アンティキティー戦争期(Antiquities War)はドミナリアの時代区分でAR0年~AR63年の時代。
アンティキティー戦争期の概略
アンティキティー戦争は兄弟戦争(Brothers’ War)の別名でも知られた、ウルザとミシュラの2人の工匠兄弟による戦争である。
「Antiquities War」つまり「古代遺物の戦争」の名前の通り、スラン時代の遺物である発掘アーティファクトや工学知識を利用したこの戦争は、ウルザとミシュラの兄弟が属する二大陣営間でAR63年の終戦までの長期間にわたって継続した。
AR63年の最後の日、戦争を終結させたゴーゴスの酒杯(Golgothian Sylex)の大破壊によって、ドミナリアは氷河期へと突入する。
アンティキティー戦争期のストーリーはどこで読める?
The Brothers’ War
小説The Brothers’ Warがアンティキティー戦争の通史であり正史となっている(序文に正史である旨が明言されている!)。この小説は緻密に計算されて執筆されており、AR0年からAR64年までの時系列が無理なくきちんと収まるようになっている。このおかげでアンティキティー戦争期は非常に詳細な年表を作成することが可能である。
正史ではない諸々の兄弟戦争
以下の作品は正史である小説The Brothers’ Warとは異なる内容の作品群。
掌編The History of AntiquitiesはDuelist誌に掲載された物語。近代アルガイヴの学者による考察を作者がアルガイヴ語から英訳した、という体裁で語られる掌編である。その歴史考察と学説のため、正史と内容が食い違っていても学者の考察ってそういう性質があるよねで済んでしまう。ここが初出となる近代テリシアの地勢情報は盛り込まれているし、近代の学者の視点が知れるという点でも価値がある作品。
コミックAntiquities WarとUrza-Mishra Warはアンティキティー戦争を描いた2つのコミックシリーズ。発刊予定だった最後の1冊がキャンセルされたため終戦までは描かれていないのが残念である。このシリーズも後の時代から、史料を基にアンティキティー戦争期を考察する体裁で語られている。具体的には、カイラ・ビン=クルーグの著作「アンティキティー戦争」に、ラバイアの学者テイジーア1が注釈を差し入れている形式である。
漫画「ウルザ&ミシュラ」は小説The Brothers’ Warを下敷きに大幅アレンジをした日本のコミック作品である。正史と比べると最も差異が大きいものの1つが、この作品だろう。
「アンティキティー戦争」はカイラの視点で記述されているため、彼女の知りえない情報は書けないし、どうしても記述者のバイアスが掛かってしまう。小説Planeswalkerによると、カイラ作「アンティキティー戦争」は3000年以上経っても出版されている人気作であるが、出版されたバージョンによって脚色や捏造、記述の削除など当たり前となっている。こういうドミナリアの状況を踏まえると、上述のコミックはバージョン違いの「アンティキティー戦争」のコミカライズと考えると都合がよさそうだ。
関連するストーリー
小説The Brothers’ Warの隙間を埋める作品がいくつかある。
Shattered Chains & Final Sacrifice
ラト=ナム島の魔術大学関連のストーリーは小説Shattered Chainsと小説Final Sacrificeで過去の姿として描かれている。小説Shattered Chainsでの記述は少なめで、その続編となる小説Final Sacrificeでラト=ナム大学と兄弟の戦いがより詳しく語られ、さらに主人公一行は近代現在のラト=ナム島に移動して物語は最後のクライマックスを迎える。
ちなみに、ラト=ナムはカード名にも出てくる有名な地名であるが、ラト=ナム島そのものが描写される機会は実はあまりない2。この小説2作ではアンティキティー戦争期と近代のラト=ナム島を知ることができる貴重な機会である。
また、(アンティキティー戦争期から脱線するが)小説Final Sacrificeは時の裂け目の大修復の設定にも関連性が認められるので、ここに注記しておきたい。主人公の1人であるグリーンスリーヴズは物語終盤までに大ドルイドになり、プレインズウォーカーへと覚醒している。そして、最後にはラト=ナム島の土地を、プレインズウォーカーの能力を失う引き換えに回復させている。この一連の描写は、時のらせんブロックで何度も描かれることになる「プレインズウォーカーの灯を消費して土地や時の裂け目を修復する」描写のおそらく最初の先例である(小説Final Sacrificeは時のらせんブロックに11年以上先行している)。3
