イニストラード:威圧する吸血鬼

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威圧する吸血鬼(Dominating Vampire)はカードセット「イニストラード:真紅の契り」収録のカードである。

間も無く発売される「イニストラード:真紅の契り」のカードについて、小ネタを拾って解説する。今回はこのカードだ。

威圧する吸血鬼の解説

“You can join me or feed me. Choose fast.”
「私と組むのか、私の餌となるのか。早く選びなさい。」
引用:威圧する吸血鬼(Dominating Vampire)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

威圧する吸血鬼(Dominating Vampire)

威圧する吸血鬼(Dominating Vampire)
公式カードギャラリーより引用

威圧する吸血鬼(Dominating Vampire)はイニストラード次元の吸血鬼だ。

カード名で「威圧する」と訳されている原文は「Dominating」だ。この言葉には「支配する」「威圧する」「優位を占める」といった意味がある。カードのメカニズムは赤の定番であるクリーチャーの一時的なコントロール奪取であるから、相手を「支配する」の含みが強いと言えるだろう。1



威圧する吸血鬼のイラスト

矢印を書き入れた威圧する吸血鬼の一部拡大図

イラストには4人の吸血鬼女性の姿と、シガルダ教の聖戦士の男性が描かれている。女性の方は一番手前と一番奥は実体があるが、その間にいる2人は煙のような半実体である。男性は一番奥で捕まって餌食にされている。

このイラストを良く観察すると、4人に見える女性は実は全部同じ姿をしていることが確認でき、さらに4人の姿は黒い煙の筋で結ばれている。どうやら、4人は同一人物であり、時間経過で移動する姿を1枚のイラストに描き入れたようである。

そう見ると、一番奥で聖戦士を捕食した後、非実体の幽体状態となりジグザグに画面手前に迫ってきて、再び実体化した。この超常的な素早い一連の動きが読み取れる。黒い煙の筋は移動した軌跡なのだ。

威圧する吸血鬼のフレイバー・テキスト

“You can join me or feed me. Choose fast.”
「私と組むのか、私の餌となるのか。早く選びなさい。」

このフレイバー・テキストは面白い文章だ。二重の意味で受け取れるようになっていてなかなか味わい深い。しかし、公式和訳版は平板な直訳調なので、二重の含みが抜け落ちた薄味なのが物足りない。

この文章の肝は「join」と「feed」の意味だ。2つのケースに分けて説明しよう。

ケースその1

「join」と「feed」の意味を、「…の仲間になる」と「…の餌になる」と読解した場合だ。つまり、和訳製品版の文章と同じ解釈だ。

私の仲間になるか、私の餌となるか、そのどちらかを選択するように命じた文章となる。

イニストラードの吸血鬼はグラマーという魅惑魔法が使える。相手の認識を撹乱して吸血鬼である正体を偽装できる他、時には犠牲者の心を操ることもできる。仲間になれと勧誘する甘い言葉にはグラマーの魅惑が込められているのやもしれない。

たとえその魅惑に抵抗できたとしても、並の人間では吸血の餌食となってしまうほかないのだ。

仲間になるか、餌になるか、どちらにしろ「詰み」である。

ケースその2

威圧する吸血鬼の一部拡大図

ではケース1とは別の読み方をしてみよう。

まず前提として、このカードが収録されたカードセット「真紅の契り」が「結婚式」をテーマの1つに据えていることを念頭に置いてみる。すると、違った文脈が見えてくる。

辞書には「join」と「feed」の色々な意味合いが載っているが、その中でも「join」は「(人と結婚で)結ばれる」、「feed」は「(人を)養う」がうまい具合に当てはまるのだ。

この線で文章を訳すとこんな感じになる。

「あなた、私と結ばれるか、私を養うか。早く選びなさいよ。」

途端に、相手に結婚をぐいぐい迫る姿が浮かび上がってきた。ここまで言われるのなら、結婚を避けてきた何か入り組んだ事情がありそうだ。あるいは結婚を口約束して相手の人生を弄んできた軽薄さが裏にあるのやもしれない。

さて、結婚するか、それとも結婚せずに養うか(慰謝料か?)、どちらにしろ「詰み」である。



特別版イラストの威圧する吸血鬼

威圧する吸血鬼(Dominating Vampire)

威圧する吸血鬼(Dominating Vampire)
特別版カードギャラリーより引用

威圧する吸血鬼(Dominating Vampire)の特別版イラストのバージョンがこれだ。

こちらのイラストは状況がスッキリしていて分かりやすい。奥でぐったりと座り込んでいる鎧の姿が吸血の犠牲者で、吸血鬼は啜った血を手首で拭っているところだ。しかしフレイバー・テキストが無いのが少し寂しい…。





今回の小ネタはこれでおしまいだ。ではまた。

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  1. ただし、MTG和訳ではコントロール奪取系カード名の「dominat(-e,-ing,-ion)」は伝統的に「威圧」が定訳化しているので、そういうものと思って受け入れるしかない面がある。