ゴブリンの武器職人、トッゴ(Toggo, Goblin Weaponsmith)はカードセット「統率者レジェンズ」に収録される伝説のクリーチャー・カードである。
トッゴの初出はカードセット「オンスロート」で、当時は「ゴブリンの武器鍛冶トーゴ」と翻訳されていた。今回、新規にカード化された際に名前の訳語が「トッゴ」に刷新されたものだ。
本記事ではドミナリア次元オタリア大陸のゴブリン「トッゴ」とその一族について解説しよう。
ゴブリンの武器職人、トッゴの解説
ゴブリンの武器職人、トッゴ(Toggo, Goblin Weaponsmith)はAR4306年頃のドミナリア次元オタリア大陸のスカークのゴブリン男性である。トッゴはカードセット「オンスロート」の各種フレイバー・テキストが初出のキャラクターで、今回が初のカード化となる。
トッゴは何かと「岩」を引き合いに出す、「岩」大好きゴブリンである。カードでも「岩(rock)」という名の2点ダメージを与えられる装備品を作り出す能力を持たされている。これらはトッゴが登場したカードとフレイバー・テキストを強く意識したもので、特にオンスロート再録版のショック(Shock)は関係が深い。
また、「トッゴ」の名前はこれまでは「トーゴ」と訳されてきたので、そちらの方に馴染みが深い日本のユーザーも少なくないだろう。
そして、トッゴには子孫であるトッゴ六世も登場済みという背景設定もある。
本記事では「トーゴからトッゴへの訳語変更」、「ショックと岩の関連性」、「トッゴ関連カード」、「トッゴの子孫」の順に紹介と解説をする。
トーゴからトッゴに訳語変更
トッゴはオンスロート・ブロックのフレイバー・テキストでは「ゴブリンの武器鍛冶トーゴ」と翻訳されていて、それ以降も定訳化して踏襲されていた。
今回のトッゴ本人のカード化で名前が「武器鍛冶トーゴ」から「武器職人、トッゴ」に変更になったわけだ。
カードセット「統率者レジェンズ」にはトッゴのようなマイナー・キャラクターがたくさんカード化収録されていて、旧来のユーザーへの嬉しいサプライズとして話題となっている。だが、馴染みの名前を上書きされてしまうと昔のキャラクターだと気付きにくくなってしまう。現に私もカード名の英語原文を確認するまで、トッゴがトーゴと同一人物か確信を持てなかった。これには困ったものだ。
まあ、綴りから言えば「Toggo」は「トッゴ」と読むのがより正しい気がするし、「Weaponsmith」の訳としては「武器鍛冶」も「武器職人」もどちらも妥当である。翻訳は正確な方向への修正が望ましいので文句はない。1
ただ、馴染みのキャラクターの急な名称変更には一長一短あるものだ。もう幾分か慎重であって欲しいものだ。
以下「トーゴ」とあるものは全て「トッゴ」を意味している。注意されたし。
トッゴとショックと「岩」
“I love lightning! It’s my best invention since the rock.”
–Toggo, goblin weaponsmith
稲妻好きだぜ!俺の発明では、岩以来最高の出来だな。
–ゴブリンの武器鍛冶トーゴ
引用:カードセット「オンスロート」再録版ショック(Shock)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ショック(Shock)は赤1マナで対象1つに2点のダメージを与える定番のインスタント火力である。稲妻を落としたり電撃を放って攻撃する魔法を表現している。
カードセット「オンスロート」で再録された際に、トッゴのフレイバー・テキストがつけられている。トッゴは「岩(rock)」の次に「稲妻」を発明していて、稲妻は岩にも勝る発明だと自信たっぷりである。
ゴブリンの武器職人、トッゴのカード能力は、「岩」という名称や2点ダメージなど、この再録版ショックを明らかに意識している。「岩」とショックを比べてみよう。
ゴブリンの武器職人、トッゴの生成する装備品「岩」の性能を見ると、装備には1マナかかり、装備してるクリーチャーのタップと1マナと「岩」の生け贄で対象1つに2点ダメージを与えられる。
対象1つに2点ダメージをインスタントタイミングで与えられる点では、ショックと「岩」は共通していることが分かる。その反面、ショックと比べると、「岩」は合計で1マナ多くかかる上に、装備するためのクリーチャーとそのタップも必要となっている。
以上のように、「岩」と「ショック」には共通点を持たせつつも、性能面ではトッゴの言う通り明らかに「稲妻」は「岩」に勝っている。ヴォーソスを唸らせるだけのこだわりのデザインだと感じる。
ショック以外の関連カードでもトッゴの「岩」へのこだわりを知ることができる。次はトッゴ関連カードを1枚ずつ取り上げていこう。
トッゴの関連カード
狙いすましたなだれ
“Some solve problems by thinking and talking. Others use rocks.”
–Toggo, goblin weaponsmith
面倒事を、考えて相談してやっつけるのもいるけど、そうでないのは岩でやっつける。
–ゴブリンの武器鍛冶トーゴ
引用:狙いすましたなだれ(Pinpoint Avalanche)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
狙いすましたなだれ(Pinpoint Avalanche)はカードセット「オンスロート」収録のインスタント・カードである。
カードのイラストには、降り注ぐ岩の雪崩とナントゥーコの人物が描かれている(ナントゥーコはオタリア大陸の昆虫系人型種族)。
フレイバー・テキストはトッゴのコメントは「岩(rock)」である。
やはり岩…!岩は全てを解決する…!
火吹き使い
“Wait ‘til Toggo sees this!”
トーゴ、これ見たらどんな顔するだろ!
