イニストラード:カンバーとロリーン

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略奪者、カンバー(Kamber, the Plunderer)陽動する者、ロリーン(Laurine, the Diversion)は、カードセット「イニストラード:真紅の契り」統率者デッキ収録の伝説のクリーチャー・カードである。

昨日、「イニストラード:真紅の契り」のメインストーリーが最終回を迎えた。そうなると、このセットのストーリー作品は今日深夜更新のサイドストーリーの短編で最後となるはずだ。サイドストーリーは一話完結で、毎回主役となるキャラクターは変わっているのだが、最終回は誰を主役とした物語となるのだろうか?

これまでのサイドストーリー4作では、主役は非吸血鬼キャラと吸血鬼キャラが交代で務めてきたのだ。その点から考えてみると、カンバーとロリーンの主役回となると私は予想を立てた。なぜなら、カンバーは吸血鬼で、ロリーンは人間なので、この2人組を主役に据えればちょうど非吸血鬼・吸血鬼が半々になるのだ。これはバランスがいい。きっと次の主役はこの2人だ。

そんな特に根拠もない思い付きで、今回はイニストラード次元の盗掘者デュオ、カンバーとロリーンを取り上げることにあいなった。

※ 予想が外れた。まさか短編5話の更新自体がされなかったなんて……。もしかすると、今週が休みなだけかも知れないが、短編が前回の4話目で打ち止めの可能性もあるか。

追記(2021年12月2日):翻訳記事『イニストラード:真紅の契り』の伝説たちが元記事から2週間遅れで公開されたが、和訳に難ありなためその点を追記した。ちなみに、明日深夜に短編5話目が更新されると願っている。

追記(2021年12月4日):ウィザーズ社は完全に「真紅の契り」から次の製品宣伝へと切り替えた…。物足りないが短編はもうないのだ。

略奪者、カンバーの解説

略奪者、カンバー(Kamber, the Plunderer)

略奪者、カンバー(Kamber, the Plunderer)
データベースGathererより引用

カンバーとロリーンは、イニストラード次元でも筆頭格の盗掘者であり、デュオを組む長年の相棒同士だ。

略奪者、カンバー(Kamber, the Plunderer)は吸血鬼で、盗み役を担当している。

設定解説記事の記述では性別は明記されておらず、イラストを見ても中性的な雰囲気があってよく分からない。

また、同記事によると、カンバーとロリーンが盗掘の計画を立てた時に、墓の中に眠っている千歳の吸血鬼の存在を見落としていた、との旨が語られている。そして、カンバーは吸血衝動に屈して相棒を襲う可能性も示唆されている。

このことから考えて、カンバーは今回の盗掘に取り掛かるまではまだ人間であって、千歳の吸血鬼によって吸血鬼に変えられたばかりの新生子(Neonate)である可能性が見えてきそうだ。あるいはこの顛末がサイドストーリー短編で語られるのかもしれない。



略奪者、カンバーのメカニズム

カンバーのカード・メカニズムを設定と絡めて解釈する。

陽動する者、ロリーンとの「共闘」能力は、カンバーが戦場に出た時に対象のプレイヤーはデッキの中から陽動する者、ロリーンを探して手札に加えてもよい(その後デッキをシャッフル)というものだ。コンビの相棒が出たら、もう1人も駆けつけるのだ。もし他のプレイヤーとチームを組むような多人数戦だったなら、仲間同士でそれぞれカンバーとロリーンをデッキに採用して共闘能力を利用するのも可能だ。

共闘以外の残りの能力は、カンバーの吸血鬼らしさを表現している。

「絆魂」能力は吸血行為の再現としてよく用いられるものだ。

そして、もう最後の1つが、対戦相手のクリーチャーが死亡するたびにライフ1点を得て血・トークン1個を生成する能力だ。明らかにこれも吸血行為である。

陽動する者、ロリーンの解説

陽動する者、ロリーン(Laurine, the Diversion)

陽動する者、ロリーン(Laurine, the Diversion)
データベースGathererより引用

カンバーと盗掘者デュオを組む、陽動する者、ロリーン(Laurine, the Diversion)は人間女性で、偵察と陽動を役目としている。

ロリーンは、長年の相棒のカンバーが吸血の誘惑に屈して襲ってくるかもしれないとの不吉な考えを頭から拭い去れずにいる。だが、2人の絆はちょっとやそっとの吸血衝動なんかには負けはしない。

陽動する者、ロリーンのメカニズム

ロリーンのカード・メカニズムを設定と絡めて解釈する。

ロリーンの方はカンバーよりも多人数戦に適した機能を持たされており、統率者デッキ収録のカードらしい雰囲気が強く出ている。

略奪者、カンバーとの「共闘」能力は、カンバーとは立場が逆で、ロリーンが戦場に出たらカンバーが手札にやって来る、というものだ。

「先制攻撃」能力は、現場を十分に偵察した利を活かしての奇襲攻撃というフレイバーだろうか?

そして、「使嗾(しそう)」は陽動を表したものに違いない。使嗾能力は対象のクリーチャーに攻撃を強制するものだが、可能ならばあなたでない他のプレイヤーへ攻撃しなければならない。これは多人数戦でより輝くメカニズムだ。

カンバーとロリーンの設定解説記事

カンバーとロリーンの設定と背景の解説は公式記事The Legends of Innistrad: Crimson Vowに記載されているものが現時点での全てになる。

未訳記事なので、2人の該当部分を本サイト独自に翻訳してみた。

Kamber and Laurine had their next heist all figured out. Laurine would scout the location and serve as a distraction while Kamber grabbed the goods. However, they failed to account for the thousand-year-old vampire that slept inside the tomb. While Laurine can’t shake the intrusive thought that her longtime partner might be tempted to eat her, it will take more than a little vampirism to break up Innistrad’s premiere grave-robbing duo.

