ニューカペナ:アルトニオの運命

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今月発売する新カードセット「ニューカペナの街角」の収録全カードが公開された。

収録カードの何枚かでちょっと面白いミニストーリーが展開されていたのでそれを紹介したい。アルトニオ(Altonio)という名前の人物の運命の物語だ。

追記(2022年4月20日):アルトニオ関係のカードが生成する「ブロックされない1/1の魚トークン」の画像を記事内に追加した。

アルトニオの運命

捨て石の従僕(Expendable Lackey)より一部拡大

アルトニオ(Altonio)はニューカペナの常夜会のメンバーであった人間男性だ。勇敢だが賢くはない新参者であったようだ。

彼の辿った運命は3種類のカードで描かれている。



ステップ1:捨て石の従僕

“Altonio? No, I’m sorry. No one by that name waorks here.”
–Raffine
「アルトニオ?ごめんなさい、そんな名前の人物はここで働いていません。」
–ラフィーン
引用:捨て石の従僕(Expendable Lackey)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

捨て石の従僕(Expendable Lackey)

捨て石の従僕(Expendable Lackey)
データベースGathererより引用

捨て石の従僕(Expendable Lackey)のカードの機能は、このカードが墓地にある時にマナを払って追放すると、「ブロックされない1/1の魚トークン」を生成できる。墓地からこれが居なくなると魚が増える!?何だか妙なメカニズムだ。

イラストの人物がアルトニオ(Altonio)その人だろう。

イラストを担当したRandy Gallegosはこのイラストの状況と人物について解説してくれている(出典リンク)。それによると、この人物は勇敢だが賢くはない新しく雇われた部下で、大きなペントハウスに小さな黄金のフクロウ像を盗みに入った。ところが、真っ暗な螺旋階段にいるところを巡回する警備員に見つかってしまい、今まさに懐中電灯のような魔法の照明具で階下から照らされた瞬間なのだという。

策謀の予見者、ラフィーン(Raffine, Scheming Seer)

策謀の予見者、ラフィーン(Raffine, Scheming Seer)
データベースGathererより引用

フレイバー・テキストの方は、常夜会一家のボス、ラフィーン(Raffine)のコメントである。アルトニオの消息を尋ねられたが、そんな名前のものは常夜会にはいないと返答している。しかし、このカードが捨て石の従僕であることを考えれば、アルトニオは組織に切り捨てられ居なかったことになったのだろう。

では盗みでドジを踏んだ後、行方をくらましたアルトニオはどこに消えたのか?

ステップ2:魚の餌になる

魚の餌になる(Sleep with the Fishes)

魚の餌になる(Sleep with the Fishes)
データベースGathererより引用

魚の餌になる(Sleep with the Fishes)はエンチャントしたクリーチャーのアンタップを阻害する青ではお馴染みの除去カードの1種だ。これでもまたブロックされない魚トークンが生成される。

カード名の「Sleep with the Fishes」は直訳で「魚達と共に眠る」になるが、「死体を水中で処理する」ことを意味する。語源は1833年まで遡れるが、1972年の映画「ゴッドファザー」で有名になった言い回しだという。死体を水底に沈めて魚の餌にして処理する、というマフィアジャンルの作品などで使われる表現だ。

このイラストも捨て石の従僕と同じくRandy Gallegosが担当したものだ。実は発注はこっちの方が先で、後からこのカードの前段階の場面として捨て石の従僕が指定されたのだという。

魚の餌になる(Sleep with the Fishes)より一部拡大

Gallegosは魚の餌になるのイラストについても解説してくれている(出典リンク)。魚の泳ぐ水槽に逆さ向きに沈められた人物は、顔の回りに酸素の泡が覆っていて、まだ息があることが分かるように描いている。本当にただ「魚達と共に眠っている」状態なのだ(少なくともこの時点では)。

シゴトで失敗したアルトニオは眠ったまま魚の水槽に沈められてしまっていた。彼はどうなってしまうのだろうか?

ステップ3:風変わりなペット

Investigators observed that Altonio’s beloved fish were thriving after his disappearance.
アルトニオの失踪後、彼の愛しの魚がすくすく成長していることを調査員は認めた。
引用:風変わりなペット(Exotic Pets)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

風変わりなペット(Exotic Pets)

風変わりなペット(Exotic Pets)
データベースGathererより引用

風変わりなペット(Exotic Pets)は魚トークンを2体生成するインスタント・カードだ。これもまたブロックされない能力がある。その上、自分がコントロールしているクリーチャーの持つカウンターと同じ種類のカウンターを、1種類ごとに1つずつどちらかの魚トークンに乗せられる。つまり、更に強化された魚が出てくる見込みだ。

イラスト担当者は前2つのカードと違ってDrew Bakerであるが描かれている魚の種類は一緒だ。

フレイバー・テキストを「素直に」読んだなら、調査員は失踪したアルトニオを発見することはできなかったが、彼の可愛がっていた魚たちが失踪後もしっかり肥え太っていることだけは確認できたようである。こんな調子に理解できるのではないだろうか……だが本当にそうだろうか?

アルトニオと階段の手すり(比較図)
捨て石の従僕(左)、魚の餌になる(右)

まずこのカードの前段階である2つのイラストで、同じ手すりの階段が描かれていることに注意したい。Randy Gallegosのコメント(出典リンク)をもう一度確認してみると、同じ螺旋階段を描くよう指示を受けデザインを揃えたとの旨が書かれている。

ということは、この魚の水槽はアルトニオが盗みに忍び込んだペントハウス内に置かれていることになる。ならば、「彼の愛しの魚(that Altonio’s beloved fish)」とは「生前の彼が可愛がっていたペット」という意味ではなくなり、「彼を食べるほど愛している魚」という皮肉めいた表現だと分かるのだ。

つまり、調査員らは死亡したアルトニオが今まさに水槽内で食われている姿を見ている。常夜会のラフィーンの所まで、アルトニオのことを尋ねに出向いたのは、調査ではなく警告だ。お前の指図で動いたのはお見通しなんだぞ、というメッセージなのだ。失踪中のアルトニオの調査なんて見せかけ、これがマフィアの支配するニューカペナの流儀なのだ。



さいごに

捨て石の従僕(Expendable Lackey)より一部拡大

アルトニオは以上のような顛末を辿った。

いずれにしろアルトニオは命を落とし、このまま魚たちに平らげられてしまうことになるようだ。哀れな彼の末路であった。

ブロックされない1/1の魚トークン

ブロックされない1/1の魚トークン
公式記事The Tokens from Streets of New Capennaより引用

しかし捨て石の従僕(Expendable Lackey)の能力を思い出してみよう。墓地の捨て石の従僕を追放すると、魚トークンが生成されるのだ。肥え太った愛しの魚たちは産卵し新たな稚魚を育んだのだろう。アルトニオの命はこうして形を変えて魚たちへと受け継がれた。生命のサイクル。ゴルガリ団ならニッコリ笑顔の大団円だ。

では今回はここまで。

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