引用:火吹き使い(Spitfire Handler)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
火吹き使い(Spitfire Handler)はカードセット「オンスロート」収録のクリーチャー・カードである。
イラストを見て分かる通り、火炎を吹く小型のドラゴンを抱えたスカークのゴブリンである。赤マナでパワーをパンプアップする能力はこのドラゴンの炎のブレスによるものだ。
フレイバー・テキストだが、和訳製品版の翻訳は少々味付け訳だ。英語原文「Wait ‘til Toggo sees this!」は直訳すれば「これをトッゴに見せるまで待ってろ!」くらいになる。ここでの「これ(this)」は炎を吹くドラゴンのことに他ならない。あるいは「Wait till …」で「…を楽しみしてね・…したら驚くよ」くらいの言い回しにもなる。この文の場合はどうなのだろう?解釈は色々分かれるだろうが、もしかすると危険物ドラゴンを拾ってきた喜色満面なゴブリンに対して、周囲の者が頭のいいトッゴに意見を聞いてからドラゴンの扱いを決めろ、と命じている場面ではないだろうか?
ゴブリンの乱伐者
木の方が岩よりずっとよく燃えるって知ってたか?
–ゴブリンの武器鍛冶トーゴ
“Did you know that wood burns even better than rocks?”
–Toggo, goblin weaponsmith
引用:ゴブリンの乱伐者(Goblin Clearcutter)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ゴブリンの乱伐者(Goblin Clearcutter)はカードセット「レギオン」収録のクリーチャー・カードである。
フレイバー・テキストにおいて、明晰なトッゴの知性は木が「岩(rock)」よりもずっと燃えやすいという科学的事実を喝破している。
流動石の粉砕獣
“What’s better than smashing things with a rock? A rock that gets up and smashes things for you.”
–Toggo, goblin weaponsmith
石で殴るよりいいこと知ってるか? お前のために動いて殴ってくれる石さ。
–ゴブリンの武器鍛冶、トーゴ
引用:流動石の粉砕獣(Flowstone Crusher)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
流動石の粉砕獣(Flowstone Crusher)は、ファイレクシア技術で生み出された生きた岩のようなナノマシン「流動石(Flowstone)」で構成された生き物である。
初出はカードセット「ネメシス」で、ファイレクシアの支配するラース次元にいるクリーチャーとして登場。カードセット「基本セット第9版」の再録版ではフレイバー・テキストがトッゴのコメントに置き換えられた。ラース次元はAR4205年にドミナリア次元に融合して消滅してしまったので、トッゴの生きる百年後の未来では流動石の粉砕獣はラースの遺物として存在しているのだろう。
ここでも出てきた「岩(rock)」である。トッゴと岩は切っても切り離せないネタなのだ。
しかし残念なのは翻訳である。和訳製品版では「石」と訳しているせいで、ショックのフレイバー・テキストとの繋がりが希薄になっている。
トッゴの子孫トッゴ六世
After millennia of advancement in goblin military theory, Toggo VI realized that almost everyone is afraid of fire.
数千年に渡るゴブリンの軍事戦術の進歩の結果、トーゴ四世はほとんどの者が火を怖がることを発見した。
引用:恐火魔道士(Firefright Mage)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
恐火魔道士(Firefright Mage)はカードセット「次元の混乱」に収録されたカードだ。このセットはドミナリア裂け目時代(AR4306-4500年)を舞台としており、時の裂け目による影響でドミナリア全土は塩の嵐や酸の雨で荒廃し、時間流が乱れて過去や未来や異なる現在の事象が出現したりしていた混乱期である。
このカードのフレイバー・テキストには、トッゴ六世(Toggo VI)が登場しており、トッゴの血脈は一寸先は闇の裂け目時代に脈々と存続していることが分かる。トッゴ六世はほとんどの者が火を怖がることを発見したといい、これは数千年に渡るゴブリン軍事戦術の進歩の成果である。
トッゴ六世の発見を踏まえてこのカードを読み解く。イラストでは、ゴブリンの恐火魔道士の魔法により仲間の目から火が噴き上がっている。カードのメカニズムでは、能力の対象は攻撃してもほとんどの者にブロックされなくなる。つまり、火を怖がるなら、仲間に点火すれば遮るものはいなくなる。火と魔法を組み合わせた全く新しい戦術だ。
現在のトッゴの末裔
トッゴの「岩」の発明。トッゴ六世の「火」に関する発見。
このような代々のトッゴ一族による素晴らしい着想はスカークのゴブリン族の繁栄に寄与していたに違いない。
トッゴ一族はその後どうなったのだろうか?
裂け目時代は大修復を経て終焉を迎え、AR4560年現在のドミナリアはかつての盛況を取り戻している。では、現在のスカークのゴブリンの状況を描いたカードを確認してみよう。
Deep beneath the ruined continent of Otaria, there’s a mine where goblins still work, ignorant of the destruction above.
廃墟となったオタリア大陸の地下深くには、今でもゴブリンの働く採掘場が残っている。地上が壊滅したことには気付いていない。
引用:スカークの探鉱者(Skirk Prospector)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
カードセット「ドミナリア」に再録されたスカークの探鉱者(Skirk Prospector)のフレイバー・テキストにはAR4560年現在でのスカークのゴブリンについて言及している。オタリア大陸は壊滅したが地下で生活するスカークのゴブリンたちはそのことに気付かず、相変わらずの繁栄を築いているようだ。
ということは、トッゴの末裔は現在もスカーク分水嶺の地下で新発明をしている、まず違いあるまい。トッゴの時代から250年余りが経ち、ゴブリンの寿命は人間よりも短いものだ…。次のトッゴ一族はトッゴ六百世くらいになっているかもしれない。
では今回はここまで。
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