「Delif’s Cone」と「Delif’s Cube」はカードセット「フォールン・エンパイア」収録のアーティファクト・カードである。公式の和名はないが「デリフの円錐」と「デリフの立方体」を意味する。
今回は、魔術師デリフ(Delif)が制作したこれらのアーティファクトについて紹介する。
デリフの解説
デリフ(Delif)はドミナリア次元暗黒時代のサーペイディアの男性魔術師である。
デリフは数多くの呪文やアーティファクトを作り出したが、その大半は予測不能な性質であるか怪しげな品質であった。
この魔術師に関する情報はごく少ない。デリフの種族や彼が所属した国や組織などは不明であるが、カードセット「フォールン・エンパイア」にはデリフの名前を冠するカードが2種類収録されている。
デリフの円錐
“Where is it written that beasts must cause pain?”
–Delif, Ponderings
「獣は必ず苦痛を与えるもの、とどこに書いてある?」
–デリフ「思索集」
引用:Delif’s Coneのフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳
デリフの円錐(Delif’s Cone)は魔術師デリフの名前を冠するアーティファクト・カードの1つである。このカードではデリフのコメントがフレイバー・テキストとして記載されてもいる。
このカードの機能は、自分の攻撃クリーチャーがブロックされなかった場合に使用できる。このカードをタップして生け贄に捧げると、対象のブロックされなかった攻撃クリーチャーはこのターンは対戦相手に戦闘ダメージを与えなくなるが、その代わりにあなたはパワーと同点のライフを得られる…というものだ。
フレイバー・テキストによれば、デリフは自著で「獣は必ず苦痛を与えるもの」とは限らないと示唆している。つまり、このカードの機能と符合する内容となっているのだ。
ちなみに、フレイバー・テキストでは「Ponderings」だけ字体が違う(残りはすべて斜体)。当時のフレイバー・テキストの書式を考慮すると、これはデリフの著作を示すと考えられる。「pondering」は「熟考すること、思索すること」を意味しており、「Ponderings」と複数なので「思索集」くらいの意味合いになる。
日本のいくつかのファンサイトでは、この「Ponderings」をデリフの称号であるかのように解釈して掲示している。かなり昔から存在しているので、誤解釈がある程度浸透してしまっているのだが、それらは誤りである。
デリフの立方体
Delif was a wizard who created many spells and artifacts, but most were either of an unpredictable nature or of dubious quality — as Delif himself discovered.
デリフは数多くの呪文とアーティファクトを作り出した。しかし、その大半は予測不能な性質か怪しげな品質であり–デリフが身をもって発見した。
引用:1997年日めくりカレンダー
上が英語原文。下が私家訳
デリフの立方体(Delif’s Cube)も魔術師デリフの名を冠するアーティファクト・カードである。
このカード自体にはフレイバー・テキストもなく、カード名以外にデリフに関する情報は読み取れない。しかし、ウィザーズ社の1997年の日めくりカレンダーにおいて、このカードにはデリフの解説文が掲載されている。
デリフは小説やコミックなどのストーリー作品に登場したことはない(少なくとも私が見た限りではない)。だから、デリフの設定はこの日めくりカレンダーが唯一存在する資料となる。実は大変貴重な情報なのだ。
デリフのトリビア
公式記事Top 8 and a Half Talesによると、「Delif’s Cone」はDon Feliceのアナグラムである。
Don FeliceはMTGのプレイテスターであり、カードセット「ミラージュ」と「ビジョンズ」の開発チームの一員だった人物だ。
カードセット「アンティキティー」の時、Feliceと友人であった制作陣は彼にちなんだ名前をカードにつけようとして、「Feldon’s Ice Cane」と名付けたカードを制作していた。「Feldon’s Ice」が「Don Felice」のアナグラムだった。だが、出来上がったイラストには「Ice」らしさが無かったため、カード名から「Ice」が抜け落ちた。こうして製品化されたのがフェルドンの杖(Feldon’s Cane)だ。
その埋め合わせとして、制作陣はカードセット「フォールン・エンパイア」で「Delif’s Cone」を作り出した。もちろん「Delif’s Cone」も「Don Felice」のアナグラムとなっている。
さて、今回は超マイナーキャラクターの魔術師デリフを紹介した。本サイトはあまり知られていない情報を掘り起こして紹介しているが、その中でもデリフはドマイナーな部類に入るだろう。望んでいる人は多くはないのだろうけれども、今後も歴史に埋もれてしまったマイナー情報を発信していきたい。では、今回はここまで。
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