溶岩コイル(Lava Coil)はカードセット「ラヴニカのギルド」収録のソーサリー・カード。
フレイバー・テキストで何かおかしいぞと引っ掛かりを覚えたカードをピックアップする。
溶岩コイルの解説
“Commander, we caught the Dimir spy and took her ashes into custody.”
–Kramm, Wojek security officer
「司令官、ディミーアのスパイを捕らえ、その遺灰を監禁しました。」
—ウォジェクの警備兵、クラム
引用:溶岩コイル(Lava Coil)のフレイバー・テキスト
溶岩コイル(Lava Coil)は、イラストやフレイバー・テキスト、カード名、メカニズムなどを総合的に考えて、ラヴニカ次元ボロス軍ウォジェク連盟の火力魔法である。
イラストで溶岩の渦に巻かれているのは、ディミーア所属のスパイの女性吸血鬼である。ウォジェクのクラムはこの魔法で灰になった吸血鬼を収監したと上官に報告している。
警察組織ウォジェクらしくない言葉遣い
「司令官、ディミーアのスパイを捕らえ、その遺灰を監禁しました。」
—ウォジェクの警備兵、クラム
さて、このフレイバー・テキストの和訳だが、私には言葉遣いが気になって仕方がない。というのは、発言者が「ウォジェク連盟(Wojek League)」所属であることが理由だ。ウォジェクは警察的組織という設定なので、諸々の訳語選択が適切ではないと思えてならないのだ。
ウォジェク連盟はラヴニカ次元の警察
「ウォジェク連盟」という組織は、伝統的なボロス軍が軍隊であるのに対し、その一部であるものの軍隊よりも警察組織の性質を強く持っている。カードからは分かり難いかもしれないが記事や小説、公式サイトの掌編での解説や描写はまさにラヴニカの警察そのものである。最初のラヴニカ・ブロックとその小説はウォジェクの警察官アグルス・コス(Agrus Kos)が主人公であり、犯罪捜査をするというストーリーであった。
フレイバー・テキストの原文を読む
では、フレイバー・テキストの英語原文を見直してみよう。
“Commander, we caught the Dimir spy and took her ashes into custody.”
–Kramm, Wojek security officer
警察は監禁でなく収監する
原文の「(take a person) into custody」は確かに「監禁する」で辞書的には間違いではない。ただし、発言者が警察官なのだから辞書を調べればより適切な訳例が見つけられる。つまり「収監する」あるいは「拘引する」といった具合だ。法に則っているはずの警察官が「捕らえたスパイを監禁した」ではやっぱり言葉遣いが不自然なのだ。
階級も警察らしい方がいい
ウォジェクが警察組織なら階級もそれらしく訳してほしいところだ。
ラヴニカへの回帰ブロック以降になると、背景世界系記事ではその点の配慮がはっきりと見られる翻訳となっている(例えば、「commander」は「警視長」、「lieutenant」は「警部」といった具合だ1)。
ならば「officer」は何と訳されるべきか?
「officer」の警察関連の訳語には「巡査」や「警察官」、「お巡りさん」があるが、ラヴニカ小説ではアグルス・コスが自分自身を「officer」と自称して用いていることに注目したい。コスの階級は「lieutenant(警部)」なのでこの「officer」は「巡査」でなく「警察官」の意味となる(翻訳するなら文脈によって「本官」などと置き換えることになるだろう)。とすれば、このカードでも階級の低い「巡査」と限定せずに一般的な「警察官」と捉えて、「Wojek security officer」は「ウォジェクの保安部門の警察官」といった意味合いを持つと解釈するのが無難に思える。
ちなみに、もし軍隊的に訳すなら「officer」は「士官・将校」なのだから「security officer」は「保安士官」とかにするべきと個人的には思うので、平の階級みたいに「警備兵」と和訳されているのには違和感がある。
訳してみた
以上を踏まえて言葉を少し置き換えてみた。
「警視長、ディミーアのスパイを捕らえ、その灰を収監しました。」
–ウォジェクの保安部警官、クラム
こんな風であればウォジェク連盟らしいのではないだろうか?スパイは灰になりはしたが捕まえることはできたし、吸血鬼だから灰からでも復活する可能性もあるかもしれない。また、たとえ遺灰であっても手続き通り収監する。いかにも杓子定規な警察官らしい対処ではないか。
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