カードセット「ストリクスヘイヴン:魔法学院」の掌編作品「束縛の鎖(原題:The Chains That Bind)」を読んだ感想や註釈、考察、翻訳の誤りの指摘などを行う。
第2回目はウィザーブルームの教授陣が登場する。
はじめに

ウィザーブルーム大学公式記事Planeswalker’s Guide to Strixhavenより引用
掌編「束縛の鎖」(原文・公式訳)を読む第2回目は、前回に続く次のシーンを取り上げる。ダイナがウィザーブルーム大学の本堂を訪問し2人の学部長と会う。
本記事ではウィザーブルーム大学周辺の設定と、登場したウィザーブルーム大学の教授たちの紹介を簡単に行っている。作品を理解し楽しむ手助けになれば幸いだ。ちなみに、公式和訳に関する指摘は今回は特にない。
※ ここから先は作品のネタばらしになる記述も含まれている。まだ「束縛の鎖」が未読の場合は、先に読んでおいてほしい。下のリンクから作品にアクセスできる。
束縛の鎖(公式和訳版)

「束縛の鎖」を順番に読む
ダイナはマラフの個人指導を無事に終えて、ウィザーブルーム大学の逆回り講堂に報告に訪れた。
大学の学部長、リセッテとヴァレンティンの2人は実験中であったが、ダイナに気付くと議論を止めて話しかけてくる。リセッテはダイナにプリズマリ大学のパーティーに行くように勧め、その反対にヴァレンティンは人付き合いを好まないダイナを擁護した。ダイナは目当てのティヴァシュ教授が不在だったため、ノートを預けて立ち去るのだった。
ダイナの行先はもちろんプリズマリのパーティーではなく、居残り沼であった。
ウィザーブルーム大学
Mage-students fascinated by the energies of life and death choose Witherbloom, the college of essence studies.
生と死のエネルギーに魅入られた魔道生徒は本質学の大学ウィザーブルームを選ぶ。
引用:ウィザーブルームの学舎(Witherbloom Campus)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
掌編「束縛の鎖」(原文・公式訳)の舞台となるウィザーブルーム大学とその周辺地域について解説をしておこう。
逆回り講堂
逆回り講堂(Widdershins Hall)はウィザーブルーム大学の中心で、セッジムーアから生えてきたように見える沼地の館だ。ウィザーブルームの学舎(Witherbloom Campus)のカードイラストがそれだろう。
「widdershins」は「反時計回り」「逆回転」のこと。
セッジムーア
セッジムーア(Sedgemoor)はウィザーブルーム大学のキャンパスを取り囲む湿地帯(バイユー)である。
「Sedge」とは植物の「スゲ(菅)」のことで、「Moor」は「荒れ地・湿原・沼地」のこと。だから、「セッジムーア」はあえて日本語化すれば「菅沼」である。
MTG史上初のカードの1つに、有名な二色地形の「Bayou」がある。沼と森の両方として扱われる強力な土地カードだ。
このカードがあるために、MTGではバイユー(Bayou)という地勢は黒と緑のマナに関連するものとして取り扱われる。ウィザーブルーム大学がバイユー地帯にあるのは至極当然なのだ。
居残り沼
居残り沼(Detention Bog)はセッジムーアに隣接する、悪臭漂う不快な沼地だ。ある種の薬草の採取には適しているが、蔦掴み(Vineclinger)という質の悪い怪物がはびこっている。教授は生徒を罰するためにこの沼地に送り込んで反省を促すことがある。
掌編「束縛の鎖」(原文・公式訳)では、この居残り沼が主舞台となる。ダイナはここで秘密の計画を進めており、シルバークイル大学のキリアンと知り合い、事件に巻き込まれる。

アルケヴィオス次元地図公式記事Planeswalker’s Guide to Strixhavenより引用
居残り沼の位置はかなり不可解な公式情報がある。
公式記事Planeswalker’s Guide to Strixhavenによると、ストリクスヘイヴンはアルケヴィオス次元のオーリシア1大陸北東部にある。ウィザーブルーム大学と他4大学は全てそこに集まっている。
地図を見ると確かに北東部に「Strixhaven(ストリクスヘイヴン)」は書かれている。だが奇妙なのは、そこから南東のはるか離れた一帯に「Detention Bog」すなわち「居残り沼」と記載されていることだ。居残り沼はウィザーブルーム大学になければならないのに、大陸の東南にも同名の広大な地域があるのだ。
同名の2つの居残り沼が存在しているのか?あるいは、ウィザーブルーム大学のキャンパスはストリクスヘイヴン本拠地から遠く離れた大陸東南端にあるのか?…おそらく前者であろうけれど、魔法の通路で瞬間移動可能とかいう設定が絶対に無いとも言えないのが厄介である。
ウィザーブルーム大学の教授陣
掌編「束縛の鎖」(原文・公式訳)で登場したウィザーブルーム大学の面々について簡単な解説する。
樹根の学部長、リセッテ
“Life is as fleeting as it is vibrant. Embrace the brief blessing of a flower before it withers.”
「生命とは、快活であるほど儚いもの。短い開花を枯れないうちに受け止めましょう。」
引用:樹根の学部長、リセッテ(Lisette, Dean of the Root)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
樹根の学部長、リセッテ(Lisette, Dean of the Root)はウィザーブルーム大学の2人の学部長の1人で、大学の緑の魔法を司る。人間女性。
リセッテはダイナを気にかけていて、友人を作るように働きかけている。2年前にダイナをストリクスヘイヴンに連れて来たのもリセッテだ。
今夜はプリズマリ大学がパーティーを開いているので、ダイナもみんなと一緒に参加して楽しんでくるように勧めるのだった。
血流の学部長、ヴァレンティン
血流の学部長、ヴァレンティン(Valentin, Dean of the Vein)はウィザーブルーム大学のもう1人の学部長で、黒の魔法を司る人物。吸血鬼の男性。
ヴァレンティンはリセッテと違って、友人を作ったり社交をするより勉学に励むことを評価している。リセッテに友人だと思われていると知って、勘違いさせて申し訳ない、と困惑していた。
暗影の召喚士、ティヴァシュ
暗影の召喚士、ティヴァシュ(Tivash, Gloom Summoner)はウィザーブルーム大学の教授。人間男性。
ティヴァシュはダイナにマラフの個人指導を依頼した。ダイナが報告ノートを届けに来た時には不在であったため、今作では名前だけの登場となっている。
ティヴァシュは甘味の虜になっている。好物の例として出て来た「ライムのケーキ(lime cakes)」と「エルダーベリーのパイ(elderberry pies)」はどちらも現実に存在しているお菓子である。
料理長、ギヨーム
料理長、ギヨーム(Gyome, Master Chef)はトロール男性。ウィザーブルーム大学の厨房を預かる人物で、教授の要望に応えてどんな料理でも作れるだけの腕前があるとか。ギヨームも名前のみの登場。

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