「クルーグの災い魔、トラクソス」の発見場所とオリジン

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クルーグの災い魔、トラクソス(Traxos, Scourge of Kroog)はカードセット「ドミナリア」に収録された伝説のアーティファクト・クリーチャー・カードである。

クルーグの災い魔、トラクソスの解説

The ancient city of Kroog was destroyed by the artificer Mishra and his war machines during the Antiquities War almost forty-five centuries ago. Foremost among these machines was Traxos, an engine of destruction based on Phyrexian designs. Recently, excavation teams from Tolaria at Lat-Nam found and inadvertently reactivated the ancient war machine, which prowls old battlefields in search of Urza‘s forces.

古の都クルーグは、およそ四十五世紀前の古代戦争の際、工匠ミシュラとその戦争機械によって破壊されました。それらの機械でも先頭を占めたのが、ファイレクシアの設計に基づく破壊エンジンのトラクソスでした。
近年、ラト=ナムのトレイリアの発掘隊が古の戦争機械を発見して意図せず再起動し、それはウルアの軍隊を探して古戦場を徘徊しています。

フェイスブックの設定(リンク)から引用:上が英語原文。下が公式和訳版

クルーグの災い魔、トラクソス(Traxos, Scourge of Kroog)

データベースGathererより引用

クルーグの災い魔、トラクソス(Traxos, Scourge of Kroog)はドミナリア次元のアンティキティー戦争期工匠ミシュラが用いたドラゴン・エンジンの1体である。

AR28年、テリシア大陸南東沿岸三国のヨーティア国首都クルーグをファラジ帝国が攻め滅ぼした時、ミシュラの戦争機械の中でも先頭を切っていたのがこのトラクソスであった。ファラジ帝国はこの戦いの勝利を皮切りに、ヨーティアの国土を占領支配することになったが、指導者の長王(qadir)を喪ってしまう。その後継者となったのがミシュラである。長王のアドバイザーであったラキ1のミシュラが選出されて、新たに「工匠長王(Artifice Qadir)」として帝国に君臨することになったのだ。

AR4560年頃、トラクソスはラト=ナム島のトレイリア・アカデミーの発掘隊によって発見されて再起動している。



フェイスブックの設定和訳について

フェイスブックの設定の和訳は定訳と異なる言葉遣いをしている。

「およそ四十五世紀前の古代戦争」とは、原文が「the Antiquities War almost forty-five centuries ago」であることから「アンティキティー戦争」の訳ブレであることが分かる。

また、「ウルア」とは、原文が「Ursa」なので「ウルザ」である(おそらく単純な誤記)。

クルーグの災い魔、トラクソスの発見場所はどこか?

トラクソスが発見された場所は明らかではない。

二つ名が「クルーグの災い魔」のため、クルーグの廃墟に遺されていたと単純に考えてしまいそうになるが、もしそうならば、トラクソスが何らかの機能不全となってクルーグに放棄されていたことになる。しかし、小説The Brothers’ Warによると、クルーグ戦に投入されたドラゴン・エンジンの内で破壊された個体は回収されて、ミシュラ陣営の工匠の研究材料となっている。

ミシュラの工廠(Mishra's Factory)

データベースGathererより引用

旧ヨーティア領に建造したミシュラの工廠(Mishra’s Factory)において、バラバラに分解し隅々まで分析したデータを基にして、ミシュラ製のドラゴン・エンジンの最初の複製品が開発されていくことになる。

したがって、トラクソスがそのままの状態でクルーグに遺棄されている可能性はないのだ。

クルーグでないならアンティキティー戦争の戦場となった場所のどこか……すなわち、テリシア地方のほぼ全域が該当することになる。このままでは場所の特定に至らない。では、視点を変えてみよう。

他のドラゴン・エンジンが発見された場所

過去の作品で他のドラゴン・エンジンの遺物が発見された場所を調べてみた。実は意外にもドラゴン・エンジンが出てくる作品は少なく、遺棄されていた場所まで明らかな作品は1つしか見つけられなかった。

それが小説Final Sacrificeである。アンティキティー戦争期に、ミシュラとウルザの軍がラト=ナム島の魔法大学を攻めて破壊しており、その跡地にはドラゴン・エンジン少なくとも1体が遺されていた。AR4077年に、ドミナリアのドメインズ地方の大ドルイド、グリーンスリーヴズらが地中からその遺物を発見している。

ラト=ナム島にはドラゴン・エンジンが埋まっていたことが分かった。他にもドラゴン・エンジンが存在しているかもしれない。では、ここでフェイスブックの設定に立ち返ってみる。

クルーグの災い魔、トラクソスはラト=ナム島で発見された?

