統率者マスターズ:生物学者、ルカルメル

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生物学者、ルカルメル(Rukarumel, Biologist)は、時のらせんブロック初出のキャラクターである。ドミナリア次元のスリヴァーの実地観察日誌を記した研究者である。

登場から17年が経過した2023年、ルカルメルはカードセット「統率者マスターズ」のスリヴァーをテーマとした構築済みデッキ「スリヴァーの群れ」において、生物学者、ルカルメル(Rukarumel, Biologist)という新規カードとして収録されることになった。

今回は懐かしのキャラクター、ルカルメルを紹介する。また、ルカルメルがフレイバー・テキストにコメントをしている関連スリヴァー・カードは、記事の後半で取り上げている。

追記(2023年7月22日):誤字など微修正。

生物学者、ルカルメルの解説

生物学者、ルカルメル(Rukarumel, Biologist)一部拡大図

ルカルメル(Rukarumel)はドミナリア次元の裂け目時代(AR4306-4500年)のどこかの時点で活動していた人間女性のスリヴァー研究者である。ただし、出身地や活動した地域などほとんどの情報は不明である。

イラストのルカルメルは、髪型の乱れも気にしないで、スリヴァー研究に嬉々として没頭している。学問に身を捧げる研究者という雰囲気が実にいい。

ルカルメルは様々な種類のスリヴァーに関する「フィールド・ジャーナル(field journal)」すなわち「実地調査日誌」を記している。和訳製品版では「観察日誌」と訳されているものだが、これは正確さを欠いた日本語で、「飼育下の日々の観察記録」のように捉えられる曖昧さがある。しかし、原語に忠実に解釈すると「スリヴァーが生息している現地まで行って調査をした日誌記録」なのである。

裂け目時代は、次元構造の損傷である時の裂け目の影響で、ドミナリア全土が荒廃した時代であった。特に末期の状況は過酷で、酸の雨が降り塩の嵐が吹き荒れ、時には大小の時の裂け目からは異なる時間からの来訪者が出現していた。こんな厳しい時代でもルカルメルは、現地まで足を運んでスリヴァーを調査していたのである。

もちろん研究者としては観察だけで終わるはずもない。採取した標本などを研究所まで持ち帰り分析したり、スリヴァーの飼育も試みていたに違いない。カード化したルカルメルにはその証拠が示されている。まずイラストでは、ルカルメルは室内に居て、スリヴァーを掴み上げて観察しているし、透明な容器には数々のスリヴァーが収容されている。カードのメカニズムの方では、スリヴァーのトークンを新たに生成できる能力があり、これは飼育実験や新たな生きた個体の捕獲を示唆するものと考えられる。



生物学者、ルカルメルというキャラクターの経緯

ルカルメルというキャラクターの経緯を簡単にまとめてみた。

2006年のカードセット「時のらせん」では3種類、2007年のカードセット「次元の混乱」では4種類のフレイバー・テキストに名を連ねていた。これがルカルメルの初出である。

時のらせんブロック以降では、2019年のカードセット「モダンホライゾン」においても1種類の新規フレイバー・テキストが与えられた。

この時点までは、「裂け目時代のドミナリアにいた、スリヴァーの実地調査日誌を残した人物」という以外の情報は出ていなかった(まず間違いなく設定もまだ存在していなかったろう)。

2023年のカードセット「統率者マスターズ」において、ルカルメル本人がカードになった他、スリヴァー・カード3種類の新規フレイバー・テキストに登場している。

生物学者、ルカルメルのカード化

生物学者、ルカルメル(Rukarumel, Biologist)

生物学者、ルカルメル(Rukarumel, Biologist)
公式カードギャラリーより引用

生物学者、ルカルメル(Rukarumel, Biologist)はカードセット「統率者マスターズ」収録の伝説のクリーチャー・カードで、ルカルメルの初のカード化となる。カード化に際して、初めてイラストにその姿が描かれた。

スリヴァー研究の専門家として、スリヴァーとシナジーを生む要素がカードに盛り込まれている。

また、どんな種類のスリヴァーでも研究対象にする性質からだろうか、5色のカードとなっている。

ここで少し奇妙な点がある。ルカルメルは、各種スリヴァーの「実地調査日誌」を残しているものの、実は現時点ではまだ「黒」のスリヴァーには言及したことが1度も無いのだ。これでは黒を除いた4色カードが妥当にも思えてきそうだ。

今度、黒のスリヴァーが再録もしくは新規作成された際には、ぜひルカルメルをフレイバー・テキストに出演させてほしいものだ。

トリビア:ルカルメルの同期キャラクター

ルカルメルは時のらせんブロックのフレイバー・テキスト出身のキャラクターで、何年も経ってから伝説のクリーチャー・カードとなった。それと全く同じ境遇にある同期のキャラクターが存在している。

