モダンホライゾン2:移り気のピルー

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移り気のピルー(Piru, the Volatile)カードセット「モダンホライゾン2」に収録される伝説のクリーチャー・カードである。ドミナリア神話時代古龍戦争を生き残ったエルダー・ドラゴンの1体である。

※ 暫定版であるが本記事はこの状態で公開する。後にコミックの画像を引用したり、いくつか節を書き足す予定だ。(2021年6月12日)

移り気のピルーの解説

Chasms of dueling energies course within her.
体内で常に葛藤するエネルギーの亀裂によって突き動かされている。
引用:移り気のピルー(Piru, the Volatile)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

移り気のピルー(Piru, the Volatile)

移り気のピルー(Piru, the Volatile)
データベースGathererより引用

移り気のピルー(Piru, the Volatile)はドミナリア次元のエルダー・ドラゴンの1体。女性。

ピルーはAR-20000年頃に始祖ドラゴンが産み落としたドミナリア次元最初のドラゴンの1体であり、同じエルダー・ドラゴンのクロミウム・ルエルを伴侶として多くの子をもうけた。上古族ドラゴンのクローシスは息子である。

ピルーとルエルは古龍戦争を生き延びられた数少ないエルダー・ドラゴンであったが、アンティキティー戦争期の数世紀前、ピルーはコロンドール大陸においてダッコンの黒き剣によって命を奪われ、20000年近い長い人生に幕を下ろした。彼女の死の大爆発によって大地が裂け「決闘峡谷」となった。



ピルーというキャラクターの経緯

ピルーはカードではなくコミック版黒き剣のダッコンに登場した6番目のエルダー・ドラゴンであった。コミック出身キャラクターであったため、認知度が高くなく、かなり長い間存在を無視され続けてきた。

※ この節ではピルーの設定やストーリーには言及していない。設定やストーリーを望むなら、この節は読み飛ばして次の節に進んでも構わない。

1994年カードセット「レジェンド」でエルダー・ドラゴン5種類が収録された。

1996年、コミック版黒き剣のダッコンで第6のエルダー・ドラゴンとしてピルーが初登場した。ピルーの出番はこのコミックのみである。しかし、アルマダコミック関連作品ではピルー本人の言及はされなくとも、彼女の死によって形成された大亀裂「決闘峡谷」はジャレッド・カルサリオンとラヴィデルとの対決の場になるなどして折に触れ存在感を示していた。

アルマダコミック関連の商品展開は最後まで描き切れずに打ち切られ、それ以降はウィザーズ社がアルマダを取り上げることはなくなった(コミック展開中でさえ扱いは良好とは言えなかったが)。そのため、アルマダコミック出身のピルーは認知度が低いまま、ウィザーズ公式媒体ではほぼいないものとして扱われ続けることとなる。

2000年代以後は、エルダー・ドラゴンのニコル・ボーラス(Nicol Bolas)がじわじわと露出を増やし、MTG世界最大の巨悪にまで成り上がり、2010年代にはボーラスの野望がストーリーアークの主軸となった。ボーラスの重要度が増すにつれて、エルダー・ドラゴンや古龍戦争にも注目が寄せられるようになり、公式サイトでも時折語られるようになった。ただし、そこでもピルーの存在は無視されたままであった。

ピルーを取り巻く状況が好転するには、コミック版黒き剣のダッコン以来22年間も待たねばならなかった。

2018年、カードセット「ドミナリア」の連載ストーリー第5話で黒き剣に殺されたエルダー・ドラゴンとしてピルーの名が言及される。名前だけであるとはいえ、実に22年振りのストーリー登場であり、アルマダコミックでないウィザーズ公式媒体でピルーの存在を認められたのは初めてだった。公式Podcastでもピルーはきちんと言及されていた。

まさにドミナリア期が転機であった。それ以降は、アルマダコミック系のキャラクターがカードで言及されるようになっただけに留まらず、実際のカードとなって登場するようになったのだ。

そして、2021年カードセット「モダンホライゾン2」ピルーはカード化された。しかもピルーだけでなく、コミック版黒き剣のダッコンの主要キャラクター(ダッコン獅子のカルスディハーダ)がカード化され、さらにはコミックのエピソードに関連したカードも複数収録されている。

公式記事The Returning Legends of Modern Horizons 2では、モダンホライゾン2の伝説のクリーチャーが解説されている。ピルーはコミック版黒き剣のダッコンの解説だけに留まらず、ピルーが正統なエルダー・ドラゴンだと明記され、その上、クロミウムとの間にクローシスを初めとする多くの子供を成した、という驚きの新設定が語られた。

