イニストラード:苛まれし預言者、エルス

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苛まれし預言者、エルス(Eruth, Tormented Prophet)はカードセット「イニストラード:真紅の契り」収録の伝説のクリーチャー・カードである。

エルスはイニストラード次元が初めて舞台となったイニストラード・ブロック当時からの古いキャラクターだ。とはいえマイナー・キャラで情報もあまり存在しなかったのだが、「真紅の契り」を機会にカード化となり、ストーリー短編(原文邦訳版にも登場を果たした。

今回はエルスと関連カードについて取り上げる。

苛まれし預言者、エルスの解説

She is cursed with visions of monsters and suffering . . . and all her visions come true.
彼女は怪物や苦悶の幻視に取り憑かれている……そしてその幻視はすべて現実となる。
引用:苛まれし預言者、エルス(Eruth, Tormented Prophet)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

苛まれし預言者、エルス(Eruth, Tormented Prophet)

データベースGathererより引用

苛まれし預言者、エルス(Eruth, Tormented Prophet)はイニストラード次元ケッシグ州ラムホルト出身の人間女性。人の死にまつわる預言の夢を見る生来の能力を持っている。

エルスはイニストラード次元が初登場した最初のイニストラード・ブロックにおいて、精神錯乱して幽閉されている女性として存在を窺わせていた。設定集The Art of Magic: The Gathering – Innistradで情報が補足された後、カードセット「イニストラード:真紅の契り」でカード化され、短編(原文邦訳版で現在の様子が描かれた。

エルスは生まれつき心身ともに虚弱であった。死を預言する悪夢は若い頃に発現し、毎晩見る人の死によって正気が奪われていった。

人の死を的中させる預言を語る彼女は、むしろ混沌と混乱を広める元凶だと見做されて、ラムホルトの住人によって砦に幽閉されてしまった。そうして遂に異端審問で処刑されそうになったところで、ラムホルトから逃亡して難を逃れた。

逃げ込んだナッターノールズで出会った謎の「闇の淑女(Dark Lady)」はエルスの仲間となり、アドバイスや情報を与えてエルスを助けた。審問官の追っ手から身を守れただけでなく、エルスの知るはずのない相手の個人情報をも入手できたのだ。

そして永遠の夜にイニストラードが包まれた現在、エルスはトラウブレッセンの砦において再び囚われの身となったのだった。



苛まれし預言者、エルスの関連カード

この節では、エルスに直接言及するカード、および、設定解説や登場短編の情報から関連性が見えるカードを時系列順に並べて、エルスの経歴を追って語っていく。

捨て身の狂乱

Her mind was quite gone, yet she spoke nothing but truth.
彼女は正気ではないが嘘は言わない
引用:捨て身の狂乱(Desperate Ravings)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

捨て身の狂乱(Desperate Ravings)

捨て身の狂乱(Desperate Ravings)
データベースGathererより引用

捨て身の狂乱(Desperate Ravings)はカードセット「イニストラード」収録のインスタント・カードである。

カード名で「狂乱」と訳された「Ravings」だが、「raving」は形容詞だったなら「狂乱の…」という意味に訳されるものの、このカード名のように名詞ならば「支離滅裂な話・妄言」などという意味で訳される。

「イニストラード」は「真紅の契り」の4年(以上)前に当たるので、ラムホルトで幽閉されていたエルスと考えられる。

フレイバー・テキストを見ると、「yet she spoke nothing but truth」が「嘘は言わない」と訳されている。だが原文は「嘘は言わない」よりもむしろもう少し積極的な「真実しか言わない」という意味合いである。

息吹のニブリス

“Why do the dead remain among us? Where is Flight Alabaster to lead them home? Where is Avacyn?”
–Eruth of Lambholt
「我々の中に死者が残るのは何故なのでしょう?空翔ける雪花石が導く故郷とはどこなのでしょうか?アヴァシンはどこにいるのでしょうか?」
–ラムホルトのエルス
引用:息吹のニブリス(Niblis of the Breath)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

息吹のニブリス(Niblis of the Breath)

息吹のニブリス(Niblis of the Breath)
データベースGathererより引用

息吹のニブリス(Niblis of the Breath)はカードセット「闇の隆盛」収録のクリーチャー・カードである。これはイニストラード次元の霊(Geist)の1種であるニブリスである。