アーボーグのリッチ、ラタドラビック(Ratadrabik)その人である。

こうして10年以上も昔のキャラクターがすっかり忘れた頃にカード化されると、私はいつもドキドキ嬉しくなってしてしまう。

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生物学者、ルカルメルの関連カード

この節ではルカルメルの関連カードを順に取り上げる。

以下の全てのカードにおいて、ルカルメルはフレイバー・テキストでコメントをしている。もちろん例の「観察日誌」と訳された「実地調査日誌」である。

だが、実は1種類だけ「実地調査日誌」ではないカードも含まれているのだ。

その1種類のカード、お気づきだろうか?(ちなみに日本語製品版では絶対に気付けないのだが……) →すぐにどのカードか答えを知りたいならこちらへ。

双頭スリヴァー

“That which would be a fatal mutation in any other species is merely a source of new powers. I am intrigued, yet too fearful to examine it more closely.”
–Rukarumel, field journal
「他の種族であれば致命的な突然変異でも、これらにとっては単なる新たな力の源に過ぎない。興味はそそられるが、より近くで観察するのは恐ろしすぎることだ。」
–ルカルメルの観察日誌
引用:双頭スリヴァー(Two-Headed Sliver)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

双頭スリヴァー(Two-Headed Sliver)

双頭スリヴァー(Two-Headed Sliver)
データベースGathererより引用

双頭スリヴァー(Two-Headed Sliver)はカードセット「時のらせん」収録のスリヴァー・クリーチャー・カードである。

菌類スリヴァー

“When a sliver of this breed enters the hive, the others claw each other in frenzied fits, thereby ensuring their rapid growth.”
–Rukarumel, field journal
「この種のスリヴァーが巣に来ると、互いが互いに狂ったように爪を立て、素早い成長を行いだす。」
–ルカルメルの観察日誌
引用:菌類スリヴァー(Fungus Sliver)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

菌類スリヴァー(Fungus Sliver)

菌類スリヴァー(Fungus Sliver)
データベースGathererより引用

菌類スリヴァー(Fungus Sliver)はカードセット「時のらせん」収録のスリヴァー・クリーチャー・カードである。

乳白スリヴァー

“When struck, its hide shimmers through sequences of color—a signaling language I am eager to unravel.”
–Rukarumel, field journal
打撃を受けると、その革は様々な色に変わっていく–解明したい彼らの言葉だ。
–ルカルメルの観察日誌
引用:乳白スリヴァー(Opaline Sliver)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

乳白スリヴァー(Opaline Sliver)

乳白スリヴァー(Opaline Sliver)
データベースGathererより引用

乳白スリヴァー(Opaline Sliver)はカードセット「時のらせん」収録のスリヴァー・クリーチャー・カードである。

フレイバー・テキストで「言葉」と訳されている原語は、もっと限定的に「a signaling language」つまり「信号伝達言語」である。

湿布スリヴァー

“Its broad claw suggests a chitinous shield, but in fact it conceals glands that secrete a remarkably swift healing agent.”
–Rukarumel, field journal
その幅広の爪はキチン質の盾を思わせるが、事実それは極めて即効性の高い治癒物質を分泌する腺を隠している。
–ルカルメルの観察日誌
引用:湿布スリヴァー(Poultice Sliver)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

湿布スリヴァー(Poultice Sliver)

湿布スリヴァー(Poultice Sliver)
データベースGathererより引用

湿布スリヴァー(Poultice Sliver)はカードセット「次元の混乱」収録のスリヴァー・クリーチャー・カードである。

同期スリヴァー

“With a twitch of its muscles, its timeline forks. Then, just as quickly, its two selves reintegrate. Causality, strangely, seems not to mind.”
–Rukarumel, field journal
筋肉がわずかに動くと、時間軸が分かれる。 そして、二体になった自分自身が、すぐさま融合する。 因果は異様なぐらい無関心のようだ。
–ルカルメルの観察日誌
引用:同期スリヴァー(Synchronous Sliver)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

同期スリヴァー(Synchronous Sliver)

同期スリヴァー(Synchronous Sliver)
データベースGathererより引用

同期スリヴァー(Synchronous Sliver)はカードセット「次元の混乱」収録のスリヴァー・クリーチャー・カードである。

反射スリヴァー

“This sliver comes into the world a perfect predator. It’s ready to hunt and devour its first meal within seconds of hatching.”
–Rukarumel, field journal
「このスリヴァーは、完璧な捕食者としてこの世に生まれてくる。それは狩りの準備ができた状態で、孵って数秒後には最初の食料を貪る。」
–ルカルメルの観察日誌
引用:反射スリヴァー(Reflex Sliver)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

反射スリヴァー(Reflex Sliver)

反射スリヴァー(Reflex Sliver)
データベースGathererより引用

反射スリヴァー(Reflex Sliver)はカードセット「次元の混乱」収録のスリヴァー・クリーチャー・カードである。

休眠スリヴァー

“It triggers the hive’s period of aetheric fertility—a time when even feeding is a lower priority than reproduction.”
–Rukarumel, field journal
「それは群れの霊気的繁殖を引き起こす。その時期は、食餌でさえ繁殖よりも優先度が落とされる。」
–ルカルメルの観察日誌
引用:休眠スリヴァー(Dormant Sliver)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

