道具箱、ヘンジー・トーリ(Henzie “Toolbox” Torre)はカードセット「ニューカペナの街角」の統率者デッキ収録の伝説のクリーチャー・カードである。
道具箱、ヘンジー・トーリの解説
道具箱、ヘンジー・トーリ(Henzie “Toolbox” Torre)はニューカペナの土建組一家に所属するデビルの男性だ。高街のアッパーブリッジ広場でヘルクラネウム菓子店を経営している。
道具箱、ヘンジー・トーリの設定解説文
公式記事The Legends You’ll Find in Streets of New Capennaには、道具箱、ヘンジー・トーリ(Henzie “Toolbox” Torre)の設定解説文が掲載されている。この解説を本サイトで独自に翻訳してみたのが次の文章だ。
奴をヘンジーと呼ぶのはお袋さんくらいのもんだ。そんな『道具箱』野郎でも雇うつもりなら、それなりの物が必要だぞ。あの小狡い軽業師は、可愛いあの子が好きそうなものなら何でも手に入れられるが、分け前にあずかろうとしてくるんだ。つまりこの手のサービスは決して安くはないのさ。奴が婚約者からデザイナーズ・ウェディングドレスをねだられた時なんざ、代金だと言っていきなり婚約指輪を取り上げやがったほどだぞ。その後2人は長続きはしなかったが、金が入ったのにどうして奴が愛を必要とするってんだ?
奴は土建組の真っ当な一員で、一家のために建築資材を売りさばいてるそうだ。だが噂じゃあ隠し財産を溜め込んでいて、ボスのジアトラにも気取られないほど上手いことやってるとよ。行方不明になった武器の荷物もそこに行き着いたに違いない。奴が何に使う企みなのか皆目見当もつかん。ひょっとすると奴はその上に座って、光素の輝きを浴びながら、高街の王様みたいにほくそ笑むのが大好きなだけかもしれねえがな。光り物には目が無くて、くそシャンデリアみてえにいつも宝石で着飾ってやがる。だがな奴の拳のナックルダスターを顔面もろに喰らってみろ、幾日も目の前がチカチカすることになるぞ。
公式の翻訳文が存在しているのになぜ独自訳をしたのか、その理由は本記事の後半で説明している。
道具箱、ヘンジー・トーリの登場ストーリー作品・記事
道具箱、ヘンジー・トーリ(Henzie “Toolbox” Torre)は短編「野良猫のブルース(Alley Cat Blues)」に登場している。
舞台座一家の使い走りキット・カント(Kitt Kanto)から品物を受け取る役回りであった。その品物とは、ヘンジーが土建組一家の重鎮オーグニス(Ognis)から横取りした「光素」である。
「光素」を受け取ったヘンジーは、帰りの切符が欲しいというキット・カントに何と驚くことに無償で与えている。しかし、薄汚くボロボロの野良猫娘がニューカペナでも高級地区である「高街」を大胆にも通り抜けてきたわけで、この一大珍事だけで切符1枚くらいの見返りには十分だと判断したのかもしれない。
この短編中では、設定解説と違って誰もが二つ名の「道具箱」では呼ばずに、本名の「ヘンジー」で呼んでいた。ただし、少なくとも親しみを持って彼の名前を口にしている者は登場していない。
設定解説記事の公式和訳に関する指摘
公式記事The Legends You’ll Find in Streets of New Capennaでは、このキャラクターに関する解説文が公開されている。
この解説文の公式な和訳版は2種類存在している。1つ目が公式サイトの公式和訳版『ニューカペナの街角』の伝説たちで、2つ目が統率者デッキ付属の解説である。
公式な和訳とはいえ、所々で翻訳内容に怪しいと感じる部分があった。本サイトでは公式和訳準拠ではなく、原文を独自に解釈している。これが公式和訳版と本記事が食い違っている理由だ。
道具箱、ヘンジー・トーリの設定解説:英語原文
Ain’t no one call him Henzie ‘cept his momma. But if you’re looking to hire the Toolbox himself, you gotta have the goods. That sly little acrobat can nab anything your pretty little heart fancies, but he’ll want a cut off the top. And those services don’t come cheap. His own fiancée asked him to snag her some designer wedding gown, and he up and took her engagement ring back as payment. Can’t say they lasted too long after that, but why’s he need love when he’s got money?
