争時の指導者であるが、その他の既存情報も併せて考察するとオーダーの創設メンバーの1人であるか、あるいはカンジーが創設者その人の可能性がある。
この可能性について考える前に、ファイレクシア侵略戦争前後の北部地域と北部オーダーについて知らなければならない。この時代は短編集The Dragons of Magic収録の作品Dragon Lordで語られている。次の節で要約して説明しよう。
ドラゴン・ロードのイーギン
ファイレクシア侵略戦争前後の時代の北部オーダーに関する物語は以下のようなものだ。
戦争以前の時代、北部地域の空には数世紀もの間、ドラゴンのイーギン(Eagyn)が孤高の捕食者として君臨していた。偉大なドラゴンにとって、北部地域の住人たちはバッファローや山羊などと同等の存在、狩りの獲物に過ぎなかった。
AR4205年にファイレクシア侵略戦争が勃発すると、ドミナリア次元のドラゴンはシヴのデアリガズ(Darigaaz)の下に団結してドラゴン国家群(Dragon Nations)を形成すると、ファイレクシアとの戦争に突入した。ドラゴン国家群は他種族と協力関係を結び次元全体の危機を戦い抜いたのだ。5
イーギンは戦争中に他種族と協働して戦い、その経験によって意識改革を迫られることになった。街を造る小さき人族は蟻塚を作る蟻とは違う、それ以上の存在だったと気付いたのだ。
侵略戦争後、イーギンは北部オーダーの創設者その人6に会談を願い出る。創設者は快く応じ、イーギンがかつて北部地域の人々を襲った過去について、その贖罪についてとことん話し合った。許されたイーギンは北部オーダーに受け入れられ、北部地域に住む弱き者たち全てに責任を持つ守護者となった。
それから数十年後、ドラゴン・ロードのイーギン(Dragon Lord Eagyn)は北部オーダーの中心的人物になっていた。しかしイーギンは北部地域を荒らす蛮族団との戦いで命を落とすことになる。北部オーダーはその喪失を嘆いたが、彼が最後に救った1人である孤児の少女ピアナ(Pianna)にはイーギンの気高き行いと誇り高い精神は受け継がれていくのだ。この孤児がAR4305年の北部オーダー指導者であるピアナの若き姿である。
以上が、補足説明を加えた短編集The Dragons of Magic収録の短編Dragon Lordの内容の要約である。
北部オーダーの創設者
短編Dragon Lord(短編集The Dragons of Magic)には北部オーダーの創設者その人が登場している(原文では「The founder」と定冠詞付き単数で表記されている)。
まず第一に、創設者はファイレクシア侵略戦争直後に存命であった。ファイレクシア侵略戦争の終結年はAR4205年説とAR4206年説があるがここでは誤差の範囲だ(本サイトではAR4206年終戦説を採用)。
第二に、オーダーの構成は人間とエイヴンであり、創設者の種族もそのどちらかであったと考えるのが自然である。D&D用ルールPlane Shift: Dominariaによると、エイヴンの寿命は人間と同程度の長さだ。
短編中に創設者の年齢は書かれていないが、もしも仮にかなりの高齢であったとしても人間やエイヴンであるならば、北部オーダーの創設時期はその数十年以内であった(百年昔などにはなりえない)と導き出せる。7
ここに加えて、カンジーの新規設定によると、彼はエイヴンでありファイレクシア侵略戦争時の北部オーダーの有力者で指導者(influential leader)であった。戦中はドミナリア連合で戦ったので、当然他種族との協働に理解がある。戦争を生き抜いて凱旋できたなら北部オーダーの英雄と讃えられているはずだ(世界を救った英雄の1人に数え上げられてもおかしくはない)。
イーギンが北部オーダーに会見を申し出るなら、相手は組織の最高責任者であるはずだ。さらに、その相手がイーギンを赦し受け入れるならば、北部地域内に籠っていた人物では相当に難しいのではないか。
カンジーはイーギンに接見して受け入れる人物の条件を十二分に満たしている。したがって、カンジーがイーギンと会談した創設者その人である可能性はかなり高い、と私には思えたのだ。
イーサン・フライシャーに質問
以上のように私には「カンジーが北部オーダーの創設者その人か、少なくとも創設メンバーの1人である。」という可能性は高いと思えた。