カンバーとロリーンは次のシゴトの計画を立て終えた。ロリーンが現場を偵察して陽動役を務め、その間にカンバーがブツを頂くという寸法だ。ところが、墓の中で眠る千歳の吸血鬼が勘定に入っていなかった。ロリーンは長年の相棒が彼女を食べる誘惑に屈するかもという不吉な考えを振り払えずにいるのだが、ちょっとやそっとの吸血衝動じゃあ、イニストラード筆頭格の盗掘者デュオの仲は揺るぎはしないのだ。
引用:公式記事The Legends of Innistrad: Crimson Vow
上が英語原文。下が私家訳

カンバーとロリーンの設定解説記事:公式和訳版

記事の公式和訳版である翻訳記事『イニストラード:真紅の契り』の伝説たちが、元記事から2週間遅れで公開された。内容を確認してみると、誤った翻訳が所々に目立っており、カンバーとロリーンの解説も同様に内容に誤りがあった。

カンバーとロリーンは全てを理解した上で盗みを行う。ロリーンが略奪先を偵察して陽動を担当する一方、カンバーが獲物を手に入れるのだ。しかしながら、ふたりは墓所の中で眠る数千歳の吸血鬼に対する釈明に失敗した。長年の相棒が、自分を喰らいたいという誘惑に負けてしまうかもしれないという厄介な考えをロリーンは振り払えずにいる。だがイニストラードの高名な墓荒し二人組を解散させるには、少々の吸血衝動では足りないようだ。
引用:翻訳記事『イニストラード:真紅の契り』の伝説たち

問題のある部分は赤太字で強調した。2か所ある。

順番に取り上げる。

その1:数千歳ではなく千歳

公式和訳版では「墓所の中で眠る数千歳の吸血鬼」となっているが、この数は大幅に盛られている。

原文は「the thousand-year-old vampire that slept inside the tomb」なので「数千歳」ではなく「千歳」である。

MTGの公式和訳を眺めていると、この手の意味もなく数を盛って増やす事例にたまに遭遇する。「百年・千年」が「数百年・数千年」といった具合のやつだ。数の扱いが軽いのだ。

その2:「account for」の解釈って難しい

次に取り上げるのも同じ文で、「吸血鬼に対する釈明に失敗した。」の部分だ。

原文該当部は「they failed to account for the thousand-year-old vampire」で、ここの「account for …」という言い回しは日本語化にいつも苦労する。文脈で意味合いが変わるので、その時々で判断して日本語に置き換えないといけないからだ。

「account for …」は「…を説明する」とかがよく見る解釈の訳だ。辞書には沢山の訳例があり、「…をやっつける・仕留める」なんて意味合いでも使われる。

すっきりと読めそうなのはこの「吸血鬼を仕留める」なのだが、私はこの解釈は取らなかった。どう考えたかというと以下の通り。

カンバーとロリーンの2人が主体の文章という前提がまずある。相手が千歳の吸血鬼であるのに対しこっちは盗掘者で、最大2名いても現場に乗り込むのはカンバー1人きりだ。古き吸血鬼は強力な存在なのだからかなり分が悪く「仕留める」のは厳しいし、盗掘者としてはそもそも戦わないで見つからないような方向でシゴトをすると考えられる。それに吸血鬼は眠っているので、わざわざ起こす利点はない。

そういうことを考慮に入れて、私としてはここの「account for …」は「(略奪計画の)計算に入れる」と解釈した。すると、「眠っている吸血鬼を計算に入れそこなった」となるから、冒頭の文の「カンバーとロリーンは全てを理解した上で盗みを行う。(Kamber and Laurine had their next heist all figured out.)」とつじつまがピタリと合う流れになりなる。

つまりは、カンバーとロリーンは吸血鬼の存在をそもそも見落としていて計画の内に入ってなかったのだ。吸血鬼は墓の中で眠っていたので、気付けなかった。こういう理屈で無理なく筋が通る。

公式和訳版に話を戻す。「account for …」には例えば「(何らかの事実が)…に対する理由または説明である」との意味合いもあるけれど、「They failed to account for the vampire」の形で「カンバーとロリーンが吸血鬼に対する釈明に失敗した」と読むのは流石に無理筋だろう。「…を説明する」という定番の日本語化に引き摺られたまま言葉を当てはめた、そんな不自然さを受ける。

とはいえ、「墓の中で眠る千歳の吸血鬼を仕留めるのに失敗した。」なら辞書にもある解釈には違いないので、もしかすると私の解釈も誤りで、そちらが正答なのかもしれない。それをはっきりさせるためにも、ウィザーズ社にはぜひ2人が主役の短編の掲載を願いたい。



さいごに

カンバーとロリーンについて語れる情報は以上で弾切れである。

サイドストーリ短編最終話がこの2人組だと予想を立てて取り上げたわけだが、私はこの読みは実は当たってるんじゃないかと感じてならない。結果は深夜の更新で明らかとなる。さあてこの博打が当たっているのだろうか……!?

では今回はここまで。

追記:結局この記事を掲載した夜には公式サイトの新記事更新が無くて、短編も掲載されなかったのだ。前回の短編4話目で終わりだとすると、通例より話数が少ないのでそれはおかしい。おそらく感謝祭関係でこの週はお休みで、次の週に更新があるはずだ。つまり、明日の深夜にカンバーとロリーンの短編が掲載されるはずだ。私はまだ希望を捨てていない。

更に追記:ダメだった……。

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