「オタリア・サーガ」の時系列検証、第4回目はオデッセイ・ブロックである。
第1回から第3回は、オンスロート・ブロックを1作ずつ逆順で検証してきたが、今回のオデッセイ・ブロックは3作を一度にまとめて検証してしまう。
オデッセイ・ブロック
オデッセイ・ブロックは、カードセット「オデッセイ」「トーメント」「ジャッジメント」の3つから構成される。その詳細なストーリーはブロック小説三部作、小説Odyssey、小説Chainer’s Torment、小説Judgmentで語られている。
オデッセイ・ブロックの出来事は、AR4305からAR4306年に発生した。3作の出来事をこの2年にわたってうまく収めなければならない。
※ 細かい検証過程を飛ばして結果だけ知りたい場合はこちらへ。
オデッセイ・ブロックの時系列検証
オデッセイ・ブロックは、まず「オデッセイ」と「トーメント」の1組で検証を終えた後、残り「ジャッジメント」は別扱いとして検証を行う。
「オデッセイ」と「トーメント」
カードセット「オデッセイ」と「トーメント」は、小説Odysseyと小説Chainer’s Tormentで詳細が描かれている。ただし、小説Chainer’s Tormentは中盤までは小説Odysseyと同じ時間軸で別主人公視点で語っているものだ。したがって、両作はひとまとめで扱うのが都合がいい。
では両作品から拾った時系列情報は以下の通りである。
時系列情報A
A:まずチェイナーがミラーリを発見した。
A’:ミラーリの出現の真相は、オタリア・サーガの終盤(小説Scourge)と後日談(小説The Moons of Mirrodin)で明かされている。プレインズウォーカーのカーンが、ファイレクシア侵略戦争から1世紀後、ドミナリアに送った偵察機がミラーリの正体であった。チェイナーが発見する少し前と考えられる。
時系列情報B
B:4か月後にカマールがカバル市に到着し、それから1週間経たぬうちにクローサン・ドラゴンの襲来。ドラゴン退治の報奨として、ミラーリがカーターの手に渡った。
時系列情報C
C:その数か月後(原文「The next few months」なので「2-3か月」)、ジェスカとバルソーがカバル市を来訪し、チェイナーと対戦してカマールの近況情報を入手してパーディック山脈に帰った。
C’:この期間中にミラーリは北部地域の城塞を破滅させ、次に海の帝国の皇帝アボシャンがミラーリの所有権を得た。おそらく、この時点で既にアボシャンがミラーリを使用した余波で海都も壊滅している。
C”:小説Chainer’s Tormentによれば、アボシャンの破滅の数週間前に、北部オーダーの城塞の災厄が発生した。
時系列情報D
D:チェイナーVSジェスカ&バルソーの試合後それほど日数が経過せずに、アボシャンがミラーリを使用して起こした大津波災害の報告と、間もなくミラーリを回収したブレイズが帰還する連絡、その2つがカバル市に届いた。ブレイズの到着2日前にカマールがカバル市に戻っていた。
時系列情報E
E:カマールとチェイナーがコンビを組んで、カバル市のピットファイト12連勝を成し遂げ連勝記録を塗り替えた。その時点で、陰謀団総帥ザ・ファーストはこの数か月(原文「the past few months」つまり「2-3か月」)で邪魔者の刈り取りが終了する想定だったがそうならなかったと反省し、3か月後の陰謀団創立記念式典でミラーリを賭けた大会開催を決定した。
E’:ザ・ファーストの言う数か月間は、カーターとアボシャンがミラーリで破滅したところ(D)からの換算と考えるとつじつまが合う。仮にミラーリを一旦手放した時点(B)からとすると、数か月(a few months)以上が経過してしまっているのだ(数か月の後に少なくとも、ジェスカとバルソーの試合、および、カマールとチェイナーのコンビが12連勝するだけの期間がいる)。
時系列情報F
F:設立記念式典大会の日にチェイナーが破滅しカバル市は廃墟と化した。カマールが親友チェイナーからミラーリを引き継いだ。「トーメント」終幕。
F’:この出来事は設定集The Art of Magic: The Gathering – Dominariaの記述によって、AR4305年に起こったと確定している。
F”:同日中に、海の帝国の内乱も女帝ラワンが勝利し、ラクァタスの敗北で終結した。ラクァタスの配下の軍はアボシャン海溝内に封じ込められた。
「オデッセイ」と「トーメント」の情報まとめ
「ジャッジメント」
続いてカードセット「ジャッジメント」の範囲だ。
時系列情報G
G:カバル市からカマールが故郷パーディック山脈オーローに帰還した。移動中の時間経過は(最初の数日を除いて)不明だが、カマールは騒動を避けようとしており、オーダーの巡回部隊をまくために進路をそれたりしているため、通常の旅路よりも時間がかかったはずだ。
時系列情報H
H:オーローに戻ったカマールは、1週間後に諸部族のリーダーを決める大会の開催を宣言した。大会で丸1週間を費やした。その後、カマールを王者と認める派閥と、カマールの言動を不服とする派閥とでパーディック山脈の部族は真っ二つに割れ内戦の危機に陥った。カマールは、妹ジェスカを殺しかけたことで正気に戻り、内戦勃発寸前で踏み止まった。最低でも2週間と数日がかかっており、余裕を見るなら1か月弱といったところ。
時系列情報I
I:その後、カマールはジェスカの治療のため、バルソーと共に妹を運搬してクローサのシートンの下に向かった。パーディック山脈を下山すると、麓でオーダーと陰謀団に発見されて数日間追われながら北上して森に入った。
