カードセット「エルドレインの森」で登場したキャラクター、シャレー(Sharae)とラレント湖(Loch Larent)のマーフォークについて取り上げる。
ワールドガイドはMTG30周年記念展示で特別公開されていたが撮影不可のため、私は個人的に要点をメモしておいた。メモと記憶に頼っているので、正確さという点では完全とは言えない。あらかじめ了承していただきたい。
追記(2023年9月19日):ラレント湖の湖底を表す土地カード、水晶の岩屋(Crystal Grotto)を見落としていたため追加した。有角の湖鯨のショーケース・フレーム版が抜けていたため追加した。
追記(2023年9月27日):公式記事Ten Stories Tallでシャレー(Sharae)のプロフィールと、ラレント湖(Loch Larent)の位置の情報が追加されたため、本記事に反映した。
追記(2023年10月10日):カードセット「アルケミー:エルドレイン」の公式カードギャラリーが公開されたため、ローラン湖(Loch Larent)を本記事に追加した。
追記(2023年10月11日):MTGアリーナにカードセット「アルケミー:エルドレイン」が実装されたことでフレイバー・テキストが確認できるようになった。ローラン湖(Loch Larent)にフレイバー・テキストを追加した。
シャレーとラレント湖のマーフォークの解説
エルドレイン次元のマーフォークはウンディーネ(Undine)と呼ばれる水棲人型種族だ。AR4562年の新ファイレクシア侵略戦争後、ウンディーネは以前よりも孤立した種族となった。
ラレント湖(Loch Larent)にはウンディーネが暮らしていた。侵略戦争が終結すると、魔女ヒルダ(Hylda)がダンバロウからラレント湖の畔へと移住してきて氷の王宮を建設した。ヒルダの寒冷の魔力がラレント湖を水面から氷結させていき、ウンディーネは湖の深みへと退避したが、中には逃げきれずに氷漬けになってしまった者もいた。
ラレント湖深部のマーフォークの中には、暗黒と氷結に適応して変貌する者が現れた。そうした1人がシャレー(Sharae)であった。
麻痺深淵のシャレー
麻痺海溝のシャレー(Sharae of Numbing Depths)はカードセット「エルドレインの森」に収録された伝説のクリーチャー・カードである。
半ば凍りついたラレント湖の深淵で、氷の魔法に目覚めたウンディーネの女性魔術師である。イラストでは、杖の先端から凍りつかせている。
公式記事Ten Stories Tallで新たに公開された情報によると、シャレーは「ラレント湖のマーフォークの指導者1」である。
和訳製品版のカード名では「麻痺海溝」だが、本サイトでは設定を重んじて「麻痺深淵」と表記する(以下参照)。
ワールドガイド
「エルドレインの森ワールドガイド」には、ラレント湖の深部で暗闇と氷結に適応したマーフォークが存在する設定と、それを描いたデザイン画が掲載されていた。
しかし、カードセット「エルドレインの森」には、該当するカードは伝説のクリーチャーのシャレー、たった1種類のカードに留まった。
麻痺海溝でなく麻痺深淵
和訳製品版のカード名では「Numbing Depths」が「麻痺海溝」と、そこが「海」だと訳されているが、これは誤りだ。
ワールドガイドには、ラレント湖のマーフォークにしか触れておらず、そもそもエルドレイン次元の海については一切言及されていなかった(少なくとも私が目を通した限りでは)。
つまり、「Numbing Depths」は、ヒルダの魔法の影響で「半ば凍りついたラレント湖深部」を意味しているのだ。したがって、本サイトではシャレーの2つ名は「麻痺深淵」と表記することにした。
「雪の女王」アーキタイプとシャレー
カードセット「エルドレインの森」において、2色の組み合わせ10種類がそれぞれ童話に対応したアーキタイプが設定されている。青赤は「魔法使いの弟子」、白黒は「白雪姫」……といったように。
白青は「雪の女王」アーキタイプだ。
そして、アンコモン枠にはアーキタイプに対応した10種類の2色の伝説のクリーチャー・カードが収録されており、それぞれがそのアーキタイプの主人公としての背景を持たされている。「エルドレインの森ワールドガイド」には、アーキタイプが個別に解説されていて、主人公などの中心人物が誰でどういう背景があるのかが説明されている。アンコモン枠の伝説キャラの面々はそこに登場する。
ただし、白青のシャレーは例外である。
ワールドガイドによると、白青の「雪の女王」の主人公は雪の女王役のヒルダ(Hylda)であり、他の固有名を持たされた人物は出てこない。ヒルダの城があるラレント湖と、そこのマーフォークへの言及があるのみだ。
エルドレインの森版「雪の女王」の主役ヒルダは、2人の魔女姉妹と一緒に神話レア枠のカードとして収録されるため、アンコモン枠が空いてしまう。そこで穴埋め用の伝説キャラとして、暗黒と氷結に適応したマーフォークという設定を拾って、シャレーという個人が後付けデザインされたものと推察される。
以前の様にサイドストーリー短編があったなら、シャレーにも独自の物語が創作されたかもしれないけれど、今回はそれは叶わなかった。シャレーは、氷の魔法に適応したラレント湖のマーフォークの魔法使い、それ以上でもそれ以下でもない(少なくとも現時点では)。
