ファイレクシア完全なる統一:ネズミの王、カルモニクス

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ネズミの王、カルモニクス(Karumonix, the Rat King)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」に収録された伝説のファイレクシアン・ネズミ・クリーチャー・カードである。

今回はファイレクシアン・ネズミの王カルモニクスと、この次元のネズミに関する情報を整理しまとめたものだ。

本記事は設定解説記事The Legends of Phyrexia: All Will Be Oneや各種関連カードを基にして作成した。

追記(2023年2月16日):騒がしい這い回り(Chittering Skitterling)が登場するストーリー作品について節分けして加筆した。

追記(2023年2月22日):騒がしい這い回り(Chittering Skitterling)が登場するストーリー作品をもう1つ追加した。

ネズミの王、カルモニクスの解説

ネズミの王、カルモニクス(Karumonix, the Rat King)

ネズミの王、カルモニクス(Karumonix, the Rat King)
データベースGathererより引用

ネズミの王、カルモニクス(Karumonix, the Rat King)は新ファイレクシア次元のファイレクシアン・ネズミだ。

外見は複数のファイレクシアン・ネズミが合体したような異形である。頭部は4つあり、足は前足3組と後ろ3組の計12本、皮膚や毛皮は無くなった代わりに金属の外皮が覆っている。ただし、頭部の大部分と12本の足は骨であり、首や胴体の腹側や尻尾の中ほどは肉の筋が剥き出しとなっている。

イラストでカルモニクスの足場となっているのは、白派閥の人型ファイレクシアンの死骸のようで、カルモニクスの大きさは死骸の頭部ほどである。素直に考えればカルモニクスは大型のネズミかそのひと回り大きい程度の大きさであろう。

ただし、各種イラストを見るに人型ファイレクシアンの身長は人間大から巨人あるいはさらに大型と様々だ。それに、カルモニクスがファイレクシアンになる過程で巨大化している可能性は無いとは言い切れない。したがって、カルモニクスははるかに大型である可能性が残る。



ネズミの王、カルモニクスの設定

ネズミの王、カルモニクス(Karumonix, the Rat King)

胆液イラスト版のネズミの王、カルモニクス(Karumonix, the Rat King)
データベースGathererより引用

カルモニクスの設定は、設定解説記事The Legends of Phyrexia: All Will Be Oneの解説と時代設定、ネズミ関係カードの情報を整理すると次の通りだ。

AR4557年の新ファイレクシアによる侵略後になると、ネズミは以前のミラディン時代にもまして繁殖し数をどんどん、どんどんと増やしていった。新ファイレクシアの散布するぎらつく油や胞子を始めとする媒体は感染すると生物をファイレクシアンに変化させてしまう。1もちろんファイレクシアン化の波は、ネズミにも例外なく広がった。

そうして数を増やし切ったネズミたちは、より巨大な全体を形成するためにお互いを貪り喰らい始めた。ネズミたちの骸骨、肉、そして金切り声は、自分たち自身をカルモニクスと呼ぶ1つの合唱団に統合された。

AR4562年現在、統一された集合意識2カルモニクスは、齧歯類の同胞が新ファイレクシア次元のどこに居ようとも、それを感知し操作できるようになっている。

バンドル・プロモカードのネズミの王、カルモニクス

ネズミの王、カルモニクス(Karumonix, the Rat King)

バンドル・プロモカードのネズミの王、カルモニクス(Karumonix, the Rat King)
データベースGathererより引用

こちらはバンドルにプロモカードとして付属している特別版イラストのネズミの王、カルモニクス(Karumonix, the Rat King)だ。

通常版のイラストと比較すると、基本的なイメージは同一なものの、前足4本と後ろ足4本の全部で8本足と4本少なくなった上に、頭部や足、尻尾など金属外皮で覆われた部分がより多くなっている。通常版の姿からさらにファイレクシアンとして完成化した状態がこちらなのかもしれない。

カルモニクスに関する個別情報を取り上げた。

続いては、新ファイレクシア次元に生息するネズミたちの起源から現在までを順番に見ていこう。

ミラディンのネズミ・カード

メムナーク(Memnarch)

