カード紹介:ヴェナーリアの黄金・微光

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ドミナリア次元のヴェナーリア(Venaria)と、その名を冠するカード黄金微光について紹介する。

また、赤衣の兵士という軍組織がヴェナーリア出身である可能性も考察する。

追記(2021年6月29日):ランドヴェルト山地帯の位置が確定したことの影響を考察に追記した。その他、グリーンスリーヴズ三部作における召喚魔法の仕組み解説を挿入した。

ヴェナーリアの解説

ヴェナーリア
現代ドミナリア地図より抜粋引用

ヴェナーリア(Venaria)はドミナリア次元南エローナ大陸東岸の細長い半島である。北に鉄爪山脈(Ironclaw Mountains)があり、名称不明の湾を挟んだ西にはサーシ(Sursi)がある。

現代ドミナリア地図では砂漠か丘陵のようにも見えるが、過去のドメインズ地図ではこの半島は山がちな土地に描かれていた。次元全体を描く地図では縮尺の関係で細部は省略されていると考えられるので、おそらくヴェナーリアの半島は昔の地図と同様に山がちではあるものの鉄爪山脈のような高い大山地帯ではなく、低い山や丘陵地が広がるような地勢なのだろう。

この半島は実はどういう土地なのか不明である。ヴェナーリアの名前を冠するカードが2種類があることと、ドメインズ地図付属カレンダーに位置が記載されていた、ということだけしか公開情報がないのだ。カードを見る限りでは眠りと光るものでかろうじて共通性が見られるくらいだ。

レジェンドの固有名詞を連呼するクレイトン・エマリィ作品にすら名前が出てこないほど情報がないが、グリーンスリーヴズ三部作に登場する赤衣の兵士たちがヴェナーリア出身かもしれない、と私はにらんでいる。この件については、最後のおまけで考察する。



ヴェナーリアの黄金

Venarian Gold

データベースGathererより引用

ヴェナーリアの黄金(Venarian Gold)には、エンチャントしたクリーチャーはXターンの間、眠りについてアンタップできないという、メカニズムとフレイバーがある。カード・イラストによると、この黄金を振りかけられた大熊がぐっすりと眠ってしまっている。

ヴェナーリアの微光

Dream of nothing, and wake to a dream come true.
無を夢見て、目覚めたときにその夢をかなえよ。
引用:ヴェナーリアの微光(Venarian Glimmer)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

ヴェナーリアの微光(Venarian Glimmer)

データベースGathererより引用

ヴェナーリアの微光(Venarian Glimmer)も眠りに関連があるカードだ。イラストには眠っているミノタウルスと、水平線の日の光が描かれている。日の出の光でこれから目覚めるところか、それとも、日没で眠りについたところか、どちらかちょっと分からない。

和訳製品版のフレイバー・テキストには違和感を覚える。特に「目覚めたときにその夢をかなえよ。」の部分だが、夢を見た人物に対して能動的に夢をかなえるように命令している。しかし、原文は「命令文, and …」の形なので「…しなさい。そうすれば、…になります。」と訳すものだろう。「wake to」は「(起きて)…と悟る・気付く」だ。

無を夢見よ。さすれば、夢がかなうと知れ。

こうなる。何も無いことを夢見てただ寝ていれば、何も手に入らないので夢がかなえられる、ということだ。なんと皮肉な。

ヴェナーリアのストーリー

ヴェナーリアは既存の小説やコミックなどの作品内で舞台となったり、ヴェナーリアにまつわる人物や事柄が登場したり言及されたことはない。

ただし、ある作品に登場する赤衣の兵士はヴェナーリア出身者と考えられる(以下のおまけ参照)。



おまけ:ヴェナーリアと赤衣の兵士

赤衣の兵士(Red Soldiers)は、クレイトン・エマリィグリーンスリーヴズ小説三部作に登場した集団である。彼らの故郷の名前は作中で明かされていないが、私はそこがヴェナーリアだと推測している。

赤衣の兵士と赤のデイシアンとは

まず最初に、赤衣の兵士と彼らを操っていた魔術師デイシアンについて説明する。

赤衣の兵士は赤いチュニックに赤いキルトを着て、赤い房飾り付きの兜をかぶっている。鱗鎧とすね当て、円形盾で身を守り、武器は小剣と背中に吊るした投げ槍が各1本である。彼らは日に焼けた青銅色の肌と黒いあごひげを生やしている。戦場においては組織だった連携を取り、密集体形を組んだり、鬨の声を上げて士気を高揚させたり、訓練された有能でプロフェッショナルな軍人として描かれている。

赤衣の兵士の部隊は赤のデイシアン(Dacian the Red)という女性魔術師の手先であったが、その関係は魔法による強制的な隷属であった。デイシアンが要請すると故郷の土地から戦場へと瞬間的に召喚されて戦わされていた。デイシアンは赤の魔法の達人で、地震や石の雨、火の玉などの呪文を唱え、ケンタウルスの風追い族、双頭の巨人、ゴブリン気球部隊などを召喚できた。ケンタウルスや双頭の巨人も、赤衣の兵士と同様に魔法の支配下にあった。

追記(2021年6月29日):グリーンスリーヴズ三部作における召喚魔法
グリーンスリーヴズ三部作では、召喚魔法はあらかじめ召喚する対象に会って「タグ付け」しておく、という準備が必要である。「タグ付け」はその時点で対象が自覚することはまずなく、予期せぬ召喚で戦場に駆り出され、強制的に戦わせられるまで気付けないようだ。魔法でコントロールされた状態にあるが、術者が(敵に敗北するなどして)召喚した対象を放棄すると「タグ付け」も支配も無力化される。追記ここまで
ゴブリン気球部隊(Goblin Balloon Brigade)