このフレイバー・テキストにも間違いがある。「空翔ける雪花石が導く故郷とはどこなのでしょうか?」となっている原文を訳すなら「死者を故郷へと導く空翔ける雪花石はどこにいるのでしょう?」という意味になるべきだ。

空翔ける雪花石の天使(Angel of Flight Alabaster)

空翔ける雪花石の天使(Angel of Flight Alabaster)
データベースGathererより引用

設定解説記事A Planeswalker’s Guide to Innistrad: Gavony and Humansによると、「空翔ける雪花石(Flight Alabaster)」あるいは「雪花石飛行隊」とは、祝福されし眠りの化身であり、死者への冒涜に対する防御魔法を与える天使たちのことである。

では訳し直したフレイバー・テキストを確認してみよう。

「我々の中に死者が居残っているのはなぜ?死者を故郷へと導く空翔ける雪花石はどこ?アヴァシンはいずこに?」
–ラムホルトのエルス

カードセット「闇の隆盛」の時期は、大天使アヴァシンが行方不明となって何ヶ月も経ち、聖なる力が弱まり闇の勢力が力を増していた。今までならば空翔ける雪花石の天使の守りがあったため、死者たちがたとえアンデッドとして蘇っても生者の間に残ったままで放置されたりはしなかった。だのに、この時代には死者は徘徊し、もう長い間、大天使アヴァシンの姿さえ人々は目にしていないのだ。

墓の入れ替え

“It’s a cold, dark journey either way.”
–Eruth of Lambholt
いずれにしろ冷たく、暗い旅路です。」
–ラムホルトのエルス
引用:墓の入れ替え(Grave Exchange)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

墓の入れ替え(Grave Exchange)

墓の入れ替え(Grave Exchange)
データベースGathererより引用

墓の入れ替え(Grave Exchange)はカードセット「アヴァシンの帰還」収録のソーサリー・カードである。

カードのメカニズムでは、自分の墓地のクリーチャー・カード1枚を回収すると共に、対戦相手にはクリーチャー1体の生け贄を強要する。したがって、フレイバー・テキストの「いずれにしろ(either way)」とは、墓に埋葬されるのも、墓から蘇るのも、その「どちらの旅路でも(either way)」という意味合いだ。

異端審問官

月皇の審問官(Lunarch Inquisitors)

月皇の審問官(Lunarch Inquisitors)
データベースGathererより引用

エルスは審問官によって異端と宣告されて村の中央で処刑されそうになり、山へと逃げ込んだ。

カードセット「イニストラードを覆う影」では、天使たちがエムラクールの影響で正気を失い、更に悪魔崇拝者に教会上層部が牛耳られ、異端認定された無辜の民が次々に処刑されていた。月皇の審問官(Lunarch Inquisitors)はその時期の狂ってしまった教会の審問官であり、エルスを異端として処刑しに来た審問官の聖戦士はこういった者たちの同類だ。

ナッターノールズ

ナッターノールズの隠遁者(Hermit of the Natterknolls)

ナッターノールズの隠遁者(Hermit of the Natterknolls)
データベースGathererより引用

ナッターノールズ(Natterknolls)はケッシグ州にある地域で、森に覆われた谷間を挟む尾根や断崖である。隠遁者や魔女が住むという。

ラムホルトを離れたエルスはこのナッターノールズに移り住んだ。そこで彼女の前に現れて救ったのが「闇の淑女(Dark Lady)」と呼ばれる、エルスにしか見えず聞こえない存在だった。闇の淑女の助言によって、決して審問官の追っ手に捕まることはなかった。

「Natterknolls」は「natter(ぺちゃくちゃ喋る、お喋り・噂話)」+「knoll(小山・丘・塚)」の合成語。

約束された終末、エムラクール

約束された終末、エムラクール(Emrakul, the Promised End)

約束された終末、エムラクール(Emrakul, the Promised End)
データベースGathererより引用

カードセット「イニストラードを覆う影」と「異界月」では、約束された終末、エムラクール(Emrakul, the Promised End)が次元外からイニストラードに襲来した影響で、狂気と異形化の変異が世界中に広がっていった。

この時期のエルスは、エムラクールの影響で完全に狂ってしまったように見えたとされる。ナッターノールズでは支離滅裂な、時には破滅を預言しながらも、妄言をぶつぶつとつぶやき続けていたようだ。

しかし、エルス本人の弁によると、「闇の淑女」の助けがなければ自分も世界中と同じように狂気に蝕まれていただろう、とあくまで発狂の影響はなかったと主張している。

この食い違いは何だろうか?