記事を執筆したイーサン・フライシャー(Ethan Fleischer)はツイッターにおいて、エルダー・ドラゴンと上古族ドラゴンの関係性を明確化する機会にしたとも語っている(出典)。

移り気のピルーのストーリー

移り気のピルーのストーリーを、唯一の登場作品である「コミック版黒き剣のダッコン」、および、モダンホライゾン2の設定解説を基にしてまとめてみた。

ドミナリアの神話時代AR-20000年頃、ピルーたちエルダー・ドラゴンが誕生した。始祖ドラゴンがドミナリア次元に落とした卵から孵った彼らは、次元最初のドラゴンであった。

ピルーは同じエルダー・ドラゴンのクロミウム・ルエルを伴侶とした。ピルーはルエルとの間にドラゴンの国々を成すほど多くの子供をもうけており、その中には上古族ドラゴンの粛清するものクローシスも含まれている。

ドミナリアではエルダー・ドラゴンのニコル・ボーラスが扇動した古龍戦争が勃発し、長期間にわたる闘争で次元中で多くの命が失われた。ピルーとルエルは戦後まで生き延びた数少ないエルダー・ドラゴンとなった。

古龍戦争から数千年が経った伝説時代、ピルーとルエルはプレインズウォーカーのジアドロン・ディハーダに仕えていた(まず間違いなく強制的に)。

アンティキティー戦争期の数世紀前、ディハーダがコロンドール大陸で黒き剣のダッコンと対峙した際、ピルーはルエルと共に召喚され、戦いに駆り出された。激戦を経てルエルダッコンの送還呪文で戦場から退場させられると、ピルーは黒き剣によってとどめを刺されてしまう。絶命するピルーの身体からは凄まじいエネルギーが放出し大爆発を起こした。

この時の爆発で地殻に生じた大亀裂が「決闘峡谷」である。ピルーが内に抱えていた強大なエネルギーの証として、何千年も経った今日のコロンドール大陸にも決闘峡谷は残されている。

再鍛の黒き剣(Blackblade Reforged)

再鍛の黒き剣(Blackblade Reforged)
データベースGathererより引用

そして、ダッコンの黒き剣の方はエルダー・ドラゴンのピルーを屠った魔剣として、AR4560年現在までも語り継がれているのだ。

ピルーのストーリーの次は、カード化されたピルーのデザインに注目してみる。

移り気のピルーのカードデザイン

移り気のピルー(Piru, the Volatile)

旧枠版デザインの移り気のピルー(Piru, the Volatile)
データベースGathererより引用

移り気のピルー(Piru, the Volatile)をカードとして観察すると、デザインには2つの特徴があると見えてきた。

※ カードデザインやメカニズムは本サイトの趣旨とややずれる内容であり、そちらに文章を割いてしまうのは本末転倒だろう。ぶっちゃけると、書き過ぎてしまったので折り畳み表示とした。

その1:エルダー・ドラゴンのバリエーション

その1:エルダー・ドラゴンのバリエーション

クロミウム(Chromium)

クロミウム(Chromium)
データベースGathererより引用

まず1つ目、移り気のピルーはカードセット「レジェンド」エルダー・ドラゴンのバリエーションとなっている。

マナ・コストが3色各2点必要で総量は8マナ、パワー/タフネスが7/7、アップキープの維持コスト(対応する3色のマナ1点ずつ)がかかり、カードのタイプが伝説のクリーチャーのエルダー・ドラゴンであり、飛行を持っている。以上のエルダー・ドラゴンの共通点を持ちつつ、独自の能力が備わっている。

レジェンドの5種類のエルダー・ドラゴンはそれぞれ異なる組み合わせの3色であった。ピルーはそれらとも被らない「赤白黒」の3色となっている。

5種の最初のエルダー・ドラゴンとピルーは完全に同格の存在として制作されている。

その2:ピルーの死に準拠したデザイン

その2:ピルーの死に準拠したデザイン

次に2つ目の特徴は、移り気のピルーのカード名、能力、フレイバー・テキストの全てが原作のある描写に準拠していることだ。それは「ピルーの死」である。

ピルーはダッコンの黒き剣で殺された際に、凄まじいエネルギーを放出して大爆発を起こし、コロンドール大陸の大地に大亀裂を刻んでいるのだ。

これを踏まえてカードを見てみよう。

まず、ピルーが死亡した時に伝説でない全てのクリーチャーに7点ダメージを与える能力だが、これは明らかにコミックの死に際の大爆発を反映している。

続いて、カード名で「移り気な」と訳された「Volatile」は性格を表して「移り気な、気紛れな、癇癪持ちの」くらいの意味を持つ。だが一方で、「不安定な、爆発しそうな、危険な」くらいの含みも有する言葉だ。この二つ名は性格面だけでなく、ピルーが体内に抱えた膨大なエネルギーを表しているように思える。