ならば、直接ウィザーズ社公式のクリエイティブに聞いてみようと、イーサン・フライシャー(Ethan Fleischer)にツイッターで質問をした。フライシャーは今回のカンジーの設定を作った人物であるし、背景世界やストーリーへの深い造詣を持っている。これ以上に適切な質問相手はいない。
回答は「おそらく!多分!(確実な回答のためには今後の追加調査が必要だけど)」との旨を頂いた(イーサン・フライシャー回答)。
ほぼ確定じゃないだろうか。まだ公式に確定してはいないけれど、カンジーがオタリア北部オーダーの創設者と公式設定化してもおかしくはないと思う。
カンジーと言うキャラクターの経緯
ここではカンジーと言うキャラクターがMTG史においてどういった扱いであったかを語りたい。
※ この節ではカンジーの設定やストーリーには言及していない。設定やストーリーを望むなら、この節は読み飛ばして構わない。この節の次は「おまけ」としてエイヴンの解説となっている。
インベイジョン・ブロックの特設サイト地図において、スークアタ(Suq’Ata)の解説(リンク)で巣を守るものカンジーのイラストが添えられていたため、ファンからはカンジーはスークアタ出身か、あるいは何か縁のある者だろうと解釈された。
しかし、それらカード2種類とサイトのイラスト引用を除けば、カンジーには全く何のストーリーや設定も公開されることが無かった。
カードセット「インベイジョン」時には、ドミナリアの鳥系人型種族エイヴンはまだ存在していなかった時期であり、カンジーには異様な存在感と共に異物感が同居していた。カンジーと同種族と思えるようなクリーチャーが全くいなかったのだ。もしかするとスークアタ関連かもしれないが、アラビア風のスークアタらしさがある訳でもないし…この鳥人は何者なのだ。
そしてカードセット「オデッセイ」で鳥人エイヴンが初登場する。これ以降、エイヴンはドミナリア次元の主要種族の1つとなったが、カンジーをエイヴンと呼ぶには少なからず抵抗が伴うものだった。というのは、カンジーの顔とくちばしが鳥類ともなんともいえない形状(そもそも仮面か素顔かもわからない)だったので、他のエイヴンと同種族には見えなかったのだ。
オデッセイ・ブロック3つ目のカードセット「ジャッジメント」には集魂者の住処(Soulcatchers’ Aerie)というエイヴンの集魂者たちの住処とするカードが登場した。カンジーとはカード名の「Aerie(和訳は「巣」と「住処」でバラバラだが)」が共通し、メカニズムは「羽根カウンター」の数で「鳥クリーチャーを強化」…と明らかに巣を守るものカンジーの直系カードであった。だが、これを切っ掛けに、ファンたちの間でカンジーとオタリアのエイヴンを結び付けて解釈するといった声が盛り上がることはなかった。
そうして登場より20年後の2020年、カードセット「統率者レジェンズ」で2度目のカード化がされた。今回はファン待望のカンジーのストーリーと設定が公表されたのだ。
この設定文章を担当したのがイーサン・フライシャー(Ethan Fleischer)である。フライシャーによれば、カンジーはこれまでストーリーが書かれたことが無かったため、オタリア大陸出身と後付け設定することにした。オタリアは、鳥人エイヴンをフィーチャーしたオデッセイとオンスロート・ブロックの舞台である。(イーサン・フライシャー証言)
完成した設定とストーリーは公式記事The Legendary Characters of Commander Legends, Part 2(公式和訳版)で公開されている。
以下、カンジーの設定について個人的な所感を述べさせてもらう。
※ ここもカンジーのストーリーや設定に直接関する内容ではないので読み飛ばして構わない。
次に、カンジーがファイレクシア侵略戦争時にドミナリア次元の各地で戦ったのは、連合のペンダントを身に着けていることとインベイジョン・ブロック特設サイトでスークアタ(Suq’Ata)にいた説明にもなっている。そもそも故郷を離れてファイレクシアと戦ったオタリア住人にはオデッセイ・ブロック期にすでに前例がある(カマールとジェスカの祖父マトック(Matoc)やドワーフのバルソー(Balthor)など)。カンジーもその列に加えられただけなので、ここは比較的受け入れやすい後付け設定に感じる。
カンジーの住処をスコルテン山脈(Skollten Mountains)に設定したのは、私個人として一番驚いた部分だ。小説The Prodigal Sorcererにほんの少しだけ出てきたタミンガジン地方の地名が山脈名として新たに定義された。こういう拾い方と絡め方がにくい。
