兄弟戦争:MTGアリーナの豆知識

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今回MTGアリーナで試合前にランダム表示される豆知識の中から、カードセット「兄弟戦争」に関する内容を取り上げる。

豆知識には兄弟戦争の歴史の流れに関する貴重な情報を見ることができる。

MTGアリーナの豆知識がどんなものかは以前に取り上げた記事(リンク)を参照のこと。

ニューカペナ:MTGアリーナの豆知識
マジック・ザ・ギャザリング(MTG)のカードセット「ニューカペナの街角」のストーリーや設定に関係した『MTGアリーナの豆知識』を収集してまとめた。

※ 進捗状況:記事投稿時点(2022年12月21現在)、英語版の文章が収集し切れていない。

追記(2022年12月21日):英文を1パターン追加。これで全10種類と想定して残り英文1つ(第三の道について)のみ。

追記(2022年12月25日):豆知識その5:ウルザのこだわり豆知識その6:ミシュラのこだわりの文章について、私の個人的な解説や解釈を書き加えた。

追記(2022年12月29日):英語版テキストの最後の1つ、豆知識その8:第三の道を収集完了した。英文を追加し、翻訳に関する指摘も書き足した。

兄弟戦争の豆知識

カードセット「兄弟戦争」の豆知識は、現在確認できた限りでは、ウルザとミシュラの兄弟を中心に据えて兄弟戦争の始まりから終わりまでの歴史の流れを大まかに解説する内容となっている。

ただし、1種類「ファイレクシア語」の豆知識が含まれており解読不能だ。この特殊パターンだけは言語設定が英語でも日本語でも翻訳されることなく、同じファイレクシア語の文章が出てくる。

MTGアリーナに兄弟戦争が実装されてしばらく経ってしまったが、私自身はその少し前からずっとアリーナをプレイできていない。その代わりに、隙間時間にプロプレイヤーの配信するドラフト・プレイ動画をザッピング気味に視聴しており、豆知識を記録してきた。そんな状況なので今まで程には深い調査はできていない。

これまでのカードセットでは豆知識の総数は「10種類」だったことから考えて、恐らく今回も同じだと想定している。現時点で「兄弟戦争」の豆知識は10種類のパターンを収集できており、きっとこれで全種類だと思われる。

※ 2022年12月29日時点で10種類の英語・日本語の両パターンを収集完了した。



豆知識その1:兄弟戦争

兄弟戦争(The Brothers' War)

兄弟戦争(The Brothers’ War)
データベースGathererより引用

The Brothers’ War is a 40 year conflict set on the continent of Terisiare, on the world of Dominaria, roughly 4,500 years prior to present day. The birth of Urza marks 0 “AR,” or “Argivian Reckoning” time.
「兄弟戦争」は、現在からおよそ4,500年前に、ドミナリアのテリシア大陸を舞台に40年にわたって続いた対立です。ウルザが誕生した年は、「AR(アルガイヴ暦)」紀元に制定されています。
引用:上が英語原文、下が公式和訳版

兄弟戦争がいつの出来事かをまず語っている。

カードセット「兄弟戦争」の現在時間軸はAR4562年で、兄弟戦争はおよそ4500年も昔に40年続いた古代の戦いだ。

アルガイヴ暦(AR)に関しては別記事の解説を参照のこと(リンク)。

MTGの暦:基準を決める(アルガイヴ暦)
マジック・ザ・ギャザリング(MTG)のストーリーの時系列を語るための基準は「ドミナリア次元のアルガイヴ暦」が都合がいい。ドミナリアは最も詳しく時系列が設定されており、かつては多元宇宙の中心であったため、基準とするには適している。

豆知識その2:スラン帝国

スランの崩落(Fall of the Thran)