Chasms of dueling energies course within her.
体内で常に葛藤するエネルギーの亀裂によって突き動かされている。

フレイバー・テキストはかなり露骨にキーワードを埋め込んでいる。フレイバー・テキストの原文を訳し直すなら「相争う隔たったエネルギーが彼女の内を巡っている。」くらいの意味だ。

ピルーの体内を巡るエネルギーはまさに大爆発の原因であった。そして、そのエネルギーを形容する語句の方に注目すれば、「Chasms of dueling energies」となっている。もちろん大爆発で大地を切り裂いてできた「決闘峡谷(Dueling Chasm)」を強く意識した表現にほかならない。

フレイバー・テキスト和訳版では、こういった原文に埋め込まれた言葉の妙が大分消えているが、英語だからこそ通じていた面があるので、仕方がないだろうか。

カードデザインに利用できた3つのポイント

カードデザインに利用できた3つのポイント

これは想像であるが、MTG開発部がピルーをカード化するにあたって参照できるソースはコミック1冊しか存在しなかったはずだ。ピルーの描写も数ページしかなく、デザインに反映できるポイントもほんの少し…いやたった3つしかないのだ。

ピルーの特筆すべき3つのポイント

  • 6番目のエルダー・ドラゴンである。
  • クロミウム・ルエルの伴侶である。
  • 黒き剣で殺されて大爆発した。

空を飛んだりブレスを吐いたりもしているが、ドラゴンなら普通のことでピルーの特色にはならない。

開発部は上記した3つのポイントから、エルダー・ドラゴンと大爆発をピックアップしてまとめたのではないかと考えられる。残ったルエルとの関係は、設定面に活用されることになった。

もし将来同一のカードセット内で、ピルーとルエルが再カード化されることになったなら、両面カードになったり、あるいは、互いのカードを参照するような能力がもたせられるかもしれない。そんな未来があったら素晴らしい。

カードのデザインについては以上でお終い。次節はピルーとストーリーや設定上で関連性のあるキャラクター解説に移ろう。

移り気のピルーの関係キャラクター

クロミウム・ルエル

変遷の龍、クロミウム(Chromium, the Mutable)

クロミウム・ルエルの2度目のカード化
変遷の龍、クロミウム(Chromium, the Mutable)
データベースGathererより引用

クロミウム・ルエル(Chromium Rhuell)は、ピルーの伴侶となったエルダー・ドラゴン男性だ。

カードセット「レジェンド」初出の最初のエルダー・ドラゴン5種のうちの1体で、コミック版黒き剣のダッコンにも登場している。カードセット「基本セット2019」で再カード化もされている。

黒き剣のダッコンのコミックでは生存したものの、AR2934年にプレインズウォーカーのテヴェシュ・ザット(Tevesh Szat)の手で殺害されている。この時のルエルの主人はプレインズウォーカーのファラリン(Faralyn)であったが、ルエルの死こそがファラリンの望みであった。ルエルの死で発生したエネルギーもまた、ピルーの場合と同じように、主人であるプレインズウォーカーの企みに利用されてしまったのだ。

始祖ドラゴン

始祖ドラゴン(The Ur-Dragon)

始祖ドラゴン(The Ur-Dragon)
データベースGathererより引用

始祖ドラゴン(The Ur-Dragon)は多元宇宙の全ドラゴンの源流となる存在で、ドラゴンの理想の体現でもある。1

AR-20000年頃にドミナリア次元の空に出現し、複数の卵を落とした。孵化したのが後のエルダー・ドラゴンである。つまり、始祖ドラゴンはピルーやルエルの親に当たる。

粛清するものクローシス

粛清するものクローシス(Crosis, the Purger)