「ファイレクシア侵略戦争」「オタリア・サーガ」「タミンガジンの魔道学院」…これら3つの異なるストーリーアークがここで一堂に会したことになった。カンジー個人の設定文章ではあるのだが、連続性問題がいまだに山積みのオタリア関連に関して、問題解決とまでは行かずともその緩和に大きな貢献になるだろう。そんな期待が私には持てた。
おまけ:エイヴンの起源と種類
エイヴン(Aven)は鳥系人型種族である。多元宇宙の複数の次元に同種が確認できる種族だ。ここではドミナリア次元におけるエイヴンについて解説を行う。
AR43世紀時点でその数世紀前、エイヴンは故郷の次元から戦争を逃れてドミナリアに避難してきた次元間移民で、オタリア大陸北部地域の草原(steppe)の外れに居住したのがドミナリアでの始まりである。
この種族は3種類のサイズと形態を持ち、人間大サイズのエイヴン、大型のエレン(Elen)、小型のライペン(Raypen)で構成されている。
エイヴンは鷲や鷹に似た猛禽類系の特徴を持った人型種族で、翼を持ち空を飛べる。
エレンは身長9~10フィート(2.7m~3m程度)もある巨体を持ち、羽根は退化して飛べず動きは鈍いが、がっしりとした脚部と筋肉質の身体を誇る。
ライペンはドワーフ並みの大きさで、脚はひょろっと細く、足の指で物を掴むことができ、長く曲がった腕を持つ。腕には生まれながらの魔法の力を有する羽が生えていて、短時間だが飛行することが可能だ。8
エレンとライペンはヴァンス・ムーア(Vance Moore)の著作2作品(短編Dragon Lordと小説Odyssey)で登場したものの、他の作品に言及はされていない。カードでもエイヴンだけしかカード化されてはいない。カードセット「ドミナリア」期に「エレンとライペンは正規の設定か?」と質問されたイーサン・フライシャーは「もちろんだとも!カードに出てこないものがまだまだたくさん残っている。」と回答した(イーサン・フライシャー証言)。
The Art of Magic: The Gathering – Dominariaによると、エイヴンはAR4306年以降に起こったオタリア大陸の荒廃後9に、その多くが遠く離れたベナリアに移住している。これ以前はエイヴンはオタリア外部ではあまり知られていない種族であった。
さて、当初予定していた以上に記事の嵩が増してしまった。今回はここまでで切り上げるとしよう。
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統率者レジェンズでカード化された同じオタリア出身のキャラクター
カードセット「統率者レジェンズ」関連のリスト
- 統率者レジェンズの解説では「troop carrier」表記だが、インベイジョン・ブロック三部作小説では「troop ship」や「troop transport」表記である。いずれも「兵員輸送船」の意だ
- 「Order」は「騎士団」や「教団」といった意味の一般名詞だが、この組織は単に「オーダー(The Order)」としか呼ばれない。この組織の公式和訳の先例には「オーダー」の他に「騎士団」もあるが、そう呼ぶと他の騎士団と全く区別がつかないので「オーダー」で通すことにする
- ちなみにオンスロート・ブロック小説ではアクローマは主要登場人物の1人だが南部オーダーとダール平原は影も形も言及されていない
- 短編Dragon Lord初出時は「Northern Reach」表記だったが、その後に小説Odysseyで「Northern Reaches」に変更された
- 戦争途中で、ファイレクシアより古き世界の支配者上古族ドラゴン(Primeval Dragons)5人が復活。ドミナリアの支配を取り戻すため、全ドラゴンを全能に近い魔力で支配し、ファイレクシアに限らず他種族も敵に回して攻撃する、という一時的なハプニングが発生はしたが…
- 原文は「The founder」
- ドミナリアには何らかの魔法的手段で何百年何千年も生きる人物が存在しているが、本来はレアケースであるため、ここでは考慮に入れない。もしもを重ねると何でもありになってしまう。オッカムの剃刀
- 短編Dragon Lord初出時はライペンはエイヴンより大きくエレンよりも小さい中型サイズだとされたが、その後に小説Odysseyで設定が変更された
- 悪夢戦争やカローナ戦争