スランの崩落(Fall of the Thran)
データベースGathererより引用

The Thran Empire fell to Phyrexia 5,000 years before Urza, but was known for their highly advanced artifacts. Powerstones have nearly inexhaustible sources of power, and Urza reverse engineers the mighty ornitopter.
スラン帝国はウルザの時代からさらに5,000年前にファイレクシアに滅ぼされましたが、高度なアーティファクト文明で知られています。パワーストーンはほぼ無尽蔵のエネルギーを持ち、ウルザも当時の強力な飛行機械を解析して利用しました。
引用:上が英語原文、下が公式和訳版

豆知識その3:マイトストーンとウィークストーン

マイトストーンとウィークストーン(The Mightstone and Weakstone)

マイトストーンとウィークストーン(The Mightstone and Weakstone)
データベースGathererより引用

The beginning of the War is marked by Urza and Mishra discovering the Caves of Koilos, which hold the Mightstone and the Weakstone. The former empowers machines, while the latter does the oppsite.
戦争の始まりは、マイトストーンとウィークストーンが収められたコイロスの洞窟をウルザとミシュラが発見したことでした。マイトストーンは機械に力を与え、ウィークストーンは逆に力を奪います。
引用:上が英語原文、下が公式和訳版

豆知識その4:ウルザとミシュラのはじまり

トカシアの歓待(Tocasia's Welcome)

トカシアの歓待(Tocasia’s Welcome)
データベースGathererより引用

In the beginning, Urza was interested primarily in machines, and Mishra was more interested in people. But Urza eventually marries the princess of Kroog: Kayla bin-Kroog, while Mishra discovers an ancient Phyrexian artifact: a dragon engine.
はじめはウルザが機械に興味を持ち、ミシュラは人々に興味を持っていました。しかし、その後ウルザはクルーグの王女カイラ・ビン・クルーグと結婚し、一方ミシュラは古代ファイレクシアのアーティファクト「ドラゴン・エンジン」を発見することになります。
引用:上が英語原文、下が公式和訳版

和訳の表現が原文より曖昧になっている。

「はじめはウルザが機械に興味を持ち、ミシュラは人々に興味を持っていました。」という部分は、原文では「In the beginning, Urza was interested primarily in machines, and Mishra was more interested in people.」となっており、「はじめはウルザは『主に』機械に興味を持ち、ミシュラは人に『(機械よりも)もっと』興味を持ちました。」くらいになるだろう。

ウルザは書物や発掘物の調査研究に没頭し部屋に籠るタイプであった。それに対し、ミシュラはフィールドワークを主体とした研究者であり機械に興味がないわけではない。だがそれ以上に人との関わり合いに惹かれていたのだ。

そして、豆知識は成長した兄弟のその後について語る。内向的なウルザの方が結婚をし、外交的なミシュラは機械のドラゴン・エンジンを発見する。

この対比した文章から、大人になった兄弟は性格が変化したように早合点してしまいそうだ。実際のところ、2人は基本的に少年期と変わっておらず、単に運命の巡り合わせでこうなっただけなのだ。

ウルザはそもそもカイラと結婚することで手に入る「スラン時代の機械技術に関する書物」が目当てだった。

ミシュラの方はファラジ社会の頂点へと昇り詰めていくが、ドラゴン・エンジンを手懐けているからだけでなく、ファラジの人々との交流を深め、駆け引きを巧みにこなし、信望を集めた結果でもあるのだ。

豆知識その5:ウルザのこだわり

クルーグ公、ウルザ(Urza, Prince of Kroog)

クルーグ公、ウルザ(Urza, Prince of Kroog)
データベースGathererより引用

Urza was obsessed with perfection, emphasizing efficiency, elegance, and power. In his machines, he finds the perfection he cannot see in peaple – or himself.
ウルザは完璧さにこだわり、効率や正確さ、そして力強さを重視しました。ウルザは自分自身を含め人々には見受けられない完璧さを、彼の作る機械の中に見出しているのです。
引用:上が英語原文、下が公式和訳版

公式和訳で「こだわり」と訳された「be obsessed with …」は、「…に執着する、取り憑かれる」と言った意味合いがある。「ウルザは『完璧さ』に取り憑かれていた」と言い換えた方が彼の性格を形容するのに相応しいかも知れない。