Song of Time
テリシア南西部アルマーズ地方の細かい事情は小説Song of Timeにある。第一部がまさにミシュラと同盟を組んだアルマーズ王国の物語となっている。小説本編となるのは3000年後の第二部であるが、兄弟戦争から小説現在までの出来事が細切れであるものの描かれている。ウルザとミシュラの戦争をアルマーズでは「工匠戦争(Artifice Wars)」とも呼んでいる。
アルマーズは他の作品でも軽く名前が出る程度には登場するものの、アルマーズの詳細が描かれた作品はこれだけなのでその意味でも読んで損はない。
Expeditions to the End of the World
短編集The Colors of Magic収録のExpeditions to the End of the Worldは、後のボウ・リヴァーがプレインズウォーカーに目覚める前の人生を描いている短編である。普通のヨーティア人として生まれたボウ・リヴァーの視点から兄弟戦争の時代が終結まで描かれており、短編ながらも、この時代を生きた父子の姿が描かれている。戦争前のアルマーズ首都スミファが登場するのはこの作品だけかもしれない。
アンティキティー戦争期のカードセット
カードセット「アンティキティー」がまさにこの時代を扱ったカードセットである。
またカードセット「ウルザズ・サーガ」の緑を中心としたカード群はアンティキティー戦争期の終盤、アルゴスでの出来事を描いている。
アンティキティー戦争期の年表
ここでは概略だけをまとめ。詳細な年表は別記事で(検証過程も含めて)作成する。
AR0年
年の一番最初の日にウルザ誕生。一番最後の日にミシュラ誕生。
AR10年
ウルザとミシュラがトカシアの発掘キャンプに来る。
AR16年
トカシアのキャンプが羽ばたき飛行機械を発見し修復する。
AR19年
ウルザとミシュラがコイロスの洞窟で石を手に入れる。
AR20年
トカシアが死亡し、発掘キャンプは解散する。
AR20年~AR26年
ウルザはヨーティアの姫カイラ・ビン=クルーグと結婚する。タウノスが弟子となる。
ミシュラはファラジの長王の相談役ラキとなる。アシュノッドが弟子となる。ファラジ帝国が成立する。
AR26年
夏、コーリンダの和平会談。ヨーティアによるファラジの虐殺が行われる。
冬、ミシュラとアシュノッドはコイロスからファイレクシアに行き新たなドラゴン・エンジンを獲得する。
AR28年
ファラジ帝国がクルーグを壊滅させる。長王が死亡しミシュラが帝国の工匠長王になる。
ギックスがコイロスに出現する。
AR33年
テリシア市で第三の道が生まれる。
AR36年
アルガイヴ・コーリス連合王国の成立。ウルザが連合王国の大工匠長官・護国卿になる。
フェルドンがゴーゴスの酒杯を入手する。
AR36年~AR43年
アルガイヴ・コーリス連合王国がヨーティアを奪還し連合王国の一部とする。
トマクルの戦い。
アシュノッドがファラジ帝国から追放される。
~AR44年
ファラジ帝国がテリシア市を壊滅させる。
アシュノッドがロランからゴーゴスの酒杯を強奪する。
AR45?~55?年
サルディアのドワーフ王国が滅亡する。
スミファが砂嵐に呑まれて廃墟となる。
兄弟の攻撃によってラト=ナム大学が廃墟となる。
AR57年以降&ミシュラがアルゴスに移動する前
ミシュラがギックス教団の技術で身体を機械化する。
AR57年~AR63年
戦争の主戦場がアルゴスに移る。
アシュノッドがファラジ軍に復帰する。
AR63年
年の一番最後の日、ウルザとミシュラの最終決戦。
ゴーゴスの酒杯がアシュノッドからタウノスへ、そしてウルザの手に渡る。
ゴーゴスの酒杯によってアルゴスと戦場の軍が吹き飛ぶ。時の裂け目が発生し、ドミナリアの寒冷化が始まる。
ウルザとボウ・リヴァーがプレインズウォーカーに覚醒する(詳細)。
アンティキティー戦争期のまとめ
- ドミナリアのアンティキティー戦争期はAR0年~AR63年。
- アンティキティー戦争とは古代遺物の戦争という意味を持ち、ウルザとミシュラの2人の工匠兄弟による別名「兄弟戦争」でもある。
- 戦争を終結させたゴーゴスの酒杯の大破壊によって、ドミナリアは氷河期へと突入する。
- アンティキティー戦争期の大まかな年表を作成した。