フェイスブックの記述をもう一度見直してみる。トラクソスを発見したのは「ラト=ナムのトレイリアの発掘隊(excavation teams from Tolaria at Lat-Nam)」となっている。

ここの「トレイリア」とは「トレイリアのアカデミー」のことである。このアカデミーはウルザがAR3285年にトレイリア島で創設した魔術師学院だったが、AR4205年にトレイリア島が戦争で失われ、AR4560年現在ではその系譜となるアカデミーがドミナリアの各地に開校しているのだ。ラト=ナム島にはアカデミーの中でも主要な学院の1つが存在している。


AR4560年現在のラト=ナム島地図
(Ethan Fleischer作)
引用元:公式記事Dominarian Cartography

地図上の「Tolarian Academy at Lat-Nam」がアカデミーの位置。その北にある「デュラー聖域(Duler Sanctum)」付近に半分水没した旧ラト=ナム大学の廃墟が存在する。デュラー聖域の出典も小説Final Sacrificeであり、この付近にドラゴン・エンジンが埋まっていた。

では以上の設定を踏まえて「excavation teams from Tolaria at Lat-Nam」を解釈すると、「excavation teams」+「from Tolaria at Lat-Nam」と考えて「ラト=ナム島にあるトレイリア・アカデミーから派遣された発掘隊」という意味になる。だが、別の解釈も成り立つのではないかと気付いた。

今度は「excavation teams」+「from Tolaria」+「at Lat-Nam」と切ってみてはどうだろうか。「from Tolaria」と「at Lat-Nam」は別個に「excavation teams」を修飾しているという解釈だ。つまり、この発掘隊は「トレイリア・アカデミーから派遣された隊」であり、かつ、「ラト=ナム島において発掘を行っている隊」である、という意味になってくる。

ラト=ナム島に開校したトレイリア・アカデミーが、古代の大学跡地を発掘調査中にグリーンスリーヴズと同じように、別のドラゴン・エンジンを掘り出してしまった。それが「クルーグの災い魔、トラクソス」であった…。この仮説は説得力を持っているように思える。いかがだろう。



クルーグの災い魔、トラクソスはファイレクシア産か?ミシュラ製か?

クルーグを目指すファラジ攻撃軍。この中にはトラクソスもいたはずだ。コミックではかなりの数のドラゴン・エンジンが登場するが正史では攻撃に参加したのは最大でも3体だけである。
引用:コミックUrza-Mishra War #1

トラクソスはどこで誰が作ったのか?ファイレクシア次元で生まれた生粋のドラゴン・エンジンなのか、それとも、ミシュラが設計した人工物なのか、どちらであろう。

設定の「ファイレクシアの設計に基づく破壊エンジン(an engine of destruction based on Phyrexian designs)」という記述から、トラクソスはミシュラがオリジナルのドラゴン・エンジンを基にして制作した複製品のようにも思える。

しかし、実際のストーリーを小説The Brothers’ Warで確認すると、クルーグ戦に参加したドラゴン・エンジンはどの個体もファイレクシア次元からドミナリア次元へとやって来たものである。

ならば、設定はどういうことを指しているか小説情報から考えてみる。ミシュラは最初にファイレクシアのドラゴン・エンジンを手懐けていく。最初の1体がいわゆる「マク・ファワ(Mak Fawa)」と呼ばれる個体で、数年後にコイロスのポータルから3体のドラゴン・エンジンを連れ出してくる。これがクルーグ戦時点までの全てになる。

クルーグ戦の翌年からミシュラはオリジナルを模倣したドラゴン・エンジンを開発する。このミシュラ設計のドラゴン・エンジンは終戦までの30有余年間にわたって改良を重ね、大量生産された。車輪を持つもの、足を持つもの、翼を持ち飛行できるもの、火炎放射できるもの…バリエーションは多様である。また、戦場で破損したドラゴン・エンジンは、ファイレクシア産もミシュラ製も、補修して活用されている。

ドラゴン・エンジン、レイモス(Ramos, Dragon Engine)

改造を施されたドラゴン・エンジンの1例
ドラゴン・エンジン、レイモス(Ramos, Dragon Engine)
カードデータベースGathererより引用

最初のマク・ファワは最終決戦まで現役であり、最期には機械化したミシュラと融合してウルザに襲い掛かった。融合機能は後付けの改造であろう。とすれば、トラクソスもまたミシュラの手によって改造されていてもおかしくはない。

つまり、「ファイレクシアの設計に基づく破壊エンジン(an engine of destruction based on Phyrexian designs)」とは、ファイレクシア生まれのトラクソスがミシュラによって改造や修理を重ねられたことを指しているのだ。

クルーグの災い魔、トラクソスのストーリー

クルーグの災い魔、トラクソスの名前が登場する作品はない。ただし、トラクソスが名無しのドラゴン・エンジンとしてその場にいたであろうという作品はいくつか存在する。

本記事中で引用した「コミックUrza-Mishra War #1」はクルーグ戦を描いている(ただし、このコミックシリーズは後世の学者が史料から再現した物語という設定であるため、正史となる小説とは展開や描写が違う)。

小説The Brothers’ War」はアンティキティー戦争を最初から最後まで通して語っているため、クルーグ戦だけでなくファイレクシアから連れ出された場面もあり、各戦場で戦うドラゴン・エンジンの姿が満載である。

そして「小説Final Sacrifice」は近代以降のラト=ナム島と遺物のドラゴン・エンジンが登場している。

クルーグの災い魔、トラクソスのまとめ

  1. クルーグの災い魔、トラクソスはアンティキティー戦争期工匠ミシュラが用いたドラゴン・エンジンの1体で、ヨーティア国首都クルーグを破壊した。
  2. AR4560年現在、トラクソスはラト=ナム島のトレイリア・アカデミーの発掘隊によって発見されて再起動している。
  3. トラクソスの発見場所はクルーグではない。ラト=ナム島で掘り出された可能性がある。
  4. トラクソスはファイレクシア産のドラゴン・エンジンで、ミシュラがコイロスで手に入れたドラゴン・エンジン3体のうちの1体である。おそらくミシュラによって改造を施されている。
  1. raki:ファラジの言葉で「魔術師」を意味する