時系列情報J
J:カマールが森に入ってから諸々の決着がつくまでに10日間経過して、オデッセイ・ブロックの結末となった。
「ジャッジメント」の情報まとめ
時間の経過が曖昧だ。オーローとクローサでの出来事(H・I・J)を1か月間以内に押し込めることは不可能ではないが、カマールが故郷に帰還してから1週間後に大会、大会自体が1週間、その後に蛮族が2分しての内乱の危機、ジェスカの負傷を経てパーディックの麓に下山したところまでで、1か月近くはかかっていると見るのが妥当であろう。その後の決着までで半月といったところだ。
前回検証からの課題
オタリア・サーガ検証の前回オンスロートの検証(リンク)において、オンスロート・ブロックの始まり、すなわち、「オデッセイ・ブロックの終わりがいつか」を求められればオンスロートの時系列のあいまいさが解消される、と考えた。
「オデッセイ」と「トーメント」はAR4305年の1年間ちょうどを埋めると導き出された。ところが、「ジャッジメント」では初めに不明な期間があるため、完全な特定には至らなかった。
前回検証で抱いた見込みが甘かったのだ。この方針では答えが出ない。
雑な仮説の検討
頭を切り替える。オンスロートの検証において、「クローサの森の年輪」と「森の声の余命6か月発言」の両方から、「ジャッジメント」の結末をAR4306年5月頃か6月に置く「雑な仮説」を立てていた。これに乗っかってみると、「ジャッジメント」はどうなるだろうか?
では仮に、「ジャッジメント」の最後をAR4306年5月半ばと置く。パーディック山脈麓からクローサの森での決着までは半月程度なので、これらは5月中に全て配置できる。その前のパーディック山脈での全ての出来事は4月となる。すると、AR4306年1月から3月の期間が空白となるので、3か月いっぱいかけてカマールがカバル市からパーディック山脈オーローまで移動に費やしたことになる。
見た感じは良さそうな雰囲気だ。しかし、カマールの移動に丸3か月間は妥当なのだろうか?
移動に丸3か月間の検証
カマールのカバル市=パーディック山脈オーロー間の移動について、丸3か月間かかるのは妥当かを検証する。
小説Judgmentによると、カマールはカバル市の北門から出て北寄りの平原のルートを進み、途中でオーダーの巡回部隊を避けて北東にそれたりしながら、争いを極力避けつつ帰路を進み、クローサの森の南の平原を抜けてパーディック山脈に到着したことが読み取れる。移動は全て徒歩だ。
地図に照らし合わせると、大陸東部のカバル市から、大陸中央部の砂漠地帯コーリアン悪地を大きく迂回してその北側を西進して、大陸西部に至り南進して山脈地帯に辿り着いた。オタリア大陸横断の長距離移動である。しかも、途中で逆方向の北東に逃げたりもしていた。想像だが、巡回部隊などの追っ手をやり過ごすために、一時的に移動せずにどこかに身を隠していたりもしたであろう。
3か月いっぱいかかっても十分納得がいく旅程だと考えられる。
オンスロートの再検討
では、この「雑な仮説」を採用したいが、問題点が1つ残っている。
前回検証で指摘したように、カマールがクローサの森のゴルゴン山から陰謀団の都市アフェット間を往復するだけで1年間もかかってしまう点だ。前回から引用すると「ストーリーの空白期間にそんなに時間が経過していていいのか?と私としては正直受け入れ難いのだ。」
従来通りに準備期間は1か月とすると、「カマール大移動」1回に半年もかかっている計算になる。もうしそうなら、カマールは作中で語られない詳細不明なランダムな障害に遭遇していたと解釈する他はなくなる。北部オーダーは、カマールが城塞を破滅させた張本人だとの誤解から、敵視しているため、移動途中で遭遇する障害の可能性として安易に想定できる相手ではある。とはいえ、言及に値しないランダム遭遇で数か月も余計に移動時間がかかってしまうのは余りにも不自然だ。
だから、私は解決策として、前回記事の「パート5:カマールの準備」を再考することにした。
カマールの準備期間は小説Onslaughtでは少なくとも1か月間が経過していることが分かるが、実際には何か月間とは書かれていない。私はここの記述を読み替えて、カマールはクローサの森で準備に「半年以上から一年近くの期間」をかけたと解釈することにした。そうすると、前回検証のいわゆる「カマール大移動」に関しては、1回につき3か月程度を見ることになる。
これで説得力を持たせた時系列が描けるようになった。
オデッセイ・ブロックの時系列の検証結果
本記事で行ったオデッセイ・ブロックの検証結果を反映させた時系列は次のようになる。
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AR4305年5月初旬、カマールがカバル市に到着。クローサン・ドラゴンのカバル市襲撃。カーターがミラーリを獲得した。
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AR4305年6月、北部オーダーの城塞がミラーリの災厄で半結晶化し、ピアナやカーターらが死亡した。
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AR4305年7月初旬、皇帝アボシャンがミラーリを使用し、オタリア大陸は大津波災害に見舞われ、海の帝国の海都が崩壊した。
「オデッセイ」はここまで。
