今回はカードセット「兄弟戦争」から第三の道(The Third Path)の陣営に属するアーティファクト・カード群を取り上げる。
第三の道のアーティファクトの解説
第三の道(The Third Path)の陣営に属する機械や装置、魔法的な創造物には、兄弟戦争期の他の陣営とは異なる特徴がある。
優美で人間的なシルエットを持っている。スランの遺物ほど抽象化はされず、ウルザやミシュラの系統程は機械的ではないし、アルゴス的な植物や鉱物そのままでもなく、ファイレクシアのようなおぞましさもない。全体的に白銀色をしており、発光する球形パーツなどの色は概ね青白い。
人型自動機械ならば、第三の道を示す純白に青のラインのマントなどを装着することがある。膝が逆関節でないタイプも開発されており、これは他の陣営では見られない。
最大の相違点は「魔法」であろう。ハーキル(Hurkyl)が発見した瞑想法は、ドミナリアの魔法学に歴史的な発見をもたらした。第三の道は、機械と魔法を融合させた装置を開発していた。
第三の道のアーティファクト・カード群
第三の道に属するアーティファクト・カードをピックアップした。
本サイトの独自の判断で第三の道陣営に振り分けたものも複数含まれているため、そう判断した根拠も併記した。
※ カードセット「兄弟戦争」の特別枠「設計図」カードは除外した。兄弟戦争期のアーティファクトとは限らず、単に兄弟戦争期の人物のコメントが付与されただけ、と見做した。
秘儀の代理者
秘儀の代理者(Arcane Proxy)はカードセット「兄弟戦争」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
第三の道のマントを羽織った人型自動機械である。膝は逆関節型でありスラン時代のスー=チー型自動機械を基にした開発だと考えられる。スー=チー型の先行研究としてはウルザの報復者型自動機械があったが、第三の道の自動機械はより人型に近いスマートなシルエットの系譜を生み出している。
クリーチャー・タイプは「ウィザード」であり、戦場に出た時に条件付きで墓地のインスタントかソーサリー1枚のコピーを無料で唱えることができる。
人型自動機械と魔法技術を融合させた第三の道らしいアーティファクト・クリーチャーだ。
鋼の模範
Reports differed on whether the figure was an automaton or a mage, mostly because few who saw it survived.
その人影が自動機械なのか魔道士なのか。その姿を目にして生き残った者が少ないため、報告は食い違っている。
引用:鋼の模範(Steel Exemplar)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
鋼の模範(Steel Exemplar)はカードセット「兄弟戦争」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
先述した秘儀の代理者(Arcane Proxy)と基本的には同じ、第三の道の人型自動機械である。所属を示すマントを羽織り、逆関節膝のスー=チー型の系譜で、クリーチャー・タイプ「ウィザード」である。
フレイバー・テキストによれば、自動機械でなく魔道士に勘違いされもしていたようだ。イラストでも差し伸ばした左手から魔法的な発光現象が確認できる。
カードのメカニズムは、これを唱えるために2色以上のマナが支払われていなければ4/4でなく6/6で登場するというものだ。つまり、デッキの多色化を余り推奨していないデザインとなる。これは奇妙だ。第三の道の構成員は、テリシア全土の様々な勢力から集結しており、設定上は白青黒赤緑5色全ての複合体で、本質的に多色な組織なのだが……。
光波の歩哨
光波の歩哨(Spectrum Sentinel)はカードセット「兄弟戦争」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
イラストから察するに、テリシア市内に配備されている第三の道の人型自動機械の兵士だ。腰布を帯び、腕の付け根からは飾り紐のようなものも複数垂れている。カードのメカニズムとしては、対戦相手の多色化に対抗する機能を持たされている。
この機械兵士の姿には、目立たないものの、他の陣営には見られない特徴が認められる。「膝関節」だ。スラン時代のスー=チー型を引き継ぎ、ウルザとミシュラの兄弟は人型自動機械を「逆関節膝」で開発し、それぞれ人型を離れた方向に進化させていった。一方、第三の道は自動機械のプロポーションを改良し、服を着せ、逆関節でない膝を実用化し、より人に近付けたのである。
土の勇者
土の勇者(Clay Champion)はカードセット「兄弟戦争」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
このカードはイラスト制作過程のメモに「Ivory Tower Avenger(象牙の塔の報復者)」と記されていることから、第三の道の人型自動機械と考えられる。3つの旗を背負う様は、第三の道を除く他の陣営には見られないスタイルである。膝も逆関節ではない。
カード名に「Clay」と冠されているので、技術的にはタウノスの粘土像型自動機械の系譜に連なるものであろう。第三の道には、ロランを筆頭とするアルガイヴ系の技術者が参画しており、粘土像型を開発するデータも揃っていたと考えられる。
テリシアの精神壊し
テリシアの精神壊し(Terisian Mindbreaker)はカードセット「兄弟戦争」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
カード名で「テリシアの」と訳された「Terisian」は、日本語では「テリシア大陸」か「テリシア市」かどちらか区別ができないが、原語の綴りからこのカードは「テリシア市の」巨大人型戦争機械だと分かる(大陸の方なら「Terisiare’s」か「Terisiaran」となる)。
