イニストラード:契約縛りの召使い、ガットモーン

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契約縛りの召使い、ガットモーン(Gutmorn, Pactbound Servant)はMTGアリーナ限定カードセット「アルケミー:イニストラード」収録の伝説のクリーチャー・カードである。

追記(2022年1月23日):フレイバー・テキストに関して解釈を思いついたので節を新設した。

契約縛りの召使い、ガットモーンの解説

For the right price, he’s willing to serve. Just don’t talk to him about tea.
適正な代償があれば、彼は喜んで奉仕する。お茶については話さない方が良い。
引用:契約縛りの召使い、ガットモーン(Gutmorn, Pactbound Servant)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下がMTGアリーナ和訳版

契約縛りの召使い、ガットモーン(Gutmorn, Pactbound Servant)

データベースGathererより引用

契約縛りの召使い、ガットモーン(Gutmorn, Pactbound Servant)はイニストラード次元の男性デーモンだ。別名、魂の饗宴者1、七大公の拷問人2

姉妹にはイレドリス(Yledris)がいる。別名:イレドリス・ブラッドスレイヴ(Yledris Bloodslave)

ガットモーンとイレドリスは小説「Children of the Nameless」に登場したキャラクターで、主人公のダブリエル・ケイン(Davriel Cane)に従うデーモンである。

作中ではダブリエルに従う名前付きのデーモンが全部で5人登場しており、全員がそれぞれダブリエルの魂を報酬とする契約を結んでいる。カード名では「契約縛りの召使い(Pactbound Servant)」との二つ名を冠しているのは、ガットモーンとダブリエルとの契約関係を反映した命名に違いない。



ガットモーンとイレドリスの種族・外見・能力

契約縛りの召使い、ガットモーン(一部拡大図)

ガットモーンとイレドリスはナイトリーチ・デーモン(Nightreach demon)と呼ばれる種族であり、デヴリクの深部(the Devrik Depths)出身である。デーモンは普通の生物のように生まれる存在ではなく単にそういうものとして現れるのだが、ガットモーンとイレドリスの2人は同じ日に創り出されたことから、きょうだい3と名乗っている。

ガットモーンとイレドリスの外見は、同僚のデーモンであるミス・ハイウォーター(Miss Highwater)クランチナー(Crunchgnar)に比べて遥かに人間離れしている。両者の外見は骸骨じみていて、何本もの角で顔は歪んでおり、山羊に似た長い脚を持ち、軽い鎧を身につけ、空を飛べる巨大な翼がある。ダブリエルのデーモンの中で飛行可能のはガットモーンとイレドリスの2人だけ4なので、作中では空からの探索や警戒を行っていた。

ガットモーンとイレドリスの外見に関して、小説「Children of the Nameless」ではもう1人の主人公であるタシェンダ(Tacenda)が性別の違う2人の区別をつけられない5場面が出てくる。また、作中ではイレドリスは人間よりも大型6であり、槍を携えているとある。したがって、このデーモンきょうだいの外見はよく似ており、ガットモーンもイレドリスと同様に人間より大きく、槍を持っていると考えられる(カードのイラストの武器がそれであろう)。

ガットモーンとイレドリスは火炎に耐性はなく、そこを弱点として攻められてイレドリスは悪魔狩りの紅蓮術師によって焼き殺された。

契約縛りの召使い、ガットモーンの作中での扱い

魂の仲介人、ダブリエル(Davriel, Soul Broker)

魂の仲介人、ダブリエル(Davriel, Soul Broker)
データベースGathererより引用

ガットモーンはこのようにカードセット「アルケミー:イニストラード」で伝説のクリーチャー・カードとなったわけだが、小説「Children of the Nameless」の描写を考えると、他のデーモンを差し置いてのカード化はかなり驚きだった。なぜなら、ガットモーンはダブリエルのデーモン5人のうちで、最も目立たないキャラクターだったからだ。

デーモン5人で最も人気が高いのはミス・ハイウォーター(Miss Highwater)であろう。ダブリエルの秘書のような仕事に従事する女性デーモンだ。カード化候補には真っ先に彼女が上るに違いない。さらに残りの2人、クランチナー(Crunchgnar)ブレリグ(Brerig)の方も出番があって十分にキャラクターを立たせたデーモンであった。

ミス・ハイウォーター、クランチナー、ブレリグら3人に比べると、ガットモーンとイレドリスの出番は極端に少ないし、内面も描かれていないため、空を飛べることときょうだいであることの2点しか特徴と言える特徴は持たされていない脇役に過ぎなかった。

しかし、イレドリスは戦って死ぬ場面があるためにガットモーンよりも印象には残る。ガットモーンは少々負傷した描写と、イレドリスの死に叫んだくらいだ。

脇役のガットモーンがなぜカードになったのか?

では、なぜガットモーンがカードに選ばれたのだろうか?

個人的な推測を語る。実は小説「Children of the Nameless」の最後まで生き残ったのは全5人のうちガットモーンとミス・ハイウォーターの2人だけである。今回の「アルケミー:イニストラード」では、カード化候補として生き残り組の中から使う方針だったのではないか?

ニューカペナの街角のイメージイラスト

ニューカペナの街角のイメージイラスト
ウィザーズ社公式サイトより引用

そして、翌年2022年発売予定のカードセット「ニューカペナの街角」は、デーモンの犯罪組織の世界が舞台だとされている。もしやダブリエルとハイウォーターはそちらですでにカード化が決定しており、なおかつ、目立たないガットモーンはカード化枠から外されている。そういう事情が背景にあったのではないか?