かつて存在した次元の管理者メムナーク(Memnarch)
データベースGathererより引用

新ファイレクシアが次元を征服する以前より、ネズミは群れを成していた。

ここはプレインズウォーカー、カーン(Karn)が創造した人工の金属次元アージェンタムであった。しかし、カーンによって管理者に任命されたメムナーク(Memnarch)3はファイレクシアの油に汚染され妄想に取り憑かれるようになった。メムナークは創造主カーンを締め出し、次元名をミラディンと改名し、次元外から生物を誘拐して次元の住人としたのだった。こうして本来は輝かしい完璧なる金属世界に害獣のネズミも住まうことになったのだ。

ミラディン次元の生物は身体の一部が金属化している。次元外からミラディンに誘拐された最初の世代ならば徐々に肉体が変化してしまうし、その子孫であるミラディン生まれの場合は生まれながらに金属化の特徴を有する。この身体の金属化はネズミも例外ではなかった。

メムナーク時代のミラディン次元(現在の新ファイレクシア次元)には、ネズミ・クリーチャー・カード2種類の存在が確認できる。

騒がしいネズミ

Bottom feeders sometimes rise to the top.
最下層の餌食も、時として頂点に上ることがある。
引用:騒がしいネズミ(Chittering Rats)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

騒がしいネズミ(Chittering Rats)

騒がしいネズミ(Chittering Rats)
データベースGathererより引用

騒がしいネズミ(Chittering Rats)はカードセット「ダークスティール」収録のクリーチャー・カードである。

この騒がしいネズミのイラストを見ると、鼻面の上部から頭頂部そして脊柱に沿って一直線に金属の棘が突き出ており、細長い尻尾も同様に金属的だ。更に四肢の先端の指と鉤爪は長く鋭利な金属であり、おそらく口にびっしりと並んだ牙も金属化しているとみられる。

騒がしいネズミ(Chittering Rats)

騒がしいネズミ(Chittering Rats)
データベースGathererより引用

カードセット「ジャンプスタート2022」再録版の新規イラストは、オリジナルと比べてごく普通のネズミに見える(歯が幾分金属的な質感を持つようにも感じるが)。ミラディン次元(現在の新ファイレクシア次元)とは別の次元のネズミを想定しているのかもしれない。

執拗なネズミ

執拗なネズミ(Relentless Rats)

執拗なネズミ(Relentless Rats)
データベースGathererより引用

執拗なネズミ(Relentless Rats)はカードセット「フィスズ・ドーン」収録のクリーチャー・カードである。このカードはデッキ内に何枚入れても構わないという4枚制限のルール破りの特殊なカードで、人気があった。

無数のネズミが人間の死骸に群がり喰らいつつ、更にどこぞへと駆け抜けていっている。身体の金属化は個体ごとに差異が見られる。背骨、尻尾、足の爪の金属化は大抵のネズミに起こっているようだ。その他には、耳や顔、胴体、四肢がそれぞれ部分的に変化した個体が確認できる。

執拗なネズミ(Relentless Rats)

執拗なネズミ(Relentless Rats)
データベースGathererより引用

カードセット「マスターズ25th」再録版の新規イラストは、ミラディン次元のメフィドロスに群がる無数のネズミを描いている。鋭い鋼のような光沢の牙が生えているものの、それを除けば普通のネズミと変わらない姿だ。



ファイレクシア侵略戦争時のネズミ・カード

新ファイレクシアによるミラディン次元の侵略戦争と征服は、ミラディンの傷跡ブロック(カードセット「ミラディンの傷跡」「ミラディン包囲戦」「新たなるファイレクシア」)で語られたものである。時代設定はAR4557年だ。

ファイレクシアンが次元を征服しミラディンは新ファイレクシア次元となり、敗北したミラディン人は絶滅の危機に瀕するまでになった。この時期のネズミ・クリーチャー・カードは2種類が該当する。どちらのカードもファイレクシアンになっており、ファイレクシア化を起こす病毒に感染したキャリアーとなっている。

胆液の鼠

胆液の鼠(Ichor Rats)

