ストリクスヘイヴン:シルバークイルの墨とインク

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カードセット「ストリクスヘイヴン:魔法学院」の翻訳で、ずっと腹の底のもやもやが消えないところがある。「墨(Ink)」の訳語の統一感のなさだ。

シルバークイルとインク

シャドリクス・シルバークイル(Shadrix Silverquill)

シャドリクス・シルバークイル(Shadrix Silverquill)
データベースGathererより引用

シルバークイル大学は言葉や弁舌を専門とした魔法を扱っている。ペン先や羽ペンをモチーフにしたデザインがそこかしこにあるし、建造物や衣装、装飾品は紙の白と墨の黒のようにハッキリ2色に分けられている。そして、魔法は墨のような液状の流れや塊、渦として顕現しそれを自在に操って超常的な現象を起こすのだ。

シルバークイルの魔法そのものを表すこの「墨」だが、シルバークイル関連の用語には各所に「Ink」という語句が差し込まれていて、カードや記事に頻繁に登場してくる。

例えば、魔法は「Ink Magic」で、召喚する魔法生物は「Inkling」だし、魔法使いの種類には「Inkmancer」や「Inkcaster」、「Inkwright」なんてのもいる。

「Ink」はシルバークイルを象徴するキーワードなのだ。しかし、翻訳は「墨」や「インク」、あるいは「書」と統一されておらず、訳ブレを起こしている。



墨獣召喚学(Inkling Summoning)

墨獣召喚学(Inkling Summoning)
データベースGathererより引用

「Ink」の一番多い訳語が「墨」だ。

召喚獣の「墨獣(Inkling)」が代表で、カードの名前やフレイバー・テキストではおおむね「墨」と訳されている。カード名の実例を挙げると墨獣召喚学(Inkling Summoning)墨の決闘者、キリアン(Killian, Ink Duelist)墨盾(Inkshield)などがある。

ただし、カードの翻訳の中では1つだけ例外があり、「書」と訳されている。それについては次の節に後回しにする。

カードは「墨」で統一感が保たれているといっていいだろう。公式記事の翻訳でも「墨獣」は「墨獣」のままだ。

終身書唱師(Tenured Inkcaster)

終身書唱師(Tenured Inkcaster)
データベースGathererより引用

シルバークイルのカード上で唯一、「Ink」が「墨」と訳されていないのが、この終身書唱師(Tenured Inkcaster)のカード名だ。「Ink」が「書」と訳されている。

「Inkcaster」は「ink(インク)」と「caster(呪文をかける者=魔法使い)」から成る合成語で、「墨魔法の術者」くらいの意味合いである。「Ink」には「書」という意味はないもの、そこを和訳は少し捻って「書唱師」としている。

個人的には「書唱師」という字面と音の響きはセンスがいいなと感じる。これ単独では問題はない(むしろ好みだ)。とはいえ、シルバークイルとしての統一感を優先して示して欲しかった、と思ってしまう。「墨唱師」ではなぜいけなかったのだろう?



インク

二番目に多いのが「インク」だ。こちらは公式記事の翻訳版で多用されている。

記事翻訳の特徴として、カードの翻訳に従いつつも、それ以外は「インク」に置き換えて訳している。つまり、「墨獣」や「書唱師」などはカードと同じでそのままだが、他は「インク」と訳される。同じ記事内に「墨獣」と「書唱師」と「インクの魔法」や「魔法のインク」が併記された状態だ。

記事翻訳では「インク」と訳す。これが徹底されていればまだよかったのだが、記事の内には「Ink」を「墨」と訳した部分も同時に存在してしまっている。例えば、「Ink Magic」の訳で「インクの魔法」と「墨魔法」が混在しているような状態だ。

最後に

架空の世界を演出する際に用語の統一感はとても重要だ。同じ語句を含む用語同士には繋がりが生まれ、1つの世界としてまとまってくる。細かい部分のこだわりが、世界のもっともらしさや存在感が深みを増していくわけだ。

シルバークイルでは「Ink」がその役割が負わされた言葉だった。だが、公式翻訳には統一感が欠如していた。こういう勘所をおざなりにされるのはヴォーソスの自分として許容しかねるところだ。








ちなみに、ウィザーブルーム大学の方がシルバークイルよりも状況は酷い。ウィザーブルームの最重要キーワードは「essence」で頻出する重要語であるのだが、翻訳の方は「本質」「精髄」「エネルギー」「(生命)力」…とてんでバラバラで統一感なんてないのだから……。

では今回はここまで

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