ドミナリア:カラカスとアンガス・マッケンジー

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今回はカードセット「レジェンド」収録の伝説のカード2種類を解説する。カラカス(Karakas)アンガス・マッケンジー(Angus Mackenzie)である。

カラカスの解説

Travelers stopping over in the legendary city of Karakas are often so captivated by its rich possibilities for adventure and treasure that they forgot where they came from or where they were going.
伝説の都市カラカスに滞在している旅人は、溢れる冒険と宝物の期待に我を忘れ、自分の故郷や旅の目的地を忘れてしまうことがたびたびある。
引用:1997年日めくりカレンダー
上が英語原文。下が私家訳版1

カラカス(Karakas)

エターナル・マスターズ版の
データベースGathererより引用

カラカス(Karakas)カードセット「レジェンド」初出の伝説の土地カードである。エターナル・マスターズ再録時に和名が与えられた。

この土地の設定は、1997年の日めくりカレンダーのテキスト(上記参照)しかおそらく存在しなかった。それから20余年も経ち、2018年発売のカードセット「ドミナリア」のポッドキャストで初めてドミナリア次元のジャムーラ大陸の地名であると公表された。

AR4560年現在のイシャン湾以東
中央左よりの黄緑色の半島がカラカスである
現在ドミナリア地図より抜粋引用

カラカスはドミナリア次元ジャムーラ大陸の半島である。ジャムーラの東西亜大陸を繋ぐ地峡の瑪瑙橋(Onyx Bridge)の南側イシャン湾(Bight of Ishan)にある。イシャン湾の東海岸に突き出た半島がカラカスである。半島の付け根から東南へ連なるのがマイアー山脈(Myar Mountains)で、その南の海岸線に沿う細長い密林には昆虫人ユーミディアン(Eumidian)が生息している。

カラカスに滞在している旅人は、溢れる冒険と宝物の期待に我を忘れ、自分の故郷や旅の目的地を忘れてしまうことがたびたびある。この設定は、伝説のクリーチャーを手札に戻すメカニズムに呼応させたものだろう。



アンガス・マッケンジーの解説

“Battles no longer served a purpose in Karakas.”
–Angus Mackenzie, Diary
「戦いはもはやカラカスでは無用だった。」
–アンガス・マッケンジー、日誌
引用:Angus Mackenzieのフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳版

Angus MacKenzie was Karakas’s greatest defender. His policy of “peace through perseverance” inspired the people of this realm to unite and drive out the malign elements that were tearing them apart from within.
アンガス・マッケンジーはカラカスの最も偉大なる守護者である。「忍耐から生まれる平和」という彼のやり方に奮起したこの国の民は団結し、国内を分断する内憂を駆逐したのだ。
引用:1997年日めくりカレンダー
上が英語原文。下が私家訳版

Angus Mackenzie

データベースGathererより引用

アンガス・マッケンジー(Angus Mackenzie)カードセット「レジェンド」収録の伝説のクリーチャー・カードである。公式に和訳されたことがないため「アンガス・マッケンジー」は本サイトでつけた暫定訳である。

フレイバー・テキストも日めくりカレンダーの解説も、戦いなき平和を語っている。これはこのカードのメカニズムが戦闘ダメージを軽減するものだからだろう。

アンガス・マッケンジーの設定はドミナリア次元のカラカスにおける最も偉大な守護者である。「忍耐から生まれる平和」がアンガスのポリシーなのだ。

アンガスは小説やコミックなどで特有のストーリーを語られたことがない。カードのフレイバー・テキストや日めくりカレンダーにおいて、カラカスとの関係性と平和を重んじる人物像が短く触れられたのみである。そしてもう1つ、レジェンド収録の別のカードではアンガスの最期が語られている。

アンガスの最期

“I do not remember what he said to her. I remember her fiery eyes, fixed upon him for an instant. I remember a flash, and the hot breath of sudden flames made me turn away. When I looked again, Angus was gone.”
–A Wayfarer, on meeting Lady Orca
「彼が彼女に言った言葉は覚えていない。覚えているのは、彼女の燃える眼差しがさっと彼に向けられたことだ。閃光一閃、熱い炎の突風が吹いたので、私は顔をそむけた。視線を戻したときには、アンガスは消えていたんだ。」
–レディ・オルカに遭遇した旅行者
引用:レディ・オルカ(Lady Orca)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳版