もしそうなら、「アルケミー:イニストラード」では生き残り組から、いかにも悪魔らしくて分かりやすく、そしてこの機会を逃したらカード化の目がなさそうなガットモーンが選ばれたのかもしれない。

見方を変えて原作とカードのガットモーンを比べてみよう。カードのガットモーンが小説を意識しているのはカード名、イラスト、そして飛行を持つデーモンであることだけだ。それ以外の残りの接死能力やカードを捨てることに関する能力、さらにフレイバー・テキストは小説には全く該当する描写はないものだ。

カード化されたガットモーンは小説にはない新規の個性を持たされた、事実上の新キャラクターに思える。出番のないキャラにカード化に際して肉付けしたら、新キャラ同然になった。そうかもしれないし、黒の飛行クリーチャーとしてカード開発が終わってから、後付けでガットモーンの名前を被せたようにも思える。

いずれにしろダブリエル・ケインのデーモンをカード化するとなったときに、じゃあガットモーンを一番手にしよう、となるのはすごく不自然だ。上に挙げた可能性のどちらかかあるいは両方が当てはまってるじゃなかろうか。



追記:契約縛りの召使い、ガットモーンのフレイバー・テキスト

契約縛りの召使い、ガットモーン(Gutmorn, Pactbound Servant)

データベースGathererより引用

For the right price, he’s willing to serve. Just don’t talk to him about tea.
適正な代償があれば、彼は喜んで奉仕する。お茶については話さない方が良い。

ガットモーンのフレイバー・テキストについて解釈を思いついたのでこの節を新たに設けて追記する。

あらかじめ断っておくと、小説「Children of the Nameless」にはこのフレイバー・テキストにそのまま該当する記述は無い。上述したようにガットモーンへの言及は少なく、奉仕への代償についてもお茶との関りについても何も書かれてはいないのだ。

とはいえ、この小説「Children of the Nameless」にはフレイバー・テキストを読み解く手掛かりは散りばめられていた。

まず「適正な代償があれば、彼は喜んで奉仕する。」の部分は、明らかにデーモンの契約である。契約者のために力をデーモンは力を貸すことになるが、契約が果たされたときにはその代償に魂を頂くことになる。小説作中ではダブリエル・ケインの契約は、決して完了することのない内容で、デーモンをペテンにかけるものとして描写されていた。ガットモーンとの契約も当然そういった類だったはずだ。

魂の仲介人、ダブリエル(Davriel, Soul Broker)

魂の仲介人、ダブリエル(Davriel, Soul Broker)
データベースGathererより引用

次に「お茶については話さない方が良い。」の方だが、小説作中ではダブリエル・ケインはダストウィロウ・ティー(Dustwillow Tea)を愛飲していた。ダストウィロウはイニストラード次元のヴェルラッセンで生産されている茶葉で、鎮静作用があり、よく眠れるようになる。ただし、葉をそのまま食べるなどして過剰摂取するのは身体に毒であり、全身が硬直状態となってしまう。ガットモーンにとってのお茶の話題は、ダストウィロウ・ティーを、そしてダブリエル・ケインを想起させるものなのだろうと想像がつく。

ではそうすると、フレイバー・テキストはどういった含みがあるのだろうか?

ガットモーンは適切な代償があれば、喜んで奉仕を行う。これは契約を絶対とするデーモンの性だ。しかし、悪魔学者ダブリエル・ケインは悪魔を欺くペテン師であり、奉仕をしたところで魂は決して手に入らない。ガットモーンにとってお茶の話題は、ダブリエルの愛飲するダストウィロウ・ティーを連想させ、同時に詐欺のような契約の忌々しい記憶を呼び覚ますものだ。だから、ガットモーンの機嫌を損ねたくなければ、お茶の話題は禁物なのである。

さいごに

これが2022年になって書いて投稿する最初の記事になるが、このテキストはもともとは2021年の内に書きかけで放置していたものだった。

当初はガットモーンを解説するこの機会に、小説「Children of the Nameless」の簡単な解説し、タブリエル関連の時系列を考察し、ダブリエル・ケインとデーモン5人全員のデータをまとめる総括的な内容にしようとしていた。そのせいで、内容てんこ盛りになって文章が嵩んできてうまくまとまらんなぁ…と放っておいたのだ。

そして、年が明けて元日夜から急に体調を崩して予定が大幅に狂ってしまったので、書きかけのこれを引っ張り出してきたというわけだ。改めて見直してたら、ガットモーンの記事としてはテキストの大半は無くて構わない内容だったよな、と冷静に判断できた。捨てたテキストの内容……例えば、ミス・ハイウォーターの過去の名前一覧とその意味とか何とか……そういうのはまた別の時にでも触れることにしよう。

では今回はここまで。

契約縛りの召使い、ガットモーンの解説

MTGアリーナ限定カードセット「アルケミー:イニストラード」関連のリスト

アルケミー:イニストラード
MTGアリーナ限定のカードセット「アルケミー:イニストラード」収録のカードの中からピックアップしてストーリーや設定を解説。
  1. 原文「Feaster upon souls」つまり、魂を御馳走として食べる者
  2. 原文「tormentor of the seven princes」
  3. 原文が英語なので、どちらが年上か、兄妹か姉弟かの区別はできない。
  4. 小説に登場した限りでは
  5. ガットモーンとイレドリスとほぼ初対面ではあるので仕方ない面はあるのだが
  6. 作中「the demons loomed over the smaller humans」