胆液の鼠(Ichor Rats)
データベースGathererより引用

胆液の鼠(Ichor Rats)はカードセット「ミラディンの傷跡」収録のクリーチャー・カードである。

最初のファイレクシアン・ネズミだ。感染能力と、戦場に出た時に毒カウンターをばら撒く能力を持っている。

カード名で「胆液」と訳された「Ichor」は、MTGでは何らかの黒い不浄な液体を指して用いられる単語だ。そして、ファイレクシアに関する文脈においては「ぎらつく油」とほぼ同義のように扱われている。「Ichor」は旧ファイレクシア時代からあるストーリー用語ではあるのだが、少なくとも私の知る範囲では、これがイコール「ぎらつく油」とまでは明言されてはおらず、曖昧に匂わせる程度にとどまっている。

イラストのネズミは眼窩から黒い液体を涙のように流しているが、これがその「Ichor」だ。

敗血のネズミ

敗血のネズミ(Septic Rats)

敗血のネズミ(Septic Rats)
データベースGathererより引用

敗血のネズミ(Septic Rats)はカードセット「ミラディン包囲戦」収録のクリーチャー・カードである。

これが史上2番目のファイレクシアン・ネズミだ。毒に関する能力を持たされている。

カード画像ではクリーチャー・タイプが「ネズミ」であるけれど、後に新設された「ファイレクシアン」タイプを後付けで持たされることになったのだ(先述の胆液の鼠の場合は、再録版カードの画像なので「ファイレクシアン・ネズミ」と印刷されている)。

イラストを見ると、ネズミたちの中には外皮が剥がれて背骨や肋骨が露出している個体が何匹も確認できる。ファイレクシアンは俗にサイボーグ・ゾンビと称される、金属と肉体の複合生命体なので、イラストのような状態でも問題ないのである。

余談だが、この1つ前のカードセット「ミラディンの傷跡」では「胆液の」と漢字表記だったのに、直後のこちらは「敗血のネズミ」とカタカナ表記で訳が安定していない。

ファイレクシア:完全なる統一のネズミ・カード

カードセット「ファイレクシア:完全なる統一」は時代設定はAR4562年で、前回のミラディン征服から5年後になる。

今回の収録ネズミ・カードは3種類。どれも共通してファイレクシアンであり、かつ毒に関する能力を持たされている。その内、1種類が本記事で紹介済みの伝説のファイレクシアン・ネズミ、カルモニクス(Karumonix)である。

私の個人的な意見だが、カルモニクスのような特別個体を除き、過去カードも含めた全4種類のファイレクシアン・ネズミはカードとしては異なる名称、ゲームデータ、イラストを与えられている。とはいえ、設定上の差異はおそらく決まって無くてファイレクシア化したネズミとして一つに括られるものだと考えられる。

腐り腹のネズミ

腐り腹のネズミ(Blightbelly Rat)

腐り腹のネズミ(Blightbelly Rat)
データベースGathererより引用

腐り腹のネズミ(Blightbelly Rat)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のクリーチャー・カードである。

腐り腹のネズミ(Blightbelly Rat)

胆液イラスト版の腐り腹のネズミ(Blightbelly Rat)
データベースGathererより引用

こちらのイラストではネズミを大きく逸脱した姿に描かれている。機械の6本足を生やし、胴体は腐敗ガスや病原菌でも詰まっているのか膨れ上がり背中には水疱のようなものが幾つも出来ている。

騒がしい這い回り

What cannot be remade will be unmade, one scrap at a time.
作り直せないものは作られず、その都度屑鉄ができあがる。
引用:騒がしい這い回り(Chittering Skitterling)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

騒がしい這い回り(Chittering Skitterling)

騒がしい這い回り(Chittering Skitterling)
データベースGathererより引用

騒がしい這い回り(Chittering Skitterling)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のクリーチャー・カードである。

騒がしい這い回りのフレイバー・テキスト

個人的にフレイバー・テキストの和訳製品版が気になって仕方がないカードだ。

この日本語文では多くの人が、次のように解釈してるのではないだろうか?「作り直せないものは、再び作ろうとしても作ることができないために、出来上がるものは屑鉄にしかならない。」と、こんな内容に。