統率者2017バージョンの
粛清するものクローシス(Crosis, the Purger)データベースGathererより引用

粛清するものクローシス(Crosis, the Purger)はピルーとルエルの息子である。

カードの色を比較すると、「赤白黒」のピルーと「白青黒」のルエルの子であるクローシスは「青黒赤」である。両親から共通する「黒」と共通しない「青」と「赤」をそれぞれ受け継いだ息子なのだ。

クローシスはドミナリアをかつて支配した上古族ドラゴン5体のうちの黒を司る者でもある。上古族ドラゴンは半精霊的存在で5体全員が揃うと神のごとき力と全ドラゴンへの支配力を振るうことができた。

AR-17000年頃に、上古族ドラゴンは神霊と呼ばれる5人の魔術師の手で権能を奪われた。クローシスはアーボーグの地に封印されていたが、AR4205年に始まったファイレクシア侵略戦争時に一旦復活を成し遂げるも、再びアーボーグに封じられた。

エルダー・ドラゴンと上古族ドラゴン
クローシスがピルーとルエルの子であるという設定は、モダンホライゾン2で初公開された新規設定である。

これによって、時系列の曖昧さがいくぶん整理されることになり、エルダー・ドラゴンは上古族ドラゴンよりも明らかに古いと言い切れるようになった。

点火するものデアリガズ(Darigaaz, the Igniter)

上古族ドラゴンのデアリガズが転生した姿
点火するものデアリガズ(Darigaaz, the Igniter)
データベースGathererより引用

また、クローシス以外の4体の上古族ドラゴンも、エルダー・ドラゴンの誰かの子である可能性が十分あるだろう。

暴虐の覇王アスマディ

ヴァエヴィクティス・アスマディ(Vaevictis Asmadi)の最初のカード化
暴虐の覇王アスマディ
データベースGathererより引用

例えば、エルダー・ドラゴンのヴァエヴィクティス・アスマディ(Vaevictis Asmadi)はシヴのドラゴンの祖であることから、シヴの上古族ドラゴンであるデアリガズ(Darigaaz)の親であるかもしれない。この可能性を指摘されたイーサン・フライシャーは肯定的な返答をしている(出典)。

ジアドロン・ディハーダ

ジアドロン・ディハーダ(Geyadrone Dihada)

ジアドロン・ディハーダ(Geyadrone Dihada)
データベースGathererより引用

ジアドロン・ディハーダ(Geyadrone Dihada)はピルーとルエルを使役していたデーモン2のプレインズウォーカー女性。人を欺き策謀に利用するのがディハーダ好みのやり方だ。コミック版黒き剣のダッコンでは悪役であった。

ピルーはディハーダの強力な勇者であったのだが、むしろピルーの死によって生じるエネルギーこそがディハーダの真の狙いの1つであった。ディハーダはピルーをダッコンの黒き剣で殺させて、そのエネルギーを取り込み自らの力としたのだった。

黒き剣のダッコン

影の処刑者、ダッコン(Dakkon, Shadow Slayer) class=

影の処刑者、ダッコン(Dakkon, Shadow Slayer)
データベースGathererより引用

影の処刑者、ダッコン(Dakkon, Shadow Slayer)あるいは黒き剣のダッコン(Dakkon Blackblade)はコロンドール出身の人間プレインズウォーカー男性。コミック版黒き剣のダッコンの主人公だ。

ピルーの殺害者となったが、ダッコンもまたディハーダの手の内で踊らされた被害者であった。

獅子のカルス

獅子のカルス(Carth the Lion)

旧枠版デザインの獅子のカルス(Carth the Lion)
データベースGathererより引用

獅子のカルス(Carth the Lion)はダッコンの相棒となったコロンドールの人間男性。コミック版黒き剣のダッコンのもう1人の主人公。

故郷を滅ぼした仇であるディハーダの命を狙っていたが、彼女の策略にまんまと利用された犠牲者である。カルスの頑張りが結果的にピルーを殺すことになったと言える。

決闘峡谷

決闘峡谷(The Dueling Chasm)はドミナリア次元コロンドール大陸ゴルソノア地方の地名だ。ドミナリア世界地図上でもはっきりと分かるほどの世界最大の亀裂である。

起源は伝説時代に遡る。ダッコンジアドロン・ディハーダが戦争した時、エルダー・ドラゴンのピルーが黒き剣によって絶命し、膨大なエネルギーの大爆発を起こした。その衝撃によって地殻が引き裂かれ、このような地形が誕生することになったのだ。

