イニストラード:中略

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中略(Syncopate)はカードセット「イニストラード:真紅の契り」に再録されるインスタント・カードである。中略の初登場は20年前のカードセット「オデッセイ」で、その後も時折再録されており、今回で4度目の登場となった。

間も無く発売される「イニストラード:真紅の契り」のカードについて、小ネタを拾って解説する。今回はこの「中略」を取り上げる。

追記(2021年11月10日):イラストのワルの老婦人について追記した。

中略の解説

“Fool! Can’t you see the tide has turned against you?”
「愚か者め!形勢が逆転したことに気づかないのか?」
引用:中略(Syncopate)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

中略(Syncopate)

データベースGathererより引用

中略(Syncopate)とは、言葉に含まれる途中の音や文字を抜かすこと、を意味する(音楽では「シンコペーション」「切分」と呼ばれるようだ)。

MTGでは相手の魔法を打ち消す青の呪文となっており、おそらく相手の唱える呪文の音や文字を抜かすことで、魔法の成立を妨害するのだろう。

このカードは初出は20年前(2001年)のカードセット「オデッセイ」だ。その後は2012年のカードセット「ラヴニカへの回帰」、2018年のカードセット「ドミナリア」で再録されており、今回のカードセット「イニストラード:真紅の契り」で4回目の収録となる。イラストもフレイバー・テキストも新規のものに差し代わっている。



中略のイラストとフレイバー・テキスト

“Fool! Can’t you see the tide has turned against you?”
「愚か者め!形勢が逆転したことに気づかないのか?」

イラストでは波立つ水面の船上で、青の魔術師が赤い稲妻を球形の力場で防御している。フレイバー・テキストによると、青の魔術師が敵に対して巻き返した場面のようだ。

このフレイバー・テキストの和訳だが、間違ってはいないが面白味が欠ける文章だと感じた。というのは、原文の方のある要素が汲み取られていないと感じられたからだ。

原文では「the tide has turned against you」とあり、つまり「波がお前の敵に回った」とか「戦いの流れや潮目が変わった」といった含みがあるのだ。

「愚か者め!潮目の変化に気づかなかったのかい?」

普通なら「形勢逆転」に言い換えて何ら問題ないとはいえ、イラストの状況と合わせて見れば、「波」の要素を文章から消してしまうのはちょっと違う…もったいないなぁと感じるのだ。

ワルの老婦人

イラストを担当したMarta Naelはこのイラストについて、波を操るワルの老婦人(badass old lady)を描くのは楽しかった、と語っている(出典)。

ワルの老婦人(中略)

ワルの老婦人!?

カードでは気付けなかったが、大きなイラストでまじまじと見てみると、この魔術師は確かに「ワルの老婦人」だ。これには驚いた。

それに、これも大きなイラストで初めて確認できた部分だが、彼女が身体に何重にも巻きつけてあるのはロープである。海の魔術師だから船舶用ロープを持っているのは変なことではないのだろうけれど……てっきり服の模様と思っていた。

中略の過去バージョン

初出のオデッセイ

“Memories can’t simply be washed away. The mind must be scrubbed clean.”
–Ambassador Laquatus
記憶はさっと洗い流すなんてできないんだ。入念にこすり洗いして洗い落とさなければならない。
–ラクァタス大使
引用:中略(Syncopate)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

中略(Syncopate)

中略(Syncopate)
データベースGathererより引用

中略(Syncopate)の最初のバージョンは、ドミナリア次元のオタリア大陸が舞台の「オデッセイ」に収録された。イラストでは人間の魔術師女性が火の玉を掻き消している。一方、フレイバー・テキストは海の帝国に所属するマーフォークのラクァタス大使(Ambassador Laquatus)だ。イラストとは一致しないが、ラクァタスも青の魔法の使い手である。

ラヴニカへの回帰

“Patience, mage. Killing you now would be too easy.”
「落ち着きなさい、魔道士さん。今あなたを殺すのは簡単すぎるの。」
引用:中略(Syncopate)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

中略(Syncopate)

中略(Syncopate)
データベースGathererより引用

カードセット「ラヴニカへの回帰」バージョンの中略(Syncopate)では、人差し指を立てた女性が余裕綽々で魔法を捌いている。「ラヴニカへの回帰」では青に属するギルドとして、アゾリウス評議会(白青)とイゼット団(青赤)が割り振られているのだが、どうにもこの女性は両ギルドには見えず、青黒のギルドであるディミーアの雰囲気がある。

ドミナリア

The fire spell stuttered and broke. Its pieces reached Teferi out of rhythm, meaningless.
火の呪文は口ごもるように砕けた。その破片はテフェリーに達したが、韻律が失われて何の意味も残っていなかった。
引用:中略(Syncopate)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

中略(Syncopate)

中略(Syncopate)
データベースGathererより引用

カードセット「ドミナリア」バージョンの中略(Syncopate)テフェリー(Teferi)が打ち消した場面を描いている。この時期のテフェリーは一時的にプレインズウォーカーの力を失って弱体化していたはずなのだが、イラストを見るとそっぽを向いたまま片手で魔法攻撃を潰してのけている。1200歳以上のベテラン時間魔導士は違うな、さすがの風格だ。





以上で中略の解説はおしまいだ。では今回はここまで

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