デイシアンに隷属する部下の1つ、ゴブリン気球部隊(Goblin Balloon Brigade)
データベースGathererより引用

デイシアンが敗北した際に赤衣の兵士やケンタウルスらはその場に放置された。魔法の支配から解放されたもののそこは見知らぬ土地であり、誰も彼らの故郷がどこにあるか知らなかった。ささやきの森(Whispering Woods)グリーンスリーヴズ(Greensleeves)とその兄ガル(Gull)の仲間となった彼らは、広大なドメインズ地方のどこかにある故郷の場所を探し求める。

以上が三部作の1作目小説ささやきの森から2作目小説Shattered Chainsの終盤までの設定と状況である。この2作目の最後に彼らは各々の故郷の位置を知り帰還を果たせたのだった。

赤衣の兵士の故郷

赤衣の兵士の故郷がどこだったのか、小説では以下のように書かれている。

Dacian revealed the southern peninsula, where she’d hired the red soldiers, Varrius and Neith and the late Tomas, as well as the archipelago where she’d found Liko and reported other giants to live, albeit one-headed ones.
デイシアンは、この南の半島が赤衣の兵士、ヴァリウスとニースと故トマスを雇った土地だと明かした。そして、この群島が(双頭巨人の)リコを発見した場所で、(リコと違って)単頭の巨人もいたという。
引用:小説Shattered Chains
上が英語原文。下が私家訳(カッコ内は注釈)

南の半島とは、ささやきの森より南で、ドメインズ地方のどこかにある半島部という意味である。該当する半島は、以下の地図の通りだ。

赤衣の兵士の故郷候補地
現代ドミナリア地図より抜粋引用

北エローナ大陸の南端の半島はムロニア(Muronia)がある。南エローナ大陸北西海岸の半島はベナリア(Benalia)の領地である。ラノワール(Llanowar)の南の湿地帯はフォルス川(Fors River)の河口でここもエルフの領域だろう。さらに南のクシュ(Kush)の半島にはエスターク(Estark)がある。これらの土地には赤衣の兵士とは違う人々が暮らしている。特に作中にはムロニア、ベナリア、クシュの住人が登場しており、赤衣の兵士の故郷を知らないのだ。

したがって、ムロニア、ベナリア、ラノワール、クシュの半島は候補から除外される。

ラー(La)はカードには登場してないが、小説アリーナ 魔法の闘技場で「伝説のラーの地のみごとな木ぼり細工(the fine wood carvings of the legendary La)」の1文だけ言及がある土地。地図上では南エローナ大陸南端の森林地帯だ。ヴェナーリアと同様に情報がほとんどない。

ラーとヴェナーリアのどちらが赤衣の兵士の故郷なのだろうか。

ケンタウルスと双頭巨人の故郷

判断材料として、デイシアンが隷属させたほかの種族の故郷を確認してみる。デイシアンの行動範囲が絞れるはずだ。

風追い族のケンタウルスと双頭巨人の故郷は作中で確定されており、カレンダー付属のドメインズ地図にもきちんと記載されている。

Windseeker Centaur

風追いのケンタウルス(Windseeker Centaur)
データベースGathererより引用

風追いのケンタウルス(Windseeker Centaur)クシュの南の緑の平原(Green Lands)が故郷である。草原地帯で折れ足山(Broken Toe Mountain)がある。

ドミナリア地理:緑の平原と風追いのケンタウルス
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Two-Headed Giant of Foriys

フォライアスの双頭巨人(Two-Headed Giant of Foriys)
データベースGathererより引用

双頭巨人のリコの故郷は、小説では群島にあると書かれていたのみだったが、カレンダー付属地図でフォライアス(Foriys)が記載されたことで名前と位置が確定した。

地図上で緑の平原フォライアスの位置を確認してみよう。

デイシアンの行動領域
緑の平原とフォライアスの位置
デイシアンの出身地の方角から大雑把に直線で結んだ
現代ドミナリア地図より抜粋引用

地図の通り、緑の平原フォライアスは海を挟んですぐ隣にある。そこからラーとヴェナーリアはどちらも同じくらい離れている。しかし、デイシアンは北エローナ大陸のささやきの森より北東の山脈と丘陵が広がる土地出身1であるから、緑の平原フォライアスへ南下する途中でヴェナーリアを経由した可能性はある(地図上の赤い直線)。

追記(2021年6月29日):赤のデイシアンは、風追いのケンタウルスフォライアスの巨人の他に、ゴブリンにもタグ付けして使役していた。MTG史上初のゴブリンにはモンスのゴブリン略奪隊(Mons’s Gblin Raiders)がいるが、その故郷ランドヴェルト山地帯サーシの南にある。なんと、ランドヴェルトは上記地図に図示した赤線上に存在するのだ。これでヴェナーリアを経由した南下を補強する情報が1つ加わった。
追記ここまで

ヴェナーリアとラーを比較する

デイシアンが赤の魔術師という特性を考えると、彼女のマナの源は山である。ラーを含むエローナ南端の大森林地帯は赤よりも緑の魔術師に属する土地であるから、山がちなヴェナーリアの方が地勢的により相応しい。デイシアンが森林地帯のラーまで来訪するには、相応の見返りとなる理由が必要であろう。

また、ヴェナーリアを冠するカード2種類はどちらも色が青であるが、これはヴェナーリアが赤い土地であることに反しない。ヴェナーリアは細長い半島で三方を海に囲まれた土地であり、青マナも豊かであると考えられるからだ。

ヴェナーリアと赤衣の兵士

以上の理由により、ヴェナーリアには赤衣の兵士というプロフェッショナルな軍組織が存在すると考えられる。

今回はここまで。

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