Says he’s part of the Riveteers and all, moves construction materials for ‘em. But rumor’s got it that he’s tucked away his own private stash, hidden so good his boss, Ziatora, don’t even know. Bet that’s where all those missing weapons shipments have ended up. No idea what he plans on using ‘em for. Maybe he just likes to sit atop it all and gloat like he’s the king of Park Heights, basking in the Halo glow. Loves shiny things, always decked out in gems like a dang chandelier. But if those knuckle-dusters hit you in the kisser, you’ll be seein’ sparks for days.
引用:公式記事The Legends You’ll Find in Streets of New Capenna
公式和訳その1:『ニューカペナの街角』の伝説たち
彼をヘンジーと呼ぶのはその母親だけだ。けれど「道具箱」その人を雇いたいなら、物品を用意する必要がある。このずる賢い軽業師は君の小さな心が思い描くものは何でも手に入れられるが、分け前を要求してくるだろう。そしてこういったサービスは安くはない。婚約者に特製のウェディングドレスを入手して欲しいと頼まれた彼は、報酬として婚約指輪を取り上げた。その後のふたりは長続きしなかったようだが、金があるならば愛は必要だろうか?
彼は土建組の一員であり、建材を調達しているという。だが噂によれば彼は密かに金を溜め込んでおり、その手際はあまりに上手いためジアトラですら把握していない。行方不明になった武器はそこに持ち込まれているに違いない。彼がそれを用いて何を企んでいるのかは知るよしもない。その全ての上に座し、高街の王のように眺め、光素の輝きに浸りたいだけなのかもしれない。彼は光り輝くものが好きで、常にシャンデリアのように宝石で飾り立てている。けれどその指輪が並ぶ拳で殴られたなら、視界には何日も火花が散ることになるだろう。
引用:『ニューカペナの街角』の伝説たち
公式和訳その2:統率者デッキ
彼のことをヘンジーと呼ぶ者は、お袋さん以外には誰もいないでしょう。ですが、道具箱自身を雇おうか検討しているなら、あなたは何かを差し出さなければなりません。あの狡猾なアクロバット野郎は、あなたの幼気な心が望むものなら何でも手に入れることができますが、彼は分け前を要求するでしょう。そしてこれらのサービスは決して安くはありません。自分の婚約者がデザイナーウェディングドレスがほしいと言った時も、彼は報酬として婚約指輪を唐突に取り上げました。その後二人は長続きしなかったようですが、金を手に入れたのにどうして愛が必要なのでしょうか?
土建組一家の一員であり、それがすべてだと彼は言います。一家のために建材を動かしているとか。ところが、彼は自分の隠し財産をため込んでいると噂されるようになりました。一家の主ジアトラが気づきもしないほど巧妙に隠されているらしいです。きっと、行方不明になった武器の荷物はすべてそこに流れ着いているにちがいありません。彼の企みや武器の使い道は見当もつきません。もしかしたら彼は武器の山の上から、その光素が放つ光を一身に浴びつつ、高街の王のような気分で満足げに眺めているのが好きなだけかもしれません。光り物に目がないので、シャンデリアのようなぜいたく品で飾り立てています。しかし、両手のメリケンサックが顔にめり込めば、数日間は目を回すことでしょう。
引用:統率者デッキ付属解説
本サイトでの解釈
その1:But if …
お袋さんしかヘンジーの名前を呼ばないとの冒頭を受けて、次の文「But if you’re looking to hire the Toolbox himself, …」と続く。ここでなぜ「But if(だがもし…)」と逆接で繋ぐのか本サイトではこう考えた。
ヘンジーには本名を呼ぶほど、本名呼びを許すほどに親しい者が母親の他に居ない。あるいは、生身の個人としてではなく、二つ名の「道具箱」そのままの便利な道具としかみなされていない。こんな所じゃないかと検討をつけた。少し後にヘンジーは非常に癖のある厄介者な性格だと説明されているので、友人がいない鼻つまみ者の解釈は正しいように感じる。
とすると、「But if …」の文章は、母親にしか名前も呼ばれない鼻つまみ者だと知って「それでももしそんな人物を雇うというのなら…」と続く文脈にあるのではないかと考えたのだ。それで文章の形を弄って「そんな『道具箱』野郎でも雇うつもりなら、」としてみた。
その2:your pretty little heart
原文で「That sly little acrobat can nab anything your pretty little heart fancies,」という文が出てくるが、この「your pretty little heart」は何を指しているのか?