これは推測だが、エムラクール到来とほぼ同時期に現れた「闇の淑女」に何らかの関係性はあるのではなかろうか?あるいは、エルスが「闇の淑女」として認識している存在こそがエムラクールなのでは……?

恐怖の顕現、ウンブリス

恐怖の顕現、ウンブリス(Umbris, Fear Manifest)

恐怖の顕現、ウンブリス(Umbris, Fear Manifest)
データベースGathererより引用

恐怖の顕現、ウンブリス(Umbris, Fear Manifest)はカードセット「イニストラード:真紅の契り」統率者デッキ収録の伝説のクリーチャー・カードである。

1世紀以上前からトラウブレッセンの村の砦内に魔法的に封じられていた。就寝中の村人から不安や恐れ、苦痛の感情や記憶を奪い取って、精神を健康に保つ契約を村の創設者一族と結んでおり、砦に贈られる捧げ物を受け取っていた。

「狩人」と呼ばれる配下のデビルたちがエルスを砦までさらって来たが、エルスの魂は既に「闇の淑女」のものとなっていたため、彼女を捧げ物として受け入れることはできなかった。

天使の拳、トーレンズ

天使の拳、トーレンズ(Torens, Fist of the Angels)

天使の拳、トーレンズ(Torens, Fist of the Angels)
データベースGathererより引用

天使の拳、トーレンズ(Torens, Fist of the Angels)はカードセット「イニストラード:真紅の契り」収録の伝説のクリーチャー・カードである。

トーレンズはトラウブレッセンの砦からエルスを救出し、ウンブリスを1世紀以上束縛していた魔法を打ち破った。公式記事The Legends of Innistrad: Crimson Vowによれば、カード化されたトーレンズはエルスと出会った後の、弱き民人の英雄と目されるようになってからの姿である。

トーレンズに救出されたエルスはトラウブレッセンの村に留まることにした。



苛まれし預言者、エルスの解説記事

苛まれし預言者、エルス(Eruth, Tormented Prophet)

特別イラスト版の苛まれし預言者、エルス
データベースGathererより引用

カードセット「イニストラード:真紅の契り」の伝説のキャラクターの解説を行う公式記事The Legends of Innistrad: Crimson Vowでのエルスの記述は以下の通りである。

Mad. Cursed. Tormented by devils. Speaker for demons. Eruth was called many things before her fellow townsfolk locked her away in a damp and miserable keep. For her health, they said. For her protection, they said. So, she would stop telling them how the world was going to end. They did not care that her dreams actually came true; they only cared that her prophecies did not spread chaos and panic. However, after a fated encounter with Torens, Fist of the Angels, she can now warn the world of what terrors were hidden in the keep with her . . .

狂人。呪われし者。デビルに苛まれし者。デーモンの代弁者。エルスは様々な名で呼ばれていたが、町の人々は彼女を湿って陰鬱な砦へと幽閉した。彼女の健康のため、彼女を守るため、と人々は言った。だから、彼女は世界がどのようにして終わりに向かっているのかを語ることを止めたのだ。彼女の見る夢が現実化していることには目を向けられなかった。彼女の預言が混沌と混乱を広げることにしか目が向かなかった。しかしながら、天使の拳トーレンズとの運命的な出会いにより、エルスは自分と共に砦に隠されていた恐怖について世界へと警鐘を鳴らせるようになったのだ…。
引用:公式記事The Legends of Innistrad: Crimson Vow
上が英語原文。下が私家訳

実際のストーリー作品や彼女の経歴に比べて省略が効き過ぎてしまった内容である。ラムホルトで幽閉された場所が、まるでトーレンズと出会った場所と同じ砦のようになってしまっている。





では今回はここまで。

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