でも、原文と比べると「作られず」の原語は「be unmade」なので、辞書的には「破壊される・分解される」という意味なのだ。

作り直せないものは壊されて、その都度屑鉄になる。

壊れてしまっても修理不能なものは廃棄処分になって、スクラップになるのだ。私にはこういう内容に読めた。

カードのメカニズムに目を向ければ、(条件付きで)クリーチャーやアーティファクトを生け贄にしてカードを引く、という機能である。ということなら、おそらくこのネズミが廃棄・分解する役割を担っている。そして、ファイレクシアでは廃物は新たなるファイレクシアンの素材としてリサイクルされるものと昔から決まっているので、カードを引くという利得に繋がるのであろう。

騒がしい這い回りの登場ストーリー

カードセット「ファイレクシア:完全なる統一」の短編Cinders公式和訳版「燃え殻」)と短編A Hollow Body公式和訳版「空ろな身体」)の2作品で、這い回り(Skitterling)の存在が示唆されている。

短編Cindersの這い回り

短編Cindersでは、新ファイレクシア次元第三球層「自律焼炉」にある火の鳥の営巣地で、ミラディン人のレヤナ(Reyana)が担当して世話していた雛たちが襲われて全滅していた。犯人は這い回りだろうとレヤナは推測した。

この短編の公式和訳版「燃え殻」の方では、雛が全滅した理由をレヤナが語る場面が次の通りになっている。

“Skitterlings, maybe,” said Reyana, still with that hollow tone of voice as she sifted through the shards. “Wouldn’t be surprised if it were rats. Regardless, it doesn’t matter. The clutch is dead. Just like my mother.”
「這い回り。たぶん」破片をより分けながら、レヤナは虚ろな声で言った。「鼠だったとしても驚かないわ。けどそれは問題じゃない。雛は死んだ。私のお母さんと同じように」
引用:上が短編Cinders、下が燃え殻

見ての通り公式和訳版では「這い回りが犯人かも知れないが、鼠(ネズミ)が犯人でも驚かない」というように、「這い回り」と「鼠」が別の存在と読めてしまう文章になっている。

「這い回り。たぶん」レヤナは破片をより分けながら、まだ虚ろな声で言った。「ネズミがいても驚くことじゃないでしょ。ま、どうでもいいわ。雛は死んだ。お母さんと同じよ。」

私個人としては、レヤナの発言は「ネズミがいても驚くことじゃないでしょ。」くらいになろうかと思うし、それに心情を想像するに全体的に投げやりな口調で喋っているとも感じるのだ。

短編A Hollow Bodyの這い回り

修羅のドミヌス、ドリヴノッド(Drivnod, Carnage Dominus)

修羅のドミヌス、ドリヴノッド(Drivnod, Carnage Dominus)
データベースGathererより引用

短編A Hollow Body公式和訳版「空ろな身体」)では、ドロス窟に複数の這い回りの姿を確認できる。

また、修羅のドミヌス、ドリヴノッド(Drivnod, Carnage Dominus)の棘には複数の這い回りの死骸が突き刺されていた。



さいごに

バンドル・プロモカードのネズミの王、カルモニクス(Karumonix, the Rat King)一部拡大図

今回は未訳の設定解説記事The Legends of Phyrexia: All Will Be Oneの情報を基にして、新キャラクターの「ネズミの王、カルモニクス(Karumonix, the Rat King)」とこの次元のネズミを取り上げて記事にまとめてみた。

これまでは「ドミヌス(Dominus)」と「オヴィカ」、「スクレルヴ(Skrelv)」を取り上げてきた。今日もまだ記事の和訳版は投稿されていなかった。未訳のままスルーされるのかも……?

では、今回はここまで。

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  1. 註:旧ファイレクシア時代には「油に感染してファイレクシアンになる」描写はされていない。疫病としてのファイレクシア化は新ファイレクシアからの新たな特性だ。
  2. 原文「hive mind」
  3. メムナークが管理者となったのはAR4310年頃と計算できる