ちなみに兄弟戦争終結後、プレインズウォーカーとなっても「完璧さ」に対するウルザの性質は基本的に同じであった。例えば、小説Planeswalkerによると、兄弟戦争から1500年以上も経過した頃にウルザは単身でファイレクシア次元に直接攻撃を仕掛けて大打撃を与えるものの、次元の完全破壊に及ばなかった。ウルザはこの「失敗」以来、更に用心深く慎重になったとザンチャは述懐していた。単身かつ初回攻撃であれほどの損害を与えられたのに、「完璧さ」を求めるウルザには不十分だったのだ。

豆知識その6:ミシュラのこだわり

マク・ファワを手懐ける者、ミシュラ(Mishra, Tamer of Mak Fawa)

マク・ファワを手懐ける者、ミシュラ(Mishra, Tamer of Mak Fawa)
データベースGathererより引用

Mishra was obsessed with ancient Thran artifacts, which made him an easy target for Phyrexia’s influence following his fall into hardship after parting ways with his brother.
ミシュラは古代スラン文明のアーティファクトにこだわりました。それゆえに彼は兄と決別し苦難の道を歩み続け、ファイレクシアの勢力に狙われやすくなったのです。
引用:上が英語原文、下が公式和訳版

まず初めに、公式和訳の文章に違和感を感じる。

ミシュラは「古代スラン文明のアーティファクトにこだわり」、それが原因で「兄と決別し苦難の道を歩み続け、ファイレクシアの勢力に狙われやすくなった」とある。執着したからウルザと決別して苦難の道を歩んだ、と読めてしまう繋ぎ方だ。

私が思うに、原文の骨子部分は「Mishra was obsessed with ancient Thran artifacts, which made him an easy target for Phyrexia’s influence」とここまでで、「following」以下はそれがいつからのことかを示しているだけであろう。

それに豆知識その5:ウルザのこだわりで先述したように、ミシュラの場合も「こだわり」よりも「取り憑かれている」の方が相応しいと感じる。

ミシュラは古代スランのアーティファクトに取り憑かれていました。それゆえに、兄との決別後に苦境に立たされた彼はファイレクシアにとって格好の餌食となってしまいました。

個人的に訳し直した文章はこんな感じになる。簡単に言うと、ミシュラは執着が原因で(兄との決別後に)ファイレクシアの餌食になった、という形の文だ。

さてこの文章だが、私は解釈に非常に悩んでしまった。小説The Brothers’ Warの原点に立ち返って何度も考え直してみたが、おそらく次のような意味合いだ。

まず、ミシュラが取り憑かれた「古代スランのアーティファクト(ancient Thran artifacts)」とは、おそらくマイトストーンウィークストーンのことだ。作中では、ミシュラはその他の一般的なスランのアーティファクトに対しては「取り憑かれる」程の態度は見せていなかった。だからこれら2つ石を指していると考えられる。

ミシュラはウィークストーンを所有してからというもの、ファイレクシアの幻視や悪夢を何度も繰り返し見せられており、ウルザのマイトストーンを奪おうと暴力的な行動を起こすこともあった。

ファイレクシアの悪夢の影響であろう、ミシュラはコイロスの洞窟に引き寄せられるような行動を2度見せていた。AR20年の最初の試みはファラジに捕縛されて失敗したが、2度目に当たるAR26年では、ファラジ帝国の長王側近として堂々と再訪していた。ミシュラはコイロスの奥の次元門からファイレクシア次元にまで赴き、新たなドラゴン・エンジン3体を奪って帰還した。(作中ではこれ以降、ミシュラはコイロスにもファイレクシアにも再訪していない。)

ミシュラがファイレクシア次元に来訪した際、ギックスに目撃されており、それが契機となってギックス本人がドミナリアに現れることになった。そして、ギックスの信奉者はミシュラの陣営にじわりじわりと食い込み、遂にはミシュラをファイレクシアンに堕とすことに成功したのである。