決闘峡谷の南東の大塩沼地帯サルグ沼(Sulgh Swamp)沼地の王ソルカナーが支配している(かつてはディハーダの支配の中心地であった)。決闘峡谷の東は薄暮平原(Darkling Plains)、北東の砂漠地帯は砂の海(Sand Seas)だ。北方の大山脈はコロンドールの背骨(Spine of Corondor)と呼ばれ、決闘峡谷のすぐ北に当たる山脈南端はトロヴァシュ(Trovash)である。南西の森林はクウィリーオン・エルフの棲む白き森(White Woods)だ。

メモ:命名と翻訳
ダッコンとジアドロン・ディハーダの「決闘(Duel)」で出来た「亀裂(chasm)」であることから、「The Dueling Chasm」と命名された。公式ソースでは2021年の記事で唯一「決闘の裂け目」という訳例が存在しているものの、世界最大の大亀裂の呼称としてはいささか野暮ったい。

私は十数年来、個人的に「決闘峡谷」と訳してきた。「Chasm」は厳密には「峡谷」ではないがアルマダコミック関連の描写を鑑みて、そう呼んでも不自然ではないと判断した。今後も本サイトでは「決闘峡谷」で通すことにしている。

古龍戦争

古龍戦争(The Elder Dragon War)ドミナリア神話時代に発生したエルダー・ドラゴン間の大戦争である。

古龍戦争の始まりと終わりは曖昧であるが作品情報を整理すると、神話時代の初めの数世紀内に始まり、少なくとも4000年は継続し、神話時代の終焉(AR-15000年頃)にはすでに終結していた。

古龍戦争を生き延びられたエルダー・ドラゴンは数少ない。既知の生存者は、ピルーとクロミウム・ルエルの他に、アルカデス・サボス、ヴァエヴィクティス・アスマディ、ニコル・ボーラス、ウギン、パラディア=モルスがいる(このうちボーラスとウギンはプレインズウォーカーとなっておりドミナリア外にいたが)。

また、連載ストーリー作品ボーラス年代記によると、エルダー・ドラゴンの子の世代には生存者はいないとされている。既存情報から考えて上古族ドラゴン5体は古龍戦争中のAR-17000年頃に神霊によって封印されていると考えられるが、もし上古族ドラゴン5体全てが子世代だとするなら時系列上の矛盾はなく整合していることになる。

用語の変遷:巨竜戦争から古龍戦争へ
この戦争は、以前は単に「The Dragon War」と表記して「巨竜戦争」と翻訳されていた。ただし、ドミナリア史上において「The Dragon War」と呼ばれる戦争が少なくとももう1回発生しており、両者が混同される恐れがあった。そこで、ウィザーズ社クリエイティブはカードセット「ドミナリア」期からエルダー・ドラゴンの戦争の方を「The Elder Dragon War」と呼称することで、区別がつくように配慮するようになったのだ。

また、カードセット「基本セット2019」期のストーリー和訳においてドミナリアの「エルダー・ドラゴン」は「古龍」と表記されており、それに合わせ「The Elder Dragon War」は「古龍戦争」と訳された。モダンホライゾン2の記事でもこれは踏襲されており、今後は「巨竜戦争」の呼称は廃れ「古龍戦争」への転換が進んでいくことだろう。本サイトでも今後は「古龍戦争」表記を採用していきたい。

ちなみに、ストーリー系記事翻訳では「Dragon」の訳が「ドラゴン」「竜」「龍」の3表記が混在する現状になっている。この混沌とした状態は、むしろカードの方が先だったので仕方がなかったのかもしれない。ただ、ストーリーやキャラを愛するヴォーソスの私としては、もう少し日本語としての統一感を大事にして訳語を選定して欲しかった、と今でも切に思うところだ。

※ 暫定版であるが本記事はこの状態で公開する。後にコミックの画像を引用したり、いくつか節を書き足す予定だ。

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  1. 統率者2017のサイト解説(リンク)では「それの(Its)」と呼ばれている。卵を発生させているが、おそらく男か女という片方の性に縛られる普通の生き物ではないと思われる
  2. アルマダコミック関連では「demon」あるいは「demoness」と明記されている。現在ではデーモンは魂を持たないマナの具現であるためプレインズウォーカーになれないと設定されている(出典)。アルマダコミック時代にはなかったこの後付け設定を踏まえるなら、ディハーダは例外的な存在のデーモンであったか、プレインズウォーカーになった後に後天的にデーモン化したと考えられる