カードのイラストは、戦場となったテリシア市で両肩の砲台を発射して攻撃する姿が描かれている。精神壊しという名称と、カードのメカニズムを考慮するに、砲撃は精神攻撃の類であろうか。また、イラストの状況はAR43?-44?年のファラジ帝国との戦いで間違いない。
クリーチャー・タイプが「巨大戦車」なのは不可解な分類だ。巨大戦車は大抵は車両系のアーティファクト・クリーチャーに持たされてきたもので、ここまで完全な人型の巨大戦車は初めてだ。
浮遊する像
浮遊する像(Levitating Statue)はカードセット「兄弟戦争」収録のアーティファクト・カードである。
宙に浮いている女性の像だ。起動するとアーティファクト・クリーチャーとなる。一見して所属不明瞭だけれど、第三の道に属すると思われる。
第三の道所属と判断するまず第1の理由は、像の衣装が第三の道のものに似ていることだ。
そして、2つ目の理由は、像が「人間そっくりの姿」で造られていることだ。こうした発想の機械発明は、ウルザ・ミシュラの陣営には無い(もちろんファイレクシアにも)。もしスランの遺物ならば、より抽象化されたシルエットになっていただろうし、そもそも小説The Brothers’ Warにおいてスラン人がどの種族なのかを知る証拠は存在していなかったのだから、人間の像がスランの遺物として存在するはずがない。人そのままの姿に目を向けた設計思想が第三の道を示している。
第三の道の偶像破壊者
第三の道の偶像破壊者(Third Path Iconoclast)のイラストには、第三の道の自動機械部隊が整列している。こちらはウルザの報復者型に似ている。
ぶどう弾カタパルト
For years scholars debated whether these were Urza’s or Mishra’s creations. Recent research suggests they were invented by the brothers’ original master, Tocasia, and that both used these devices.
最新の研究によれば、これらはウルザとミシュラの師匠に当たるトカシアの手になる発明で、兄弟の双方ともが使役したという。
引用:ぶどう弾カタパルト(Grapeshot Catapult)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ぶどう弾カタパルト(Grapeshot Catapult)はカードセット「アンティキティー」収録のアーティファクト・カードである。
昔のカードなので、兄弟戦争でデザインが一新されたアーティファクト群に比べて原始的で頼りない性能に見えてしまう。設定上は兄弟ともに利用した兵器であり、小説The Brothers’ Warではテリシア市にも配備されていた。
ファラジ帝国による包囲戦では、テリシア市はぶどう弾カタパルト、バリスタ、射手によって飛行型のドラゴン・エンジンを撃退して対空性能を証明している。ファラジ軍はこの失敗以降、空からの攻撃を止めたほどだ。
兄弟戦争期のファラジのバリスタは、恐怖のバリスタ(Terror Ballista)などのような多脚型砲台にブラッシュアップされて描写されている。スランの蜘蛛(Thran Spider)を参考に開発したものであろう。それを踏まえるなら、第三の道のぶどう弾カタパルトやバリスタも昔の絵柄そのままでなくより機械的で近代的な兵器であったはずだ。
石の脳
石の脳(The Stone Brain)はカードセット「兄弟戦争」収録の伝説のアーティファクト・カードである。このカードは今まで見てきた自動機械や兵器と異なる、全く性質が違うものだ。
MTG史上初の小説三部作グリーンスリーヴズ・シリーズ(小説ささやきの森、小説Shattered Chains、小説Final Sacrifice)に登場した秘宝である。第三の道に参加していたラト=ナム大学の賢人たちが制作した、脳に似た石造の兜である。使用された相手にタグ付けして隷属させたり、相手の能力を消し去る機能がある(現在の所有者であるグリーンスリーヴズ(Greensleeves)は他にも隠された機能を発見しているが危険すぎるために秘匿している)。
石脳はウルザとミシュラの兄弟を倒す目的で創られたものの、使用する前に兄弟両陣営の攻撃でラト=ナム島の大学は陥落してしまった。石脳が兄弟の手に渡ることを恐れたラト=ナムの賢人は、ドミナリア惑星の軌道上まで打ち上げて彼らから隠したのだった。
石脳は約4000年後、小説三部作において地表に落下しグリーンスリーヴズの所有物となった。AR4562年現在でも、ささやきの森の化身となった彼女は石脳を被っている。
その他のアーティファクト
第三の道の本拠地テリシア市は長い歴史を誇る学問の都であった。戦争となるずっと前より知識を集積し、遺物や書物、新たな発明が収蔵されていたのだ。
ロノム氷河を研究する考古学者で、第三の道のフェルドン(Feldon)は発見した遺物を第三の道に運び込んで研究を行っていた。ゴーゴスの酒杯(Golgothian Sylex)、タウノスの杖(Feldon’s Cane)、珊瑚の兜(Coral Helm)などが該当する。
第三の道はカードセット「兄弟戦争」では魔法的な側面を重点的に取り上げられることになった。しかし、カードセットや小説The Brothers’ Warで扱い切れなかったアーティファクトがまだまだ存在していたはずである。
さいごに
今回は第三の道のアーティファクトを取り上げて解説を試みた。
小説The Brothers’ Warではほとんど描写が無く、今回の「兄弟戦争」で新たに後付けされた要素である。情報が少ないながらも、何とか読み解いてみた結果が本記事だ。ウィザーズ公式が世界設定解説記事を出してくれればありがたかったのだが、このところそっちには力を入れないらしい雰囲気をひしひしと感じる。以前みたいに詳しいワールドガイドを公開して欲しいものだ。
では、今回はここまで。
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