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AR4305年7月中旬以降、ミラーリがカバル市に返還された。
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AR4305年9月下旬、陰謀団設立記念式典での大会開催が決定された。
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AR4305年10月中旬まで、チェイナーがカマールを介添え人として1週間の狩りの儀式を完遂。その後、カバル市ではティーロ指揮下の北部オーダー聖戦軍が攻撃し、都市に大打撃を与えるも撃退された。
戦闘後の様々な処理が終わったところで、チェイナーがミラーリの所有権を獲得して、カバル市からザ・ファーストを追放して陰謀団の実権を握った。
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AR4305年12月下旬、陰謀団設立記念式典の日。チェイナーが破滅し、カバル市が廃墟と化した。
同日、ラクァタスが海の帝国の内乱に敗北し、その配下の軍勢はアボシャン海溝内に封じ込められた。
「トーメント」はここまで。
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AR4306年1-3月、カマールの帰路。陰謀団・海の帝国・北部オーダーが組織を再編すると共に、再起を図るラクァタスも含む諸勢力はミラーリの行方を調査していた。
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AR4306年4月、パーディック山脈オーローでの大会と、蛮族内乱の危機。カマールがジェスカに重傷を負わせ正気に戻った。
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AR4305年5月中旬まで、クローサでのカマールとラクァタスの決着。カマールがミラーリをクローサの大地に突き刺し放棄した。「オデッセイ・ブロック」終了。
そして、本記事では前回の「オンスロート」時系列検証を見直して、以下のように開始時期をAR4306年5月と定め、各所に修正を加えた。
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AR4306年6月から8月頃(?)、カマールはジェスカの消息を追ってアフェットに向かった。
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AR4306年8月頃(?)、アフェットでのカマールとフェイジ(ジェスカ)の兄妹対決の1日。
それよりいくぶん前に、イクシドールがフェイジに恋人ニヴィアを殺され、砂漠への追放刑となった後、能力に目覚めて自分の国トポスを創造し始めていた。
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AR4306年8月頃(?)から11月頃(?)、カマールがアフェットからクローサのゴルゴン山に帰還した。ザ・ファーストは単身でカマールを追跡し、クローサ到着3日前になってからカマールを殺害しようと試み失敗し、森内部に潜入した。
この期間中に、フェイジは責任者として大闘技場の建設計画を進めた。
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AR4306年11月頃(?)からAR4307年8月頃(?)、カマールの準備期間。AR4307年5月、カマールと森の声との会話での余命6か月発言。
ザ・ファーストはこの時期の初めにゴルゴン山内部にまで侵入して腐敗の種となる工作を施した後に森を離れ、大闘技場建設地に向かった。
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AR4306年8月頃(?)から10月頃(?)、カマールがクローサの軍団を率いて大闘技場に進軍。
その途中、AR4307年10月に大闘技場がオープンした。
その後、イクシドールはアクローマを創り出し、フェイジ殺害を命令して向かわせた。
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AR4307年11月にカマールとフェイジのリベンジ戦があり、アクローマの乱入で試合は未決着で終わった。
それから1か月間、カマールとフェイジの同盟軍がイクシドール&アクローマと戦うための準備をした。同時期にイクシドール側も交戦の準備を整えた。
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AR4307年12月にカマール・フェイジ同盟軍がトポスに出陣した。
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AR4308年1月にトポス付近にて悪夢戦争が起こり、終戦となって「オンスロート」終了。
カードセット「レギオン」と「スカージ」の範囲には修正はない。
さいごに
以上でオタリア・サーガの6つのカードセットと、対応する小説三部作2シリーズを対象とした検証が終了できた。設定の連続性の面で何かと混乱していたオタリア・サーガであったが、これで時系列においては大枠の骨組みが整理をつけられた。
次回でオタリア・サーガの全体の時系列表を作成して検証は完了となる見込みだ。
では、今回はここまで。