後に公式記事Ten Stories Tallが公開されたことで、シャレーにはラレント湖のマーフォークの指導者という設定が追加された。
ラレント湖
ラレント湖(Loch Larent)は「エルドレインの森」で初登場した場所だ。侵略戦争後に魔女ヒルダが畔に王宮を建て、そこを中心に氷の王国が拡大していった。
マーフォークの居住地として、前回カードセット「エルドレインの王権」ではメア湖(Lochmere)が設定されていた。そこは青の宮廷ヴァントレス(Vantress)の城が位置しており、王国の領土内であった。
一方、ラレント湖はエッジウォールの街から1週間の長き旅を経て辿り着ける場所にある。メア湖よりラレント湖は人間世界から離れたところなのだ。
公式記事Ten Stories Tallにおいて新たに追加された情報によれば、ヒルダが氷の王国を建設したラレント湖の位置は、「ダンバロウの最果て2」だと記された。したがって、ラレント湖は僻境(The Wilds)のダンバロウと境界地(Boundary Lands)の境にあると考えられる。
戦前の話だが、ルビー(Ruby)は兄弟のピーター(Peter)に連れられてラレント湖に釣りをしに行ったという。境界地の住人が釣りに赴いても無事なことから、ラレント湖のウンディーネは人間に敵対していたわけではなさそうだ。
AR4563年、「エルドレインの森」のストーリーでヒルダは魔法の冠を手放したため、もはや氷の王国を維持できなくなった。もちろん氷結領域は次第に減少していくので、ラレント湖のウンディーネが深淵から解放される日は近いだろう。
ラレント湖か?ローラン湖か?
ラレント湖(Loch Larent)は、公式和訳で訳語がブレている地名だ。
連載ストーリーでは「ラレント湖」だったが、カードのフレイバー・テキストにおいて「ローラン湖」と和訳されているのだ。その後、カードセット「アルケミー:エルドレイン」ではカード名でも「ローラン湖」と訳された。
こうして固有名詞の扱いがブレていると、ユーザーは無駄に混乱させられてしまう。困ったものだ。
さて、「Larent」は実際にどうカタカナ表記するのが正しいのだろうか?
ありがたいことに、ウィザーズ公式のストーリー連載朗読動画で発音を確認できる。連載ストーリー第3話の37分42秒のところで「Loch Larent」が出てくる。
明らかに「ローラン」には聞こえない。それよりは「ラレン(ト)」に近く発声されている(トは無声音)。これで答えが出た。
「ローラン湖」は間違いで確定で、カタカナ表記するなら「ラレント湖」の方がよりふさわしいのだ。
ちなみに、「Larent」で「ローラン」と発声するだろうか?と検索してみたら、「イヴ・サンローラン(Saint Laurent)」の書き間違いらしい「Saint Larent」が複数引っ掛かり、「ローラン」と読みがつけられていた。もしやこれと同じ発想で「ローラン湖」と読んでしまったのかもしれないな。
ラレント湖のマーフォーク関連カード
冬への没入
When Hylda froze Loch Larent to create her palace, some merfolk dove deep enough underwater to escape the chill. Others weren’t so lucky.
王宮を築くためヒルダがローラン湖を凍結させたとき、一部のマーフォークは十分に深いところまで潜り氷漬けを免れた。中にはついてない者もいた。
引用:冬への没入(Plunge into Winter)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
冬への没入(Plunge into Winter)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたインスタント・カードである。
ヒルダがの氷の魔法の影響がラレント湖とそこの住人にどんな影響を与えたか、その一端を描いている。
フレイバー・テキストの「ローラン湖」は「ラレント湖」のことだ。
マーフォークの珊瑚鍛冶
“Wooden swords rot. Steel axes rust. But coral only grows.”
「木の剣は朽ちる。鉄の斧は錆びる。でも、珊瑚は成長し続けるの。」
引用:マーフォークの珊瑚鍛冶(Merfolk Coralsmith)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
マーフォークの珊瑚鍛冶(Merfolk Coralsmith)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたクリーチャー・カードである。
ラレント湖のマーフォークであろうけれど、このカードは氷結した状況を特に表現してはいない。ごく普通のマーフォークの鍛冶職人だ。ただ、ラレント湖には珊瑚が生えており、それを材料に加工していることは分かる。
好奇心
“Valtry gasped. The strange new coral was not coral at all, but a fallen drywalker! But how did it get to the bottom of Loch Larent?”
