カード紹介:精神の盾とゼリオンの剣

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Spirit Shield」と「Zelyon Sword」はカードセット「フォールン・エンパイア」に収録されたアーティファクト・カードである。

和名がないため、本サイトでは便宜的にそれぞれ「精神の盾」と「ゼリオンの剣」と表記することとする。

今回も前回に続いて、暗黒時代のサーペイディア大陸に存在したアーティファクトを取り上げてみたい。

精神の盾とゼリオンの剣の解説

精神の盾(Spirit Shield)」と「ゼリオンの剣(Zelyon Sword)」はドミナリア次元暗黒時代のサーペイディア大陸の武具である。

どちらのイラストもスコット・キルシュナー(Scott Kirschner)が担当者であり、黄褐色の衣をまとった天使が描かれている共通点がある。私はこの天使にまつわるなにがしかの背景設定や物語がないかとサーペイディア関連作品と記事を調査したが、残念ながら特に言及するものは見つからなかった。

また、この盾と剣が登場したり言及されているストーリー作品も確認できない。

ただし、幸いにも両方とも1997年日めくりカレンダーで簡単な解説が付けられていることを確認できた。資料として貴重なものなので、次節以降ではそれらを交えて2つのカードを紹介する。



精神の盾の解説

At times, survival must outweigh all other considerations.
時には、生存率が他の全ての要件に勝ることがある。
引用:Spirit Shieldのフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳

Spirit Shield

Spirit Shield
データベースGathererより引用

精神の盾(Spirit Shield)はイラストを見ると、全体が深い青で、中央に白い顔が描かれ、その額の上の辺りに1本の赤い線が横切っている。形状はヒーターシールドと呼ばれるタイプの盾だ。

フレイバー・テキストを読む限り、使用者の身を守り生き残らせることを最優先として作られている。

One of the few artifacts from the time of the Sarpadian Empires, this shield protects its user from mortal attacks as well as those from the spirit world.
この盾はサーペイディア諸帝国時代より伝わる数少ないアーティファクトの1つだが、使用者は致命的な攻撃だけでなく精神世界からも守られる。
引用:1997年日めくりカレンダー
上が英語原文。下が私家訳

カード名に「Spirit」とあるだけに、日めくりカレンダーの解説では「spirit world(精神世界・霊界など意)」からの攻撃を防御する機能も備わっているという。ゲームメカニズム的にはクリーチャーのタフネスを+2するだけで、霊的な加護を受けるわけではない。名前の雰囲気を重視した設定だと言える。

ゼリオンの剣の解説

No sheath shall hold what finds its home in flesh.
肉の中に置き場を見出すものを収められる鞘はない。
引用:Zelyon Swordのフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳

Zelyon Sword

Zelyon Sword
データベースGathererより引用

ゼリオンの剣(Zelyon Sword)のイラストでは、抜き身の真っ直ぐな刀身の剣が描かれ、全体が金色の燐光を放っている。

「ゼリオン」とは一体何か。人名か地名か組織名かそれが何を指す単語なのか不明である。

Those who are lucky enough to possess a Zeylon sword are said to have a blade sharper than one even Tawnos himself could have produced.
ゼリオンの剣を入手する幸運に恵まれた者は、タウノスその人が制作した剣でさえ凌ぐ切れ味の刃を持ったことになる、と言われている。
引用:1997年日めくりカレンダー
上が英語原文。下が私家訳

※ 日めくりカレンダーでは「Zeylon sword」表記(このカレンダーには明らかな誤記がいくつかある)。

タウノスの武具(Tawnos's Weaponry)

タウノスの武具(Tawnos’s Weaponry)
データベースGathererより引用

タウノス(Tawnos)はドミナリア次元のアンティキティー戦争期の有名な工匠である。カードセット「アンティキティー」には、タウノスの武具(Tawnos’s Weaponry)が収録されており、ゼリオンの剣と同系カードの先祖となっている。タウノスの武具の修正値は+1/+1で、ゼリオンの剣は+2/+0だ。パワー修正はゼリオンの剣が勝っており、日めくりカレンダーの解説はこの差を指し示すものでもある。

以上で、精神の盾とゼリオンの剣に関する公式設定情報の紹介はお終いである。最後の節はおまけの内容となっている。



おまけ:装備品以前の装備品

クリーチャーに武器や防具を装備させて強化するのは直観的に分かりやすいし、何よりわくわくするものだと私は感じる。現在のMTGでは「装備品」がその役割を担っているがそれ以前から武器や防具を再現する様々な試みが行われていた。そうした試みの一部を少し語りたい。

ロクソドンの戦槌(Loxodon Warhammer)

ミラディン初出の最初の装備品の1つ
ロクソドンの戦槌(Loxodon Warhammer)
データベースGathererより引用

2003年発売のカードセット「ミラディン」では装備品メカニズムが実装された。これ以降、MTGではクリーチャーが持つ剣や盾、様々な道具を、統一されたメカニズムの下でアーティファクト・カードとしてかなり自在に表現できるようになった。

だが、装備品メカニズム以前にも(それこそMTG黎明期から)武具や道具を何とか表現しようという工夫は試みられていた。

装備品メカニズム実装の9年前、1994年のカードセット「フォールン・エンパイア」でも同様にその手の装備品的なカードが2種類収録されている。それが本記事で紹介した「Spirit Shield」と「Zelyon Sword」である。

この2種類のカードは共通したメカニズムを持っている。指定されたマナを払いタップすると、対象のクリーチャー1体のパワーやタフネスにボーナス修正を与えられる。タップ状態であり続ける限り、このボーナス修正は継続する。またアンタップ・ステップにアンタップしないことを選んでもよい(これでボーナス修正がそのまま継続させられる)。

アシュノッドの戦具(Ashnod's Battle Gear)

アンティキティー収録のアシュノッドの戦具(Ashnod’s Battle Gear)
データベースGathererより引用

このメカニズムは1994年のカードセット「アンティキティー」からのもので、タウノスの武具(Tawnos’s Weaponry)アシュノッドの戦具(Ashnod’s Battle Gear)が先行して登場していた。フォールン・エンパイアの2種類のカードはそのバリエーションにあたるものだ(ちなみにアンティキティーとフォールン・エンパイアは制作チームが共通している)。

このメカニズムは定番化するまでは至らなかったが、こうした黎明期の思考錯誤が現在の「装備品メカニズム」に繋がっている(他の試みも色々あったが、それらよりも装備品に近いメカニズムであったと思う)。

2021年現在、装備品カードはカードセットに必ず入っており、MTGにとって欠かせない存在になって久しい。「Spirit Shield」と「Zelyon Sword」は特筆すべきストーリーも設定も持たされず、カードパワーは当時水準でもパッとしなかったカードではあったが、カード開発史的に見ると「装備品」の先祖であったと気付くことができた。この2枚は意外に大した存在だったのだ。

では、今回はここまで。

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