昨晩(2021年8月25日早朝)のTwitch番組で、来年発売のカードセット「神河:輝ける世界(Kamigawa: Neon Dynasty)」が発表された。
いかにもな「和風サイバーパンク」のヴィジュアルに界隈が興奮をしている。公式ツイッターによると「神河ブロックの2000年後」なのだそうだ。
前回から2000年後の神河。ならば近未来と化したサイバーパンク神河にも一応納得できる。……だが、2000年後という時代設定は非常に奇妙なのだ。
追記(2021年8月26日):「初代神河ブロックは7000年以上前の話」という誤情報を信じている例をかなり頻繁に目にしたので、その件を書き加えた。
追記(2021年12月28日):公式による最終的な時代設定が「1200年後」で確定したので、新たな節を最後に新設してその旨を追記した。
神河:輝ける世界の時代設定
まず初めにソースの確認だ。ウィザーズ公式ツイッターから引用すると「初代神河ブロックより2,000年後を描いた『神河:輝ける世界』(Set 2,000 years after the original block, Neon Dynasty)」とあり、しっかりと「2000年後」と書いてあるのが分かる(ウィザーズ公式コメント、日本公式)。
初代神河ブロックの時代設定
では次に、初代神河ブロック(神河物語、神河謀叛、神河救済)はいつの時代の出来事だったのかを調べてみよう。そちらが分かれば「輝ける世界」の時代設定が判明する。
実は本サイトでは考証済みだ(こちらの記事を参照)。
何年かは特定できないがドミナリアの暦でAR3200年より後の時代である(おそらくAR33世紀か34世紀であったと想像される)。
カードセット「ドミナリア」期に、ウィザーズ公式が神河ブロックの事件のそもそもの発端となった出来事の年代を特定したので、「AR3200年より後」は動かせない。
つまり、3200+2000=5200だから、「神河:輝ける世界」はAR5200年より後の時代となる。
AR5200年って、これで大丈夫なのか?
AR5200年は未来世界
現在のMTGの最新タイムラインは、AR4560年からその数年後以内となっている。かたや、AR5200年は7世紀も未来だ(さらに未来の可能性もある)。
7世紀も未来を描くスタンダードのカードセット。……こんな未来に飛んで本当に大丈夫?
輝ける世界は現代設定
カードセット「神河:輝ける世界」の発表後、マーク・ローズウォーター(Mark Rosewater)は時代設定に関する質問を受けて、驚くべき発言をしている。
「神河:輝ける世界」は他のストーリーと同時進行?それとも未来?…との質問に対して、ローズウォーターは「現代設定だ(It’s set in the present.)」と回答しているのだ(出典)。
え!?てことは、AR4560年から数年以内の設定なの?
未来か現代か
以上のように、現時点で神河:輝ける世界は「7世紀以上の未来」と「現代」の2つの設定が公式関係から公表されている。ヴォーソス界隈も非常に混乱した状態だ。
ウィザーズ公式の「2000年後」が誇張された広告だったのか?マローの回答が間違っているのか?
あるいは、どちらも正しいとする解釈もある。例えば、神河はドミナリアより時間の進みが1.5倍早いとすれば、AR4560年は神河の現在になる。または、時間の流れが同じとする場合、神河の1年の長さがドミナリアの2/3ならば、ドミナリアで4560-3200=1360年経つ間に神河では2000年が経過する計算になる。辻褄は合うものの、いや、そんな面倒くさい設定する意味ってある?
追記:神河は7000年以上昔ではない
本記事を書いた当初は、敢えて触れる必要のない話だと判断して割愛した誤情報がある。明らかな間違いにすぎないため、話がややこしくならないように無視したのだ。だが、この誤情報を信じてしまっている意見を予想以上に見つけてしまったので書き加えることにした。
その誤情報というのは「初代神河ブロックは現代から7000年以上前の話」だというものだ。それを踏まえると、2000年後の「神河:輝ける世界」といっても5000年も昔になるじゃないか…とさらに誤った方向へと推測が導かれていく。こういう状況が見られた。
「7000年以上前」の発信源は、日本公式記事ユースアンバサダープログラム2018・レポート:第3回 マローにインタビューでのマーク・ローズウォーターの発言だと考えられる。
『神河』はストーリーでは7000年以上前の話なので、現代の生まれ変わった神河をやるのは面白いかなと思っているんだ。
引用:日本公式記事ユースアンバサダープログラム2018・レポート:第3回 マローにインタビュー
このインタビュー記事は2018年のものだ。この年には、神河ブロックはAR3200年より後の時代だと公式に確定している。
したがって、ローズウォーターが勘違いして発言してしまったか、あるいは、発言の聞き取り間違いがあったのではないだろうか?
初代神河ブロックが7000年以上前はありえない。誤情報である。
公式の回答を求む
結局、「神河:輝ける世界」発表当日の現時点では、公式関係が発信する情報ですら相互に矛盾していて何も信じられないのだ。早急に公式のちゃんとした回答が出ることを願ってならない。
ちなみに私個人としては、しばらく前まで神河に局地的な時の裂け目現象が発生していてその地域だけ時間が2000年も進んでしまって和風サイバーパンク化した1、ってあたりを予想として投げておく。もちろん何の根拠もない雑な仮説にすぎない。ゆめゆめ信じるなかれ。
では、今回はここまで。
追記:最終結論「1200年後」
「神河:輝ける世界」初報から4か月後、2021年12月17日早朝(日本時間)の公式Twitch番組において、時系列上の様々な疑問に対して公式回答が出された。
それによると……
- 「神河:輝ける世界」は最初の神河ブロックの1200年後である。
- 「神河:輝ける世界」は現代である。
- 「灯争大戦」から数年以内で、10年までは経っていない。
そして当然、視聴者から「1200年では前と言ってることが違うじゃないか」と疑問が出されたが、それに対して「今までの情報は間違いだった」との旨の回答を返し、誤報を認めたのである。
さて、1200年ならば既存の時系列情報とつじつまがきちんと合いそうだ。ただ、この神河ブロックから1200年後という言い方は少々曖昧さがある、と私は思っている。現在がAR4560年から数年以内となるので、その1200年前は3350年頃と計算できる。ただし、これは神河ブロックの終了時と考えた方が都合がよいのだ。
細かい説明と検証は今回は省いて結果だけ言うと、神河次元の現し世(物質世界)と隠り世(スピリット世界)の境を曖昧にした原因はAR3200年代(33世紀)に発生しており、その影響で少なくとも20年以上経って神の乱が起こることになり、神の乱の終わりは世紀を跨いで34世紀になってからとなり、それからさらに1200年後が現代の「神河:輝ける世界」である。これが現時点でおそらく一番整合性が取れた解釈となると思われる(本来は細かく検証して説明すべきなのだが今回は先送りにさせてほしい)。
取りあえずは、公式が誤報を認めて1200年後という妥当な数字を出してきてくれた。私は正直ホッとしている。無茶な時間を捻じ曲げる設定が生えてこなくて良かった…とね。