Lady Orca

レディ・オルカ(Lady Orca)
データベースGathererより引用

カードセット「レジェンド」に同時収録されたレディ・オルカ(Lady Orca)のフレイバー・テキストで、アンガス・マッケンジーは最期の時を迎えている。アンガスはレディ・オルカの炎で跡形もなく焼き尽くされてしまったのだ。

このレディ・オルカはレジェンドサイクル2三部作に登場している。ドミナリア次元マダラ地方の人物で巨人のような女性の姿をしたデーモンである。元は人間の女性であったが、マダラ帝国の帝国暗殺官ラムセス・オーヴァーダーク(Ramses Overdark)によって人ならざる存在に変えられてしまった。

この三部作の時代設定はAR3607年2である。したがって、アンガス・マッケンジーも同時代の人物であると考えられる。3その時代にはカラカスは戦いが無用の平和な国であったことになる。



カラカスのトリビア

“To make a prairie it takes a clover and one bee,/ One clover, and a bee,/ And revery.”
–Emily Dickinson
「大草原を作るには一輪のクローバーと一匹の蜜蜂がいる/一輪のクローバーと一匹の蜜蜂/そして幻想も。」
–エミリー・ディキンソン
引用:カラカス(Karakas)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳版

カラカス(Karakas)

データベースGathererより引用

カードセット「レジェンド」初出時のカラカスのフレイバー・テキストとイラストは、MTGの多元宇宙よりも、現実世界に結びつきが強いと感じるものだ。

初出時にはフレイバー・テキストがついていたが、19世紀のアメリカの詩人エミリー・ディキンソンの詩からの引用であった。雰囲気はあったのだが、残念ながらMTGの世界設定には何も関係がないものである。

初出時のイラストを観察すると、実はミャンマーの寺院・仏塔「シュエダゴン・パゴダ(Shwedagon Pagoda)」にそっくりなのだ。イラストのモデルであったのだろうと噂されている。

脱線考察:ミャンマーとマイアー山脈

ミャンマー(Myanmar)マイアー(Myar)、綴りが似てるよなぁ…。これが私の最初の気付きだった。

ドミナリア期のポッドキャストで、カラカスの位置が公表された時、なぜ敢えてそこに設定したのか、私には理由が思いつかなかった。東ジャムーラは設定がないスカスカの空白地帯だからそこに押し込んだのだろうかと漠然と考えたくらいだ。

AR4560年現在のイシャン湾以東
中央左よりの黄緑色の半島がカラカスである
現在ドミナリア地図より抜粋引用

カラカス以外の周辺地域がその位置に設定された理由ならば分かる。登場作品の描写を考慮すると、マイアー山脈はジャムーラの中央に存在しなければならない。マイアー山脈が定まればその東にネコルーの交配地がなければいけないし、ネコルーがいるなら付近にユーミディアンが生息しているのが小説の描写的に道理にかなうのだ。でも、カラカスは違う。同じ作品シリーズには言及がないし、なぜそれらと一組になる地域に置かれたのか関連性が見えなかった(その時は)。

ところが、カラカスの初出時イラストがミャンマーのシュエダゴン・パゴダに似ているという話を思い出したときに、唐突に閃いた。「ミャンマー(Myanmar)マイアー(Myar)、綴りが似てる」と。マイアー山脈の位置に合わせたのは、カラカスのイラストが理由ではないのか?

それで、ミャンマーとシュエダゴン・パゴダを地図上で調べてみると驚いた。なんとミャンマーの西海岸から突き出た半島部にシュエダゴン・パゴダがあったのだ。このミャンマーの半島とドミナリアのカラカスの半島はどことなく形も似ている。

シュエダゴン・パゴダとカラカス比較

ミャンマーの半島にシュエダゴン・パゴダがあるから、マイアーから突き出た半島にカラカスがある。

いかにもイーサン・フライシャー(Ethan Fleischer)とケリー・ディグズ(Kelly Digges)がやりそうな関連付けだと、私には思えてならないのだ。

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  1. 日本のMTG wikiのカラカスのページとほぼ同じ翻訳文なのは、そちらも私が訳して編集したものだから。剽窃ではないので念のため。
  2. かつてはヴォーソス間で諸説あったが、ビジュアルガイドにてAR3607年と確定された。
  3. どうしてアンガスがカラカスからマダラまで赴いたのかは謎である