かなり大雑把に言うと以上のような流れがあった。この豆知識の文章はそういうことを表現しているのであろう。

豆知識その7:タウノスとアシュノッド

アシュノッドの介入(Ashnod's Intervention)

アシュノッドの介入(Ashnod’s Intervention)
データベースGathererより引用

Each brother has an assistant. Urza has Tawnos, who works on automatons, while Mishra has Ashnod, who develops machine-human zombies called “Transmogrants.” They share in their mutual difficulties with their employers.
兄弟にはそれぞれ、助手がいました。ウルザの助手は自動機械に取り組むタウノス、ミシュラの助手は「人体改造機」と呼ばれる機械人間のゾンビを開発するアシュノッドです。2人の助手は、お互いの雇い主についての苦労を分かち合う仲でした。
引用:上が英語原文、下が公式和訳版

豆知識その8:第三の道

第三の道の機構(Union of the Third Path)

第三の道の機構(Union of the Third Path)
データベースGathererより引用

The Union of scholars in Terisia City comprise of the archimandrite, Feldon, Loran, Drafna, and Hurkyl. They agree to form a coalition to protect and foster knowledge, in an attempt to find a path to a future that doesn’t involve Mishra or Urza.
テリシア市の学者連合は、最高機構長とフェルドン、ロラン、ドラフナ、ハーキルによって結成されました。彼らは知識の保護と蓄積を目的とした連合を作り、ミシュラにもウルザにも関与しない未来の道を探ることに同意したのです。
引用:上が英語原文、下が公式和訳版

第三の道(The Third Path)創設と目的を語っている。

テリシア市の学者連合(The Union of scholars in Terisia City)」は第三の道の別名でもあり、小説The Brothers’ Warではたびたび略して「the Union」と記されていた。

この豆知識の和訳版では、略称「The Union」をきちんと「連合」と訳せている。これは快挙だ。実はカードセット「兄弟戦争」に関する公式和訳では、これ以外では正しく訳せていないのだ(もしかすると間違っていないのは、この豆知識だけかも知れない)。

上に挙げた第三の道の機構(Union of the Third Path)というカードでは、「Union」が何故か「機構」と訳されている。「機構」に関する指摘は別記事(リンク)を参照のこと。

その他に、連載ストーリー過去時間軸最終回(リンク)では、「the Union」を「連合王国」と誤訳している。文章全体を抜きだすと「連合王国の名残や象牙の塔の学者たちを見つけるのだ。」で、原文の方は「Find the remains of the Union, the scholars of the ivory towers.」となっている。正しくは「連合の残党、象牙の塔の学者たちを見つけるのだ。」という意味合いだ。もちろん「第三の道」も、その本拠地であった「テリシア市」も、「連合王国」の形態ではなかった。公式和訳はアルガイヴを中心とした、コーリスやヨーティアとの東岸の連合王国と混同しているのだろうか?

豆知識その9:兄弟戦争の終戦

ウルザの殲滅破(Urza's Ruinous Blast)

ウルザの殲滅破(Urza’s Ruinous Blast)
データベースGathererより引用

The end of the War is marked by Urza using his latent magical abilities to activate The Golgothian Sylex, which shatters the world, causes cracks in the Multiverse, and ignites Urza’s planeswalker spark.
戦争の終わりは、ウルザが秘めた魔力使って「ゴーゴスの酒杯」を起動したことでもたらされました。酒杯は世界を砕き、多元宇宙に亀裂を入れ、そしてウルザのプレインズウォーカーの灯を点火させました。
引用:上が英語原文、下が公式和訳版

公式和訳には脱字がある。「ウルザが秘めた魔力使って」の部分は本当は「ウルザが秘めた魔力使って」だろう。

豆知識その10:ファイレクシア語

ファイレクシア語の翻訳を試みている英語圏のファンによれば、「Veornaishが不完成の者を見つけ出したなら、ヨーグモスがその者たちから肉を除去するであろう。」との意味に読めるようだ。ちなみに「Veornaish」と訳せた箇所は、現時点では意味不明な謎の単語だという。

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