思考訓練(Train of Thought)はカードセット「ギルドパクト」収録のソーサリー・カードである。
この思考訓練は2006年発売のセット収録だが、私は当時MTGをあまりプレイしていなかったため、このカードの存在が頭に入っていなかった。だから、さっきこのカードを知ったのがほとんど初めても同然だったので、カード名を見てビックリしたのだ。「思考訓練」という名称はおかしいぞ、と。
今回はこのカードのカード名を考えてみる(14年以上昔の誤訳を取り上げるのもなんだが、間違いは正しておきたい)。
思考訓練の解説
“But then … oh, but … which means … which would lead to … exactly!”
「しかし、それだと……おお、だが……となると、だ……すなわち……なるほど!」1引用:思考訓練(Train of Thought)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
思考訓練(Train of Thought)はカードセット「ギルドパクト」収録のソーサリー・カードだ。このセットの青と赤はイゼット団に属するカードが含まれている。思考訓練はメカニズム的に「複製」を持っており、これはイゼット団に割り振られた能力だ。このカードももちろんイゼット団に属している(テキスト欄にイゼット団の紋章の透かしも入っている)。
思考訓練のカード名
「思考訓練」と和訳されているが原文は「Train of Thought」である。この翻訳はおかしい。
確かに「train」は動詞で「訓練する」の意味がある。だが、名詞で「train」となると「列」とか「連続」とか何か繋がってるものを指す。
そして、「train of thought」は辞書には「一連の思考」などと記載されるもので、思索や議論でどんどん考えが繋がっていくイメージを表している。
メカニズムを見ると、この「一連の思考」の雰囲気がよく出ている。呪文をかける際に(1)(青)の2マナを払ったごとに、カードを1枚引ける効果がある。つまり、2マナ分の思考が繋がっていって、その分カードを引くという気付きが得られるのだ。
イラストに目を向ければ、手元から舞い上がる書類の束が途切れぬ列を成して、空中一杯に広がっている。また、フレイバー・テキストは自問自答のつぶやきの連鎖であり、思索を紡いでいき、結論に辿り着いた確信ある一言で終わっている。
メカニズム、イラスト、フレイバー・テキスト…。どれも「一連の思考」のイメージが想起されるように、一貫してキッチリと仕上がっている。これは見事だ。
したがって、和訳製品版の「思考訓練」は完全に誤りである。辞書的に「一連の思考」とか「連続思考」とか何か相応しい名称があっただろうに。
おまけ:思考囲い
さて、カード名の間違いで「思考…」と言えば、「思考囲い(Thoughtseize)」というのもあった。
このカード名「Thoughtseize」は本来は「思考(thought)」を「掴み取る・奪う(seize)」である。和訳版はおそらく「掴み取る・奪う(seize)」を「包囲(siege)」に誤読したのだ(思考の包囲→思考囲い)。
「思考囲い」はカードが有名なのでこの誤訳の認知度はまだ高い方だ。けれど、「思考訓練」のような地味カードの場合、間違いが気付かれないまま・注目されないまま放置されていてもおかしくない。そんなカードがまだまだ隠れているだろう。…そんな予感がしてならない。
では、今回はここまで。