休眠スリヴァー(Dormant Sliver)

休眠スリヴァー(Dormant Sliver)
データベースGathererより引用

休眠スリヴァー(Dormant Sliver)はカードセット「次元の混乱」収録のスリヴァー・クリーチャー・カードである。

頭空スリヴァー

“Brilliant! They evolved away from energy-taxing brains and respond only to spinal reflex arcs from the hive mind.”
–Rukarumel, field journal
「素晴らしい!彼らはエネルギー消費の大きい脳を進化によって捨て去り、巣の精神から届く反射信号のみに反応するのだ。」
–ルカルメルの観察日誌
引用:頭空スリヴァー(Hollowhead Sliver)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

頭空スリヴァー(Hollowhead Sliver)

双頭スリヴァー(Two-Headed Sliver)
データベースGathererより引用

頭空スリヴァー(Hollowhead Sliver)はカードセット「モダンホライゾン」収録のスリヴァー・クリーチャー・カードである。

火跡スリヴァー

“When establishing a new hive in hostile territory, slivers abandon all sense of individual self-preservation to ensure the queen’s survival.”
–Rukarumel, field journal
「敵地にて新たな巣を作るとき、スリヴァーは女王を守るために個々の自衛本能を捨てるようだ。」
–ルカルメルの観察日誌
引用:火跡スリヴァー(Firewake Sliver)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

火跡スリヴァー(Firewake Sliver)

火跡スリヴァー(Firewake Sliver)
公式カードギャラリーより引用

火跡スリヴァー(Firewake Sliver)はカードセット「時のらせん」初出で、カードセット「統率者マスターズ」で再録されたスリヴァー・クリーチャー・カードである。新規のイラストとフレイバー・テキストを与えられている。

威厳スリヴァー

“It is possible that some queens are not born queens, but evolve into that form over time.”
–Rukarumel, field notes
「女王の中には、生まれながらにして女王であるのではなく、時間をかけてその姿に進化していくものもいる。」
–ルカルメルの観察日誌
引用:威厳スリヴァー(Regal Sliver)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

威厳スリヴァー(Regal Sliver)

威厳スリヴァー(Regal Sliver)
公式カードギャラリーより引用

威厳スリヴァー(Regal Sliver)はカードセット「統率者マスターズ」収録のスリヴァー・クリーチャー・カードである。

フレイバー・テキストが「実地調査日誌」ではない唯一のカードがこれだ。英語原文は一目瞭然で「field journal」ではなく、「field notes」となっているのだ。

「フィールド・ノート(field notes)」は、「フィールド・ジャーナル(実地調査日誌)」と区別して訳すなら、「実地調査記録」くらいだろうか。ジャーナルよりも短い・簡略なメモ書きや記述なのではないか、と私は感じる。

因みに和訳製品版は他と全く同じに「観察日誌」と訳している。そのため、先述した通り、日本語では言葉の違いに気付けやしないのだ。

悪意スリヴァー

“The key to safely studying any sliver is to find out what provokes it, then absolutely never do that.”
–Rukarumel, field journal
「スリヴァーを安全に観察する秘訣は、それらを刺激する要素を特定し、何としてもそれを避けることだ。」
–ルカルメルの観察日誌
引用:悪意スリヴァー(Spiteful Sliver)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

悪意スリヴァー(Spiteful Sliver)

悪意スリヴァー(Spiteful Sliver)
公式カードギャラリーより引用

悪意スリヴァー(Spiteful Sliver)はカードセット「統率者マスターズ」収録のスリヴァー・クリーチャー・カードである。

以上で、ルカルメルの研究コメントがあるスリヴァー・カードを総ざらいできた。



さいごに

生物学者、ルカルメル(Rukarumel, Biologist)一部拡大図

ルカルメルのカードには心底驚かされた。スリヴァーがテーマの構築デッキ商品となれば、確かに納得の人選なのだ。予想できていた人もきっと居たのだろうな。

記事にまとめるため、改めて調べ直してもやはり10種程度のフレイバー・テキストしか情報は見つからなかった。裂け目時代ドミナリアのスリヴァー研究の専門家。それ以外は不明の人物。

だがしかし、謎が多いほど妄想が捗るというものだ。そういえば、スリヴァーの群れをドミナリアに復活させて滅んだオタリア大陸の研究機関「激浪計画(Riptide Project)」は、裂け目時代初期であった。もしかしてもしかすると、ルカルメルはその系譜に連なる魔術師・生物学者なのかも知れないな。いやあるいは、スリヴァーの大群と戦っていた当時のベナリア軍の従軍魔術師だとか……?それとも……。

昨今のウィザーズ社はあまり新キャラクターの解説記事をしてくれなくなってしまった。ルカルメルのある程度詳しい設定は明かして欲しいのだけれど、ウィザーズ公式サイトよろしく頼むぞ。

では、今回はここまで。

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