公式翻訳では、公式サイト記事「このずる賢い軽業師は君の小さな心が思い描くものは何でも手に入れられるが、」、統率者デッキ「あの狡猾なアクロバット野郎は、あなたの幼気な心が望むものなら何でも手に入れることができますが、」と訳している。つまり「(ヘンジーを雇う)あなたの……心」という形だ。これがそのまま「あなたの心」のつもりで訳したものか、比喩表現なのかが、私には判別できなかった。
私にはこの「your pretty little heart」は、「あなたの可愛いあの子」とかもっと直接的に「恋人・愛する人」を表しているとしか考えられない。英語でよくある類の言い方なのけれど、「あなたの可愛らしい小さな心」などと直訳してもきっと意味が通じないと思っている。だから「あの小狡い軽業師は、可愛いあの子が好きそうなものなら何でも手に入れられるが、」と訳してみた。
その3:off the top
次に気になったのは「but he’ll want a cut off the top.」だ。この「off the top」はどうやら俗的に「総利益から…・総収入から…」を指す言い回しらしい。そうなるとこの文章は「彼は総利益から分け前を欲しがるだろう」となる。
ヘンジーは誰かが儲かったら分け前をもらおうとする奴だってことだ。ここでは可愛いあの子に何かプレゼントを用意するという話なので、それで手に入る幸せの分け前にあずかろうとしてくる。そんな意味だろうと捉えた。
その4:moves construction materials
「moves construction materials」の部分は「move」には「商品を売る・売りさばく」という訳例があったので、その意味で解釈した。
その5:like a dang chandelier
「always decked out in gems like a dang chandelier.」のところは「くそシャンデリアみてえにいつも宝石で着飾ってやがる。」と訳してみた。
統率者デッキ解説文の方は「シャンデリアのようなぜいたく品で飾り立てています。」としているが完全に間違いだ。本当はヘンジー自身が宝石で着飾っていて、その様がまるでシャンデリアみたいだ、との意味である。
そして公式サイト記事でも統率者デッキでも「a dang chandelier」の「dang」のニュアンスを省いてるようだったので、本サイトではあえて「くそシャンデリア」と汚い表現にしてみた。
その6:those knuckle-dusters
最後に「But if those knuckle-dusters hit you in the kisser, you’ll be seein’ sparks for days.」の文。
ヘンジーが手にはめている武器「those knuckle-dusters」だが、日本語では「メリケンサック」「ブラスナックル」「拳鍔」などという言い方もされるようだ。「メリケンサック」は昔から馴染みがあるにはある言い方だが、この「メリケン」は「American」の転訛らしいので本サイトでは避けた。最近ではそのままの「ナックルダスター」でもそこそこ通じて来てる感触があるのでそのままにした。
ちなみにまた「But if …」と逆接で始まってるのは、ヘンジーはシャンデリアみたいにぎらぎらと着飾ってる様な奴だが、「その見かけによらずに」躊躇なくナックルダスターで殴って来る輩だ、との意味合いだと捉えた。
さいごに
以上で道具箱、ヘンジー・トーリの四方山話はおしまいだ。
記事の半分は、翻訳するにあたっての解釈の説明に割いてしまった。毎回こういう内容を書く時は、読み手はうんざりするんじゃないかと思わないでもないが、書いておく意義はあると信じたい。
では今回はここまで。
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