–The Merfolk Who Walked
「ヴァルトリィは息を呑んだ。その奇妙で新しいサンゴは、実のところサンゴなどではなく、死んだ陸歩きだったのだ!しかしこれはどのようにしてローラン湖の底にたどり着いたのだ?」
–「歩み来たマーフォーク」
引用:好奇心(Curiosity)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
好奇心(Curiosity)はカードセット「エルドレインの森」のおとぎ話という特別枠で再録されたエンチャント・カードである。カードセット「エクソダス」が初出だ。
フレイバー・テキストは「歩み来たマーフォーク」からの引用で、ラレント湖の水底に住むマーフォーク女性のヴァルトリィ(Valtry)が、陸歩きの遺骸に興味を抱いている。ヴァルトリィの物語はもう1種類のカードへと続いている。
イラストの右側の女性がヴァルトリィなのかもしれない。
ちなみに、フレイバー・テキストの「ローラン湖」は「ラレント湖」のことだ。
リスティックの研究
“Despite her father’s warnings, Valtry’s fascination with the surface only grew. She collected things that fell to the bottom, daydreaming of life on land.”
–The Merfolk Who Walked
「父親の警告にもかかわらず、ヴァルトリィの地上への飽くなき興味は強くなるばかりだった。彼女は水底に沈んできた物を集め、地上での生活を夢見た。」
–「歩み来たマーフォーク」
引用:リスティックの研究(Rhystic Study)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
リスティックの研究(Rhystic Study)はカードセット「エルドレインの森」のおとぎ話という特別枠で再録されたエンチャント・カードである。カードセット「プロフェシー」が初出だ。
フレイバー・テキストは「歩み来たマーフォーク」からの引用で、ヴァルトリィのその次の展開が語られている。父親に注意を受けているにもかかわらず、ヴァルトリィは陸上生活を夢に見るようにまでなっていた。
タイトルが「歩み来たマーフォーク」であることから、これから先のヴァルトリィは陸に上がることになるはずだ。彼女はエルドレインの森版「人魚姫」なのだろう。
イラストのマーフォークはヴァルトリィであろうか。
こちらはアニメ版特別イラストだ。アニメ風ヴァルトリィか。
卓絶した声明
卓絶した声明(Transcendent Message)はカードセット「エルドレインの森」のストアチャンピオンシップのプロモカードとなったインスタント・カードである。カードセット「機械兵団の進軍」が初出だ。
イラストには、真っ暗な水中のマーフォークたちが描かれており、ラレント湖深部のウンディーネであろう。
水晶の岩屋
What little light filters down through frost and fathoms is refracted into a million rainbow shards.
霜の中から漏れて深淵に差す僅かな光は屈折し、数百万もの虹色の光の断片になる。
引用:水晶の岩屋(Crystal Grotto)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
水晶の岩屋(Crystal Grotto)はカードセット「エルドレインの森」に再録された土地カードである。カードセット「団結のドミナリア」初出だ。
再録に当たって、ラレント湖の湖底の様子を描いたイラストとフレイバー・テキストに差し代わっている。
有角の湖鯨
有角の湖鯨(Horned Loch-Whale)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたクリーチャー・カードである。出来事は礁湖の決壊(Lagoon Breach)だ。
これはマーフォークではないが、湖(Loch)に生息する一角鯨であるから、ラレント湖にもいる可能性があると考えてここで取り上げた。
有角の湖鯨にはショーケース・フレームの特別デザイン版も存在している。
こちらのイラストでもグリフィンに食いつこうとしている。好物なのだろうか?
ローラン湖
“The Ice Witch thinks this place silent and still. But beneath the surface, my people thrive.”
–Sharae”
「氷の魔女はここが無音で動きひとつない場所だと思い込んでいる。しかし、我が民は水面下で繁栄しているのだ。」
–シャレー
引用:ローラン湖(Loch Larent)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下がMTGアリーナの和訳
ローラン湖(Loch Larent)はカードセット「アルケミー:エルドレイン」に収録された土地カードである。
この「ローラン湖」は、カード化された「ラレント湖」である。
上述したように、綴りと公式ソースの実際の発音の両面から見て「ローラン」とは読めないはずの地名だったのだが、残念なことにそちらがカード名となってしまった。カード名はフレイバー・テキストや和訳記事での翻訳と違って、一度定まってしまったらほぼ変更されることがない。とても残念だ。
一方、嬉しいことに、フレイバー・テキストはシャレー(Sharae)のコメントとなっている。何もないも同然だったキャラクターに少しずつ肉付けされていくのはいいものだ。
さいごに
以上で、「エルドレインの森」の新キャラクター、シャレーとラレント湖に住むウンディーネ(マーフォーク)の話はおしまいだ。
当初私は、白青は「雪の女王」アーキタイプだから、シャレーは雪の女王ヒルダと対になる配役の登場人物だと予想していた。ところが、MTG30周年記念展示でワールドガイドを確認してみてビックリした。どこにもシャレーが出てこないのだから……。
本記事中の繰り返しになるが、「シャレーは、氷の魔法に適応したラレント湖のマーフォークの魔法使い、それ以上でもそれ以下でもない。」現時点ではそういう存在だ。ウィザーズは世に送り出したのだから、責任をもって肉付けをしてほしいものだ。
では、今回はここまで。
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